ISSUE☆連載 イロンナセナカ

2 years ago - 2014.06.08

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大ゲンカの後に発行した、たったひとりに届く「初めての子育てメールマガジン」の話 by 兼松佳宏(greenz.jp編集長)

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生まれたばかりの娘と

コラム特集「イロンナセナカ」は、「オトナノセナカ」とのコラボレーション企画です。毎回さまざまな方にコラムを書いていただくことで、”自分たちらしい家族のかたち”を考えるヒントをお届けしたいと思います。今回はgreenz.jp編集長の兼松佳宏さんです。

たったひとりのために、「初めての子育てメールマガジン第一号」を発行したのは、2013年の元旦だった。大晦日に、妻の真紀ちゃんと大きなケンカをして、自分でも思うところがあってそうすることにした。妊娠21週目、予定日まで130日。

ケンカの原因は大抵、自分にも非があることがわかっているのに、それを認めたくないという些細なプライドからだったりする。出産まであと5ヶ月ながら、翌月には鹿児島への引っ越しやグリーンズのリニューアルも控えていて、うん、すごくバタバタしていたんだと思う。そういえば『日本をソーシャルデザインする』を進めていたのもこの頃。

だからといって、出産の準備を人まかせにしてもいい、というわけではない。でも、あまりにも未体験ゾーンすぎて、なかなか”自分ごと”にならなかった。真紀ちゃんもイライラしていたと思うけど、何より僕自身もどかしさがある。いったい何から手を付ければいいのだろうか。

ロンパースとコンビ肌着の違いも、ベビーカーのA型とB型の違いも、うまく説明できない。スタイもハイローチェアもおむつ用のゴミ箱も、何が、どのタイミングで必要なのかわからなかった。買うときは揚々だった子育て本は、やがて積ん読となり、出産の準備を最優先にしたいはずなのに後手に回るばかり。このままではいけない…

そこで僕は、出産を”自分ごと”にするために、メルマガを創刊することにした。それは編集を仕事としている僕にとって、すぐはじめられることだったし、楽しく続けられそうだと思ったから。隔週の発行と決めたし、コンテンツを集めなくては。ようやく僕は積ん読していた本を手に取り、自分から調べ物をするようになる。
 
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1980年の頃の僕。娘とそっくり

メルマガの内容はとってもシンプルで、「両親学級、予約しなきゃ!」みたいなインフォメーションや「最近、ミニちゃんにどんな話をしてる?」といったアンケートなど。そしてメイン企画となったのが、「お父さんになるということコラム」だった。

実はこのとき、正直に言って、「お父さんになるということ」に実感なんてなかった。だからこそ、「浮かんでは消えて行く言葉を丁寧につかまえて、残してゆきたい」(第一号より)と思ったのだ。少し恥ずかしいけれど、ここでちょっとだけ振り返ってみようっと。

いっぱい話がしたいし、いっぱいしりとりもしたい。
いっぱい音を奏でたいし、いっぱい物語もつくりたい。

ー 第二号より 予定日まで123日

いいお父さんになれるかどうかは、
そんな親から教えてもらったことを大切に扱い、
家族としっかり向きあった先にわかることだろう。

ー 第五号より 予定日まで88日

親としてできることは、何だろう。
その初めての判断のひとつひとつに、
より大きな自分を発見する。

ー 第十号より 予定日まで38日

きっと、これからもずっと、
現実的な緊張感とともに生きていくんだと思う。
それが親というもの、なのかもしれない。

ー 第十二号より 予定日まで15日

想像以上に大きな宇宙が、あなたをウェルカムしている。
僕たちのために、最高のタイミングを星々が探っている。

コトコトと味噌汁をつくりながら、
カタカタとミシンで縫いながら。

美しい光の流れに身をまかせながら、
愛すべき守り人たちにしっかりと守られながら。

いよいよ、その時を、
ともに、待ちましょう。

ー 第十三号より 予定日まで9日

こんなに複雑な思いが幾層にも重なるのは、
そうはないことだと思うから、
一生モノとして記憶しておこうと思う。
頭も体も心も、普段とは違う生理を見せる。

そういえば日本では、
「果報は寝て待て」という言い回しがあった。

僕が最近ひたすらに眠いのは、
身体が覚えている昔ながらの知恵とか、
きっとそういうことなのかもしれません。

ー 第十四号より 予定日まで3日

そして2013年5月10日、牡牛座の新月の日に娘が生まれた。真紀ちゃんはお母さんに、僕はお父さんになった。ひとりからふたり、ふたりから三人になった。
 
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次の日の、晴れ間

いまこうして振り返ってみると、本当に言葉があふれていた時期なのだろうと思う。まだ一年前の話なのに、随分遠くまで来たものだ。もちろんそこで物語は終わるのではなく、未知なる旅路は今なお続いている。

この一年だって、抱っこでの寝かしつけも、離乳食をあげることも、なかなか”自分ごと”にはならなかった。アタマではわかっていることも、なかなかカラダでは追いつかず。真紀ちゃんが体調を崩してしまったり、ある意味やむを得ない事態のおかげで、自分が勝手に拵えていたハードルをジャンプしていき、新しい習慣が身になっていった感じ。

そうやってたくさん失敗して、たくさん怒られながら、たくさんのケンカとたくさんの対話を重ねながら。でもその合間には、本当に至福のサプライズが訪れることがある。先日は西日を受けながら、娘が真紀ちゃんの頬にキスをした。今日はエレベーターのなかで、「ほっぺたピンポン」という新競技が生まれた。

出産後の一年はいろいろありすぎて、メルマガを発行する余裕もなくなってしまったけれど、そんな毎日のなかで浮かんでは消えて行く言葉を、これからも残してゆくといいんだろうな。「お父さんになったということコラム」を、そろそろ再開してもいいのかもしれない。

特に男性のみなさんへ。
あなたならどうやって、妊娠を”自分ごと”に変えますか?

と、長くなってしまいましたが、ここでお伝えしたかったのは、出産も子育ても、多くの人にとって未体験だからこそ、さまざまな葛藤があるのは仕方ない、ということ。そして、それを乗り越えるために、特に男性にとって、いろいろな工夫が必要なのだろうな、ということです。

僕にとってそれがメールマガジンやコラムであっただけで、あなたにとってそれは、また違った表現になるはず。あなたならどんな風に、しかも自分の得意をいかして、大切なパートナーの妊娠を”自分ごと”に変えますか?

このコラムをきっかけに、一度立ち止まって、考えてみる時間をとっていただけたら嬉しいです。

兼松佳宏
greenz.jp編集長

 
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5月で一歳になりました

オトナノセナカよりメッセージ

こんにちは。オトナノセナカ代表の、メグです。

私はたくさんの家族に出会い、「普通の家族」などないのだと知りました。家族によって本当に様々な、喜怒哀楽。エピソード。葛藤。保育士として、色々な方からお話を聞きながら、「私一人で聞くのはもったいないなあ」と思っていました。

なぜなら、こどもについては相談できても、夫婦や家族のことは、人になかなか言いづらいもの。知りたくても、なかなか他がどうしているのか聞く機会がありません。そこで生まれたのが、プライベートをチラッとのぞける、リアルが詰まった今回のコラムシリーズです。

正論ばかりを言うのではなく、人間らしい、多様な夫婦のかたち・家族のかたちに触れることが出来ます。今を生きる、ママ・パパ。そして、いつか家族をつくる未来のパパ・ママがコラムを読み、概念を手放して、自分たちらしい家族のかたちを築いていくお手伝いができたらと願います。

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writer ライターリスト

YOSH

YOSH

greenz シニアエディター/NPO法人グリーンズ理事 1979年生まれの勉強家 兼 お父さん。2004年よりウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。 CSRコンサルティング企業に転職後、2006年クリエイティブディレクターとして独立し、ウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わる。2010年より編集長。秋田市出身、京都市在住。一児の父。 2016年より京都精華大学人文学部の特任講師として、「ソーシャルデザイン・プログラム(社会創造演習)」を担当予定。

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オトナノセナカは 《コドモの隣のオトナ》を応援するNPOです。自分らしく生きるオトナが増えることを願い、 自分や人の価値観に出逢う 対話の時間をお届けします。 人はみんな 「違い」をもらって生まれてきました。問いに向き合い 語り合うことで、 その「違い」に気づき 自分にとってより良い選択へと 繋がっていきます。対話の時間を通して楽しく、 「持続可能な」かぞく・こそだて・ほいくづくりを、してみませんか? ⇒ 特集「こそだて寺子屋」オトナノセナカ×グリーンズ対談!オトナノセナカ

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