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僕たちが暮らしたいのは、「ただいま」という言葉が溢れる都市! 26歳以下の若者が新しい集合住宅のありかたを提案する「Neighbors Next U26 Project」

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都市で暮らすみなさんに質問です。ご近所付き合い、していますか?

「もちろん!」という方も中にはいると思いますが、「お隣さんの顔を知らない」という方も多い気がします。

田舎の濃い人間関係が嫌で都市に出てきた人からすると、それはそれで気楽でいいのかもしれません。でも、共働きで子育てに悩んだとき、大災害が起こったとき、年を取ったとき、地域に誰も知り合いがいない状態は、心細いものがあるのではないでしょうか。

Neighbors Next U26 Project」は、都市の持つそうした社会課題を、まちに住む人々のつながりによって解決するために始まったプロジェクトです。26歳以下の若者たちが集まり、“「ただいま」という言葉が溢れる都市”を実現しようとしています。

これから住宅を購入する若者たちが、自分たちの手で「住みたいと思える集合住宅」を提案!

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運営事務局のみなさん

このプロジェクトを主宰するのは、都市の社会環境問題を解決することをテーマに、ネイバーフッドデザイン事業や企業のCSRコンサルティングに取り組むHITOTOWA INC.。三井不動産レジデンシャルグループのサポートを受けながら運営しています。

プロジェクトが始まったきっかけは、HITOTOWA代表の荒昌史さんと三井不動産レジデンシャルグループとのブレスト会議の中で、「マンションコミュニティを担う世代の高齢化」が話題に挙がったこと。

荒さん 現在、都市の住宅の約47%が集合住宅で成り立っています。ただ、たくさんの家が集まっているにも関わらず、そこで暮らす人同士の交流は多いとはいえない状況です。

今後ますます、集合住宅におけるネイバーフッドデザイン、つまり適度な“ご近所づきあい”を生む仕掛けが必要となってくるでしょう。そこで、これからマンションの住まい手となる若者たち世代を巻き込んで、集合住宅のあり方を考えるプロジェクトを行うことにしました。

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住宅構造の変化により単身世帯が増加しました。家族や地域とのつながりを持たない世帯も多く、東京23区では毎日約10人が孤独死しているといいます。

2014年にプロジェクトがスタートし、現在は一期目を開催中。立ち上げメンバーであり、まちづくりの仕事をしている田中宏明さんが今期の事務局を務めています。

田中さん 立ち上げ期では、都市の住宅環境を取り巻く課題を把握し、いま何をするべきかを考えました。そこでメンバーから出てきたのは、「自分たちが暮らしたいと思える住まいを、自分たちの手でつくりあげたい」という意見です。提案したところ三井不動産レジデンシャルのみなさんも応援してくれることになり、一期の骨格が決まっていきました。

僕は地方でまちづくりの仕事もしてきたので、都市部でできる挑戦として魅力を感じ、事務局に立候補しました。

 
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プロジェクトを中心となって回す、HITOTOWA代表の荒さん(右)と事務局の田中さん(左)

今期の目標は、U26世代が理想とするマンションのコンセプトを提案すること。期間は、2015年4月から2016年1月まで。4月から9月までの前期はインプットと企画の時間、10月から1月までの後期は前期に考えた企画を具現化する時間に設定しています。

メンバーは「学生・社会人を問わず26歳以下であること」を条件に広く公募し、60人を超える応募者の中から、選考によって20人に選ばれました。ソフト面を考える「くらし課」、ハード面を考える「たてもの課」に分かれ、現在進行形で活動しています。

彼らは何を学び、どんなアイデアを膨らませているのでしょうか?6月末に行われたアイデアソンに参加し、その様子を覗いてきました。今回はその様子をレポートします。

アイデアソンのお題は「2025年に分譲するマンションの“共用空間”」

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会場は日本橋にあるシェアオフィス「Clipニホンバシ」。プロジェクトメンバーと事務局のほか、数人のオブザーバーが参加しました。

この日出された課題は、「最大手住宅企業M社に勤めるマンション企画チームとして、2025年に分譲をするマンションの“共用空間”を提案してください」というもの。

調布駅徒歩15分の立地にある14階建マンションという設定で、想定される顧客プロフィールは下記の通り。

・年齢:20代5%、30代30%、40代20%、50代以降45%
・年収:400万未満10%、400万台15%、500万台20%、600万以上55%
・家族数:1人20%、2人40%、3人30%、4人10%
・ペット:およそ3割が犬猫を飼育
(※一部抜粋)

また、こんな条件も付帯されています。

・一般的な共用空間は、分譲後に時が経てば経つほど使われなくなるというデータがある。そこで、分譲後も長く使われつづける共用空間のアイデアが望ましい。
・M社のポリシーとして、マンションができることによって、入居者や地域住民の課題が解決し、よりよい暮らしを送ってもらいたいというこだわりがある。
・アイデアは3つ以上出してほしい。実現可能性を重視したアイデア、実現可能性は低いが斬新なアイデア、いずれも含まれていることが望ましい。
(※一部抜粋)

この条件で、あなたなら、どんな共用空間を提案しますか?よかったら一緒に考えてみてくださいね。

アイデアソンを始めるまえに、ゲストの猪熊純さん、仲俊治さんからお話がありました。

陸前高田のコミュニティカフェ「りくカフェ」に新築シェアハウス「LT城西」などさまざまな共用空間を設計してきた猪熊さんには、共用空間を考えるときの「チェックリスト」があるとのこと。それは、「複合性」「多様性」「選択性」「冗長性」「持続性」だといいます。

猪熊さん 共用部のような場所をつくろうと考えたとき、ついつい「映画を見る場所がほしいからシアタールームをつくろう」「子育て世代が多いから保育スペースをつくろう」と、ひとつの機能に特化させてしまいがちです。それだと数年後にニーズが変わったとき使われなくなってしまうなど、失敗することが多いんですね。

ひとつの場に複数の機能を持たせること、アレンジして使えるようにしておくことで、さまざまな人が使える場になるし、変化に対応できるんです。

今回もいろいろなアイデアが出るかと思いますが、「どう絞るか」ではなく「どう組み合わせるか」という視点で考えてみてはいかがでしょうか。

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株式会社成瀬・猪熊建築設計事務所を主宰する猪熊純さん

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仲建築設計スタジオを主宰する仲俊治さん

仲さんは、2014年にSOHOユニット・食堂・シェアオフィスからなる「食堂付きアパート」を設計しグッドデザイン賞金賞を受賞した方です。

下町の路地では“道”と“住居”のあいだに曖昧なレイヤーがあること、1970年代に建てられたリビングアクセス型住居があまり流行らなかったことなどを例に挙げながら、U26メンバーに「共用部って何だろう?と、本質的なことを考えてほしい」と助言しました。

仲さん 共用部の提案といっても、共用部のあり方だけを考えればいいわけじゃない。共用部に面している専有部がどうあったらいいのかを一緒に考える必要があります。「住むって何だ」「専有部って何だ」と考えた先に、共用部のあり方を提案してもらえたらと思います。

マルシェ、未来貯金、井戸、映画館…U26世代から飛び出した16アイデアを紹介!

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お話のあとはいよいよアイデアソン開始!「くらし1課」「くらし2課」「たてものAチーム」「たてものBチーム」の4班に分かれてメンバー同士でアイデアを出し、一時間で発表内容を固めていきました。

どんなアイデアが出たか、気になりますよね?さっそく紹介していきましょう!

【くらし1課】

●つながる庭
1階に庭、2階に中庭、3階に共用部という、階層的につながる庭をつくる。子どもが遊んだりフロアごとに交流したりできる、公園のような場所。
 
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●マン・マルシェ
この庭を使い、マルシェを開く。常設店を持たないが人がものを販売し、入居者がそれを手伝う。遠くに働きに出られないお母さんやおばあちゃんがお小遣い稼ぎできる場にする。
 
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●リフレッシュプラザ
マンション内の人も外の人も使える休憩所。中庭と直結しているので、お母さんたちは子どもが遊ぶ姿を見ながらヘッドスパやマッサージを受けることができる。
 
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●マンション通貨
マンション内で流通する通貨をつくって、「ありがとう」を形にして循環させる。裏側にはメッセージが書き込めるようになっていて、流通するごとにメッセージが増えていく。
 
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猪熊さん 庭のいいところは、人がいないときでも様になるところ。部屋をつくってしまうと、人がいないときに淋しい感じになってしまうんですね。そういう意味で、庭をつくって活用するというのは良い視点だと思いました。

【くらし2課】

●第3のLDK
エントランスにアイランドキッチンとソファを設置。家には置けないような大きなオーブン等を置き、みんなで料理できるようにする。テーマは「ただいまの言えるマンション」。
 
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●エレベーターのデジタルスクリーン
「マンションの共用部で一番気まずい場所はエレベーターなのでは?」という視点から、エレベーター内にデジタルスクリーンを設置。事前に収集したデータから、居合わせた人の共通点を分析し、表示することで交流を促す。
 
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●「未来貯金」の見える化
なんとなく義務感で払っている人が多い積立金を「未来貯金」と呼び、デジタルサイネージに表示。目標まであとどれくらいかをわかりやすくグラフにする、お金の使い道を問うアンケートを行う、などの仕掛けによって、住民の当事者意識を醸成する。
 
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●地域がつながる場
サラリーマンが青年会を開いたり、子育てママが料理や子守りなどでお小遣い稼ぎをしたりできるスペースを開設。

マルシェも開き、入居者が手づくりの作品を販売したり、近隣の人が野菜を売ったりできるようにする。駅から離れている物件なので、小さなショッピングスペースとして機能させたい。
 
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仲さん LDKは面白い発想ですね。いま、一世帯の人数が減っていて、「みんなで鍋をつつく」という経験をしたことがない人も多い。最近の世帯、最近の間取りだとできないことがこういうLDKがあることでできるというのはすばらしいなと思います。

【たてものAチーム】

●専有部の機能を分離し共有部に集約する
「これから低所得の家庭が増え、1家庭に1家電は難しくなる」という仮説のもと、家電をシェアする暮らしを提案。キッチンやランドリーなどを置くスペースをつくり、人が集える場にする。
 
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●井戸を中心としたエントランス
「井戸端会議」を復活させるため、エントランスに井戸を置く。防災井戸・足湯・子どもたちの遊び場としての機能を持たせる。
 
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●ワンフロワン
万人受けする犬をワンフロアで一頭飼い、みんなで育てる。
 
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●パークマンション調布
建物を回遊するように廊下を設置し、住民同士の交流を促す。駐車場部分は夜しか使わないと予想されるので、昼間はスーパーにする。
 
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●パークマウント調布
マンションそのものを山のような形に設計し、上から水を流れるようにして樹木を植える。地域のランドマークとなるようなユニークな景観にすることで、近隣の人から誇りに思ってもらえるマンションにする。共用庭には太陽光パネルを設置し、冬は足湯をつくる。
 
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仲さん 「パークマウント調布」は、これだけの大きさの屋根があれば、相当の足湯ができるはず。足湯利用料を取って、儲けちゃうのもありかもしれませんね。

【たてものBチーム】

●あいまいな玄関
専有部と共用廊下のあいだに曖昧な玄関をつくる。この中で「ただいま」という声が飛び交うコミュニケーションができるようにする。
 
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●更新する住居
テトリスのように大きさや形が異なる部屋を用意し、家族構成の変化に対応できるようにする。
 
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●映画日和
調布=映画のまちであることから、マンション内に小さな映画館をつくる。上映だけでなく、講義をすることも可能。住民だけでなく、近隣の人、遠方の人も集まる場にする。
 
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猪熊さん 集合住宅の玄関は一戸建てに比べて冷たい印象になりがち。その問題意識はすごく共感しました。

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以上、4つの班から16のアイデアが飛び出しました。みなさん、立地や時代背景などから仮説を立て、アイデアを練っていた様子。すぐに実現できそうなものもあれば、難しそうだけど実現すれば面白い!というものもあり、想像が膨らみます。

発表を受け、ゲストの猪熊さんや仲さん、三井不動産レジデンシャルのみなさん、荒さんからの総評がありました。

U26世代の柔軟な発想やユニークなアイデアを評価する声がたくさん挙がった一方、「事業性や採算性、管理コストも含めた持続可能性が乏しかった」「もう少し顧客プロフィールなどの設定を活かしたアイデアがほしかった」という声も。

荒さん アイデアとしては面白いけれど、「誰のため、何のため」がわかりづらいものもありました。こちらが提示した設定には、未来の暮らしを読み解くヒントをたくさん盛り込んだつもりです。それをもっと読み込んでもらえるとよかった。みなさんのポテンシャルを考えると、もっと良いものが出せたはず。ぜひ、次回に活かしてほしいです。

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ただ、荒さんから見て2つ、「これはいい」と思ったアイデアがあったそう。それは「未来貯金」と「あいまいな玄関」です。

荒さん 「未来貯金」は、マンション管理上の課題をきちんと捉えた提案だと思います。ネーミングも前向きですよね。修繕費というとマイナスをゼロにするイメージですが、未来貯金はプラスにしていく印象があります。

「あいまいな玄関」は、建築業界でも実際に課題となっているテーマです。いまの集合住宅は、専有部と共用部がはっきり分かれていますよね。曖昧な空間が減り、風情が失われて冷たい感じになっている。それを取り戻すという発想はいいな“と思いました。

「未来貯金」は、発表後に行われた投票でも一番表票を得ていました。管理費を見える化するだけでなく、クラウドファンディング的な要素も組み入れ、住民みんながほしいものを考え購入できるようにする、という点が高く評価されたようです。

くらし2課のみなさん、感想は?
 
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左から松井さん、荒木さん、國本さん

松井さん 「未来貯金」が実現するともっと暮らしが豊かに、コミュニティのつながりが強いものになるのではないかと考えました。マンション内で積立金額を見える化することで、自然と一体感や交流が生まれていくのが理想のコミュニティ像です!

今回のアイデアソンを踏まえて、より実現可能性のある未来の住まいを考えていけたらいいなと思っています。

荒木さん とても嬉しいです。「共用部」というと空間や場所をイメージしがちだと思いますが、暮らし、そしてマンションを面白くしていくにはまだまだたくさんの見えない部分や変えていける部分があると再認識しました。そこに注目し、くらし課だから気づける点も意識しながら今後も活動していきたいです!

國本さん 「SHARE」という言葉をU26世代だと使うことが多くて、「みんな」でなにかをつくり上げてくるというのが価値になるのかなと思いました。短い時間のなかでも出てくるU26共通の価値観をヒントに、これからも夢と実現性のあふれた住まいを考えていきたいです。

新しい都市の可能性がここから生まれる(かも)!

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Neighbors Next U26 Project」では、今回の反省点をふまえてアイデアをブラッシュアップし、後期では実際のマンションへ試験的に導入する予定です。

荒さん・田中さん曰く、「先進的な暮らしをしている人、未来の都市に関心がある人の意見を広く取り入れながらプロジェクトを進めていきたい」とのこと。秋頃にオープン型の発表会やイベントを開催するそうなので、気になった方はぜひサイトをチェックしてくださいね。

新しい都市の可能性は、ここから生まれるのかもしれません。

(写真提供:Neighbors Next U26 Project)

[sponsored by Neighbors Next U26 Project]