もはや無視できない気候変動問題に対して、2021年に山と溪谷社から出版された、アメリカ人の環境保護活動家、ポール・ホーケンの『ドローダウン–––地球温暖化を逆転させる100の方法』は画期的な本でした。なぜなら、そのサブタイトルが示すように、これを実行すれば温暖化が食い止められるという具体的な方法が、科学的な根拠とともに100もリストアップされているのですから。
しかし、ポール・ホーケンの試みは、それだけでは終わりませんでした。2022年には、続編となる『リジェネレーション[再生]–––気候危機を今の世代で終わらせる』が刊行されたのです。「今の世代で終わらせる」という言葉には、これらの問題と向き合うときに陥りやすい無力感や諦念、次の世代に対する後ろめたさなどのネガティブな思いを打ち砕くような強い意志が感じられました。
いったい、このように言い切れる力強さは何か。これはひとつのムーブメントなのでしょうか?
再生を表す「リジェネレーション」は、greenz.jpが新しく掲げた合言葉「生きる、を耕す」につながる考え方としても軸になる言葉です。
そこで、これらの出版化にあたって、クラウドファンディンを敢行し、本が出た後もその考え方を広める活動をしている一般社団法人ワンジェネレーションの共同代表、久保田あやさんのもとを増村編集長とともに訪れました。
一般社団法人ワンジェネレーション代表理事
山梨県地球温暖化防止活動委員。子どもの頃から海の汚染や水をきれいにしたいと願う。子育てをきっかけにオルタナティブスクールの立ち上げなどに携わり、4児の母として子育てをしながら、アメリカの環境活動家、ポール・ホーケンの『ドローダウン』『リジェネレーション』(ともに山と渓谷社)に共感。その考え方を広めていく活動を行うほか、自らもリジェネレーションの実践として、教育機会の提供や、地域で子育てする仲間と循環型社会づくりなどリジェネラティブ活動を立ち上げたり、森の再生や環境再生型農業にもチャレンジしている。
greenz.jp編集長。国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経てフリーランスエディター。ミニマリストで三児の母。2020年に竹でつくったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」の販売を手掛ける、おかえり株式会社の共同創業者。2023年4月、WEBマガジン『greenz.jp』編集長に就任。長野県諏訪郡の9坪の家で、できるだけ家電は使わずに、DIY的暮らしを実践中。
この力強さは何なのか
ーー『リジェネレーション』は、その前に出版された『ドローダウン』を含めて、久保田さんが代表理事を務めている一般社団法人ワンジェネレーションが企画協力や資金協力などを行っています。これらの2冊を出版するに至った経緯を教えてください。
久保田さん はい。私がドローダウンの原書に出会ったのが、2019年でした。野崎安澄さんが代表を務めているNPO法人セブン・ジェネレーションズで、アメリカの社会活動家のリン・ツイストさんの日本版プログラムを提供していて、そこでポール・ホーケンの『ドローダウン』が紹介されていたんです。まず、本の中で「地球温暖化が解決できる」と断言されていることに驚きました。さらに、その方法が100もあると。
私は学生のときから環境問題を勉強していて、昨今の災害状況から、年々悪化する地球温暖化の現状や解決策が見えないことを知っていたので、こんなことを言う人は初めてで、衝撃を受けました。これは絶対日本語で読みたいと思い、野崎さんやいま共同代表を一緒にやっている鮎川詢裕子さんとワンジェネレーションの前身となるドローダウン・ジャパン・コンソーシアムを立ち上げることになり、本の出版を企画し、実現する活動を始めたんですね。
ーー増村さんは、長野に移住してから徹底的にミニマリストを貫いていますよね。今回、この本を紹介するのは、増村さんの意向でもありました。なぜこの本に関心を持ったのでしょう?
増村 私は、東京から八ヶ岳に移住して8年目ぐらいになりますが、移住のきっかけは東日本大震災なんですよ。あのとき原発事故が起きて、ようやく「私は一体何をやっているんだ」って、目が覚めたところがあって。例えば、日々使っている電気が、福島の原発でつくられていることは知っていたけど、遠くでつくられた電気を東京という大消費地で湯水のように使うことに、全く思いが及んでなかったことに愕然としたんです。
それまで自分が目を向けてこなかったことが、今の原発問題の根底にあると思ったんですよね。もっと一人ひとりがエネルギーのことに目を向けていて、自分の考えをもつような自立した社会になっていれば、 別の選択肢もありえたんじゃないかって。
そこから、一気に暮らしから、まちづくりから、気候変動から、政治や経済まで、すべてが自分ごとになりました。まずは自分が暮らしをどう設計するか次第だなと思って、それから徐々に家電を使わない暮らしにシフトしていくんです。
ーーエネルギー消費のあり方に疑問を持ったのですね。
増村 はい。久保田さんと同じように、このままでは 地球は持たないと、危機感を持ってきました。気候変動は、いろんなところで課題として取り上げられますが、絵空事のように言葉だけが流れていく現状を目の当たりにして、なぜこんなに危機感がないのかと、自分の考えと周りとのギャップに苦しんでいたときに、この本(『ドローダウン』)のクラウドファンディングを知りました。
地球温暖化を解決する方法が100もあることが、じつにセンセーショナルに感じましたし、「解決できる」と言い切ってもらえたことに力強さを感じ、応援したいと思いました。そして、さらに1年経って、すぐ2冊目の『リジェネレーション』が出てくる。このスピード感は一体なんなんだろうと驚きましたね。
西洋的アプローチの『ドローダウン』と
東洋的な『リジェネレーション』
ーー『リジェネレーション』は、前作『ドローダウン』から始まっている流れでもある。そもそもこのプロジェクトはどういう形で始まったんですか?
久保田さん 私が知っている範囲で言えば、編著者のポールは、小さな頃からとても自然の生き物が好きでした。おたまじゃくし、カエル、カケスにコオロギなどなど、家の周りで彼らが歌い踊るのが大好きでしたが、彼の育ったカリフォルニアでもどんどん環境は悪くなっていきます。「彼女(自然)が解体されていく……。彼女(自然)が運転席に座っていてほしかった」と彼はよく言っています。
そして安全な食を求めて、ボストンに自然食品の店を立ち上げ、中米や先住民、日本や中国での自然食品の本を読み、何千年もの歴史をもつ再生型農業について、土壌の本当の肥沃度について、再生農業をする人を先生として学んだそうです。そこから、地上よりも地中のほうがより生命がいて、生命を守っているということに気づいたことから、このリジェネレーション出版に至る道が始まっているそうです。
その延長線上で、社会や経済のシステムに対してもいろいろな考えを持つようになり、1999年に『自然資本の経済』という本を出版しています。それは、ドローダウンのように専門家と共同でチームを組む形で出版されて、アメリカの大学で授業に使われ、(環境教育の)教科書のような本として読まれるようになりました。
その後、彼は地球温暖化に危機感を抱くようになり、解決策を探りますが、誰に聞いても「そんなものはない」という反応しか得られなかったそうです。そこで2013年ごろから、自分で動くしかないと思い、2013年から貯蓄や老後の資金を全部費やして、世界各国の70人の科学者と120人のアドバイザーと一緒にドローダウン・プロジェクトを立ち上げて、既出の文献や学会発表された論文を一つひとつ検証し、100にまとめ上げていきました。このとき、すでに『リジェネレーション』の構想はあったと言っています。彼の中では2つで1セットですが、『リジェネレーション』を始めるときは、いちからメンバーを集めて、プロジェクトチームをつくったそうです。
ーー同時進行でプロジェクトを進めたと。2冊でどういった違いがあるのでしょう?
久保田さん 『ドローダウン』は、温室効果ガスを減らす方法がランキングでわかるようになっているんですね。それにかかるコストと、節約できるコストも表記して、科学的に検証された論文を元に説明したリストになっています。それに対して、私たちがどう生き、どうあればよいかにも言及しているのが、『リジェネレーション』。たとえば、『ドローダウン』にはあまり載せられなかった先住性、先住民の暮らしのことや、それがどう地球に貢献してきたかまで書かれているところも特徴的でしょうか。
これはプロジェクト・リジェネレーションのチーフをしていた方が来日した時に言っていたことですが、『ドローダウン』が西洋的なアプローチだとすると、こっちは東洋的で、それがむしろ大事だと。日本に暮らしている私たちにとっても、今の暮らしの中で見落としている視点がたくさん入っているわけです。
増村 『リジェネレーション』は考え方や哲学の面で、受け取るものが大きいですよね。
久保田さん はい。『リジェネレーション』冒頭の「本書の使い方」というところに、気候変動を解決する行動として「6つの枠組み」を紹介しているのですが、最初に「公平性」を掲げているんですね。まず私たちは奪い取った土地を返さなきゃいけないということを言っているんです。なぜ、公平性が最初に来るのかと、アメリカのプロジェクトメンバーに聞くと、今の社会は南と北に象徴されるように、ごくごく一部の人たちが温暖化ガスをたくさん出しているので、まずやるならそこからだと。そういう視点を持っている本は、おそらく温暖化関係の本では少ないと思います。
増村 確かに。
久保田さん 何度も読んでいるはずなのに、改めて読み直すと、まだまだハッとさせられることがたくさんあります。たとえば、「森林」の章に、使い捨てされるチラシやキッチンペーパーが北方のカナダやロシアの森から来ているかもしれないと書かれているのを読むと、「ああ、そうだった」と。意識が及んでないところで、世界はこんな仕組みになっているのかと気づかされるんですよ。
また、イギリスで先祖伝来の土地をたくさん受け継いだ貴族の人が、一部粘土質で耕作に不向きな土地を従来の農薬や人工肥料を使った農法で継続するのではなく、その土地からいなくなってしまった鳥が返ってくるような野生の土地に戻していったという話なども示唆に富んでいます。とくに野生に戻すやり方が書いてあるわけではないのですが、読んでいるうちに、自分でもできるかもしれないと、想像力が働いてくる。そんな受け取り方ができる本なのかと思っています。
批判を恐れずに行動するための視点が書かれている
増村 目次を見た時に、章立てが海洋から始まるんですよね。海洋、森林、野生生物、土地、人々、それから都市、食、エネルギー、産業と続いて、最後に、行動+つながりというふうにある。私は、本の最後に「行動+つながり」で終わることにすごく意味を感じました。ここには、どのような意図があるのでしょうか。
久保田さん よくポールは、「行動することがとても大切だ」と言っています。たとえば、彼が授業で赴くカリフォルニアの大学では、7割ぐらいの学生が気候危機について不安に思い、中には鬱になる学生もいるそうです。でも、彼は、それは正常な反応で、不安になるのは当然だと言います。 では、何が不安や鬱から回復させる手段になるかというと、行動することだと。ですから、行動をするために何を考え、何をしたらいいのかということを念頭にこの本を着想したようです。私たち生命が生まれた海に始まって、森林など私たちの生態系がどんなふうになっているのかを想像させてくれます。そして人間界のことになり、最後は人間特有の行動ともいえる産業で終わる。そして、いつも読者から何をしたらいいのかを聞かれるので、最後に「行動+つながり」のところに、行動のためのガイドラインを書いたそうです。
増村 先ほどあやさんがおっしゃられたように、本当に身近な自分の暮らしのなかに、気候変動に影響を与える炭素の“大規模な貯蔵庫”としての役割を果たす北方林(シベリア地方の針葉樹林)の木材が原料として使われていたりする。よく使う日用品として入ってきているとは、想像しにくいと思うんですよね。そこは一旦、距離をおいてみる必要があるのだけど、その距離をおくためのガイドラインが書かれているのだと思いました。
久保田さん 私たちの暮らしは、知らないうちに経済システムの中に組み込まれていますよね。『ドローダウン』を出版してから、『リジェネレーション』もですが、やはりこの分厚さなので、ひとりでなかなか読めないという声をたくさんいただいたので、読書会を開きました。そうすると、たとえば毎日使うシャンプーやお菓子にパーム油が使われていて、じゃあそれらがどのようにできているかというと、アジアの熱帯雨林を破壊し、プランテーションが行われている。そういうことを知ると、みなさん「え、そうだったの?」「それはちょっと私は許せません」みたいな反応があります。そうやって、自分の暮らしと日々の選択がどういう形で関わっているのかを知ることで、お母さんたちの行動もだんだん変わってきていますから。
増村 正しく知ることはすごく大事だなと思います。そういう意味では、この本では、いくつも企業名を出して、そのメーカーの行いがどんな影響を及ぼしているかまで書かれていますよね。日本ではなかなかできないことだと思います。メディアも広告主を意識するのか、なかなか批判をしない。
久保田さん 日本では周りと違うことを言うのがすごく難しいですね。批判を恐れるというか。私は学校で働いていたことがあるので、すごくよくわかるのですが、みんなが同じように前を向き、変わったことはしないという、いわゆる同調圧力と言われるような空気は、子どもの世界からあります。またネガティブなニュースには触れたくないという心理が働くのか、気候変動の記事はあまり人気がなくて読まれないという話も聞くし、自分が悪者のように批判されるのが気になるという人もいます。でも、だからといって、ごまかして伝えることでも、柔らかく伝えることでもないので、事実は事実として伝える必要があるでしょう。
先ほどおっしゃられたように、この本は、海洋に始まって、最後は産業で終わるのですが、産業のカテゴリーでもどんどん企業名を出して、その企業がどんな影響を及ぼしているかについて書いています。なぜ企業名を出したのかとポールに聞いたら、「コミュニケーションをとっていくことが大事なんだ」と言っていました。つまり、あなたの会社がやっていることは、こういう影響を招いているということを彼らは知らないので、伝えることが大切だから書いたと。そういう企業の中から、持続可能なリジェネラティブ農業に転換するところも出てきたそうです。
命を真ん中に置くと見えてくるものがある
増村 難しい質問かもしれませんが、「リジェネレーション」を人に伝えようとするときに、どういうふうに語ったらよいのでしょうか。
久保田さん ポールから最初にこの本(『リジェネレーション』)のことを聞いたときに、「すべての命は再生する」と言っていました。リジェネレーション(再生)という言葉は、私たち一人ひとりはもちろんのこと、コミュニティも社会も関係性も、生態系も地球もすべてが生き返ること。人間だけにとっていいわけでもなく、環境だけが良くなって人の生活が不便になることでもない。みんながより満たされて幸せになる方法を考えて、行っていこうということですね。本当にそうだと思って、この本の帯に「すべての行動と決定の中心に命をおく」という言葉を選びました。
ですから、私は「すべての命がつながれていき、生き生きとするもの」というふうに説明しています。結局、すべての命は生まれて死んで、でもまた生まれてくるじゃないですか。そのサイクル、循環の中にある命をまっとうすることが命の摂理そのものだし、生命の摂理から離れないことなんじゃないかって。
増村 なるほど、生命の摂理から離れない。
久保田さん 環境問題や温暖化問題を追いかけていくと、人間やってるのが嫌だと思うくらい、絶望的な気持ちになるんですよ。若い人たちが鬱になる気持ちがわかるというか。でも、私自身「再生」という考えに出会ったときに、自分がひとつの命のつながりに還っていくような、シンプルな納得感がすごくあったんですね。
例えば、本の最後の方で、ポールがこんなことを書いています。私、ここがいちばん好きなんですよ。
私たちは、炭素があるから生きていられる。本当にそうだと思いました。本来は、人間が土の中に隔離されていたものを掘り出して、大気中の炭素が増えたということが問題なのに、それを二酸化炭素を吸収すればいいとか、グリーン成長戦略といって原発を動かそうとするのは違いますよね。二酸化炭素の排出量を減らすという意味では正しいのかもしれませんが、みんなが幸せになるのかどうかというところでは違う。そういうことが命を真ん中に置くとわかるんですよ。
正しさを押し付けない
ーー先ほど、読書会の話がありましたが、この本が地域のお母さんたちにまで広がっていることが素晴らしいと思いました。久保田さんの実践の中で、どうやってみなさんが当事者性を持っていくのかについて、もう少しお聞きできればと思いました。
久保田さん 保育者のエコカレッジ「ぐうたら村」というところで開催して1年数ヶ月になります。私ははあまり、自分からやろうと言わないようにしているんです。ですから、今この地域でやっている読書会も保育園で関わっている知人から3回も勧められて始めました。少人数でお茶会のような感覚でやろうかなと思っていたら、初回で17人ぐらい集まってくれて驚きましたが、同時にみんな興味を持っているんだなあと嬉しくなりました。
ーー自分からやろうとしないというのはなぜですか?
久保田さん 正しさを強調したくないんですね。私は「これが正しいです」という態度が、今の温暖化をつくった原因の一つなんじゃないかと思っているんです。 学校も含めて今の社会は、成長して、成果を出して、お金を稼ぐべきものだとか、ちゃんと働くべきだとか、正しさを主張していて、その過程で、感じることをすごく置き去りにしていると思うことがあるんですね。本当は感じることや、生命としての感覚の方が大事だと思うので、正しさの押しつけになることはやらないようにしているんですね。
だから、みんなでこの本を読むんだけど、勉強するだけじゃなくて、みなさんにお米1合と野菜ひとつ、大根の切りかけでもなんでもいいから、家で余っている野菜を持ってきて、羽釜でご飯を炊いて、みんなで料理をすることからスタートするんです。それぞれの家にあるものを持ってきただけなのに、いつも5品とか6品できて野菜だけでも美味しいので、これこそ豊かだね〜と言い合っています。
そうすると自然と、子どもや家族の話など、いろんな話題が混ざってきます。だから、実はこの本の話はあんまりしていません(笑)。いちおう、ご飯も炊けた頃に各自読んで、感想を1枚にまとめてそれをシェアしたりしていますが、 だいたい4時間あったとすると、本のことは30分ぐらいしかやっていないですね。冬はみんなで、抱き麹づくりをしてたり、関係する映画を見たりとにかくいろんなことを楽しくやっています。その中で自然とお母さんたちの中から行動が始まってきているので、やっぱりみなさん、この社会やシステムに対して違和感を持っているんだなあと思います。
ーー環境問題がおしゃべりの中の一つになっているんですね。
久保田さん そうです。みんなで焚き火を囲んで、お昼ご飯を食べていると、「自分は有機農家でアルバイトをしているんだけど、野菜がいつも余っちゃって」みたいな話が出てくるんですよ。 そうすると「じゃあみんなで手伝いに行こうよ」みたいな動きになったりとか。「フードロスは正しいからやらなきゃ!」ではなく、みんなもったいないし、大切にしたいことがあると思うからやる。そういう自然な感じで行動が生まれはじめています。それでいいと思っているし、もともと何かやりたいと思っていたものが、表に出てきて、助成金とってコミュニティでコンポスト広めようとか、活発になってきています。それがとても嬉しいです。
手放すことで手に入るものがある
ーー都会に住んでいる人でも、できそうなことはありますか?
久保田さん たくさんあります。「都市」の項目を読むと、屋上農園、自転車に乗ること、歩いて暮らすこと……、あ、こんなにいっぱいあるんだって思いますよ。始めやすいもののひとつは、生ゴミのコンポストですね。先日、LFCコンポストのたいら由以子さんが来て話してくれましたが、コンポストを始めると、何か育てたくなるので、ベランダ菜園から徐々に畑を借りはじめる人が多いと、以前おっしゃっていました。自分で食べるものをつくる楽しさを知り、そこに生態系ができはじめたりすると、それこそ自分ごとになって続いていくし、広がっていくんですよね。ベランダで小さな太陽光パネルで充電してみたり。衣食住を心地よくしていけばよいのだと思います。
ーー増村さんは、コンパクトな住宅に住み、家電をなるべく使わない、つまり消費電力を減らすという実践をされていますよね。電気を手放してみることで、得たもの、気づいたことってありますか?
増村 例えば今住んでいる場所が標高1,000mの地域なので、クーラーや冷蔵庫を使うのをやめたんですね。とくに冷蔵庫って、物理的に大きいですよね。うちは9坪の家なので、あの大きな物体が家の中にないのは実はすごいことで、ミニマリストとしては、シンプルに嬉しいことだったりします。
また、私は音に敏感なところがあるので、夜中に聞こえてくるモーター音が気になるんです。あれがないだけで、私にとってはすごく心地がいい。ご飯を炊くのも炊飯ジャーではなくてお鍋で炊いていますが、その方が美味しいんです。もはや電気が嫌だからということではなく、美味しいからそうしている自分もいたりする。手放すことで手に入るものはたくさんあるんです。
久保田さんによると、『リジェネレーション』出版以降、アメリカでは本と連動して、気候危機をめぐる課題と解決策を探る「ネクサス」というウェブサイトが立ち上がっているそうです。それぞれの解決策にしても、個人や投資家、企業、自治体、NPOなどのステークホルダー別に何をすればよいかが紹介されていて、この本の中に書ききれなかった対策まで網羅されているのだとか。
日本では、久保田さんたちのワンジェネレーションに現時点で100名が登録し、活動を盛り上げています。昨年この本を学校の図書館に寄贈するためのクラウドファンディングを行い、すでに220校に本が行き渡り、さらには本を使った授業を届けていくための活動が行われています。また、日本版ネクサスを作成中です。日本の中での事例を調べて、まとめ、「何をしたらいい?」に応えていきたいと秋ごろにアップすることをめどに進行中とのこと。
個人の動きとしては、リジェネラティブな暮らしを実践していこうという人が現れて、自分たちのできるところから自発的に行動する人が少しずつですが増えていると言います。
よかったら、みなさんもこの本を読んでみてください。そして、再生のムーブメントに加わりましょう!
– INFORMATION –
〜自然環境を再生して、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻す〜
(2/15までのお申し込み、先着30名は早割!)
本カレッジは「環境再生」を学ぶ人のためのラーニングコミュニティ。第一線で挑戦する実践者から学びながら、自らのビジネスや暮らしを通じて「再生の担い手」になるための場です。グリーンズが考える「リジェネラティブデザイン」とは『自然環境の再生と同時に、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻すような画期的な仕組みをつくること』です。プログラムを通じて様々なアプローチが生まれるように、共に学び、実践していきましょう。