突然ですが、みなさんは“Book deserts”という言葉を知っていますか?
新鮮な食料品が不足している貧困地域を“Food deserts「食の砂漠」”と表現することから派生して、「本の砂漠」、つまり図書館が近くになく、本などの読み物に触れることが困難な環境のことを表しています。
このような”Book deserts”を解決するために、今日は「人々に広く本に触れてもらいたい!」とシアトルで行われている取り組み「Books on Bikes」を紹介します。
「あなたの図書館! 貸出制限はなし!」こんなのぼりを立てたトレーラーをひいて、自転車に乗ってやってきたのは、なんとシアトル公立図書館の司書さん!
この自転車図書館は、地域のマーケットやお祭りなどの様々な屋外イベントに登場しています。自転車に乗った司書さんは、それぞれのイベントにふさわしい本を自ら厳選して運んでいるそう。
多様なコミュニティの要望に応える形で、このプログラムのコレクションは400タイトルにも及び、ジャンルもベストセラーから、小説、ノンフィクション、子どもや十代向けのもの本までさまざま! また、本を貸し出すだけではなく、本にまつわるお話会や物語を聞かせることもあるといいます。
さらにこの巡回図書館、驚いたことに、Wi-Fiも常備しています。そのおかげで、司書さんは訪問者に電子書籍へのアクセスの仕方を教えたり、新しい利用者の登録を行ったり、またどの場所で本が借りられたのか簡単に管理することができるのです。
「Books on Bikes」が始まったのは、2013年5月のこと。「シアトル公立図書館発の、革新的な地域奉仕活動をつくろう!」というキャンペーンの中で生まれたといいます。
これまでにも、家を飛び出した子どもを保護する場所に図書館を登録したり、ホームレスに仕事を与えるなど、「全ての人に開かれた図書館」を目指して、地域の課題を引き受けてきたのだそう。
このプログラムの指揮をとっている、Jared Millsさん(以下、ジャレドさん)はこう話します。
このプロジェクトのゴールは、シアトル公立図書館のサービスを図書館の建物の外に広げて、市内の多様なコミュニティへ届けることです。
私たちが自転車を利用している理由は、エコで持続可能で、かつシアトルの文化を象徴しているから。このプログラムは図書館が地域の一部として、こんなにもアクティブに活動できる、ということを示しているのです。
ジャレドさんら、シアトル公立図書館のメンバー
ちなみに、「本の砂漠」を解決するための取り組みは、アメリカ内で他にも、ワシントン発の本の自動販売機を設置する取り組み「Soar with Reading」や、サンフランシスコの寄付ベースの自転車図書館「Bibliobicicleta」などがあります。しかし、公立の図書館が始めたのは、めずらしい例といえそう。
本にまつわる話をしたり、電子書籍へのアクセスの仕方を教えるなど、ただ本を届けるだけではない「Books on Bikes」の活動は、コミュニティの知識レベルの向上にも役立っているのかもしれません。
みなさんも、本が手に入らない場所にいる人のために、どんなことができるか考えてみませんか。
[via GOOD, The Seattle Public Library, LIBRARY JOURNAL, REAL CHANGE, seattle.gov]
(Text: 高橋尚子)