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東京の“都会”でも“田舎”でもない、羽村市の魅力とは?「はむら未来カフェ」で若者が語りあう、“好きな居場所”と“ソーシャルの実感値”

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玉川上水沿いに美しい桜が咲きほこるこの日は、 “はむら花と水のまつり”

東京都心から電車で西に約50分、大自然・奥多摩の玄関口にある、東京都“羽村市”。多摩川の美しい水が、ここ羽村で玉川上水に流れ込み、東京の飲料水をささえています。

しかし、どっぷり“自然”というわけでもなく、ビルや商店が建ち並ぶ街なみは、生活にほどよく便利そう。高度経済成長期以後、自動車工場の誘致などで、東京のベッドタウン化が進んだものの、知名度は高くなく、東京の市では人口が一番少ない現状です。

最近では、ほかの自治体と同じく、人口減少・少子高齢化が進展。2014年に行った羽村市若者意識調査でも、市への愛着度が94%なのに対し、定住意識は66%に低下しています。「羽村を好きだけど、ずっと住み続ける意識はない」という約3割の本音も、浮かびあがりました。

そんな羽村のまちを、今こそ若者の力で盛りあげようと、 “新たな風”を吹きこんでいるのが、「はむら若者フォーラム」です。

“都会”でも“田舎”でもない羽村の魅力は?

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2014年5月より5回開催された「はむら未来カフェ」。若者が参加しやすいまちづくり、働くとは、コミュニケーションなどのテーマで語りあう

2014年4月、羽村市がバックアップし、“市内の若者”と、市が包括的な連携協定を結んでいる“杏林大学の学生”が実行委員となって立ち上げた、この「はむら若者フォーラム」。活動の中心は、ワールドカフェ方式の「はむら未来カフェ」です。

事務局である羽村市企画政策課の高岡弘光さんは、「行政の仕事をやっていても分からなかった視点が見えてきた」といいます。

高岡さん 若者の市政への参加を最終目的にしていますが、“まちづくり”と全面的にうたってしまうとハードルが高いと思い、まず、若者たちがざっくばらんに本音を話しあえる場として、「はむら未来カフェ」を始めたんです。

すると、対話を通じ、羽村を都会でも田舎でもない居場所として、「住みやすい」と感じている若者が多くいることに気づきました。便利なまちが必ずしもよいとは限らないんですね。この未来カフェが、自分や羽村を楽しく見つめ直す機会になってほしいと思っています。

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「コミュニティワークショップ人材育成塾」。対話型イベントの作りかた、ファシリテーションスキルなどを学ぶ。講師は、まちづくりファシリテーターの山口覚さん。大学生、会社員、教員など10人の若者が参加して、2014年12月~2015年1月に開催

さらに、このカフェと並行して取り組んできたのが、「コミュニティワークショップ人材育成塾」。自分の“好きなこと”をまちのイベントやコミュニティにつなげるノウハウを習得し、自らがまちづくりの担い手の“モデル”となる活動です。

この人材育成塾生の一人ひとりが、2か月のあいだ、手探りで形にしてきた「羽村でやりたいこと」。これをお披露目する時が、ついにやってきました。

自分の“好き”がコミュニティにつながる

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2015年3月28日に開催された第5回の「はむら未来カフェ」。市内在住者だけでなく、杏林大学生、青梅・昭島市など近隣の自治体からも様々な年代の参加者が集う。「コミュニティレストランらるご」にて

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数多くのまちづくりに参画してきた・まちづくりファシリテーターの山口覚さん。初回よりファシリテーターを務める

なごやかな雰囲気ではじまった第5回の「はむら未来カフェ」。

しかし、今までの未来カフェとは、ちょっと違います。人材育成塾生が発表する4つのプロジェクトが、集まった若者との相乗効果で、実現に向かっていく。そんな“実行へのキックオフ”の日でもありました。
 
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杏林大学の羽村綾那さん。「AKB48に負けない羽村市のアイドルになろう!」と、会場のみんなで“はむりんダンス”にトライ

元気いっぱいの大学生・羽村さんが提案したのは、「“はむりん”(羽村市の公式キャラクター)のダンスで羽村のPRをしよう!」。

羽村で行われる春の「はむら花と水のまつり」や夏の「はむら夏まつり」、羽村市動物公園玉川上水羽村取水堰、商店街などの数々のお祭りや名所などを背景にして楽しく踊り、羽村市のPR動画をつくろうというものです。

羽村さん 今、観光学科に在籍し、まちづくりの成功例を学んでいます。そんななか、私自身この活動を通じて、人と話すことがすごく好きになって。だから、まちの人を一緒に巻きこみながら、なにか羽村を全国にPRするものをつくりたいと思いました。

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「この夏からPR動画の撮影をはじめたいので、一緒にやってくれる実行スタッフを募ります!」とやる気満々

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「みんな笑顔になってください!」と、企画者の板垣毅さん

お次の企画は、スポーツが大好きな会社員・板垣さんによる、「“ハイタッチ”で盛り上げるスポーツイベント・えがおサプリ」。

板垣さん “人間同士の心の触れあい”という意味もある、“ハイタッチ”。このシンプルだけど温かいスキンシップで、感動を共有しあえたら楽しいな、と。チームごとにオリジナルのハイタッチをつくり、笑顔いっぱいの羽村になったら素敵だと思いました。

会場からは、「最近の子どもキャンプの引率では、過剰に子供をさわるな、といわれることも。もっと人とふれあう機会があってもよい」「失敗したとしても、羽村流ハイタッチで逆に絆を深めては?」など共感の声が。羽村の人たちの優しい人間性も、垣間見ることができました。
 
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杏林大学の新飯田ついりさんの企画、「たい焼き食べ歩きツアー」。“はむりん型”のたい焼きで、羽村のB級グルメを作ろう!とのアイデアも

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高野剛志さんの企画、「Hamura大人の語りBar」。会場からは、商店の名物おつまみが持ち寄り可能で、子育てママ専用のノンアルコール日もあるといい!との声。(写真は、事務局・羽村市企画政策課の高岡弘光さん)

好きなことや個人の特技を活かした企画が次々にでてきたプレゼンテーション。会場からの意見でさらにブラッシュアップされ、この場で“実行日”を確約するものも出てくるほど、盛り上がりました。
 
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羽村に、今はなき“居場所”をつくるとしたら?

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さて、ウォーミングアップが整いリラックスしはじめたテーブル席へと、対話のバトンが移っていきます。次に会場全体で考えるテーマは、「居場所とはなにか?」。

このちょっと意味深な哲学的でもあるテーマを、ワールドカフェで考えていきます。出てきたのは…

【居場所とは?】
・“居場所がない”とは“絶望”の状態。絶望以外のものは、居場所になりえるのでは?
・家のように“いたい場”もあれば、職場や学校のように“いなくちゃいけない場”も。
・居心地がいい“ホーム”のような場もあれば、“アウェイ”だけど、自分が成長するためには必要な挑戦の場もある。
・“好きな人”がいるところが、自分にとって一番の居場所!

考えれば考えるほどいろんな解釈がでてくるこのキーワード。言語化に悩みつつも、自分の“心地よさ”を追求する、貴重な旅となったようです。

そのうえで、次に思いめぐらすテーマは、「羽村に今はなき、“居場所”をつくるとしたら?」。

「ずっと羽村にいるから、何が必要かわからないな…」。そんなとまどいの声も聞こえるなか、先ほど確認した自分の“心地よさ”をベースに、場所を具体化していき、最終的に以下の意見が出そろいました。

【羽村に“居場所”をつくるとしたら?】
・100%秘密の語り場
 悩みを打ち明けてアドバイスをもらいたい。秘密厳守のために覆面(!)をする
・“ホテルのロビー”のような場
 ひとりで気楽だけど決して孤独ではない“ホームとアウェイの中間”の、何にもとらわれない空間
・“おひとり様女子”のバー 
 一人でも気軽に入れる。おひとり様文化を根付かせたい
・お父さんたちの秘密基地
お酒以外で父親たちをつなげるパイプが少ない。手作りの基地で、昔の遊びを再現!
・介護が必要ではない高齢者のシェアハウス
 独り暮らしでさみしい人なども、助けあいながら楽しく生きられる家
・“ルール”のあるバー
 例えば「会話のテーマあり」「連れ・週に2回以上来訪はNG」など

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「そういえば、駄菓子屋や銭湯も減ったよね!」

と、ここで思い出されたのは、昨年11月の未来(みら)フェスで語りあった、「本当の意味で住みたくなるまちとは?」のワーク。

「“水”をテーマにしたお祭りで、まちの魅力をアピールすべき」という“自然”へのこだわりや、「羽村の治安・交通・買い物の“ほどよさ”を活かす」という“生活上の安心”などの論調が強かった一方で、“自分の心地よさ”にそって自然に発想した今回のアイデアには、 ごくごく「身近なコミュニティ」への憧れが多くつまっているようです。

この結果は、市民の“定住意識”とは関連があるのでしょうか?

ファシリテーター・山口さん この羽村は、美しい自然が残されているものの、土地の定義が難しいと思うんです。観光名所というよりは、東京のベッドタウンだし、ベッドタウンにしてはやや田舎で、田舎にしては都会というか…。だから市民も、自然が豊かだから羽村が好き、と一概に言いきれないのでは。

だからこそ、住み続けたい羽村であるためには、住んでいる人同士が、「あなたといるから、この街が心地よい」という持続的な関係性をつくっていくことが、とても大切だと思いますね。

“ソーシャルの担い手”という実感

熱気に包まれた後半、ある大学生が会場に問いかけました。

「ワーク(学校や仕事)」「ライフ(家庭や友達)」「ソーシャル」と、場を分けたときに、学生の目線からすると、「ワーク」と「ライフ」さえあれば、基本的に生活はできる。こうやって地域の人と話しあう場は、「ソーシャル」にあたるのだろうけど、なければ生きていけないものではない。

でもあればあったで、いろんな意見を交わして刺激があるし、視野も広がる。もしかして、こういう場がいっぱいあるといいのかな。

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チェックアウトで感想を語りあう

この言葉に、「自分とソーシャルってどれくらい関係あるの?」と、それぞれがソーシャルの実感値を振り返ります。

道に迷ってチラシを見て来ちゃったけど、世代の違う人との出会いで、思いがけない刺激があった。

自分の好きと同時に、みんなの好きも考える。そこですぐに“答え”につなげないのが、新しい。

ここの常連が増えた。まちの人と意見を交わすことを、心地よいと感じる人が増えているのでは?

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コーディネーターの杏林大学・木暮准教授(写真右)

そんな学生たちの輪に入り、この一連の活動のコーディネーターとしてサポートを続けているのは、杏林大学・総合政策学部の木暮健太郎准教授。これまで、羽村東口商店会ヒアリングプロジェクトや、4,000人もを動員した羽村駅前での音楽ライブ「羽村にぎわい音楽祭」などにも、羽村市と協業しながら学生らと参画してきました。

「大学生だってもう現実主義者ですから、自分のためにならないことには参加したがりませんよ」と前置きした上で、未来カフェへの想いを語ります。

木暮さん そんな彼らが、一度勧めると、単位が取れるわけでもないこの場に、毎回足を運ぶようになったんです。それは、このような地域に飛び込んでの対話や、ファシリテーションなどへの挑戦に、教室では得られない確かな楽しさがあるからだと。

さらに、この“ソーシャル”な学びは、彼ら自身の社会での可能性を大きく“補完”していくと思うんです。だから、大学を卒業して、はい社会人という“断絶”した流れではなく、彼らにもっと“社会とのゆるやかな接続”の機会を与えていきたい。

そんな豊かな経験をもった若者たちこそが、これからの社会によい還元をもたらしてくれるのだと感じますね。

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ファシリテーターの山口さん

一方で未来カフェでは、会を重ねるにつれ、学生に加えて社会人の参加も増加。今回は、地方創生に向けたNPO起業のヒント探しや、若者が集うカフェ経営のための人脈づくりといった目的の人も。

ファシリテーター・山口さん 今後は都内に通勤していて、このベットタウンに夜遅く帰ってくるような人材にも、仲間に加わってほしい。そんな、一見、まちづくりに無関心そうな若者と、地元愛あふれる商工会の青年部との掛けあわせなどは、最初はかみあわなさそうだけど(笑)、きっと今までにない、おもしろいものが生まれる予感もしますね。

ここにいるみんなは、もう気づきはじめていると思いますが、誰もが “ソーシャルの担い手”であるということを、忘れないでほしい。

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「興味を持った方はぜひ遊びにきてください!」と事務局の高岡さん(一番右)。最後はみんなで“はむりん”のポーズ

市や大学が、若者に“伴走”しながらつくってきた、はむら未来カフェ。若者に見えているまちの風景を、否定も評論もせずに、同じ視点で見つめてきました。

2015年度のはむら若者フォーラムでは、「はむら未来カフェ」に加え、イベントやプロジェクトを企画・実践する人材を継続的に育てる「はむら未来サークル」の活動を推進していく予定。これまでの実行委員だけでなく、より多くの若者らに“実行のバトン”が渡っていくことになります。また、市の新人職員と、杏林大・木暮准教授のゼミ生とのコラボレーションでも、このサークルを盛りあげていきます。

羽村さん 自分のやりたいことを企画できて、市にサポートしてもらえる機会は貴重だし、とてもありがたい。「羽村が好きだけど地域活動に参加する機会がない」という人にとっても、ひとりでふらっと気軽に飛びこめる、まさに“サークル”のような雰囲気をつくっていきたいです。

と、実行委員の羽村さん。それを聞いた事務局の高岡さんも、今回の手ごたえを贈りかえします。

高岡さん 今までの活動では、どうしても行政のサービスを与える側と受ける側という雰囲気が残っていたのですが、“おもしろそう!”と、自ら関わりたいという声も挙がってきたのが、大きな一歩ですね。

今日発表されたイベントや、ほしい居場所のアイデアを具体化していって、自分の“好き”がまちづくりにつながるんだ、学校や職場でできなかったことでもやれる場があるんだ、と実感していってもらえれば、嬉しいです。

ここにきて、「羽村は、若者フォーラムは、どうあるべき?」という、“べき論”はもうやめて、“ありたい”に突き進んでいきたいと。そのみんなの“ありたい”が集まっていくことで、少しずつ自然発生的なコミュニティが生まれていき、 “心から住み続けたい羽村”という意識が醸成されていくのでは、と期待をしています。

信頼のバトンを交互に渡しあいながらと向かっていく先には、都会でも田舎でもない、今までにない未来へのコースが拓けていく予感がしますね!

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