ISSUE☆連載 ハローライフなひとびと

3 years ago - 2013.09.05

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週2日は会社員、週3日は社長!「まちづくり会社ドラマチック」の今村ひろゆきさんが選んだユニークな働き方とは? [企業内起業家論]

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身の回りのちょっとした課題を解決する、自分発信の「マイプロジェクト」。最近、会社の仕事以外にマイプロジェクトを持つ方が増えています。ただ、仕事が忙しくなって手が回らなくなり、思い切って会社を辞めてしまおうか…と悩んでいる方もいるようです。

でも、「辞める」のではなく、会社で働く日数を「減らす」という選択肢があったらいいと思いませんか?

まちづくり会社ドラマチック」代表の今村ひろゆきさんは、街中の利用されていない空間を間借りするサービス「Ma Ga Ri」や浅草のシェアスペース「LwP asakusa」など、“場”を活用して地域を盛り上げる活動を次々と手がけている方です。greenz.jpでも何度か紹介し、大きな反響を呼びました。

実は今村さん、町や施設の開発プロデュースを行う「株式会社エナジーラボ」の社員でもあります。週2日はエナジーラボの会社員、週3日はドラマチックの社長、という一風変わった働き方ですが、両方の組織にとって良い影響があるのだそう。なぜこの働き方を始めたのか、どうやって仕事を回しているのか?気になるところを今村さんに教えていただきました。

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「自分の働き方が参考になれば」と取材を受けてくれた今村さん

もっと深くまちの人と関わりたい

今村さんは1982年生まれの31歳。新卒で富士通に入社しましたが、得意の企画力をまちづくりに活かしたいと考え、エナジーラボに転職しました。

不動産会社に対して施設や空間を活用する企画を提案、実行する仕事です。規模の大きな仕事ができるし、外部で面白い活動をしている人たちともコラボレーションできるので、とてもやりがいを感じていました。でも、一方で物足りなさもあったんです。

広い意味でのまちづくりには関わるものの、クライアントは企業の重役たち。そこで実際に暮らすまちの人々と接することはあまりありません。それに、仕事の規模が大きい分、実現にも時間がかかります。もっとまちの人と関わりながら、企画を形にしていきたい。今村さんは自分の理想とするまちづくりのプロジェクトを進めることを考え始めました。

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 でも、仕事は何日も徹夜が続くほど忙しく、そんな余力はありませんでした。辞めるという選択肢も考えましたが、この会社の仕事も好きだし、ここにいるからこそできる仕事もあります。だから、月1で行われる社長との個人面談で、「出勤日を減らしたい」と提案したんです。

エナジーラボは大企業と開発を行う、ぼくは周辺のお店と一緒にまちを盛り上げていく。そこでぼくが力をつけたら、いつかコラボレーションできるかもしれない。両方からアプローチをしたらエリアのブランディングもできて、面白くなりますよね。そうプレゼンしました。

今村さんの話に社長も賛同。最初は週4日勤務からスタートし、慣れてきたら少しずつ出勤日を減らすことになりました。

“まちづくり”に対して両方向からアプローチする

そうして空いた時間を使って、今村さんは以前から温めていた「Ma Ga Ri」と「LwP asakusa」の企画を進め、2010年に10月にサービスを開始しました。

約5か月で立ち上げたんですが、その間はすごく忙しかったし、不安もありました。周りに「儲からないから辞めた方がいいよ」と言われたり、貯金が少しずつ減っていったり。奥さんに「ほんとに大丈夫なの?」って言われて、「大丈夫だよ」と応えつつ内心では焦っていました(笑)。

でも、iSB公共未来塾のビジネスコンペに出てみたら、「Ma Ga Ri」が優秀賞をもらえたんです。それですごく勇気をもらって。サービスを開始すると事業収入もちゃんと出て、助成金ももらえて、減った分を補うことができました。

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「こんな面白いスペースがあるんだ!」という発見がある「Ma Ga Ri」のサイト

新しい事業の立ち上げには時間がかかるし、不測の事態も起こるもの。会社を完全に辞めてしまうと、金銭面では大きなリスクを負うことになります。今村さんのように会社を続けながら起業準備をすることは、リスクヘッジにつながります。

半農半Xという生活スタイルがあるでしょう。農業をして自分や家族が食べられる分の食料を確保しながら、心置きなくX(天職)を行うというものです。

でも、これは田舎だからできるんですよね。都市は家賃を始めとする生活コストが高いから難しい。だから、都市でX…自分の進めたいプロジェクトに挑戦するなら、どこかで一定の収入を得てセーフティーネットを築きながらやるのがいいんじゃないかと思います。

今村さんの場合はそれがエナジーラボでの仕事でした。“まちづくり”という分野は同じですが、アプローチは別方向。2倍の学びが得られそうです。

エナジーラボでは最近のビジネストレンドやビジネスモデルの情報が、ドラマチックでは都市の課題や街の人の共感を得ながら進めるプロジェクトなどの情報が入ってくるんです。両者をミックスして考えると、課題を解決しつつ、ビジネスとしても成り立つ面白いアイディアが浮かんだりしますね。

都市開発を行う企業の文化と古くからの商店街の文化とは、普通あまり交わらないもの。今村さんが媒介となって、お互いの価値観や求めているものを知ることができるーーそんなプラスの影響もあるに違いません。

相乗効果はたくさん生まれているんですよ。エナジーラボでフューチャーセンターの運営をするときに、ドラマチックで出会った面白い人をゲストとして呼んだり。エナジーラボも価値を感じてくれているのではないでしょうか。

逆に、エナジーラボで培った相手に伝わるプレゼンの仕方、資料作りはドラマチックの仕事にも活きています。街で活動する個人や団体って、誰でも理解しやすい資料や収支計画などをそんなにつくり込んでいないところも多いんですよ。だから、そういうことをちゃんとやっていると、相手から信頼してもらえます。

フューチャーセンターでのトークイベント フューチャーセンターでのトークイベント

ドラマチックはこの3年間で、クリエイターの共同アトリエ「インストールの途中だビル」、浅草ものづくりフェスティバル「A-ROUND」など、ユニークな企画を次々発表してきました。

最近では地域の人から「一緒にこんなことをやりませんか」と声をかけられたことから発展し、インストールの途中だビルのクリエイターと商店街によるマチの文化祭「中延EXPO」を10月に開催することも決まったのだとか。今村さんの描いていた理想のまちづくりは、着実に形になっています。

会社の仕事・自分の仕事と切り分けず、全て自分ごととして取り組む

「いまの働き方がとても気に入っている」と話す今村さんですが、こうして良いスパイラルを生み出すには、努力や工夫が欠かせません。

エナジーラボの仕事がルーティンワークだったら決められた曜日に出勤すれば済みますが、プロジェクトを動かしていく仕事はそういう訳にはいきません。浅草にいるときもエナジーラボの取引先から電話がかかってくれば対応するし、メールが入れば返信します。取引先から見たらフルタイムで働いているように仕事を進めているそうです。

ぼくにとっては、いくつかあるプロジェクトのうちのひとつをエナジーラボの社員として進めているという感覚なんです。「会社の仕事」「自分の仕事」と切り分けてはいませんね。

でも、トラブルがあったときは大変です。予定していた出勤日を急遽変更してもらうこともありました。「いや、今日は出勤してもらわなくちゃ困る」と言われて焦って、「じゃあ16時までにこっちを終わらせて、それから出勤します」となんとか調整したり。調整能力が上がりました(笑)

急に問題が起こっても対応できるよう、今村さんは普段からエナジーラボの仕事をできるだけ早めに進め、こまめに報告するよう心がけているのだそう。いくつものプロジェクトを掛け持ちしながら仕事を前倒しするのは至難の業に見えますが、何か秘訣があるのでしょうか。

「2:8の法則」ってありますけど、全体の中の2割を抑えれば、あとの8割もできているように見えるんです。たとえば資料作成でいうと、大枠と重要なポイントはきちんと抑えて、まだデータが揃ってないところに「ここには写真を入れます」「ここには説明が入ります」と説明を書いておく。

1から順を追って細かく作っていると、上司から「資料できてる?」と聞かれたときに5までできていても全体像がわからないから見せられないでしょう。最初に大枠を作っておけばそれを見せることができるし、「あ、もうここを埋めるだけでほとんどできてるんだね」と安心してもらえます。

上司は部下の仕事の進捗状況がわからないと不安になるもの。離れたところで仕事をしていれば尚更です。周囲に余計なストレスをかけないよう、今村さんは小さな気配りを重ねています。

いまの会社にいながら、できることを探す

¥4_AROUND2 たくさんの人で賑わったA-ROUND

今村さんのような働き方をしてみたい。そう考える人はたくさんいると思うのですが、実現するにはどうすればいいのでしょうか。

まず、会社にこうした働き方を受け入れてもらうには、普段からコミュニケーションをとっていることが大事だと思います。ぼくは以前から社長に対して「いま世の中ではこんなことが話題になっていて、こんな人と出会って…」と企業では実現しづらいプロジェクトや多様な働き方の話をしていました。

たとえば、月3万円の仕事を10個つくるという「ナリワイ」の伊藤さんの考え方とかシブヤ大学とか。だからぼくの提案も受け入れてもらえたのかもしれないと思います。

それと、相手のメリットをきちんと説明すること。ドラマチックの事業を行うことで培った経験や知識、人脈はエナジーラボでも活かすことができる。そう説明し、納得してもらいました。

それまでも今村さんは、会社の外で出会った人をプロジェクトに引き込み、良い結果を生み出していたそう。実績があると、提案にも説得力が出ますね。

「大きな会社と仕事をしたいけど、信頼やネットワークがない」と悩んでいるフリーランスっていっぱいいるんですよ。もし「社内に面白い人がいない」と思っている方がいたら、外部の面白い人を巻き込むよう自社にプレゼンすることをおすすめします。会社にも自分にも良い刺激になるし、フリーランスの人にも喜ばれるし、みんなが嬉しい。そういう、「会社を辞めずにできること」っていっぱいあると思います。

面白い人が会社の垣根を越えて集まり、プロジェクトを進めていくことが加速している時代。いまはまだ珍しい今村さんの働き方も、そのうち一般的になるのではないでしょうか。

会社にとっても、絶対プラスになると思います。だって、起業したり独立したりすると、全体を見るようになるでしょう。利益が出ないと生活できないから、売上とコストの関係など、今までよりも真剣に考えるようになる。商人魂がつくんですよ。そういう意識を持って会社に戻るということは、社長のマインドを持った人が増えるということ。研修を受けるよりもずっと効果的だと思います。

楽しく働く社会人が増えて、会社の組織力も上がる。働き方が多様になった先に待っているのは、そんな未来かもしれません。そう思うと、なんだかわくわくしてきますね。

活かす、つなぐ、しかもドラマチックに
まちづくり会社ドラマチック

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hidaemi

hidaemi

greenz.jpエディター/ライター 1984年2月29日生まれ。茨城出身、神奈川在住。 「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としています。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。 HP:http://www.cotohogu.com/ blog:http://himaemi.blog.jp/ twitter:@emi229「東北マニュファクチュール・ストーリー」というサイトを、一般社団法人つむぎやと一緒に運営しています。 ・日本橋のシェアオフィスにて、気ままなごはん会「6階食堂パルプンテ」を開催。日によって美味しさにばらつきがある、適当な会です。

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社会的課題解決に向けたクリエイトに挑戦し続けるNPO法人スマスタが運営する、新しいワークプレイスです。 カフェにライブラリー、イベントスペースを併設、ワークサポートまで受けられる、「仕事」の情報発信基地。 ハロー”ワーク”ではなくハロー”ライフ”とあるように、「しあわせを感じながら働く人がたくさん生まれるように」という想いが込められたこの場所。 切っても切り離せない「仕事と暮らし」の中から見えてくる、今の時代だからこその、そしてこれからの「新しい働き方と暮らし方」を、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。 NPO法人スマイルスタイル http://smilestyle.jp あなたの人生にいい予感を運ぶ、仕事ライブラリー「ハローライフ」 http://hellolife.jp/特集「ハローライフなひとびと」

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