今、日本の参加が問題になっているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)ですが、その詳しい内容については「聞いたことがあるけど、よくわからない」という人も多いのではないでしょうか。
そんな中、渋谷の映画館アップリンクファクトリーで6月1日(金)~ 5日(火)にかけて「IMAGINE after TPP ~未来について、映画を通して一緒に考えよう、わたしたちの暮らし~TPP映画祭」が開催されます。
主に農業部門への影響が大きくクローズアップされているTPPですが、その影響範囲は農業部門に限りません。
以前、ある政治家がTPP参加慎重派に向けて「GDPにおける農業を含む第1次産業の割合は1.5%。そのわずか1.5%を守るためにそれ以外の98.5%を犠牲にするのか?」という意味の発言をしたことも印象的でしたが、利益を得ることができると言われている自動車や家電などの耐久消費財の輸出もGDP比率でわずか1.6%に過ぎないことはあまり知られていません。
「なるほどそうか」と思ってしまうような発言も、こうした事実を知ると、その響き方が変わってきます。正しい判断をするには正しい情報を知ることが大切です。
TPPは、簡単に言うと関税や国ごとの貿易の規制を取り払うことによる自由貿易の促進です。TPPに参加することで具体的に何が起きるかと言えば、例えば食料に目を向けると、安い農作物が入ってくることで日本の食料自給率が今よりもさらに下がり、海外依存が強まることが予想されます。
一時的には、安い買い物ができることは生活を楽にするでしょう。しかし、もし食料危機が発生した場合、真っ先に困るのは食料を海外に依存していた国です。
食料のほかTPPへの参加によって、医療、保険、労働、知的財産権ほか、膨大な分野に影響が及びます。それらは例えば、医療機関に自由診療を認めることによる医療費の高騰だったり、コスト削減効果の高い安価な労働力が流入することで、日本人の仕事が減少することだったりします。
それでも、「経済成長するためにはTPPに参加するのもやむを得ないのでは?」と思われるかもしれません。この疑問に関しても、事実を示すデータがひとつの判断軸となってくれます。
現在、日本の貿易総額は対中国が23.3%と、対アメリカの11.9%を引き離して圧倒的(財務省貿易統計2011年)ですが、日本の輸出の増加を見込めるその中国はTPPに参加していません。TPPはその参加国すべてのGDP総額は日本とアメリカだけで80%を超え、「アジア・太平洋地域の成長を取り込む」はずのTPPは実質的には日本とアメリカの2ヶ国間の自由貿易の促進となっています。
このことからもTPPは2010年1月にオバマ大統領が宣言した「今後5年間で輸出を倍増する」ということに基づいた、アメリカが日本へ輸出を増やすための政策であることが見えてきます。
“正しい判断をするのに必要な事は、正しい情報を知ること”。
自由貿易が進められた未来を「TPP映画祭」のプログラムを見て想像することで、改めてTPPを考えてみませんか?
~未来について、映画を通して一緒に考えよう、わたしたちの暮らし~TPP映画祭
上映作品:
【農業】『モンサントの不自然な食べもの』
遺伝子組み換え作物の世界シェア90%を誇り、金融不況の中、成長を続ける多国籍企業「モンサント社」。そんな食糧市場を支配する、脅威の多国籍企業「モンサント」の実態を追ったドキュメンタリー映画。
クリーンなイメージを打ち出す裏の姿をカメラは追う。枯葉剤、農薬、遺伝子組み換えの危険性を隠蔽し、自然界の遺伝的多様性や食の安全、農業に携わる人々の暮らしを意に介さないモンサント社の世界戦略。
農業大国フランスで約150万人が観た本作は、「食」、ひいては「いのち」を支配し利益を追求する現在の経済システムについて、強い疑問を投げかけています。そして作中に登場する各国の深刻な状況は、TPP締結後の日本の姿かもしれません。
【医療】『シッコ』
アメリカでは、一度大病を患えば治療費が支払われずに病死か破産。先進国で唯一国民健康保険制度のないアメリカの医療保険の実態を描いた、マイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー映画。
【食の安全】『フードインク』
食の市場を牛耳る企業の実態を浮き彫りにしアメリカの食品産業の現状を突きつける一作。大量消費と大量生産の裏側で農業や畜産業が巨大な生産工場と化していた。
【ひとつの解決方法】『幸せの経済学』
ヒマラヤの秘境ラダックの姿を通して、本当の豊かさとは何かを説くドキュメンタリー。監督は、ローカリゼーション運動のパイオニア、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ。
【日本の農業】『お米が食べられなくなる日』
日本の米づくりを追い詰めてきたものは何か。秋田、山形、新潟、埼玉、岐阜、熊本、そして東京の生産と消費の現場を歩き、さらにはメキシコ、タイの農民の声にも耳を傾けながら、米づくりが持つ意味を考える。
【労働】『外泊』
2007年に結ばれたFTA(自由貿易協定)によって労働の「規制緩和」が進められました。本作は、 非正規雇用の大量解雇に怒り、立ち上がった韓国女性たちの姿を追ったドキュメンタリー。
【公共サービス】『ブルーゴールド 狙われた水の真実』
ライフラインである水道が民営化になったらどうなるのか?世界で勃発している水戦争を考える作品。
上映スケジュール:
6/1 19:00~『モンサントの不自然な食べもの』 マリー=モニク・ロバン監督トーク付き
6/2 11:00~『お米が食べられなくなる日』( トークゲスト:監修 大野和興さん)
12:30~『シッコ』( トークゲスト:民医連会長 藤末 衛さん)
16:00~TPP TABLE TALK
17:30~『外泊』(トークゲスト:立教大学経済学部教授 郭洋春さん)
19:30~『幸せの経済学』
6/3 10:30~『幸せの経済学』 (トークゲスト:「減速して生きる」著者 高坂勝さん)
13:00~『シッコ』 (トークゲスト:ジャーナリスト 岩上安身さん)
16:30~『フード・インク』( トークゲスト:大地を守る会 戎谷徹也さん)
19:30~『ブルー・ゴールド:狙われた水の真実』
6/4 19:00~『モンサントの不自然な食べもの』 (トークゲスト:サステナ マエキタミヤコさん)
6/5 19:00~『フード・インク』 (トークゲスト:食政策センター・ビジョン21代表 安田節子さん、料理研究家 枝元なほみさん)
TICKET:
トーク付き上映料1500円、上映のみ 1000円、3回券 3500円(ワークショップでも使えます)
お問合せ:アップリンク(担当 松下 03-6821-6821)
予約方法: このイベントへの参加予約をご希望の方は、 (1)お名前 (2)人数 [一度のご予約で3名様まで] (3)電話番号 以上の要項を明記の上、 件名を「TPP日時/作品名」として、 factory@uplink.co.jpまでメールでお申し込み下さい。
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