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節電以外にも、電力ひっ迫の解決策はある。省エネ住宅をつくり続けるオーストラリアの建築事務所に学ぶ、太陽と風をいかした暮らし。

私は今年の夏から、セルフリノベーションした、土や漆喰などの自然素材を使った木造の古民家に暮らしはじめました。
そこで驚いたのは、猛暑日以外はエアコン要らずだったこと。肌寒くなってきた最近は、陽当たりの良い時間帯はカーテンを開けると暖かく過ごすことができています。

私のように古民家をリノベーションして暮らす人もいる一方で、日本で新しく建てられる住宅の数は毎年約85万戸(※)。家を建てるためには木材やガラス、断熱材など、あらゆる資材の製造や調達過程で二酸化炭素を排出します。さらにエアコンやストーブも使うので、家をつくってから住む過程で、多くのエネルギーを消費し、環境に負担をかけているのだそう。

(※)国土交通省 建築着工統計調査報告書

今回ご紹介するのは、オーストラリアにある建築事務所が提案する、エネルギー消費を少なくして暮らせる住宅。「エネルギーに頼らない暮らしって、不便なことも多いのでは? 」という疑問を覆すかもしれません。

持続可能な家づくりにこだわる理由

一見、小さな商業施設のようにも見えるこの建物。Green Sheep Collectiveという建築事務所が設計した、4世帯が暮らせる集合住宅です。

これまで「Green Sheep Collective」は、主にメルボルン市内で新築とリノベーション合わせて12の住宅の設計を手がけてきました。それらはすべて、エネルギー消費を少なく暮らせるように設計されています。

手がけてきた住宅の一部。どの家も窓が大きくて開放感が溢れています。

ディレクターのShae Parker McCashenさん(以下、シェイさん)は、20年以上建築業界で働いた経験があります。

持続可能な住宅をつくることの意義について、シェイさんはこう話します。

建築家として、世界中で二酸化炭素の排出量が増加しているのは、建築業界に一因があると捉えています。持続可能な住宅をつくることで、建築業界に新しい動きを生み出せると思っています。

Green Sheep Collectiveのメンバー。右から2番目がシェイさん。

エネルギー消費削減のポイントは、太陽と風の入りかた

今回は、彼らが手掛けた「Alphington Townhouses」という集合住宅を取り上げます。この設計モデルは住宅市場において革新的だと評価され、オーストラリア国内の建築デザインや集合住宅デザインに関する賞を3つ受賞しています。では、どんな工夫が凝らされているのか見ていきましょう。

使われている材料は、維持に手がかからず、環境への影響が少ないもの。たとえば、外装材には地元ビクトリアで調達された広葉樹のアッシュ材を使うことで、外壁そのものの耐久性を高めているのだそう。また、屋根や壁、床には断熱材を使い、外の冷気や暖気を遮断しています。

1階部分に使われているレンガはリサイクルされたもの。

それぞれの部屋には、外から差し込む光を最大限取り込めるように大きな窓を採用。

一般的な集合住宅では、日当たりが悪い部屋ができてしまうこともあります。しかし、あえて床面積を減らして中庭をつくったことで、日当たりも風通りも良い快適な空間を実現。

中庭に面した大きなスライド式の窓から入ってくる空気は、2階にも循環する煙突効果のおかげで、冬でも暖かく過ごすことができるのだそう!

また、各部屋のドアをスライドにすることで、場面に応じてドアを開けて拡張でき、ドアを閉めればプライバシー空間が完成。また、効率的に風を取り込むこともできそうです。

各部屋に大きなスライドドアがある住宅は、日本では珍しくありませんが、なかなか取り入れられてこなかった国・地域もあるそうです。

自由にドアを活用することで、太陽や風という自然のエネルギーを効率的に取り込み、快適な室内環境に。

エアコンや電気などへの依存が減れば、このご時世にはありがたい節約にもつながりそう。

さらに、消費電力が減ることで、猛暑などによる電力ひっ迫の解決にも貢献できるかもしれない。

家計と環境、どちらにもやさしい暮らしかたが、より自分ごとになってきました。

住環境を見直してみよう

私はこれまで、エネルギー消費を抑えた暮らしに対して、電気を完全に自給自足するというイメージを持っていたので、自分にはできない生活だな・・・と思っていました。

でも、「Green Sheep Collective」のつくる住宅は、都会的な見た目でありながら、太陽や風といった自然のエネルギーを存分に取り入れていて、無理なく電気の消費を抑えた暮らしができそうですね。(実際に私自身が太陽や風をいかしながら電気の使用を抑えた生活をしてみて、無理なく取り組める暮らしだと実感しています。)

もうすぐ冬本番を迎えますが、政府から電力需給の見通しが発表され、決して楽観視はできない状況です。これまでも節電に取り組んできた方も、風の通り道や日当たりを工夫しながら暮らしてみてはいかがでしょうか。

エネルギーをなるべく使わない「我慢する省エネ」は不便になってしまい継続も難しそうですが、「Green Sheep Collective」が手掛ける住宅のように、「自然エネルギーを活用した省エネ」であれば、便利で快適な暮らしを維持しながら、無理なく省エネを継続できるのではないでしょうか。

家の外にはたくさんの自然エネルギーが溢れているので活用しないわけにはいきませんよね。
エネルギー消費を前提としない発想を、私たちも身近なところから暮らしに取り入れてみたいと思います。

(Text: 生団連)

– INFORMATION –

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[via GreenSheepCollective, INHABITAT, archello]

(編集校正:greenz challengers community)