1960〜70年代のヒッピーカルチャーに多大なる影響を及ぼした「Whole Earth Catalogue」の全ページが、WEBサイト上に公開された。1968年〜1972年まで刊行されたWhole Earth Catalogueは、その名の通り地球上のすべての商品カタログであり、今や伝説となっている本である。
Whole Earth Catalogueの内容は
Understanding Whole Systems(全体システムの理解)
Shelter and Land Use(シェルターと土地の利用)
Industry and Craft(産業と民芸)
Communications(コミュニケーション)
Community(コミュニティ)
Nomadics(遊牧民族)
Learning(学習)
このようなカテゴリーに分かれており、カテゴリー毎に地球上のあらゆる物が紹介されている。
あらゆる物が載っているが、当然のことながら、本当に地球上すべての物が載っている訳ではない。編集のスチュアート・ブランドをはじめとした“Whole Earth Catalogue”のフィルターを通ったものだけが、カタログに掲載されるのだ。カタログの冒頭に、そのフィルターについて書かれている。
(1) Useful as a tool,
(役に立つ道具である)
(2) Relevant to independent education,
(自立教育に関係がある)
(3) High quality or low cost,
(ハイクオリティー、もしくはローコストである)
(4) Easily available by mail.
(メールで簡単に手に入る)
(4)にあるように、当時は画期的だったと思われる通信販売もできたらしい。しかも、Whole Earth Catalogueに申し込めば、全て一括で買う事もできたというから驚きだ。
アップル社のスティーブ・ジョブズは、Whole Earth Catalogueに多大なる影響を受けたうちの一人である。名スピーチとして有名な、スタンフォード大学の卒業式のスピーチの中で、Whole Earth Catalogueについて触れている。
それはまるで、Googleが出る35年前に遡って出されたGoogleのペーパーバック版とも言うべきもので、理想に輝き、使えるツールと偉大な概念が、それこそページの端から溢れ返っている、そんな印刷物でした。
この言葉からも分かるようにWhole Earth Catalogueは、スチュアート・ブランドたちのフィルターを通った地球上のあらゆる商品を載せた“カタログ”でありながら、今の世の中にも繋がるような、時代に先駆けた思想と概念を伝えてきたのである。これこそが、Whole Earth Catalogueが「伝説」と言われる所以なのだろう。
そして、ジョブズはスピーチの最後もWhole Earth Catalogueの言葉で締めくくっている。
スチュアートと彼のチームはこのWhole Earth Catalogueの発行を何度か重ね、コースを一通り走り切ってしまうと最終号を出しました。それが70年代半ば、私はちょうど今の君たちと同じ年頃でした。
最終号の背表紙には、まだ朝早い田舎道の写真がありました。君が冒険の好きなタイプならヒッチハイクの途上で一度は出会う、そんな田舎道の写真です。写真の下にはこんな言葉が書かれていました。Stay hungry. Stay foolish.
(ハングリーであれ。馬鹿であれ。)それが断筆する彼らが最後に残した、お別れのメッセージでした。
それからというもの、私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきました。そして今、卒業して新たな人生に踏み出す君たちに、それを願って止みません。
Photo by Whole Earth Catalogue
そして今、Whole Erath CatalogueのWEBサイトでは、スティーブ・ジョブズと同じような、あなたの“Stay Hungry, Stay Foolish”なエピソードを募集している。時代が変わっても、メディアが変わっても、Whole Earth Catalogueのスピリッツは変わらない。地球のカタログの1ページに、あなたもエピソードを刻んでみませんか。
Whole Earth Catalogueが見てみたい!!
スティーブ・ジョブズの名スピーチ全文