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私たちはこれからどこに行くの?『ソウル・オブ・マネー』著者リン・ツイストさんとすごす「チェンジ・ザ・ドリーム シンポジウム」 [イベントレポート]

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リン・ツイストさん

あなたは、環境問題や飢餓問題などが山積みの世界を思うとき、その先の未来に、どのような夢を抱くことができますか。解決が困難に見える状況でも、希望に満ちた未来にむかってステップをふみ出せるように…その手助けとなるきっかけとして「リン・ツイストのチェンジ・ザ・ドリームシンポジウム~未来からのラブレター~」が行われました。今回はその様子をお伝えします。

チェンジ・ザ・ドリームシンポジウム」は、様々な科学的データ、専門家へのインタビュー、心に残る映像を見ながら、参加者同士が対話をし、実際に一人ひとりが自分なりの答えを見つけていく参加型プログラムです。

現在は世界80カ国で展開され、日本では「NPO法人セブン・ジェネレーションズ」が主催し、2009年以降2,000人以上が参加してきました。今回は、シンポジウム発案者で国際NPO「パチャママ・アライアンス」共同創設者のLynne Twist(以下、リンさん)を迎えての開催となります。
 
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お金との新しい関係を伝える社会活動家リン・ツイストさん

リンさんは30年以上に渡り、飢餓や自然破壊、人種差別などのための慈善活動やファンドレイジング(資金調達)に従事してきたことで知られる社会活動家です。2004年に刊行された、現代人の“お金との関係”を問い直した『ソウル・オブ・マネー』の著者としても知られています。
 

TEDxWallStreetでのプレゼンテーション。私たちとお金との「複雑でゆがんだ、未熟な関係」が現代社会のさまざまな問題を引き起こしていると指摘しています

監訳・翻訳をした牧野内大史さんも、当日は参加者として会場に。

お金を、豊かさのためにたくさん手に入れようとしたり、逆になくても幸せと言ったりする本とは別次元の話。実際に世界中の人に話を聞き活動しているリンが提唱する、新しい価値観を日本にも紹介したい。

という思いの出版だったそうです。
 
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日本では昨年発刊されました。

目的は、持続可能な環境・公正な社会・充足した精神の実現

シンポジウムは、リンさんとセブン・ジェネレーションズの創設者である榎本英剛さんの2名がファシリテーターとして進行。リンさんの英語は、彼女の想いをそのまま表すような豊かな日本語で会場に通訳されます。

最初に、このシンポジウムの目的が伝えられました。

世界中の人が、環境的に持続可能で、社会的に公正で、精神的にも充足した生き方を実現すること。そんな社会を目指す“目覚めた世界市民”を増やしつないでいくこと。

参加者は、このあと1日かけて、世界で起きている問題と地球の未来や自分の行動について、“環境”と“社会”と“精神”の3つの側面から考えていきました。

4つの問いを探求する参加型ワークショップ

プログラムは、次の4つの問いに取り組みながら進みます。

1. 「私たちは今どこにいるのか?」
2. 「私たちはどうやってここまで来たのか?」
3. 「未来にどんな可能性があるのか?」
4. 「私たちはこれからどこに行くのか?」

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リン・ツイストさん(左)と榎本英剛さん(右)

基本的にそれぞれのテーマに会わせた数分間の映像を見ながら、頭ではなく、心の深いところで感じたことを、近くの人たちとシェアをしていきます。

映像には環境や政治、自然科学を始めとする、たくさんの専門家が出てきて話すシーンがありました。さらに、データなどで、世界の現状が説得力をもって伝えられます。
 
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1984年にノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ氏

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科学者や哲学者、宗教家など、様々な専門家の声や、データによる画像を見ながらワークショップが進みます。

ひとつ目の問い:私たちは今どこにいるのか?

まず最初の問いでは、絶滅が危惧される動物や資源の枯渇の問題から、現代の社会や環境がどのような「危機」に直面しているのかが示されました。榎本さんやリンの話もつづきます。

私たちが見るものすべて、マイク、椅子… などのすべてが地球にあるものからつくられています。しかし、私たちは、地球で再生できる以上のものを使ってしまっているのです。アメリカでは地球5個分、日本では地球2.4個分を消費しています。

このプログラムも、そんな現状に危惧を感じたアマゾンの先住民「アチュア族」からの呼びかけに応えてつくられました。彼らは、先進国の人々が誤った「夢」を見ていると考えています。それは「消費しなければいけない」という思いこみのことです。

このような事実に対してどのように感じるか、ペアやグループでシェアし合います。この時点では、参加者の多くが重い気持ちを感じたようでした。
 
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舞台上には、アチュア族の“祭壇”が。

ふたつめの問い:私たちはどうやってここまで来たのか?

次のステップでは、先ほど指摘された「思いこみ」について、具体的なエピソードを話し合います。「技術は進歩しなければいけない」「お金はたくさんあった方がいい」「そのうちなんとかなる」「自分のせいではない」「人や政府がなんとかしてくれる」など…互いの発言に納得の声があがり、思いこみに気づくと、新しい選択肢が見えてくることを体感していきました。
 
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思いを話して共有しあったりなどの参加型のシンポジウム。今回のリンさんの来日イベントとしても、最大規模のものでした。

そして、「究極の思いこみ」として告げられたのは、「We are separated.(私たちはひとりひとりバラバラの存在である)」というもの。

私たちは本来つながっていて、“相互依存”した存在です。私たちは大地の一部でもあるので、大地にすることは自分自身にすることと同じなのです。

そして、“誤った夢”を変えることで危機を脱し、未来をよりよいものに変えていけることが、この段階で伝えられました。

みっつめの問い:未来にどんな可能性があるのか?

続いては、世界で起きている様々な変化の兆しが紹介されていきます。非暴力を貫いたインドの活動家ガンディーや、チベットの最高位僧であるダライ・ラマ、インターネットを通じて世界中の人がつながっての活動例の映像も流されました。

これらを見ながらリンさんは、「大転換が起きている」と強調します。

起きている問題に意識を向けると、解決できるのだろうかと不安になります。でも大きな変化はある日突然、外に現れてくるのです。それまでに大切なのは、現れつつある小さな変化に目をむけていくことなのです。

希望に満ちたメッセージに、参加していた多くのみなさんの表情も明るくなったように見えました。

よっつめの問い:私たちはこれからどこに行くのか?

そして最後の問い。これが一番重要だと、リンさんは会場に語りかけます。

人はみな、何らかの役割をもっています。優劣ではなく、その人らしい役割です。

けして強制するものではない、しかし、夢みる未来のために信念をもって立ち上がることが未来の私たちにつながると、リンさんも榎本さんも笑顔で訴えました。

参加者は、ひとりひとりの人がそれぞれの方法で変化を起こした後の未来を思い描き、そのためにいま実行できる行動を具体的に思い描きながら、シンポジウムは終了しました。
 
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最後に、参加者ひとりひとりに先住民の方々によってつくられた色とりどりのブレスレットがプレゼント。参加者同士で思いをこめてつけあいました。

今回の来日のフィナーレ。「心が洗われた」

リンさんは今回、10日ほど日本に滞在しました。非公式のものも含めて一日に2〜3のイベントをこなす過密スケジュールで、このシンポジウムは来日最終日を飾るフィナーレ。翌日に帰国を控えたリンさんに感想をお聞きすると、第一声として「心が洗われる想い」という意味の”refreshing”という言葉が出てきました。

このようなイベントでは、私の伝えるメッセージに対して皮肉な態度を受けることもあります。しかし、今日の参加者のみなさんはみなが心を開き、熱心に気持ちを傾けてくれました。内容が心と魂に届いたと感じますし、私自身が栄養をもらったのです。どこでも経験できることではありません。

と、疲れも出ていたはずの控え室で、リンさんは「お世辞ではない」とつけ加え、語ってくれました。
 
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シンポジウムの最後は『HAPPY』の曲でダンス。笑顔で踊るリンさんを中心に、参加者みなでリズムに乗って楽しみました。

ちなみに今回のシンポジウムでは、同時に子どものためのプログラムも開催され、親子で参加することもできたのも大切なポイントです。子ども対象のプログラムは日本独自のアイデアで、リンさんも「アメリカに持って帰りたい」と賛同していた様子。
 
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同時開催の子ども向けプログラムで描かれた「未来の地球」。地球がハートに包まれた絵も。

最後に読者のみなさんへ、リンさんからのメッセージをお届けします。

私はみなさんのように、環境的に持続可能で、社会的に公正で、精神的に充足した社会をこの地球に実現するとコミットした人たちの動きの中にいます。なんて素晴らしい時期に生きているんでしょう!

歴史の中で、どの他の世代も、今のように意味のある人生を送る機会と挑戦に向き合った世代はありません。おめでとう。そして、ありがとう。

プログラムの根底には、アチュア族のいう「現代人の夢」つまり、「誤ったお金とのつきあい方」が、今日の社会問題を産んでいるという考え方があります。あなたも、自分が何か誤った夢にとらわれていないか、立ち止まって考えてみませんか。