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もう、まちづくりは誰かに任せない。自分で学び、実践し、より素敵なまちをつくりたいあなたに。オンライン図書館「The People’s Design Library」

2016年6月15日に公開した記事を再編集してお届けします!

みなさんは、自分が住んでいるまちをもっと暮らしやすくするためには、どんなものが必要だと思いますか?

公共駐車場が増えたら…
子どもたちが遊べる公園ができたら…
ゴミの違法投棄をなくせたら…

これらはごく一部の例ですが、他にも「もっとこうだったらいいのに」と思うことは、人それぞれあるのではないでしょうか?

最近では、このような思いを形にするために必要な知識や技術を、講座やワークショップという形で学べる場が増えてきました。日本では、11月からgreenz.jp副編集長がディレクションする「メディコス編集講座」を共に展開する、岐阜市の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」による「シビックプライドプレイス」など。

まちづくりは、もはや妄想やアイデアを誰かに預けて、まかせることではないのかもしれません。「こうなってほしい」という願いを自ら実現するべく邁進する機会は、あちこちにあるのですから。

しかし意を決して学び実践をし始めても、踏み出せなかったり、悩み迷ったり、似た目標を持つ人はどんな動きをしているのだろうと知りたくなったり。そんな人たちに対して、アメリカ・テキサス州のダラスのまちづくりNPO「buildingcommunityWORKSHOP」はオンライン図書館を運営しています。その名も、「The People’s Design Library」。一体どんなものか、ご紹介していきましょう。

誰もが参加できるしくみが隠されたオンライン図書館

このオンライン図書館には、”GUIDES”、”INSPIRATION”、”[BC]PUBLICATIONS”の3つの項目があります。

”GUIDES”は、まちづくりに関するマニュアル。ここには、専門技術を必要とするものはなく、誰もが始められるものばかりが集められています。

例えば、「まちの公園をよくしたい!」という人のためのマニュアルを見てみると、最初の章には政府や自治体がどのように公園の運営に関わっているのか解説されています。そのうえで、日々のメンテナンスを改善してほしい、新しい遊具がほしいなどのリクエストや問い合わせを、政府や自治体に伝えるための手順が細かく記載されているんです。

「もっとこうなったらいいのに」と思っても、いざ企業や自治体にどのように伝えれば動いてくれるかと考えると、なかなか難しいもの。でも、このようなマニュアルがあれば、住民側の問題意識も明確になり、政府や自治体側にとっても住民のニーズにあった的確な対応が実現できそうです。

イラスト付きで、誰にでも分かりやすい。

“INSPIRATION”では、他の都市で行われたまちづくりの成功事例が紹介されています。経験がなくても、このページを通していろいろな事例を知ることで、自分のまちでも実践できそうなことを見つけたり、ここからヒントを得て全く新しいアイデアが生まれることも!?

不法投棄だとか危険運転のような、まちに住む住民にとってネガティブなことをどう解決するかを考えるのも大事。だけど、同時にポジティブで、より美しくするためのアイデアを探ろうという人も多いはず。たとえば、私のもとには「コミュニティガーデンやLittle Free Libraryってどう始めたらいいの?」と質問が来るんです。

とは、「buildingcommunityWORKSHOP」のシニアデザイナー、Lizzie MacWillie(以下、リジーさん)の言葉。

屋外につくられた小さな公共図書館の事例集の1ページ。「自分のまちに図書館がほしい」と思っている人はもちろん、「あったらいいな」を実現する方法として気づきがありそう。

さらに”[BC]PUBLICATIONS”には、今までにダラスで行われてきたプロジェクトや近隣地域との関係性について書かれたレポートが集められています。自分の住む場所や近隣地域とのつながりをよく知ることは、これからつくろうとしている新しいまちのビジョンを考える上で、とても重要な情報ですね。

ダラスの公園の歴史をまとめたレポート。1910年から10年単位で、どのような背景で公園が増えてきたか示されている。

そしてこのウェブサイトでは、住民や地域のまちづくり活動家など、誰もが、マニュアルや素敵だと思った事例を提案できるようになっているのです!

住民が集まって話し合って進めていくまちづくりでは、どうしてもリーダーとなる人たちが必要となり、ハードルの高さを感じてしまいがち。しかし、ウェブ上でそれぞれの得意分野を活かしてマニュアルをつくったり、自分のまちでやってみたいプロジェクトを提案することなら、難易度もぐっと下がり、多くの人々を巻き込むことができそうですね。

すべての住民に、まちづくりに参加する権利がある

このプロジェクトを始めた「buildingcommunityWORKSHOP」のシニアデザイナー、リジーさんは、ダラスのまちづくりについてこのように話します。

まちづくりって、地域ごとに資源も政策も違うため、地域によってやり方が違います。わたしたちは、いろいろな情報を集め、今までになかった新しいまちづくりを始めるために、この「People’s Design Library」をつくったんです。

すべての住民に、まちづくりに参加する権利があると信じています。だからこそ、みんながまちづくりに参加できるよう必要な知識と技術を身につけることを手伝いたいし、何よりまちづくりを楽しんでほしいんです!

リジーさん

まちづくりにもっと関わりたいと思う人々がいる一方で、もっと多くの住民と自分たちの住むまちを考えたいという人も多いはず。しかし実際には、一部の人々が中心となり、その周辺にいる人々が参加してまちづくりが進められているケースもあり、「なかなか多くの住民を巻き込めない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

なかなか多くの住民を巻き込めないのは、彼らがまちづくりに対して消極的なのではなく、どのように参加していいのか分からないだけなのかもしれません。

このような学びと実践の場をつくるのは難しくても、「People’s Design Library」を参考に、人々の暗黙知や経験を共有する場所をつくり、住民それぞれができる範囲の貢献でまちづくりに関わっていくことが、全市民参加型のまちづくりを実現する第一歩になるのではないでしょうか?

[via CITYLAB, IMPACT DESIGN HUB, Knight news challenge, The People’s Design Library retrieved June 2016]

(Text: 神本萌)
(編集: スズキコウタ)