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“環境版のベルマーク”誕生!? 経済産業省・善明岳大さんに聞く、人と環境と企業をつなぐ「どんぐりポイント」のひみつ

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特集「MORE DONGURI!MORE GREEN!」は、“環境に良い商品”の目印となる「どんぐりマーク」と「どんぐりポイント」を通じて、未来にきれいな地球を残そうと活動する人たちを紹介する、「どんぐり事業事務局」との共同企画です。

年々ひどくなる猛暑。
ゲリラ豪雨や巨大台風、それにともなう土砂崩れや河川の氾濫…

もはや異常気象が日常のニュースとなっていますが、これらの多くは温室効果ガスによる気候変動が原因とも言われています。

いま改めて“気候変動”と聞いたとき、みなさんはどう感じましたか? もしかしたら、2005年に発効した京都議定書や、温室効果ガス削減キャンペーン「チームマイナス6%」が盛んだった数年前と比べ、距離を感じている方もいるかもしれません。

一方で、世界の動きは「気候変動待ったなし」。今年12月にパリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)に向け、2020年以降の新たな枠組みについて検討されているところです。

「一時は興味があったけれど、それっきり」「あまりにも大きすぎて、自分ひとりの力では…」そんなあなたにこそ、お伝えしたい話題があります。鍵を握るのは、この「どんぐり」です。
 
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どんぐりマークは、一言でいうと“環境によい商品”の目印。そして今、このかわいらしい「どんぐりん」が企業や生活者を巻きこんで、地域の環境活動を盛り上げているのだとか!

今回は、買いものを通じて地球温暖化防止を目指す「どんぐりポイント制度」を進めている経済産業省の善明岳大(ぜんめい・たけひろ)さんにご登場いただき、YOSH編集長がいち生活者の視点で、素朴な疑問をぶつけてみました。

どんぐりマークはカーボン・オフセット済みの目印

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写真左:YOSH編集長 右:経済産業省 産業技術環境局 善明岳大さん

YOSH 世界をみてみると、「気候変動」は引き続き優先度の高いトピックとなっていますが、日本では2011年の東日本大震災やその後の「地方創生」の盛り上がりで、一時よりは下火になってきているような印象があります。

とはいえ、僕にも娘がいますが、将来世代の幸せに関わる大事なテーマだからこそ、いつか地に足を着けてこのテーマに向き合わないといけない。そんなときに、環境運動とローカルな活動をつなげる「どんぐりポイント」の話を聞いて、ピンとくるものがあったんです。

善明さん ありがとうございます。3年ほど前に、前身となる「カーボン・ニュートラル制度」試行事業にも、兼松さんには委員として関わっていただきましたね。

YOSH そうなんです。そのときは「マークにはCO2ではなく、ベルマークのように愛されるようなシンボルにしたほうがいい」と提言したのですが、その後、絵本や着ぐるみにまで発展していて、純粋に感動しました(笑)

まずはおさらいのために、「どんぐりポイント」に至った背景から、教えていただけますか?
 
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経産省により2009年に開始されたカーボンフットプリント制度(現在約1000商品登録)。その後、2012年にCFPを活用したカーボン・オフセット制度が試行され、事業者、消費者の買物を通じた地球温暖化防止活動への参加促進を目的に、2013年11月にどんぐりポイント制度として本格化された

善明さん CO2削減のために、経産省としてはまず、「カーボンフットプリント制度」に取り組んでいました。カーボンフットプリントとは、商品の原材料調達から廃棄、リサイクルにいたるまでのCO2排出量を、いったん “見える化”する取り組みです。

YOSH この450gというものですね。

善明さん そこからさらに一歩進めたのが「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」です。つまり、CO2排出量を実質ゼロにすること。

YOSH この450gを0gにすると。

善明さん はい。まずは企業がCO2を算出し、削減する努力をします。そして、どうしても削減できなかった残りの排出量は、再生可能エネルギーの使用や、植林や間伐といった森林管理によって削減できたCO2(クレジット)を買い取って埋め合わせ(相殺)をする。

YOSH ええと、省エネをしたり燃料を転換するなどして、なんとかCO2排出量を400g減らし、残りの50gはその分の権利を買ってゼロと見なす、みたいなことですね。

善明さん はい。そうやって「カーボン・オフセット」した商品に、2013年11月より、どんぐりマークがつくようになったんです。

YOSH ふむふむ。そこまで企業が取り組んだ証だからこそ、“環境によい商品”の目印と言われるんですね。
 
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「年末のCOP21に向けて、国内でも温暖化への関心が高まってくるでしょう」と善明さん

善明さん 実はいま、第一次産業及び第二次産業にあたる産業部門のCO2排出量は、減少傾向にあるんです。コストの削減やNPO・NGOからの視線、政府へのCO2排出量報告義務などのさまざまな理由から、自律的に減らす仕組みが根付いてきているといえます。

一方、家庭部門では増えて続けている現状があります。そのために生まれたキャラクターがこの「どんぐりん」なんですね。

最近は子どもたちにも人気なのですが、さまざまなイベントに出席したり、手にとってもらえる商品を増やしながら、CO2削減に関心を持ってもらうきっかけになれば、と思っています。

YOSH いまはどんな商品についているんですか?

善明さん みなさんに分かりやすい全国規模の対象商品としては、イオンのお持ち帰り専用カゴ。バイオマス素材を配合した「バイオ・マイバスケット」が、2014年3月よりどんぐりマーク商品となりました。

また、ソニーのスマートフォン「Xperia」シリーズは、キャンペーン期間限定のどんぐりポイント付き商品となっています。ただ、こちらは商品にマークが貼られているわけではないので、どんぐりんもショップの店頭に立ってアピールしましたよ。
 
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身近などんぐりマーク。ソニーモバイルコミュニケ-ションズ「Xperia」シリーズ(左)、イオン「バイオ・マイバスケット」(右)

どんぐりポイントは、人と企業と環境をつなぐ

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YOSH ちなみに、「どんぐりマーク」のほかに「10pt」などポイントが付いていますが、これはどんな仕組みなんですか? 僕がその商品を買ったとき、どこで何をすれば。

善明さん 集め方はベルマークと似ていて、ポイントを集めて学校のPTAや商店街に持っていけばOKです。それらの受付先は「どんぐりポイントコミュニティ」と呼んでいて、環境団体がその役割を担う場合もあります。

ポイントの使い途は、(1)「どんぐりポイント寄付団体」に1ポイント1円として寄付をする(2)「どんぐりポイント交換商品」に交換する、のふたつの選択肢があります。

寄付の財源は「どんぐりポイント」付き商品を製造している企業からいただくことになるので、商品に何ポイント付与するかは企業に決めてもらっています。

YOSH なるほど、やっといろいろ見えてきました。「どんぐりポイント寄付団体」には、北海道の「北海道シマフクロウの会」といったローカルな自然保護活動や、「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」といった被災地支援などがあり、それに寄付をしてもいい。

あるいは「どんぐりポイント交換商品」であるLED電球や苗木に交換してもOK。その使い途は、コミュニティで自由に決定できると。

善明さん そういうことです。

YOSH ウェブサイトをみてみると、僕が住んでいる京都には、「どんぐりコミュニティ」も寄付団体もまだないようですね。

善明さん そうなんです。2016年2月まで公募していますので、ぜひ申請してください(笑)

YOSH いずれにせよ、「どんぐりポイント」付き商品を買えるお店、「どんぐりポイント」を集めて使い途を決めていくコミュニティ、「どんぐりポイント」をいかして地域に貢献する寄付先。この3つが揃っていると、変化が目に見えて、より生活者も実感がわくかもしれませんね。

善明さん まさに。そこで昨年から、四国を中心に、環境活動と地域活動をつなげる取り組みをスタートしたんです。

例えば「愛媛どんぐりプロジェクト」でいうと、愛媛県内のスーパー「マルナカ」さんにご協力いただき、「どんぐりポイント」付きの商品コーナーを設けて販売していただきました。「マルナカ」さんは、販売に協力してくれるサポーターという立場になりますね。

このときは、ライオンの「キレイキレイ」や資生堂の「TSUBAKI」など、日用品も対象となりました。メーカーさんにはマルナカに卸している分だけ、カーボン・オフセットしていただいて。

YOSH なるほど。そういう単位であれば、企業にとっても試験的に始めやすいんですね。ちなみに、どんぐりマークはパッケージに印刷したんですか?

善明さん それは企業にとっても印刷費などがコストになるので、POSの処理で自動的にポイントがたまるようにしました。

YOSH おお、それは画期的ですね。

善明さん さらにここで集まったポイントは、地元の寄付団体である「愛媛の森林基金」に寄付されます。そのお金は、愛媛県内の森林ボランティアへの助成などに役立てられます。それはめぐりめぐって、豪雨や土砂崩れなど、自分のまちの災害を防ぐことになるかもしれない。

YOSH Tポイントのように、個人にすぐ還元されるわけではないけれど、めぐりめぐって“自分たちの将来”に還元されるようになっていると。

善明さん よかったら、“どんどんグリーンで、どんぐりん”と覚えていただければ(笑)
 
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「マルナカ」ではPOSレジにより、自動的にポイントがどんぐりポイントコミュニティの「えひめ産業振興財団」へ送られ、そこからさらに「愛媛の森林基金」に寄付される

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愛媛ではCMも放映したどんぐりん。地元ではステージイベントにも登場!(2015年1月、スーパーマルナカの特設ステージにて)

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各地で広がるどんぐりプロジェクト。「北海道プロジェクト」(写真左)では、どんぐりクッキーなどの独自のどんぐりポイント商品が登場。ポイントは絶滅危惧種・北海道のシマフクロウを守るための資金に。「横浜プロジェクト」(写真右)では、横浜の企業を中心にさまざまなどんぐりポイント商品がつくられ、東急ハンズなどで販売。商品購入時に、自動的にポイントがコミュニティである横浜グリーン購入ネットワークに届けられ、子供たちが描く未来の社会「環境絵日記」の実現に寄与

B to Bでもどんぐりマークが活躍?

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YOSH マークをつける側である企業の反応はいかがですか?

善明さん おかげさまで50点を超えたのですが、このマークで環境によい商品ということを分かりやすくアピールできているのではないでしょうか。

実際、マルナカさんでの該当商品の売上げは、昨年度比1.3倍に伸びたそうで、今年は、香川県や岡山県にも広がる予定です。さきほどのPOSもそうですが、できるだけ運用しやすい仕組みになるよう、試行錯誤しながら進めています。

YOSH ただ手間がかからないようにすればするほど、買う人にはメッセージが伝わりにくいかもしれませんね。

善明さん その分、店頭POPなど丁寧なコミュニケーションが重要になるので、小売りさんとの連携が大切ですね。

もうひとつ、どんぐりポイント担当として「面白い!」と注目しているのが、 B to Bの現場なんです。このどんぐりマークを“営業ツール”として使っていただく事例もでてきたんですよ。

たとえばキヤノンさんのある複合機があるんですが、「私たちの商品を購入すると、キヤノンがカーボン・オフセットした排出量を、御社のCO2削減に活用できますよ」と。

YOSH ちょっと待って下さい。よく、わからなくなってきました(笑)
 
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キヤノンの再生複合機「Refreshedシリーズ」。(第4回カーボン・オフセット大賞 経済産業大臣賞受賞)

善明さん プリンタって、 “使用段階”もCO2を排出するんですね。そこで「商品の生産から廃棄までのCO2排出量を、うちが一括でオフセット済みですので、購入していただければ、その“使用段階”のクレジットを差し上げますよ。さらに、国にCO2の排出量を報告するときには、その分を差し引くこともできますよ」ということになる。

YOSH ふむふむ。クレジット付きの商品には企業担当者にとってメリットがあり、そのマークが保証していると。

善明さん 簡単に言うとそういうことです。このようにビジネス上でうまく利用してもらえる例が増えると、どんぐりマークの付加価値が上がるだけでなく、新しいビジネスモデルが生まれる可能性もあると思うんです。
 
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押しつけられた正義ではなく、日常の風景に

YOSH そういえば、今年に入ってベルマーク運動と連携をはじめたとか? それってすごいことですよね。

善明さん はい。まずはキヤノンの「使用済みカートリッジの回収リサイクルプログラム」からなのですが、回収したベルマークの点数をどんぐりポイントとしてもいかせるようになりました。
 
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キヤノンの「使用済みカートリッジの回収リサイクルプログラム」で、2015年4月よりこの仕組みを導入

YOSH 僕が小学生だったのは25年も前のことですが、みんなでコツコツ集めたベルマークで、運動会で使う巨大なボールとかピアノに交換したという原体験があると思うんです。

いろいろと設備が充実してきた今では、どうなのかわかりませんが、 当時は“押しつけられた正義”とかでもなく、純粋に自分たちの学校をつくっている実感がありました。マークを集めることが、ひとつの日常の風景になっていたというか。

どんぐりポイントでも、太陽光で発電するエコバス停が増えるとか、そういうワクワク感を生み出せるといいですね。

善明さん 実は “環境版”のベルマークを目指してスタートしたので、そんなふうに子どもたちにも身近なものとなり、愛されていけばいいな、思います。

ゆくゆくは、「温暖化対策のために!」と声高に言わなくても、日々の消費活動のなかで自然とどんぐり商品を買うことで、気付いたら温暖化対策になっているように、社会に定着していくといいですね。

そういえば、小学生にも地球温暖化やどんぐりポイント制度を理解してもらうために、絵本(『どんぐりんの大冒険』)も作りました。電子版で読めますし、大人が読んでも分かりやすいと思うので、ぜひ読んでみてください。
 
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どんぐりの森からやってきた、元気いっぱいの小学生、どんぐりん。学校の自由研究でCO2を減らす取り組みを勉強中。

YOSH 最近では大手のコンビニでも、オーガニックコーヒーやクラフトビールが並ぶようになってきましたが、それは、志のある生産者たちの仕事が認められてきたということでもある。

生活者にとって“目に見えない”ところにある努力を、“目に見える”ものにするのがどんぐりマークのようなアイコンの大切な役割なんだなと改めて思います。そういう意味でも、どんぐりマークがもっともっと広がってほしいですね。

善明さん 確かにそうですね。

YOSH さらにいうと、どんな未来を目指して木を植えるのか。長い目線のストーリーがあったりすると、もっと参加しやすくなるのかもしれません。

例えば2050年というと、ちょっと先のことに感じますが、2歳の娘がいる僕でいうと、「2歳の娘が37歳のとき」なので、今の自分の年齡くらいだとすれば、とってもリアル。

そうしたとき、単に「地球のために、植樹しましょう」というのと、「もう一度、子どもと一緒に見に来たいから植えよう」というのでは、実感が全然違ってきます。

善明さん いいですね。本当に将来の世代のために、いまの私たちができるだけ豊富な選択肢を用意することが大事だと信じています。気候変動は大きなテーマですが、みんなで考えていけると嬉しいです。

(対談ここまで)

 
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大きな使命を背負った、どんぐりん。「まだ11歳だけど、みなさんが応援してくれれば、やがて大きな木になりますよ!」と善明さん

「どんぐりポイント」制度が目指すもの、いかがでしたでしょうか。

「将来のために、地球温暖化を止めよう!」という時代はすでに終わり、私たちすべての目の前に、異常気象をはじめとした環境変化が、大きな顔をのぞかせています。

そんなとき、クールビスクールチョイス、この「どんぐりポイント」などなど、生活のあらゆるところで、私たちに分かりやすいカタチのバトンが用意されつつあるのは、喜ばしいことです。その一方で、押し付けられた正義や、無理したエコは、もはや続かないということも分かっている私たち。

であるならば、何に手ごたえを感じ、どんな未来のストーリーを描きたいのでしょうか? greenz.jpでは、これから「どんぐりポイント制度」にまつわる活動の可能性を、連載で紐解いていく予定です。どんぐりんと一緒に、そのヒントを探していきませんか?

(撮影:服部希代野)

[sponsored by どんぐり事業事務局]