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藤野電力とENERGY MEETに聞く、自然エネルギーの作りかた。green drinks Tokyo「エネルギーを取り戻そう!」 [イベントレポート]

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

グリーンズが毎月第2木曜日に開催している、グッドアイデアに出会う飲み会「green drinks Tokyo」。

4月のテーマは「エネルギーを取り戻そう!!!」です。トークゲストは、藤野電力の吉岡直樹さんと、ENERGY MEETの蘆田暢人(あしだまさと)さん。会場の一画では、藤野電力の春山卓治さんにマンツーマンで教えてもらえる「ソーラーパネル組み立てワークショップ」も実施しました。

なにはともあれ「自分で」発電してみよう

ソーラーパネルと言えば、一戸建て住宅の屋根に載っているイメージ。「アパート暮らしだし、お金もないし、縁が無いや」などと割り切ってしまいがちです。でも、例えば50ワットのソーラーパネルなら、団地やマンションやアパートのベランダにも十分に設置できるサイズで、電球の1つや液晶テレビの1台くらいは動かせます。なにも初めから多くを太陽で賄う必要は無いのです。

この50ワットのパネルと市販の機材や部品を組み合わせて、太陽光発電システムを手作りする方法を広めているのが、藤野電力。材料一式を製作指導付き4万2800円で提供して、各地でワークショップを開催しては、「ほんの一部でいいから、使う電気を自分で作ってみようよ!」と呼び掛けています。

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ワークショップで使う材料一式(工具類を除く)。主な機材は50Wのソーラーパネル、チャージコントローラー、バッテリー、インバーター、シガーソケット

ポイントは、「自分で」というところ。日本では、たいていの場所で当たり前のように安定した電気を使えます。その便利さの裏には、無責任→無関心→無知という年々深まる落とし穴がパッカリと大きな口を開けていました。そこに見事に落ちてしまったのが、今回の原発事故だったのではないでしょうか。次の時代を拓くには、いったん、エネルギーを自らの手に取り戻す必要があります。

藤野電力はオープンな地域活動

藤野電力の「藤野」は、英国発祥のトラジションタウン運動(詳細はこちら)を日本で初めて取り入れた町の名(現在は相模原市)。その活動には、6人のコアメンバーと地域の約50人が参加しています。

「会社ですか?とよく聞かれますが、NPOでもなく、地域活動のひとつです。組織運営に労力をかけたくないので、リーダーなどの役職も無いです」と話す吉岡さんの本職は、デザイナー。他にも、さまざまな職業や年齢のメンバーが自由にかかわっているそうです。

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吉岡さん(右)と蘆田さん(左)

日本の神話には、天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまった神様が、踊ったり歌ったり楽しいことをしていたら出てきたという話があります。僕らは、この「天岩戸方式」でやっていこうと思っています。

東日本大震災後の電力不足を受けて始まった活動ながら、悲愴(ひそう)感は皆無。あくまで笑顔で、「電気は自分で作れる!」という素朴で嬉しい発見を、手を動かしながら伝えています。

これまでに出張ワークショップを全国40カ所で開催して、パネルの発電能力で計2万1700ワット分のソーラーシステムを作ってきました。だいたい4人家族の一軒家10軒分ですね。

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ワークショップの様子

藤野電力が最先端のスマートグリッドではなく手作りのオフグリッドにこだわる理由について、吉岡さんは「身の丈レベルの電力と付き合うのは楽しいし、豊かな気付きを得られるから」と説明しました。

行政や観光協会やNPOとも連携していて、活動は楽しいけれど、すごく忙しい。自分で発電してみると作る大変さがよく分かります。次は電力消費量を減らす活動を考えています。

デザインの力でエネルギーを身近に

もう一人のゲストは、建築家ユニット「ENERGY MEET」の蘆田さんです。エネルギーと社会とデザインを結ぶ活動を、タイ在住の仲間と一緒に展開しています。

タイでは、地元の大学生と一緒に、250ワットのパネル4枚を水に浮かべるソーラーシステムを試作しました。

浸水した都市にハスの花のようなパネルが浮かんでいる想定図は、かなりシュールでしたが、洪水が多いタイならではのアイデアです。

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小布施エネルギー会議にて

日本では、長野県小布施町(おぶせちょう)で、人とエネルギーを結び付ける活動をしています。信州大学の高木直樹先生によると、25メガワットの太陽光発電で町内の電力を賄えるそうです。そこで、具体的に町のどこにパネルを置けるのか地図に書き込んでみました。

可視化したことで、「景観が美しいところには置きたくない」といった住民のニーズがはっきりしたそうです。――そんな興味深いトークが続くかたわらで、着々と小さな太陽光発電システムが完成しつつありました。

イベントの締めは点灯式!

R水素ネットワークから参加した木下芙美さんが、限定1名の今回のワークショップのお客さん。藤野電力の春山さんに教わりながら、圧着ペンチでコードの被覆をちぎり取ったり、ドライバーでコードと機材をつないだりしています。

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手本を示してくれるから、作業はスムーズ。

客席のほうでは、グループを作って今回の感想について話し合いが始まりました。発表の時間には、「複数企業が競合してエネルギーを売り始めるまでに今回のような草の根活動を広げて、企業と消費者の双方向から歩み寄れたらいい」「頭だけで考えずに動けるようになりたい。その点、ゲストのお2人はスゴイ!」といった発言がありました。

最後は、完成したハンドメイドの太陽光発電システムにライトをつなぎ、締めの「点灯式」です。ちゃんと回路がつながっていて明かりが灯ると、温かい拍手がわき起こりました。このシステムは、晴れた日には約200ワットの電気を生み出します。バッテリーもあるので、太陽が沈んでからもノートパソコンを4~6時間ほど使えます。

パネルの出力は12ボルトの直流(AC)。一般家電は100ボルトの交流(DC)用なので変換機(インバーター)経由が必須ですが、船舶向け電球や海外製ラジオなど12ボルト AC用の製品なら、直接つなげられます。その他、シガーソケットにも各種USBグッズがそのまま接続可能です。窓辺のデスクで、いろいろと工夫して太陽のエネルギーを使えたら楽しそうですね!

無事作り終えた木下さんは、「難しくはなかったです。高校の技術の授業を思い出しました」と余裕の笑顔。完成品はR水素ネットワークの事務所で、水の電気分解に活用するそうです。

ついつい天岩戸も開いてしまいそうな楽しい夜は、こうして更けていきました。
次回のgreen drinks Tokyoも、お楽しみに!

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参加者が味わったフィンガーフードを作ったのは、ケータリングカフェ「TORi」さん。なんとテーマにぴったりの、黒い竹炭パンで作った「ソーラーパネルサンド」が登場!

(Text:瀬戸内千代)