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日本にあった未来への希望の種、見つけたのはフランス人カップル。映画『できる C’EST POSSIBLE』

気候変動をはじめとする環境問題は悪化の一途をたどっています。問題について知れば知るほど、将来へ明るい展望を描くことが難しく感じるかもしれません。けれども実は、さまざまな形で持続可能な暮らしを営み、未来に明るい希望を見出している人が、日本各地にたくさんいます。

そんな事例を紹介している映画が『できる DEKIRU C’EST POSSIBLE』です。今回は上映会に参加するとともに、監督であるMathilde Julien(マチルダ・ジュリアン、以下、マチルダさん)Jonathan Carene(ジョナサン・カレン、以下、ジョナサンさん)の二人に取材してきました。あなたにも未来のために何か“できる”コトが見えてくるかもしれません。

自給自足、地域通貨、自然エネルギーなどなど、未来へのヒントは全国に

映画『できる』は、環境問題と日本に関心を持ったフランス人カップル、マチルダさんとジョナサンさんが、ボランティアとヒッチハイクをしながら8カ月にわたって日本各地を巡り、持続可能な暮らしをしている15の地域を訪れたドキュメンタリーです。

神奈川県で地域通貨や自然エネルギーに取り組むトランジション藤野、ごみのない社会(ゼロ・ウェイスト)への転換に取り組むことで知られる徳島県上勝町など、greenz.jp読者におなじみの場所もあれば、日本でもこんなに進んだ取り組みがあるのかと驚かされる事例もあります。

ジョナサンさんとマチルダさんの二人は、興味の赴くままヒッチハイクを続けたくさんの人と出会い、予想を超える取り組みに触れ、未来への希望の種を見つけていきます。この映画では、その模様が飾られることなくドラマチックな演出もなく、自然に映し出されています。

まだまだささやかな取り組みでも、そこには笑顔が溢れ、希望に満ちている様子。それはこの地球の未来への希望そのものです。

問題を告発するのではなく、あなたに問いかけてくる映画

9月9日、JICA地球ひろばで、監督二人を招いた上映会&トークが行われました。その夜、ゲストとして登壇した構成作家の谷崎テトラさんは、こう口にしました。

谷崎さん 社会課題を告発するドキュメンタリーはたくさんある。でもこれは違う。社会や企業ではなく、見ている人、一人ひとりに問いかける映画だと思います。僕たちは、自分がやらない理由、やれない理由を探して、社会のせいにしたりするけれど、この映画はそんな僕たちに対して、あなたはできますか? というメッセージなのだと思います。

映画について話す谷崎テトラさん。左は、この映画の配給元であり、良質なドキュメンタリー映画だけを扱う配給会社ユナイテッドピープル代表の関根さん。谷崎さんは、この映画を配給元であるユナイテッドピープルに薦めた人でもあります。

上映後のトークでもジョナサンさんは、日本を旅行しようとしている人に情報を伝えるために映画をつくろうと思っていたと前置きした上で、「日本を旅して驚くべきものを目にして、むしろ日本の人に伝えるべきじゃないかと思うようになった」と語りました。

まさにこの映画は、日本で暮しているけれど、まだまだ多くの人が知らない、自分たちにも“できる”可能性の種を示してくれるのです。マチルダさんも、“できる”という可能性を強調していました。

マチルダさん “できる”という意味を持った言葉をタイトルにしたのには、大きな意図があります。

映画の中でたくさんの人がさまざまな暮らしをしていますが、決してお金をかけているわけではありません。誰でもやる気があれば、自分のスケールで始めることができます。ほかの人がやるのを待つのではなく自分でやってしまいましょう。そうして始まった小さなプロジェクトが社会の中でつながって、どんどん広まっていくんです。

この映画は、つながりの可能性も示しています。映画に登場する事例は、それぞれの地方で行われているまだまだ小さなプロジェクトやコミュニティです。けれども、それらがつながるとき、社会の大きな変化が始まるのでしょう。

フランスに比べれば環境意識の低い日本、けれども日本だからできることもあるはず

上映会の翌日、二人にインタビューする機会を得ました。前夜の台風のために地下鉄のダイヤが大幅に乱れ、約束の時間に遅刻してしまったインタビュアーの私を、二人は温かい笑顔で迎えてくれました。

まず尋ねたいと思っていたのは、日本よりも彼らの母国であるフランスのほうが環境への意識も取り組みも進んでいるのではないかということ。フランス人の二人が、日本の取り組みに目を向けたのはとても興味深いことではないでしょうか。

実際、フランスでは気候変動に関する報道も多く、オーガニックのお店も20年前からあるそうです。

ジョナサンさん どんなスーパーにもオーガニックのコーナーがあるから、みんな知識もあるし、理解もしています。日本のように、オーガニックの食べ物はお金持ちの人のものとか、おしゃれなものという意識ではなくて、体にも環境にもいいことを知っているんです。もちろん価格は高いので、食べられない人もいますが。

マチルダさん フランスの学校では、オーガニックのものや地元で採れたものを学校で使用する動きもあります。

もちろんフランスにも、映画で取り上げられているような取り組みも数多く存在するといいます。ただ、国民性と言うべきなのか、方向性ややり方は異なっているそうです。ですから二人は、日本の事例に強い興味を持ち、映画にまでしたのかもしれません。

マチルダさん フランスにあるのは、革命の文化なんですね。ですから、みんな満足することなく、新しいものをつくり出そうとします。でも、日本はちょっと違っていて、和を大事にしますよね 。だから、日本とフランスではやり方が違っています。どちらがいいというわけではなく、別のやり方が生まれるからこそ、面白いと思います。

ジョナサンさんもマチルダさんも、日本の和の文化を高く評価しているようでした。けれども、和を重んじるばかりに、空気を読むといったことが当然のようになり、息苦しい社会を生み出している側面もあるのは否定はできないでしょう。

マチルダさんは、「フランス人にはできないことが、日本人にはできます」と断言します。実際に目にしてきた日本のたくさんの取り組みに感銘を受け、高く評価していることがうかがえました。

その反面 、ジョナサンさんが指摘したのは、日本の環境問題や社会問題への意識の低さです。ジョナサンさんは、それは日本のテレビに大きな責任があると考えていました。

ジョナサンさん そんなに詳しくはないけれど、日本のテレビはお笑いや料理ばかりで、環境問題などの真面目な話になると、出演者はスーツを着て話し方も変わって、一般の人は見ない番組になる、そんな風に感じています。テレビにはとても責任があると思うので、環境問題とか社会問題とか、大切なことをみんなに知らせたほうがいいと思います。

日本のテレビ番組が娯楽的な要素が大きいのは事実でしょう。それに影響を受けている人も多いかもしれません。ジョナサンさんは、このグローバルな時代に、食糧事情ひとつとっても海外の影響を受けざるをえないのに、問題意識が低いのは日本が島国だからだろうと分析していました。フランスのように、6つの国に周りを囲まれているわけではないからだと。

マチルダさん 日本人はとても真面目で、技術も高くて、素晴らしい品質の物をつくるのに、環境や食べ物のために何かしようという意識が低いのは残念です。誰もが食べ物は買うんだけど、結局それが生きていたものだと考えてないし、どこからくるか興味がないですよね。実は畑があって、頑張って育てている農家の人たちがいるということを忘れちゃったみたいに感じます。

人と人、そして小さなプロジェクト同士 がつながっていくことが大切

まだまだ環境問題への意識が低い日本で、地方に生まれているたくさんの新たな試みがこれからつながっていくには何が必要なのでしょう。

マチルダさん フランスにはたくさんのメディアがあります。メディアの数はとても大切です。また、人と人がつながれるようなウェブサイトやアプリが必要ですね。もちろん実際に人がつながれるような場所もあるといいので、街の中にも小さい畑ができる場所があれば、そこでみんなでシェアガーデンをして人と人がつながっていけます。パリではアスファルトの代わりに土にして、植物を植えられるようになったんです。

ジョナサンさん 人と人との関係性は稀薄になっているから、住んでいる場所を通したつながりがすごく重要だと思います。田舎の村は人が少ないからつながりがあるけれど、都会だと隣に住んでいる人も誰かわからないことが多すぎて残念ですよね。同じ建物の中でも協力するようになれば、毎日の生活が楽しくなれるかもしれない。

マチルダさん 日本人は自然を身近にするのが上手だと思います。都会なのにあちこちに木があって公園があって、小さい店の前にも花が植えてありますよね。それがトマトとか食べられるものだったら、それに気付いて面白いって思う人が出てくるでしょう。

マチルダさんもジョナサンさんも、地球が抱える問題を理解しながらも、強い希望を抱いています。

ジョナサンさん ローカルに特に希望を感じています。映画の中で見つけたような事例が、日本には10倍、20倍、もっとあると思います。そういう人たちのネットワークをつくることができれば、少しずつ変わることができるし、映画をつくった2年前より今のほうがつながりは強くなっています。

最後に、これからやりたいことを尋ねてみると、マチルダさんは「フランスで土地を買って、自分たち自身のプロジェクトを始めたい」と夢を語ってくれました。

そして二人ともが描いているのが、映画『できる』のこれからです。マチルダさんは、各国それぞれの『できる』を期待し、ジョナサンさんはまた日本を舞台に、次は芸能人を使うなどして、もっと一般の人にアピールできるような『できる』がつくられたら面白いと展望を持っていました。

きっとこれから二人は、フランスで自分たち自身のプロジェクトを、自分たちなりのスケールで始めていくのでしょう。一人ひとりが“できる”ことを始めることでこそ、何かを、ひいては地球の未来を変えられるのかもしれません。

あなたにも”できる”大きな一歩がある

まず、あなたに今すぐ“できる”こととして、この映画『できる DEKIRC’ESTPOSSIBLE』の自主上映会を開いてみませんか。配給元である株式会社ユナイテッドピープルでは 、市民上映会を開ける「cinemo」を用意しています。

少し勇気がいるかもしれませんが、地域のカフェや公民館、オフィスで、『できる』の上映会をあなたも開くことが可能。身近な人とこの映画を見て、自分たちに“できる”ことについて語り会えたら、それはあなたに“できる”大きな大きな一歩になるはずです。

ユナイテッドピープル代表の関根さんが、「持続可能なエコロジカルな暮らしについて、日本の魅力を外国人の視点で紹介、ある意味再発見させてくれます。タイトルの通り、とてもポジティブな気持ちにさせてくれる映画です。ぜひご覧ください」とオススメしているこの映画を、多くの人が見るチャンスをつくるのはあなたかもしれません。

この映画に込められた想い、日本各地のコミュニティで暮らす人たち、プロジェクトのねらいや結果、そんなひとつひとつの小さな種を、あなた自身がまた別の撒くことによって、きっと何かが動き出します。そうやってこの映画『できる』を一人でも多くの人が目にしてほしい。そんな形で広がることこそが、この映画にふさわしいと思うのです。

(撮影: 丸原孝紀

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こちらの記事は「greenz people(グリーンズ会員)」のみなさんからいただいた寄付をもとに制作しています。2013年に始まった「greenz people」という仕組み。現在では全国の「ほしい未来のつくり手」が集まるコミュニティに育っています!グリーンズもみなさんの活動をサポートしますよ。気になる方はこちらをご覧ください > https://people.greenz.jp/