つくり手によるあくなき想像力の追求とともに、観る人の想像力を信頼すること。アニメーション映画とは、想像力の掛け合わせによって生まれるものだと思います。
かのアインシュタインも、「知識よりも重要なのは想像力だ」と語ったそうですが、その理由は「想像力には限界がないから」だとか。
ブラジル・サンパウロ生まれの映画監督、アレ・アブレウ氏の新作『ペルリンプスと秘密の森』も、観ているわたしの想像力の輪郭をどこまでも大きく広げてくれる作品でした。
2023年12月1日から劇場公開『ペルリンプスと秘密の森』
文明の利器を使いこなす「太陽の王国」から来たクラエと、自然環境と相性よく生きる「月の王国」から来たブルーオ。いがみあう国同士の出身ながら、同じ目的のために少しずつ行動を共にし始めるふたりが、この物語の主人公です。
ふたりの目的は森を破壊しようとする「巨人」から森を守ること。どうやって? それは、森を守れる唯一の存在だと聞く「ペルリンプス」を探すことでした。
想像力が豊かなみなさんはきっと、ふたりの敵である「巨人」が誰を示したメタファーなのか、と考えることでしょう。監督がブラジル出身と知れば、現在、最悪のレベルにまでに拡大しているアマゾンの森林破壊を思う人も少なくないはずです。
その考察はおそらく製作陣も想定内のこと。なぜなら映画は後半にかけて、より深く、より広く、これならどうだ、と観る人の想像力にチャレンジしてきます。
ペルリンプスは誰なのか? 巨人は何のために森を壊すのか? ふたりの祖国が対立するのはなぜなのか? 持つ者と、持たざる者を分けるものは何か? 平等とは? そして、自分とは?
視覚的にも、思わず感嘆の声がもれそうなほどにカラフルで、それがまた安心してイマジネーションの世界へといざなってくれました。特に、壮大な音楽とともに圧巻のシーンに飲み込まれそうな時は、けっして抗うことなく、素直に作品の世界観に入り込むことをおすすめします。
アインシュタインの言葉の続きに、この映画を勧めたい理由が重なりました。
Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.
(想像力は知識よりも大切なものだ。知識には限界があるが、想像力は、世界を包み込むことができる)
–Albert Einstein. (The Saturday Evening Post, 1929.)