ISSUE まちづくり

3 years ago - 2013.04.11

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世界各地に広がる市民運動「トランジション・タウン」って? 地域の暮らしを考え、変えていく「藤野トランジションの学校」開校!

ミーティング風景

トランジション・タウン」という言葉を聞いたことはありますか?

トランジション・タウンは、イギリス南部の小さなまち、トットネスで始まった、持続不可能な社会から持続可能な社会へ移行するための市民運動のことです。「私のまちでもやってるよ」「友だちが関わっているよ」という人、意外と多いのではないでしょうか? でも一方で、具体的な活動についてはよく知らないという人も多いのでは?

日本でトランジション・タウンの活動が最初に始まったのは、神奈川県の旧藤野町(現相模原市緑区)です。以前にご紹介し、今では全国規模で活動している「藤野電力」も、トランジション藤野の取り組みのひとつとして始まりました。

そんな藤野で、トランジション・タウンについて学び、知恵を共有するためのスクール「藤野トランジションの学校がスタートすることになりました!

トランジション・タウンのこと、そして新たに始まる「藤野トランジションの学校」について、トランジション藤野のコアメンバー、榎本英剛さんに話をお聞きしました!

持続不可能な社会から持続可能な社会へ

まずはトランジション・タウンとトランジション藤野の紹介から。

トランジションとは「移行する」という意味の言葉です。現在のように石油に依存し、環境破壊が進む社会が持続不可能であることは、誰でも、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。

トランジション・タウンとは、持続可能な社会へ移行していくために、市民が自発的に地域の暮らしを考え、行動し、意識をもって日々の暮らし方を変えていこうとする運動のことです。イギリスのトットネスで、パーマカルチャー講師のロブ・ホプキンスさんが始めました。

トットネスでは、映画上映会、暮らしの基本的技術再習得講座、自然エネルギープロジェクト、そして地域通貨の発行など、さまざまなトランジション活動が展開されました。そしてそれは、関連団体、企業、行政などとも恊働関係を築くまでになり、たちまち地域全体を巻き込む活動にまで発展しました。

トットネスの活動内容からもわかるように、始まりは、話し合いや映画上映会といった、いわば市民レベルの小さな草の根活動です。しかしそれが、やがて大きな変化を呼んでいます。


東京都心から電車で約1時間。旧藤野町は山あいに家々がひしめく里山のまちです。写真は、比較的駅に近い、住宅が密集したエリア。それでも、周囲は自然がいっぱいです。

トランジション・タウンは壮大な社会実験!?

じつは榎本さんは、日本にトランジション・タウンを紹介し、普及に努めた人でもあります。トランジション・タウンは世界各地で実践されていて、日本でも藤野を皮切りに、流動的ながら40以上の地域が、トランジション活動に取り組んでいます。なぜここまで、トランジション・タウンは世界中で支持され、共感されているのでしょうか?

ポイントは、何をもって移行とするのかということです。たとえば大資本が出資して自然エネルギーが普及したとします。原発からきてたエネルギーが自然エネルギーに変わることは環境的にはいいことだし、そうすれば、もちろん持続可能な社会に向けて加速はします。でもそれだと、エネルギー源が変わっただけで、市民の意識は変わらないですよね。

トランジション活動は、たとえ最初のうちはわずかな力しかなかったとしても、市民が、自分たちの暮らしについて当事者意識をもって主体的になんとかしようとすること、消費者から本当の意味での市民になるということにすごく意義があると思います。

しかも、やってて辛いものだとうまくいかないけれど、同じ思いをもつ周りの人たちと繋がって、自分たちの創意工夫を活かしていくと、不思議と楽しみながらやれるんです。それが、トランジション・タウンが世界中でどんどん広がっていっている理由のような気がします。


トランジション藤野コアメンバーの榎本英剛さん

実際に活動に関わらないと分かりづらいのは、トランジション・タウンは「持続不可能な社会から持続可能な社会へ」という大きなテーマはありますが、その内容に関しては“なんでもいい”という自由さがあるからです。

トランジション・タウンは、今までのような仕組みありきじゃなくて、人や情熱ありきで生まれる活動です。共通して見るビジョンは“持続可能なまち”や“持続可能な暮らし”に向けて自分たちは何ができるのかということですが、どこに焦点を当てるのかは関わる人たちの自由なんですね。

たとえば芸術だっていいし、教育やエネルギーのことだっていい。地域の問題によっても、関わるメンバーの興味によっても内容は変わってきます。

よくわかりづらいって言われるんですけど、ある意味で、そのわかりにくさに特徴があるんです。生態系でもそうだけど、多様で多面的なほうが強いじゃないですか。僕は組織でも運動でも、そうだと思います。

そこがパラダイムシフトで、これは壮大な社会実験なんじゃないかなと思っています。やりたい人がやりたい時にやりたいことをやりたいだけやる、普通の感覚だと、それじゃ回らないでしょって思う。確かに難しい部分はあるけれど、でも本当に回らない? って(笑)。


藤野電力のミニ太陽光発電キット制作ワークショップ。現在は定例ワークショップは終了し(出張ワークショップは継続中)、新たな企画を検討中だとか!

トランジション・タウン“藤野の場合”

たとえばトランジション藤野では、その中にさらに森部(森林)」「藤野電力(エネルギー)」「お百姓クラブ(食と農)」「地域通貨よろづや(経済)」「健康と医療(医療)」といったさまざまなワーキンググループが存在します。これもメンバーから自発的に、興味をもって取り組みたいという話が出たものばかりです。

その中でも特に情熱をもって取り組みたいという人たちがコアメンバーとなり、グループをとりまとめて活動を行なっています。興味のあることに取り組むこと、そして無理なく楽しみながらやることで継続した活動となり、小さくても確実に地域に変化をもたらすことができます。

実際に、立ち上げから4年を経た現在、藤野電力は、全国でミニ太陽光発電キットの組み立てワークショップを開催したり、さまざまなイベントに自然エネルギーを供給するほど活動の幅を広げています。雇用も創出することができました。

森部では山主さんの協力のもと、女性や子どもでもできる「きらめ樹間伐」という手法を用いて人工林の間伐を進めています。そしていよいよその後の間伐材の使い道についても、具体的なアイデアが出始めています。


森部ではきらめ樹間伐のワークショップを定期的に開催。3月からはお隣の上野原市に住むNPO法人もりの会副理事長矢野智徳さんを講師に招いて、大地の再生法を学ぶ「ふじの自然学校」を開催しています。

地域通貨は、イベントや助け合いの場で貨幣の代わりに利用されています。東日本大震災の時には、この地域通貨のメーリングリストが、情報交換や被災地支援活動の連絡ツールとしても大活躍しました。通貨としてだけではなく、地域のコミュニケーションツールとしてなくてはならないものになっているのです。


地域通貨よろづやは通帳型。イベントの入場料や登録している飲食店の代金の一部に充てたり、物の貸し借りや不要品をあげたりといった時にも利用できます。

藤野は、田舎といえば田舎なんだけど、シュタイナー学園があってパーマカルチャーセンターもあって、もともと芸術家もたくさん住んでいるまちです。そういうまちって進取の気性に富んでいて、新しいことに対してわりとオープンなところがある。僕がいいアイデアをもってきたというよりは、藤野という場所にその素地がすでにあったんですね。

だから藤野で始めようと思った時は、もしここでうまくいかなかったらどこでやってもうまくいかないだろうっていうぐらいの気もちでした。肥沃な土地にポトッとタネを落として、それが花開いていってるという感じがします。


「お百姓クラブ」は、比較的新しいワーキンググループ。畑を借り受け、農作物を育てています。いずれは味噌づくりや加工品づくりにもチャレンジしたいそう。

「藤野トランジションの学校」が始まる3つの理由

トランジション藤野が立ち上がったのが、2009年の始めのこと。関わる人も増え、各ワーキンググループの活動も一定の実績を積んできました。そこで今回、トランジション藤野が主催して「藤野トランジションの学校」を始めることにしました。

トランジション・タウンについてのスクールは、日本では初めてのものだそうです。毎月1回、全7回の開催で、1回の講義は1泊2日。空きがあれば、単発での受講も可能です。今回、このタイミングでスクールを始めることにしたのには、大きく3つの理由があります。

ひとつは、トランジション藤野の活動がある程度の実績を積んできて、外に対して見せられるものが揃ってきたということ。もうひとつは、各ワーキンググループの活動が活発化し、独立した活動を行なうようになっていたため、すべてのワーキンググループが連携して取り組めるプロジェクトを行ないたかったということ。

そしてもうひとつが、まだ実践中の活動ではあるけれど、途中段階から内容や思いを多くの人たちに共有していきたかったという点です。

トランジション活動自体は楽しみながらやれるものですが、持続可能な社会を目指していくという点では、けっしてのんびりやっていればいいというわけではありません。だとしたら、いい事例があったらそれがすぐ広がっていくことが大事だと思っています。

トランジション藤野の活動も、まだ教えるっていうほど体系化されたものではないと思うんだけど、でも、今の段階でもシェアできるものはたくさんある。それなら、完璧に体系化されてから伝えるのではなくて、伝えられるものからどんどん伝えていこうと。


イベントも年間を通してたくさん開催されています。写真は、100%自然エネルギーによる映画上映会。

日本にも、持続可能な社会に向けたいい取り組みはたくさんある、と榎本さん。そこであえて、榎本さんがトランジション・タウンを持ち込んだ理由のひとつが、この「広がり」を感じたからだそうです。

トランジション・タウンは地域の活動なんだけど、目指してることは世界規模の話です。だから、ほかの世界のコミュニティと繋がりがないと、果たしてこれが世界の問題の解決になっているんだろうかという疑心暗鬼を抱えることになってしまいます。

トランジション・タウンっていう世界規模のネットワークの中でやることによって、自分たちは自分たちのまちのことをしっかりやっていれば、確実に世界の問題の解決に向かっていくっていう実感がもてるんです。

そして、お互いに知恵をどんどん共有していくことで、トランジション(移行)を加速させることができる。そういう意味で、地域のいち活動で自己完結せず、常に外に向かって開いてることが大事だと思っています。

榎本英剛さん

気になるスクールの内容は、トランジション藤野の活動紹介をベースに、実際のトランジション・タウンの取り組みを体感してもらう内容になっています。レクチャーを受けるというだけではなく、トランジションの考え方にある3H「Head(頭)、Heart(心)、Hands(体)」を組み合わせた、バランスの取れたワークショップを想定しています。

たとえば4月13・14日に予定されている第1回は、トランジション・タウンの全体像を伝えることから始めます。トランジション・タウンを紹介する映像を見たり、そこからそれぞれの疑問や感じたことをシェアするミーティングの場を設けます。

また、今回のスクールは藤野におけるトランジション・タウンをベースにした内容になっているので、藤野という地域を知ってもらうために、トランジションに関わりのある場所を巡るツアーなども企画されています。地元の方にゲストとしてきてもらい、もともと住んでいる人たちから見て、トランジションの活動がどう見えているのかという話も伺う予定です。

つまり、実際の活動と経験に基づいた、とてもリアリティのある内容になっています。

トランジション・タウンを感じよう!


旧牧郷小学校で開催される廃校アートフェス「ひかり祭り」は、100%自家発電で開催。藤野電力が配線レイアウトや電源調達を担当しています。

参加してくれる人たちがどんなまちに住んでいるかわからないし、何に関心があるかわからないので、藤野ではこういう活動をやっていますというひとつの事例として、共有して学んでもらえたらと思います。学ぶというより、どちらかというと感じてほしいといった方が近いかな。

「感じる」というのはまさにトランジション活動を知るのにぴったりな表現かもしれません。トランジション活動が始まってから、地域住民の横の繋がりがさらにしっかりとしたものとなり、このまちの面白さに惹かれて移住してくる人は増え続けています。

じつは筆者も藤野在住者ですが、取り組みの一つひとつはけっして大きくないはずなのに、なぜだか地域が変わっていっている、私たち一人ひとりがこの地域での暮らしを楽しんでいるという実感があります。この感覚は、実際に藤野の地を踏み、空気感を感じてもらうことで、伝わるものなのかもしれません。

「藤野トランジションの学校」は、トランジション・タウンがなぜこれほど世界各地に広まったのか、その魅力はなんなのか、また実際にどんな活動をしているのかを知ることができるまたとないチャンスです。

トランジション活動を始めたい人、すでに始めている人、自分たちの住むまちを自分たちの手で変えていきたいという人、単純に藤野に興味が沸いた人、まずはトランジション・タウンの世界観をこの機会に体験してみませんか?


「藤野トランジションの学校」のご案内

第1回 4月13日(土)14日(日)トランジション・タウン 担当:トランジション藤野
第2回 5月11日(土)12日(日)地域でつくるみんなのエネルギー 担当:藤野電力
第3回 6月8日(土)9日(日)森の再生への道筋を探る 担当:森部
第4回 7月13日(土)14日(日)自給自足のつながりを作ろう 担当:お百姓クラブ
第5回 9月14日(土)15日(日)超高齢社会をどう支える? 担当:健康と医療
第6回 10月12日(土)13日(日)自分たちの価値を見直そう 担当:地域通貨よろずや
第7回 11月9日(土)10日(日)新しいつながりが生まれる 担当:コミュニケーション

会場:藤野倶楽部 無形の家(神奈川県相模原市緑区名倉3743-1)
時間:1日目午前10:00~ 2日目午後4:00
参加費: 70,000円(全7回)また、各回限定数ですが1回12,000円で受講することが出来ます。 
 上記の金額に含まれるもの・・会場費・2日間の食費(2日目の朝食を除く)・温泉代
 上記の金額に含まれないもの・・宿泊費・2日目の朝食代
宿泊:別途1日4,000円で古民家での宿泊が可能です。
定員:20名(先着順)
お申込:以下のメールに氏名・住所・メールアドレス・電話番号(携帯をお持ちの方は携帯の番号も)・参加を希望される回・宿泊の有無をご連絡ください。
ttfujinoa[a]gmail.com

詳細はこちら


こんな方のご参加をお待ちしています!
・ 地域のために何か出来ないかと思っている方
・ 皆が参加出来るまちづくりの活動をお考えの方
・ 持続可能な暮らしに興味のある方
・ コミュニティづくりがお好きな方
・ 藤野地域に興味がある方
・ トランジション・タウンについて興味のある方

writer ライターリスト

平川 友紀

greenz シニアライター ストーリーライター/記録家。 物語性のある記事を得意とするストーリーライター。 1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。平川まんぼう宛でも、郵便物が届くのが、自慢。 facebook:https://www.facebook.com/captainmanbou twitter:@captainmanbou

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