今日の自分は、これまでの人生で影響を受けた人たちのエッセンスで形成されていると思います。“You are what you eat.”(あなたは食べたものでできている)ならぬ、“You are what you feel.”といったところ。その意味において、自分の一部は確実に「中島デコでできている」と思うのです。
千葉県いすみ市で持続可能な暮らしを実践するブラウンズフィールドの中島デコさんが、20年ぶりとなる書き下ろしエッセイ『中島デコのサステナブルライフ』(PARCO出版)を出版しました。
読んでいると、まるでデコさんが横で話しかけてくれているような錯覚に陥ります。ひとりで一気に読み終えましたが、おそらく私はずっとニコニコと笑いながら読んでいたことでしょう。
次々とページを進めたくなると同時に、終盤に近づくにつれ、読み終えたくない気持ちも顔を出します。「あれ? この感覚、どこかで味わったことあるな」と思いましたが、何のことはない、毎度ブラウンズフィールドから帰るときに襲われる感覚だったと気がつきました。
もしも誰かに、デコさんの好きなところを挙げよと言われたら、いつまでも話すことができます。では、崇拝して信奉しているのかと問われたら、それは断じてNoと答えます。なぜか。その答えこそが本書に詰まっているのです。
20年前に出版されたエッセイ集『生きてるだけで、いいんじゃない』と同様、デコさんが伝えることは限りなく地に足がつき、ひとつも偉ぶることがない根源的なもの。時代が変わり、社会の価値観も移り変わり、重ねた年月の分だけカラダが変化しようとも、地球に暮らすものとして揺るがない本質です。誰かの信奉なんぞ求めていない、自分らしい暮らしを追求していることが読み取れるでしょう。
最大限に心をオープンにして書いたであろうさまざまなデコさんの自分史を通して、これまで私が受けた影響とは、暮らしの中で感じ入る「ものごとの見方」だったと実感しました。
最後にひとつ、デコさんの考え方に触れるような本書のくだりをご紹介したいと思います。
デコさんは2014年、某国の大富豪からマクロビオティックの指導者として招待されます。全て秘密裏で進められるドラマティックな移動や、豪華絢爛な豪邸の描写。「こんなことってあるんだ?!」と声に出ちゃうような異世界です。しかしそんな非日常の中で感じたものこそ、足元に存在する価値観だったことが綴られていました。詳しくはぜひ、デコさんの言葉でご覧になってください。
読み終えた方と感想を交わせることを、楽しみにしています。