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“未来のおとな”に学びのモチベーションを!動機づけに特化した教育プログラムを展開する「Motivation Maker」 [マイプロSHOWCASE]

Some rights reserved by Ernst Vikne

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子どもの頃にワクワクした出来事や「もっと知りたい!」と思った瞬間、どんなことを覚えていますか?そういった経験が今の活動につながっているという方も少なくないかもしれません。

今回ご紹介する「Motivation Maker」では、その名の通り子どものモチベーションを向上させるワークショップを実施しています。

毎回デザイナーやエンジニア、コピーライターなどひとつの職業をテーマに、その職業で活躍している方を講師としてお呼びし、仕事体験を行います。

ただ子どもたちが大人の仕事を真似するだけではありません。講師がその仕事を志したキッカケや仕事にかける想いなど、講師自身の生きざま、仕事への姿勢を子どもたちに伝えた上で、体験してもらう流れになっています。そのキッカケには子どもの頃にワクワクした経験も含まれています。こうすることで、子どもたちは、普段受けている学校の授業が、自分にとってもかけがえのないキッカケになるかもしれないことを知るのです。

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ワークショップの対象は、ひとり親世帯の小学校中学年~中学生。そして彼らの親もワークショップに参加し、一緒に課題に取り組むこともあれば、授業参観のような形をとることもあります。

特筆すべきポイントは、「子どもだけではなく、親にとってもモチベーションが上がる」というところです。子どもは、仕事の経験を通して社会の仕組みを知ることができ、さらに講師のストーリーから普段の勉強と将来やってみたいことをつなげて考えることができるようになってモチベーションUP!

親にとっては、自分の子どもがどんなことに関心があるのか、同世代の子どもたちたちが何を考えているのかを知ることができ、親同士も仲良くなってモチベーションUP!「Motivation Maker」が実施するワークショップは、大人も子どもも人として一緒に学んでいく場となっているのです。

とはいえ言ってしまえば、ワークショップは”非日常”の空間。モチベーションを維持することはそう簡単なことではありません。そこで「Motivation Maker」では、ワークショップの最後に、その日の様子をまとめた「MM(Motivation Makerの略称)新聞」を参加者に渡し、それが自宅に帰った後でも親子間の会話などを生み、日常と非日常との境を薄くしているそうです。

MM新聞

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そんな「Motivation Maker」を始めたのは、2009年に東大生向け教育プログラム「i.school」に参加していた6名。そのうちのひとりで共同代表の横田幸信さんにお話を伺いました。

教育格差はモチベーション教育の格差なのではないか

そもそも、どうして「Motivation Maker」を始めようと思ったのでしょうか。

「i.school」で”教育格差”がテーマになったときがありました。議論を重ねる中で、「教育格差を生み出しているのは、ただ単に塾に行けないといった家庭の経済状況ではなく、そもそも学びたい!と思えるような動機づけの機会が少ないからなのではないか」ということを考えたんです。

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横田幸信さん

現状としては、動機づけの機会を生み出しているのは家庭がほとんどです。たとえば、博物館へ行く、一流に触れる、本を買い与える…など。しかし、「Motivation Maker」が対象としているひとり親世帯では、なかなか子どものモチベーションを上げるような機会を与えることが難しいことがわかってきました。そこを「僕たちで担おう!」と思ったのがきっかけです。

こうした思いからワークショップを実施し、今では年間100名程の子どもとその親が、「Motivation Maker」の場づくりに参加しています。「なりたい職業や将来やってみたいことと学校での勉強が、ワークショップを通じてつながることで、自然と夢の実現に積極的になる」と横田さんたちは考えているのです。

今後は、参加型ワークショップを実施するだけではなく、プログラムをパッケージ化することで、博物館や科学館などでもワークショップを開催したり、書籍の出版にも動き出しているそうです。

また、2012年は新しいプロジェクトとして、被災地の中学生・高校生を対象に「i.club」を立ち上げました。「i.club」では、部活でも勉強でもなく、第3の放課後の過ごし方を提案しています。まずは気仙沼市で、地域の良いところや地元のヒーロー、解決すべき課題をフィールドワークを通じて発見し、地域の人とともに課題解決や新しい価値を創出する”ソーシャルデザインのための放課後”ともいえそうな教育プログラムを実施していこうと取り組んでいます。

大学で地元を離れるであろう高校生がほとんどですが、その高校生が地元をよく知り、誇りを持っていれば、いつか地元に戻ってビジネスを起こすかもしれません。

ここで撒かれた種がどんな花を咲かせるのか、可能性は無限大であるとひしひしと感じます。

「子ども」は「未来のおとな」

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実はご自身もひとり親世帯だったという横田さん。「長崎で生まれ育って、家には車もなかったので、それこそ動機づけの機会はほとんどなかった」と言います。

学校には行って、部活もやっていたけれど、ただ覚えるだけの勉強に対するモチベーションはゼロでした。でもひとり親世帯という環境だったからこそ、早いうちから物事を大人と同じように考えることはできていたように思います。

横田さんが学校の勉強は好きではなく、成績も良くなかったという話には驚きを隠せません。しかし、子どものころからしっかりと物事を考えていた経験から、「Motivation Maker」においてひとつのポリシーを生み出しました。

「Motivation Maker」では、子どもを「未来のおとな」と呼んでいます。子どもは子ども、大人は大人、と分けるのではなく、そもそも子どもも「未来のおとな」であって、何も大人と変わらない、大人も子どもも人として一緒に学んでいこうという思いが込められています。

ワークショップに参加している子どもたちは、勉強ができないわけではないのです。「子どもの予想できない行動が、刺激的でたまらなく面白い」と横田さんは話します。

修了した子どもたちといつか一緒に仕事がしたい

「Motivation Maker」修了生の中には、「i.school」でのワークショップにおいて、最年少ファシリテーターを務めた子どももいるのだとか。それもなんと小学5年生!修了後、「今度は、自分が受けたワークショップを提供する側になりたい」と申し出て、務めるに至ったということですが、本当にすごいの一言ですね。

「「Motivation Maker」で出会った子どもたちの中が成長して、いつか「何か一緒に仕事をしましょう!」と言われたら、すごく嬉しい!」と横田さんも、修了生の今後を楽しみにしている様子。

私も子どもの頃「Motivation Maker」に出会えていたら、もっともっと違う今を生きていた気がします。そんなワークショップを受けている子どもたち、いえ、「未来のおとな」たちはどんな将来を描き、これから成長していくのでしょうか。

今後の「Motivation Maker」の活動、そして修了生の活躍が楽しみで仕方ありません。

(Text:高橋明日香)

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