デザイナーが仕事をする際に、環境に対する意識を高く持ってサスティナブルなデザインをすれば、地球の抱えている問題を解決する力を持つ、ということを伝えているプロジェクトがある。デザイナーによる、デザイナーのためのWEBサイト「Design Can Change」である。
サイトには5つのメニューがあり、「ISSUE」では現在地球上で起っている環境問題について、「CHANGE」ではデザイナーの仕事内容・役割・デザインの及ぼす影響力などを、どちらもスライドショー形式で分かりやすく説明してある。
この辺りの見せ方は、さすがデザイナーのWEBサイトという感じで、シンプルかつスタイリッシュなデザインは、本当にクオリティが高く素晴らしい。英語が分からない人でも、ビジュアルの美しさだけで最後まで見てしまいそうである。これが「デザインの持つ力」なのかと感じる。
「ACT」では、デザイナーが実際に環境に対してどのように行動を起こしていけばいいのか、順を追って解説している。
(1)勉強する
環境問題に対する情報が常に入手できるようアンテナを張り、サスティナビリティとは一体どういうことなのか、本や文章を読み、理解しようと努力する。
(2)考える
大きなことから小さなことまで、会社のあらゆる決定事項は環境を考慮したものになっているか、自分たちがデザインしている製品のサイクルはどのようになっているか、常に頭を使って可能性を検証すること。
(3)行動する
デザインしたプロダクトを売るのではなく、デザイナーならではのアイデアや専門技術を売る。物を作る時は、環境インパクトの小さい素材を使う、もしくは使い終わってもリサイクルできるものにする。できるだけ地元の業者と仕事をすることで、CO2排出量を抑える。
(4)情報共有する
自分の会社やデザインが、サスティナブルな社会のためにいかに貢献しているかを伝える。周りのデザイナーやクライアントも、サスティナブルな問題に関心を持てるように、ブログやWEBサイトを使って情報を公開する。
(5)力を合わせる
環境に対する配慮のある商品を、責任を持って買うようにする。同じような志を持つ異業種の人と交流を持ち、一緒に仕事をできるよう模索する。グリーンな政治家に投票するなど、小さな力を大きな力に変えていくこと。
この5つのステップは、デザイナーに限らずとも、サスティナブルな社会にしたいと思っているすべての人にとって必要なステップではないだろうか。デザインというのは、問題を解決するためのアイデアやそれを具現化したものなので、万人に通用するものになっているのだろう。
「COMMUNITY」では、「Design Can Change」に登録しているデザイナーが検索できるので、近くに登録している人が見つかれば、すぐに一緒に何かを始められるかもしれない。(ちなみに2009年7月1日時点では日本のデザイナーは2人)
「RESOURCES」では、サスティナブルなデザインをするために必要な情報や行動指南が、かなり具体的かつ現実的な状態で提供されている。例えば、印刷物を制作する時に紙選びの参考とするための「Green Paper Guide」や、とにかく日々の業務の些細なことから始めようというリスト「do more」など、デザイナーが今日から使えるリソースがPDFでダウンロードできるのだ。
しかも、PDFファイルを開くとこんなコメントが書いてある。
PLEASE DO NOT PRINT THIS DOCUMENT.
It looks nicer on your screen and you can help save a tree.この資料を印刷しないでください。
これはモニターで適切に見られるようにデザインされていますので、紙の節約ができます。
印刷してうっとりと眺めたくなるようなデザインだけに残念に思いつつ、こういう小さなところから、本当に環境に対する意識を変えていかなければいけないのだなと反省させられる。
デザイン会社がちゃんとサスティナブルに運営できているかチェックできる「Sustainable Design Checklist」は、どんな会社でも使えそうな項目が多いので、自分の会社でも一度チェックしてみてはどうだろうか。
Design Can Changeに登録しよう