7万平方メートルの畑には「共存」を意味するピラミッドのオブジェを中心に、円状に様々な植物が植えられている。肥料は、日本で発明された“ボカシ”(特殊な発酵菌であるEM菌を含み、主に生ゴミを肥料化するために用いられる)によって作られたものを使用している。1年ごとに転作し、隣り合わせになった植物同士の組み合わせを観察している。
「植物の組み合わせを試すところが、“パーマカルチャー”という農法に似ていますが、それとは別なのですか?」と聞くと、野菜畑担当のヤニカさんは笑顔でこう答えた。「どのような農法をとるのかということにこだわりはないのよ。どんな農法も試してみて、この土地に合ったものを探すの」。太陽や月などの惑星と星座の位置関係で、エネルギ−の質や流れを見るという“バイオダイナミクス農法”も一部取り入れ、収穫や苗植えの時期をカレンダーで確認する。不思議な力をもつ女性に肥料の量や撒くべき回数を決めてもらうこともあった。私が訝しげな顔をすると、ヤニカさんは「疑う前に、私はまず試してみたいの。だって、試してみなきゃ何もわからないでしょう?」と笑った。
- ランチタイム
- 雑草とり
ボランティアは、1日8時間、1週間のうち5日間働く。休みの2日のうち1日は日曜日で、あと1日は半日を2日に分けて休む。1日のスケジュールは以下の通り。
朝食 7:45-8:15
仕事 8:30-10:30
休憩 11:00-12:50
昼食 13:00-14:00
仕事 14:00-16:00
休憩 16:00-16:30
仕事 16:30-18:20
夕食 18:30-
ボランティアの仕事はさまざま。雑草とり、肥料撒き、収穫、冬に備えキャベツやイチゴの植え替え、建物のリフォームや陶器作りなど。タイムスケジュールは決まっていたが、仕事の割り振りはとても柔軟で、疲れていないか、飽きていないかと担当のヤニカさんが常に気を配ってくれるのだった。ボランティアのマネジメントに非常に慣れている印象。休み時間にはみんなでダイニングに集まり、ハーブティーかコーヒーに蜂蜜やお砂糖をたっぷり入れて、ストーブの傍に集まり談話した。
野菜畑では、にんじん、キャベツ、ジャガイモ、インゲン豆、トマトなどが取れる。料理はそれらを使ったスープやサラダ、パイがよくテーブルに並べられた。ちなみに、チーズや卵、マーガリンなどの食品は、オランダから輸入しているのだとか。
- 建物のペンキ塗り
- 自家製ハーブティー
スタッフはボランティアとは異なり、タイムラインに構わず朝から晩まで仕事をしていたが、仕事のしかたはリラックスそのものだった。私がアトリエでもくもくと作業をしていると、同じくアトリエ担当のハニーがラジカセを持って部屋に入ってきた。そして音楽をかけ、音楽に合わせて踊りながら私にウインクをして出て行った。また、みんなが休日をとる日曜日に、一緒にキッチン担当になったハンスは「僕は日曜日の8時から仕事なんてしたくないよ。だから9時半に集合ね」と私に言った。ガーデンを担当していた時には、私が畑道具を取りに走り出すと、「走らなくてもよし!」と笑われたこともあったっけ。
週に一度、日曜の夜8時半からはボランティア・ミーティングが開かれる。翌週の仕事の割りふりを決めたあとに質問タイムが設けられ、ボランティアは自由に発言することができる。
- サイクリングをしながら町を散策
- 書道の文化講座
仕事以外の時間もとても楽しく有意義だった。ボランティアの誕生日会が開かれたり、ハロウィンの日にはカボチャをくりぬいてキャンドルを作ったり、休日にはサイクリングをしたり。雨の日にはドイツで音楽活動をしているというボランティアの一人が、ギターと歌を披露してくれたこともあった。また別の休日には、日本文化に興味があるという仲間2人と一緒に、車で40分ほどいった町で書道の文化講座に参加したりもした。こんな風にしてECOlonieでの、のんびりとした時間は過ぎていった。
(次回につづく)
- 私の部屋