「CSR活動というと、どんな活動を思い浮かべますか?」「CSRにコミットした企業というと、どんな社名を思い付きますか?」「企業には、どんなCSR活動に力を入れてほしいですか?」そんな質問を世界中の消費者に問いかけるアンケート調査の結果が、9月に発表された。その結果から、CSRに対する日本の消費者の独特な考え方や姿勢が浮かび上がってきた。
「世界32カ国CSR消費者意識調査」は、昨年から今年にかけて、(株)NTTデータスミスとカナダの社会調査機関グローブスキャンが共同で実施したもの。約32,000人の消費者が参加したこの調査の結果は、私たち日本の消費者にとって、ちょっと微妙な内容だ。
報告書によると、CSRはいまでは多くの国の消費者の関心を集める企業活動。たとえば、「私は、社会的責任や、環境への責任を果たしている企業の商品やサービスを利用するよう努めている。」という意見を、自身の気持ちに最も近いものとして選んだ消費者は、全対象国で75%、先進国では83%を占めた。
「世界32カ国CSR消費者意識調査」メディアリリースより「Q. 次のことは企業 が果たすべき 責任だと言われていますが、それぞれの項目について、企業の責任はどの程度大きいと思われますか。」※1(画像をクリックすると拡大表示されます)
「世界32カ国CSR消費者意識調査」メディアリリースより「Q. あなたは、どの分野において企業に最も貢献してほしいと思いますか。」※2(画像をクリックすると拡大表示されます)
その一方で、消費者がCSRと認識している企業活動や、消費者が企業に求めるCSR活動は、国によって異なるらしい。特に日本の消費者は、他国の消費者との違いが顕著。
※1「Q. 次のことは企業 が果たすべき 責任だと言われていますが、それぞれの項目について、企業の責任はどの程度大きいと思われますか。」
※2「Q. あなたは、どの分野において企業に最も貢献してほしいと思いますか。」
の2つの調査結果によると、日本の消費者にとって、CSRといえば環境や商品の安全に関する取り組み、というイメージが他国の消費者よりも強いことがうかがえる。
また、いわゆる「市民的責任」に関する取り組みについて、企業が果たすべき 責任だと認識している消費者は、対象国の平均では半数を超しているのに対し、日本の場合は半数を下回るという結果が出た。特に、「犯罪、貧困、教育問題などの社会問題の解決に協力する」取り組みと、「世界の人権侵害を減少させる」取り組みについては、企業が果たすべきだと考える消費者は2割を下回った。
「世界32カ国CSR消費者意識調査」メディアリリースより「Q. 次のことは企業 が果たすべき 責任だと言われていますが、それぞれの項目について、企業の責任 はどの程度大きいと思われますか。」(画像をクリックすると拡大表示されます)
CSRを重要視する消費者が多いわりに、日常の生活の中でCSRに積極的に関与している消費者が少ないというのも、今回の調査結果が示す日本の特徴だ。
CSRに力を入れている企業の商品やサービスを利用するようにしている、と答えた人は約8割。一方で、過去1年間でCSRを果たしている企業の商品やサービスを積極的に購入したり、知人に勧めたりした人は2割。CSRを果たしていない企業に対してボイコット活動をした人は3割。そして、欧米諸国や中国に比べて、身近な企業のCSR活動についてあまり知らないと答えた消費者が多かった。CSRは大切だという気持ちはあるものの、積極的に情報収集をしたり、企業に働きかけるなど、実際に何かアクションをとる人が比較的少ないようなのだ。
CSRや環境への取り組みを事業戦略の一環として進めている企業は、日本でも増えてきた。環境省の調査によれば、上場企業の約7割、非上場企業では半数以上が、CSRレポートや環境報告書などを発行している。社会や環境に対するコミットメントを、ホームページに記載している企業も多い。日常生活でよく利用する企業が社会とどのような関係を築いて活動しているのか知りたいと思ったら、情報源はたくさんある。
CSRに力を入れている企業の中には、社会意識の高い消費者の増加を見据えて、ブランドイメージを良くするためにCSRに取り組む企業も多い。マーケティング効果を重視しすぎて、グリーンウォッシュに傾いてしまう企業もある。そういう可能性も踏まえて、企業の行動をモニターし、きちんと社会的責任を果たしている企業を見定め、積極的にサポートしていくことが、私たち消費者の社会的責任でもあると思う。
さあ、行動する消費者を目指そう。
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