昨今、書店へ足を運ぶと、さまざまな仕事術の本が山積みにされている。どの本も独自の切り口でつくられていて、たとえば
・儲かる働き方
・大きな儲けでなく、身の丈にあった収入を生み出す働き方
など。こういった個性ある切り口を眺めるのは、実に興味深い。
僕は、
「自分の働き方をもっとよくできないか」
「自分の仕事でもっと社会が良くならないか」
そう悩み、考え、実践することが問われる仕事をしているので、数多くの仕事術本を読んできた。その中でも、最も影響を受けた、学びが多かった本は何かと聞かれたら、迷わず『松浦弥太郎の仕事術』を選ぶだろう。
僕が『松浦弥太郎の仕事術』を手に取ったのは、2012年。当時27歳だった僕は、フリーランサーとして音楽に関する仕事をしていつつも、実はニートと紙一重。自分の暮らしやキャリアを肯定的に見つめることができず、目標も失いかけている時期だった。いわば、頑張って山登りをしてきたのに、つまづいて滑り落ちて、麓まで戻ってきちゃった。そんな感じ。
そんなときに出会ったこの本は、僕の再出発に重要なインプットとなった。本を読み進めていくうちに、僕は自分自身へのこんな問いに次々とぶつかった。
・そもそもなぜ、いい仕事をしなければいけないのか?
・いい仕事をするために必要なこととは?
そんなブレストをしながら、じっくり読んだ。すると、自分と社会のつなげ方や、自己満足だけでなく周りの人々をも幸せにする仕事のつくり方が、どんどん分かってきたのである。
『松浦弥太郎の仕事術』に出会った数か月後、僕はNPO法人グリーンズに転職。
グリーンズはリモートワークベースのチームだが、かつてフリーランサーだった頃の自分と比べれば、遥かに人と関わる職場だ。その、人とのつながりを大事にする働き方に移行する手助けをしてくれた本が、まさに『松浦弥太郎の仕事術』だったといえるし、仕事上・私生活上なにかトラブルが起きても、双方への影響を最小限にとどめるマネージメントなんかも、この本が教えてくれたことと言えよう。
松浦弥太郎は、この本の最後に
仕事において、暮らしにおいて、いつでもどんなときでも、自分に幸せを運んできてくれるのは、助けてくれるのは、人であることを忘れてはいけません。
と書いている。
働き方が多様化し、ひとりひとりの仕事に向き合うマインドセットが求められる社会になっている一方で、自分自身・自分の仕事・他者との関係に心から満足できているだろうか? 「私の仕事は、こんなにイケてるんだよ!」と友人に自慢できているだろうか?
もしこの問いに、少しでも胸につかえるものがあるのなら、ぜひこの本を読んでみてほしい。きっと、「みなさんの生活を美しくし、それを仕事にフィードバックしていく」という本来あるべき、人間と仕事の関係を取り戻すことができるから。
– INFORMATION –
著: 松浦弥太郎
文庫: 248ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2012/7/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4022617314
ISBN-13: 978-4022617316
発売日: 2012/7/6
https://www.amazon.co.jp/dp/4022617314/
– INFORMATION –
月間30万人が訪れるgreenz.jpの副編集長スズキコウタによる「グリーンズ作文の学校」。greenz.jpに掲載する全記事の校正に関わる副編集長と、編集デスク・向晴香が講師をつとめる本ゼミクラスは、前期は即満員御礼の人気ぶり。この度、満を持して第3期の申し込みをスタートします!
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