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理由は「おいしいから」。0円で降り注ぐ太陽光だけで調理するソーラークッカー研究家 西川豊子さんに学ぶ「太陽と寄り添う暮らし方」

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

みなさんは普段お料理をする時、どんなエネルギーで調理しますか?キッチンに立って、ガスコンロをカチッとする方法、IHクッキングヒーターなど電気のエネルギーで調理するという方もいらっしゃるかもしれません。

私たちが普段から行なう「食べる」という行為に「調理」はつきものです。では、その調理する方法の中に誰でも自由に「0円」で使える「太陽光」を取り入れるのはどうでしょうか? 

これからご紹介する「ソーラークッカー」はその名の通り、「太陽で調理するクッカー」。太陽光の熱を利用し、食材を焼いたり、煮たり、乾燥させたりすることができる、電気もガスも薪も使わない、魔法のようなクッカーです。

このソーラークッカーを使い、調理の研究やその普及に20年余り取り組んでこられたのは、ソーラークッカー研究家の西川豊子さん。今回は西川さんの「ソーラークッカーを取り入れた暮らし方」の実践と、そこから見えてくる太陽に寄り添う暮らしのヒントをご紹介します。
 
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ソーラークッカー研究家 西川豊子さん

ソーラークッカーってどんなもの?

今回、見せて頂いたソーラークッカーは大きく分けて3種類。

左側は蓄熱式のソーラーオーブンと呼ばれるクッカー。右側は放射熱を利用したパラボラ型ソーラークッカーです。
 
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左:アメリカ製ソーラーオーブン、右:工房あまね製ソーラークッカー

パラボラ式ソーラークッカー「かるぴか」は中央に置いた黒い鍋が放射熱を吸収し、その熱で調理するもの。
 
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玄米もゆっくりふっくら炊けていきます。

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温めていたフライパンにホットケーキを流し入れ、蓋をします。この日はミックスベリーホットケーキ!

こちらはソーラーオーブン。中は150度以上にもなり、煮込み料理やクッキーなども焼けます。
 
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ホットケーキミックスでつくった生地が時間とともにふっくら焼き上げっていきます。

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1時間するとこんがり焼き色が!

こちらはソーラー乾燥機。発砲スチロールの中に黒の模造紙を張り、蓋をフィルム張りに。箱の上下に、空気の抜ける穴をあけることで、温まった空気が食品の水分と一緒に強制的に外にでる仕組みです。

スライスしたパンに砂糖をかけ、数時間置いておくと、パリパリのラスクが!ふかしたお芋は干し芋に。
 
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蓄熱式、放射熱式、乾燥式と3種類のソーラークッカーですが、じっくり調理したい煮込み料理や蒸し物は蓄熱式で朝からお日様の下に、焼いたり、炊いたりなどは直接鍋が熱を持つ放射熱式で調理。

また、干物やラスク、ドライフルーツなど保存食品づくりには乾燥式を使うなど、調理のあわせてクッカーを選ぶそうです。使うエネルギーは「太陽」だけ!

太陽光で調理した料理はおいしい!

今回、お話を伺った西川豊子さんは日本だけでなく、海外でもソーラークッカーのワークショップやその普及に努めている、いわばソーラークッカーの伝道師です。

ソーラークッカー研究家になったきっかけを西川さんは一言、「だって、太陽の力だけでお料理したものっておいしいんです」と笑います。
 
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NPO法人ちがさき自然エネルギーネットワークRENの副代表も務める西川さん。

20年ほど前に仕事の関係で、自然エネルギーに関するシンポジウムの手伝いに参加された西川さんは、そこで自然エネルギーへの取り組みに出会ったそうです。

もともとDIYや研究が好きだった西川さんは、自然にあるものを使いエネルギーを自分たちでつくるという取り組みに魅力を感じたといいます。その後、横浜NPOソフトエネルギープロジェクトに参加。

当時、導入されたばかりの「ソーラークッカー担当」になったことをきっかけに、ソーラークッカーの調理を研究、また普及に携わってきたそうです。

ソーラークッカーが導入された当時は、まだまだ使い方や可能性が未知でした。試行錯誤するうちに、太陽だけで料理するとなんでもおいしい!ってことに気がついたんです。

ゆっくり調理することでお米やお芋はデンプンが糖に代わり甘くなります。凝った料理も研究するうちにできるようになるともう楽しくて(笑)。「太陽だけでおいしいお料理はつくれる!しかもおいしい!」となれば使わない手はないですよね。 

もともと料理が好きなこともあり、普段から晴れた日はソーラークッカーで調理する西川さん。クッカー用の様々なレシピや調理方法も考案されてきました。

2年ほど前からは、神奈川県茅ヶ崎市の里山公園、里の家で月に一回「晴れた日はソーラークッキング」というワークショップも開催。訪れる人たちに太陽の光だけで調理できることや、そのおいしさを伝えています。
 
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玄米も炊き上がりふっくら。時間をかけてじっくり調理するから甘みや旨みが増すそう。

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「魔法みたい!」とみなさん興味深々!

太陽と寄り添って暮らすということ

太陽光や自然エネルギーと暮らすヒントや”学び”は、どこにあるのでしょう?
 
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ご自宅”ソーラーハウスにしかわ”では、独立型太陽光パネルを使用。24Wのパネル2枚は床下・屋根裏の換気扇用電源。20Wのパネルはボトルランプの電源や噴水のモーターの電源・車用冷蔵庫の電源に。

なにかエネルギーをつくるというと大変そうなんて感じるかもしれませんが、まずは「手を動かす」「行動する」から始めることが大事かなと思います。

「ソーラークッカーの魅力は”太陽の力だけでお料理できちゃう”こと。難しい道具も使わないシンプルなエネルギーづくり」と話す西川さん。

エネルギーのこと、ソーラークッカーのことをもっと身近に感じて欲しいという想いから、西川さんは誰でも身近なもので工作できる”西川式ソーラークッカー”も提案しています。

また「ほぼ”100円均一”で、できちゃうんですよ」と笑う西川さんですが、誰でも手が動かしたくなるようあえて”身近なもの”にこだわったと言います。
 
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左が放射熱を利用したもの。中央の黒い缶に水と生卵をいれておくとゆで卵に。右は西川さん考案の蓄熱式クッカー

発泡スチロール箱にガス台にひくアルミのマットを貼り、ダンボールをアルミ張りに工作した反射板を搭載。手づくり蓄熱式のソーラークッカー。
 
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日に当てるとみるみる内部の温度が上昇

エネルギーづくりや、オフグリッドと聞くと「独立型ソーラーパネル」などのイメージが先に立つかもしれませんが、「熱」に着目した場合、電気を熱に変換することは、思いのほか、たくさんの電気が必要です。

熱を手づくりするには太陽熱を熱のまま、最大限使うことが一番効率的です。

「ソーラークッキングは誰でも簡単に太陽熱を利用できます。だからこそもっと身近に感じて欲しい」と話す西川さんは、その想いから、長年改良を重ね”西川式ソーラークッカー”を完成させました。
 
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西川式ソーラークッカーつくりワークショップ風景。子どもたちも工作できるほどの手軽さ。

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my ソーラークッカーのでき上がり!

たとえ失敗しても、どうしたらいいんだろうって考えてみる。じゃあ、実際のソーラークッカーを見に行こうと行動する。そうやっていくうちに自然と太陽の活用や暮らし方のことに意識が向いていくのは素敵なことだと思うんです。

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お天気が良いので散歩にきたら、お天気のおかげでおいしいお料理を頂いたというみなさん。西川さんを囲んで笑顔。

一家に一台ソーラークッカーがある未来

現在、日照時間の長い海外の地域などで、薪や石油を使わず調理や飲み物を殺菌する方法として、ソーラークッカーの普及も徐々に増えているそうですが、日本ではまだまだ浸透していないソーラークッカー。

かるピカなどのクッカーは教育の現場や公共施設での導入も増えているそうですが、やはり「たくさんの人が使ってみる」ことが大切だと西川さんは話します。
 
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茅ヶ崎市の「green community リベンデル」にて開催された「エネルギーカフェ」第一回目の講師を務めた西川さん。ソーラークッカーのノウハウからおいしいお料理まで満載のワークショップに。

災害時の活躍も期待できるソーラークッカーですが、まずは普段から練習の意味も込めて使ってみること。体験していれば、自分の暮らしの中で自然エネルギーのことや太陽光、熱の活かし方のヒントになるはずです。

西川さんは言います。

一家に一台ソーラークッカーがある未来は、いそがなくていい、太陽の向きに合わせてゆっくり生きるそんな未来です。

「太陽の光がなければ調理できない」を不便だと思うのではなく、晴れたり曇ったりする空を眺めながら、ソーラークッカーを太陽の傾きに合わせて動かす生活。

それは、急ぎがちになってしまうわたしたちに、ふと自然のエネルギーのことや、「人間も自然の一部で生かされている」ことに気づかせてくれるのかもしれません。

晴れた日はちょっと空を見上げて、ソーラークッキングを楽しんでみませんか?

そこからあなたの「太陽に寄り添った暮らし」が見えてくるかもしれません!