ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

3 years ago - 2013.08.26

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大自然のなかで次世代のリーダーを育むワークショップ「Art of Social Innovation」を応援!山本真さんインタビュー [READYFOR?]

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

山梨県を拠点にワークショップデザイナーや地域コーディネーターとして活動している山本真さん。そんな山本さんが、現在力を入れて取り組んでいるワークショップが、自らの手で未来を創造する若手コミュニティリーダーを育成する「Art of Social Innovation−新しい未来をつくる3日間」です。

Art of Social Innovationは、社会課題に取り組む若者たちが、全国から集まり、地域と分野を超えて、普段は中々話せないような想いやアイディアを語り合い、つながりとコラボレーションが生まれるワークショップです。山梨の清里高原を舞台に2011年5月から計5回開催され、これまで約450名が参加しました。

第1回Art of Social Innovationからは、NPO法人ブラストビートの松浦貴昌代表と、郡山市の「ソーシャルネットワーキングカフェぴーなっつ」参加者との恊働プロジェクトがはじまるなど、さまざまな分野で活躍するリーダー&プロジェクトを輩出。実はグリーンズメンバーもたびたび参加し、greenz.jpの今までを振り返り、今後のことを考えるための絶好の機会として活用しています。

「参加者に金銭的な負担をかけないようにプログラムを提供したい」と語る山本さん。このプロジェクトがどのように生まれたのか、そして、プロジェクトに込めた想いについて、山本さんにうかがいました。

都会の子どもたちが自然に触れる機会を

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山本真さん

山本さんは2012年12月に独立するまで約25年ほど、山梨県の清里で、環境教育やリーダー育成などに取り組んでいる公益財団法人キープ協会に勤務していました。山本さんの仕事のルーツを探ると「環境」というキーワードに突き当たります。

山本さんが大学を卒業して東京で最初に就職したのは1980年代半ばを過ぎた頃のこと。当時、日本はいわゆるバブルの時代。世の中の大きな流れとして、好景気を支える大量生産と大量消費が礼賛される機運がありました。

ただ、ゴルフ場の開発などが活発になれば、その一方で必ずそれに対する反発が起こるものです。大規模な開発が報じられると、それに合わせて環境保護への声も大きくなりました。私も「このままでは地球がおかしなことになってしまう」と心配する立場でした。

そのような視点から、山本さんは子どもたちに体験を通じて自然学習を教える教育系の企業に就職。しかし、その会社は2年ほどで退社することになりました。

東京の子どもたちにも自然に触れる機会を作りたいと思っていたのですが、バブルという背景もあり授業料がどんどん高くなってしまったんです。だんだんお金持ちの子どもしか受けられない授業になってしまったんですね。企業として利益を求めなくてはならないので、それは仕方のないことなのですが、私にはどうも違和感があったのです。

清里の自然に囲まれたおおらかなキープ協会

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教育系の企業を辞めた山本さんが新たな職場として選んだ場所、そこが財団法人キープ協会(現在は公益財団法人キープ協会)でした。

最初に入社した教育系の企業は、東京の教室で子供たちに自然環境の授業を開くだけでなく、夏休み野外合宿も行っていてキープ協会の宿泊施設を利用したことがありました。また、キープ協会主催のエコロジーキャンプ等に参加していたご縁で、キープ協会の創立50周年を記念するポール・ラッシュ祭にも参加することになり、私はキープ協会のある山梨県の清里に向かったのです。

キープ協会とは、Kiyosato Education Experiment Project(清里教育実験計画)という単語それぞれ頭文字を束ねて名づけられました。発足は1938年で、当時、立教大学で経済学を教えていた米国人ポール・ラッシュが、キリスト教の指導者育成キャンプ場として建設した清泉寮を母体にしてつくりあげたものです。

ポール・ラッシュは、やがて来る日本の敗戦をすでに予想しており、「戦後の復興を地方の農村部からはじめる」という構想のもと、キープ協会を設立するにいたりました。海外から農業器具を取り寄せたり、農場をつくったり、宿泊施設をつくったり、その取り組みは当時、大きな注目を集めました。

みんなで作り上げたことだから、大きな感動があった

清里でポール・ラッシュ祭の手伝いをしたり、あるいはキープ協会が主催するリーダー向けのトレーニングキャンプに参加したりするうちに、山本さんは次第にキープ協会に強く興味を惹かれるようになりました。そして、東京の会社で感じていた違和感から距離を置く意味でも、新天地を求めるにいたったのです。

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キープ協会の方に、「なにかお手伝いできることがあれば、気軽に声をかけてくださいね」とお伝えしておいたら、そのうちキープ協会で働くようになりました。

ポール・ラッシュ祭ではピアノの演奏会などさまざまな企画が行われたのですが、実はイベントは失敗の連続。それでも終わってみると、みんなでひとつのものをつくりあげた大きな感動を分け合うことができました。

環境教育の関係者、立教大学の関係者、YMCAの関係などたくさんの人の関わりがあって、はじめで出来上がったイベントでした。そういうことを体験していたので、キープ協会で働くことには大きな期待を覚えていました。

しかし、いざ働きはじめると担当することになった持ち場はレストラン。そこでソフトクリームなどの販売スタッフとして汗を流しました。

組織改革の手法を積極的に学びはじめる

山本さんはレストランの売り子としての仕事をするだけでなく、そのうち協会の事務局にも顔を出すようになり、やがて企画をつくったり、広報を行ったりする機会が徐々に増えはじめます。

そんなふうに組織全体に目を配る必要も出てくるなかで、あるとき、組織の中で環境系のISOを取得しようという機運が高まるようになりました。2008年頃のことだったと思います。自然学校や研修会場として機能しているキープ協会でしたから、組織として、一致団結してISOの取得くらいはできることを外に見せておくべきだろうという流れになったのです。そこで、みんなの意思疎通のために取り入れたのがワークショップの手法でした。

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当時はまだ、ワークショップやファシリテーションという言葉が、いまのように一般的ではなかった頃でした。みんなで意見を交換するにしても、KJ法やブレーンストーミングといった手法がようやく知られはじめたばかりでした。

ISO取得のために、部署を越えて話し合いを重ねたのですが、合意形成は簡単ではありませんでした。そこで、業務とは違う部分で、独自に研修を申し込んで、個人的にファシリテーションやワークショップを学ぶことにしました。そういった手法を取り入れたら、もっと風通しのいい組織風土がつくれるのではないかと考えたのです。

場づくりのキーパーソンが清里に集結する

「外に出ることによって、組織の問題がより明確に見えるようになった」と山本さん。ファシリテーションやワークショップのさまざまな手法を学び、また、それらに取り組む人との出会いにより、山本さんはその世界に魅了されていくことになります。

NPO法人ミラツクの西村勇也さんとも、ちょうどその頃、2010年頃に出会っていると思います。そして、ファシリテーションやワークショップの分野で活躍している人たちが、だんだん清里に集まるようになってきたんですよ。

また、「チェンジ・エージェント」の枝廣淳子さんと小田理一郎さんが、毎年ヨーロッパ・バラトン湖畔で開催される持続可能な世界をつくるためのリーダー合宿に参加していたのですが、それを日本にも持ってこられないかということになりまして、その場所として清里の名前が挙がったのです。

こうして2010年1月、日本にファシリテーションやワークショップを広めるキーマンが20名ほど集まり、未来の種を育むようなワークショップが開かれました。そのメンバーの中に、世界的な紛争解決ファシリテーターであるアダム・カヘン氏のワークショップを4月に主催する方が居て、急遽、アダム・カヘン氏のワークワークショップもキープ協会を会場に開催することになりました。

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このようにして、キープ協会、そして清里を中心に、持続可能な社会を創るためにワークショップを開催しようとするファシリテーターの輪が日本中に広がっていこうとしていたのです。

震災で途絶えた流れを、もう一度取り戻したい

しかし、そのように順調な広がりを見せていたワークショップは、2011年3月11日に起きた東日本大震災によって、その流れが分断されることになってしまいます。地震、津波は、山梨県の清里に直接的なダメージを与えることはありませんでしたが、計画停電による電車の停止や相次ぐ宿泊企画のキャンセルにより、キープ協会の運営自体が危機にさらされることになってしまったのです。

日本と世界を、持続可能な未来に向かわせるべく対話しようと集まった機会が、経済的な理由により、停滞しようとしていました。

2010年、そして2011年と積み重ねてきたことに、私たちは大きな手ごたえを感じていました。ふだん、私たちが生きている日常には、「社会を変えたい」とか「新しい未来をつくりたい」なんてことを、本気で考えて、言葉にして行動している人に、それほど出逢わないと思います。しかし、そのワークショップには、そんな人が50人も集まるのです。そのエネルギーは猛烈なものでした。

とはいえ、当面は事業の立て直しに奔走しなければならないキープ協会の事情ももちろんよくわかります。そこで、山本さんはキープ協会から独立をするとともに、自身の企画として、未来を創るリーダー育成ワークショップ=Art of Sosial Innovation(AoSI)の企画、運営を志すことになります。

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AoSIの様子

Art of Sosial Innovationをあなたに開催してほしい

参加の垣根をできるだけ低く設定したいと思っています。具体的には参加費がかからないようにしたいんですね。世の中をよくしたい、持続可能な未来をつくりたい、と思っている次世代リーダーの中には、まだまだ稼ぎが十分ではない人もいます。ふだんの業務を休んで、電車代、宿泊代を払い、さらに研修費を支払うことがハードルになってしまうことがあるんです。そういったハードルをなるべく取り除きたいと思っています。

次世代のリーダーを育むべく行われるArt of Sosial Innovation。このワークショップに参加する人たちが取り組むのは、私たちが抱えている問題であり、世界中の困っている人、貧しい人、子どもや老人など弱い立場の人たちが抱えている問題です。つまり、どこか遠くで起きている出来事ではなく、私たち自身の問題を解決するために開かれると言ってもよいかもしれません。

Art of Sosial Innovationは現在、その開催に向けてクラウドファンディングを行うREADY FOR?にて支援者を募集しています。あなた自身の持続可能な未来のためにも、ぜひ力を貸してください。

writer ライターリスト

井上 晶夫

greenz ライター フリーランスのエディター&ライター。編集プロダクションや出版社を経てフリーランスとして活動開始。企業コンテンツや雑誌、ウェブの記事などを手がける。今、テーマとしているのは“対話”。

partner パートナーリスト

ミラツク

ミラツクは、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたイノベーションを生み出すことに取り組むNPOです。 ミラツクが応援するのは、未だあまり知られていない社会を良くする取り組みとそこにいる”人”たちです。1人の人が生み出す未来の可能性を世の中に伝えていくことで、また新しい次の未来の種が生まれる。そんな未来をつくるサイクルを共につくっていければと思います。 ⇒ 特集「a Piece of Social Innovation」ミラツク×グリーンズ対談!Facebookページ

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