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小さいまちから、世界に通ずる「学び」のあふれる場へ。秋田県五城目町で「何してもいい」フリースタイルの地域おこし協力隊とは? #仲間募集

こちらのグリーンズジョブ上での求人募集は終了しました。

学びのあり方が多様化しているいま、各地でさまざまな実践がはじまっています。
そのひとつ、秋田県の五城目町(ごじょうめまち)は「世界一子どもが育つまち」をスローガンに掲げ、地域をフィールドにした学びの場として注目を集めています。

五城目町は町内に小・中学校がそれぞれ一校ずつ。そんな小さな町から世界に通ずる大きな視野で活動しようと、2013年から地域おこし協力隊や起業家、町民が様々な活動に取り組んできました。

そして今回、さらにその「学び」を軸としたまちづくりを加速させる地域おこし協力隊を新たに募集することになりました。

気になる業務内容は「何してもいい」。
いや、「何してもいい」と言ってもねぇ…。と、戸惑うかもしれませんが、その言葉の真意に迫るべく、五城目町で地域おこし協力隊の運営を行う「ドチャベンジャーズ」の柳澤龍(やなぎさわ・りゅう)さん丑田香澄(うしだ・かすみ)さんに話を聞きました。

少子高齢化が進む町を「学び」のフィールドに

五城目町は秋田駅から車で40分ほどのところにある人口約8500人の町。町の大部分は山林ですが、中心市街地は八郎潟町にも隣接し、秋田市中心部からのアクセスはいい場所にあります。町の中心には朝市通りがあり、500年以上続く朝市が今も月に12回ほど立ち、名物となっています。

秋田県は日本で最も少子高齢化が進んでいる県ですが、五城目町もその例に漏れず、少子高齢化が問題となっています。その対策として、移住促進、産業振興などを目的に2013年に、廃校となった馬場目小学校を地域活性化支援センター(通称BABAME BASE)とし、地域おこし協力隊の受け入れを開始、柳澤さんと香澄さんは2014年に地域おこし協力隊として着任しました。

柳澤さんは東京都出身、IT企業に勤めたあと地域おこし協力隊として五城目町に移住。香澄さんは秋田市出身で、進学で東京に行き、2012年に出産後の母親に寄り添い支える“産後ドゥーラ“養成・認定を手がける「一般社団法人ドゥーラ協会」を共同設立するなどしたあと、家族で五城目町に移住しました。

3年間の協力隊の任期を終えたあと、柳澤さんやBABAME BASEに入居する起業家らが共同代表となり、五城目町内の土着企業・個人が集まる一般社団法人ドチャベンジャーズを設立。現在も引き続き、地域に根ざした挑戦や「学び」を軸とした五城目町の地域活性化に取り組んでいます。

協力隊として町の人たちの「やりたい」を実現する

柳澤さんや香澄さんら協力隊や起業家による地域発の挑戦があいまって、様々な移住者もやってきたことで、五城目町は一部から注目される存在になりました。国の地方創生の優良事例として、首相官邸での事例発表なども実施されたことも。

おふたりの地域おこし協力隊時代の活動とはどのようなものだったのでしょうか。

丑田香澄さん

香澄さん 協力隊としての仕事はBABAME BASEを活用するところから始まりました。役場が、若い移住者を呼ぶために、小さなベンチャーをいっぱい入れて良質な仕事の場に、とする方針を立てたので、それに沿った仕事です。

実際、私の夫(丑田俊輔さん)は東京でベンチャーをやっていて、五城目が面白そうだということで秋田支社をつくることになり、家族で移住して、会社はBABAME BASEに入居しました。地域で起業した会社など含めて3社でスタートして、増やしていこうという方針でした。

なので、協力隊の主な任務は移住定住促進や仕事づくりだったんですが、町の度量が大きくて。目的達成につながるなら何をしてもいいよ、まず半年くらいはたくさんの町民とつながってほしい、とあたたかい言葉をかけていただいたんです。

それで色々なことをやろうと、まずは町の人たちが何を考えているか知るために、「協力隊の自己紹介をするから町のみなさん集まってください」って流しそうめんをやったんです。

自己紹介を兼ねた流しそうめんの様子(写真提供:ドチャベンジャーズ)

そこから町の人たちと五城目町をどうしていきたいか話すようになったそう。少子高齢化は問題だけど、この町で暮らしているなかで、「カフェがあったらいい」「映画館があったらいい」「朝市に活気を取り戻したい」といったように、たくさんの声が出てきたと言います。

また、みんなでアイデア出しワークショップをやり、そこから生まれたアイデアでヨガをやったり、雪山で遊ぶイベントをやったり、時にはゲスト講師による勉強会を開催するなど、町の人たちの「やりたい」という思いを応援し、さまざまなイベントや企画を実現していきました。

雪遊びイベントにたくさんの親子が参加している様子(写真提供:ドチャベンジャーズ)

香澄さん その中で、五城目出身でこの町で子育てをしているママさんたちなどから「起業っていうと一部のITができる人がやるものだと思っていたけど、そうでなくて、やりたいことを自分で叶えるものなんだってわかったから、私もやりたい!」って言ってくれる人が出てきたんです。

そのうちの一人の佐沢由佳子さんは「小さい頃から慣れ親しんだ朝市に活気を取り戻したい」という思いを持っていました。

「朝市をなんとかするのは壮大な話だけれど、思いを口にする場が生まれ、共感してくれる仲間ができた」と言ってくれて、「もっと若い世代が出店してもっと朝市に興味を持ってくれたら、物を売るだけではなく、多世代の交流や学びの場として価値があるのではないか?」と一緒に活動するメンバーを集めて「五城目朝市わくわく盛り上げ隊」をつくり、現在の「ごじょうめ朝市plus+」につながる活動をはじめたんです。

「ごじょうめ朝市 plus+」では地元の野菜や山菜のほか、菓子やハンドメイドなども並ぶ。子どもたちによる出店や、学生による体験ブースなども

香澄さん この「朝市plus+」がきっかけになって朝市が賑わってきて、その結果、朝市通りに新しいお店ができてきました。その一つが「いちカフェ」で、店主の坂谷彩さんは当時勤めていた銀行を辞めて、子どものときから夢だったというカフェを始めたんです。

移住者だけでなく、地域の女性達が生き生きと挑戦する環境を整えるべく、女性の起業の一歩を応援するプログラムを開催し、女性達によるチャレンジが広がっていきました。他にも、いまBABAME BASEに入っている「いちご美容室」の石井智美さんは「自分の美容室を持って、さらに老人ホームを訪ねておばあちゃんたちの髪を切りたい」と起業しました。

そういう行動が連鎖していって、外から来た人と町の人が融合しながら、いますごく多様でカオスで面白い町になってきているんだと思います。

柳澤さんと香澄さんたちが協力隊として赴任したのは2014年、「いちカフェ」がオープンしたのは2018年。協力隊時代に、移住起業家を呼び込むと同時に町の人たちの「やりたい」を応援することでまいた種が、その後、芽を出しはじめ、五城目町は少しずつ変わってきたのです。

柳澤さんは自分たちの考え方も、活動を続ける中で変わってきたといいます。

柳澤龍さん

柳澤さん 僕がいま大事にしたいと思っているのは、町で何が起きているのかと、自分がまわりの状況に対して何を感じているかについて意識的になることです。この8年間の学びとして、あまり町の課題によらなくていいというのがあります。

人口減少や雇用創出、六次産業化といった課題を暮らしの中で感じることはほとんどありません。それよりも、例えば香澄さんの娘さんがダンスを習いたいときに、いまは秋田市にしか教室がないけど、町出身のダンサーがいるから体育館でできるんじゃないか、というような、自分にとっていま大切だと心から感じていることを、あるものの中で形にしてみて、それを積み重ねていきたいと思っています。

3年くらい前までは、社会問題に依存していたというか、まちづくりという課題があることで僕はここにいていいと思えるような精神構造がありました。でも、いまは何に取り組んでいようとそのことに満足しているのであればいいと思っています。それは誰に対してもそうで、その人がその人であればいいと思っている。

それは協力隊で来てくれる人についても言えて、この町に来て取り組む中で、その人が生きてきた中で見つけた「こういうことをできたらいいね」ってことに取り込んでもらえれば、それでいいと思っています。

まちづくりを少子高齢化や雇用創出という大きな問題で考えるのではなく、小さな問題解決の積み重ねで実行しようとする姿勢が町の人たち(の一部)の行動を変え、それが町を魅力的にし、移住者を呼び込むことに成功した。そんな五城目の歩みが見えてきました。

廃校になった小学校を活用した「BABAME BASE」

地元の人と外から来た人の交差点

香澄さんの話に出てきた「いちカフェ」の坂谷彩(さかや・あや)さんにも話を聞きました。坂谷さんは五城目町出身、香澄さんたちに出会う前は「ごく普通の暮らしをしていた」といいます。

坂谷さん 会社員として働いていたときは9時から17時まで銀行で仕事をして、子どもは保育園に預けて、旦那は仕事から帰ってきてご飯を食べて…という生活でした。それももちろんよかったんですけど、香澄さんたちと過ごすようになってから、イベントの打ち合わせや相談などで忙しくなって、遅く来た青春みたいで楽しかったんです。

坂谷彩さん

坂谷さん わたしは地元民ですけど、外から人が来てくれて生活が楽しくなったし町が好きになりました。だから、地元で生まれ育った他の人たちにも、彼らを紹介してより多くその気持になってほしいと思って。でも誰でも入って行けるわけじゃないじゃないですか。だから、コミュニティハブみたいな場所をつくれば、地元の人と外から来た人が交われるだろうな、そういう交差点をつくりたいなって思ったんです。

ここは常に移住者もいれば町民もいれば、年代ばらばらで旅人たちも座ってるごちゃ混ぜの交差点なので、新しく外から来た人もすんなり入れる。そういう居場所があるから安心しておいでよ、みたいな気持ちでいます。

香澄さんも「このカフェがあることが大事」と言うように、「いちカフェ」があることで、町の人でも混ざってくる人がいる。そうして外から来た人と町の人がじわじわと混ざり合っていく場所になっているようです。

坂谷さん 最初、協力隊や移住者からこの町の魅力に気づかせてもらったときは全町民にこの感動をシェアしたい! って意気込んでいたけれど、いまは少しずつ共感が広がっていったらいいと思っています。何よりもまず自分たちが楽しむことが大前提で、そうした中で、町の暮らしや偶然の出会いを楽しむ人の輪が広がっていくといいな、と。

「学び」こそが、まちづくりの根幹

移住してきた人たちと町の人たちが、この8年間、自分がやってみたいことに取り組んできた結果、五城目町は少しずつ変わってゆき、今後もそれを積み重ねていくことで町はもっと変わっていくのでしょう。

だから、地域おこし協力隊としてきてくれる人にも「小さなことでもいいから自分の課題に取り組んでほしい」と言います。

柳澤さん 僕は「学び」こそがまちづくりの根幹だと思っていて、学び続けることで地域が変わり続けることができるし、それができる地域はいて楽しい場所になると思います。

だから、地域おこし協力隊の人とも、学び続けることに一緒に取り組みたいです。今ある学びのプログラムを一緒にやってほしいのもあるし、新しいことにも取り組んでほしい。

僕らがこれまでやってきたことによって、土が起こされて種があると芽が出るような土壌になってきているので、小さなものでもいいからそこに種をまいてくれるような人が来てくれたらいいですね。

香澄さん 自分で考えて新しいことをやってほしいのもありますが、そうでなくても、かつてやっていて今できてないことをやってくれるだけでもありがたいです。

以前、五城目での教育や子育てを体験するキャンプをやったときに、神奈川から参加した方が、それがきっかけで移住してくれて、今や大切な仲間の一人になりました。同じような企画をしたらまた五城目町に関心を持ってくれる人が来るかもしれないと思いながら、今はそうした企画はできていなくて。そういう「できたらいいのにできていないこと」をやってくれる人が来てくれるのもいいなと思います。

それもキャンプみたいな大きなイベントではなくて、雪遊びみたいな小さなものでもいい。そんな「やろうと思えばできること」がたくさんあるので、その中に何かやりたいことがあれば、ぜひ実践してほしいですね。

実は、今回募集する地域おこし協力隊には「教育フリースタイル協力隊」という名前がついています。名前からすると「教育」に特化した活動を考えてしまいますが、「教育」に限らず、「何をしてもいい」とのこと。

それは、何をしても、すべて「学び」につながり、町の可能性を広げるから。そんな思いがこめられていました。

柳澤さん 「教育フリースタイル」は、「学びを軸にしたまちづくり」という町のブランディングの一貫で、学びが五城目町のテーマであることを表明したものです。

なので「学び」をとても広く捉えています。朝市でも雪山でも、どの素材を切り取っても、全部「学び」につながるからです。

もちろん「教育」分野に取り組むこともできます。
実際に、2021年1月には五城目小学校が新築され、町民とともに始動しました。
また定期的に、国際基督教大学やさとのば大学の学生を町に受け入れるプログラムを実施していたり、国際教養大学の准教授である工藤尚悟さんがBABAME BASEに入居し、その学生も訪問したりと、「教育」を軸としたさまざまな動きも起きています。

大学生向けツアーの様子(写真提供:ドチャベンジャーズ)

なぜ、この小さな町に人が集まってくるのか?
国際教養大学の工藤准教授は「五城目は人が人を呼んでいる感じがいつもする」と言います。

工藤さん うちの学生が典型ですけど、ここに何度も来るのは、みなさんの話が面白いからで、次は友だちを連れてくる。そういう芋づる式パターン。そのいいところは、何が起こるかわからないから、結果としてカオスみたいになるところです。

そもそも地域って計画的にできるものではなくて、もこもこっと育つものだと思うんです。そのもこもこっと育つ感じが五城目にはあって、それが五城目らしさでもあるのかなと。

工藤尚悟さん

何でも自由にやれる人が自由にやることで、次の“もこもこ”が生まれる。自由に動ける人がかき混ぜることで、新しいものが生まれる。工藤さんは地域おこし協力隊が町にもたらす価値を、そんなふうに表現していました。

移住して気づいたのは、想像以上に刺激が多いこと

地域おこし協力隊になることは、移住を伴います。特に都市部から移住することを不安に持つ人もいるかもしれません。そこで1年ほど前に移住してきたという、集落支援員の八嶋美恵子さんにも話を聞きました。

一番左が八嶋美恵子さん

東京の大学院に通っていたという八嶋さんの移住のきっかけは、結婚を見据えたパートナーが、香澄さんの旦那さんである俊輔さんと出会い、五城目町に移住したい! と数年前より一緒に五城目町に通うようになったことからでした。

八嶋さん 私はもともと社会福祉を勉強していたのですが、その中で高齢者だからって「世話する・される」という関係性になることに違和感を感じていて、尊敬できる先輩と友達みたいな関係でリスペクトしあって楽しく生きることはできないか、と考えてきました。

五城目に来て最初はいろいろな仕事をもらいながら、ボランティアでお年寄りと関わっていました。そんな活動をしていたら役場の人から「集落支援員が今やっている活動そのものだからやってみないか」と言われて、この4月から集落支援員になりました。

集落支援員と言いながらお年寄りに支援されるばっかりですけど、今まで通り、地域の方にお世話になりながら、一緒に暮らしを楽しむことそのものにお給料をいただいているような有難い環境なので、まさにやりたかった人生そのままなのが楽しいです。

八嶋さんの話を聞いて、移住してみたい、そこでできることを探したいと思えば、親身に相談に乗ってくれたり、協力してくれる土壌が五城目町にはあり、役場も手厚くサポートしてくれるという印象を受けました。

では、今回の募集では生活面のサポートなどについてはどうなのでしょうか。

柳澤さん 金銭的なサポートはしっかりしていますし、住むところも紹介できます。僕らで人を紹介したり、集まりに一緒に行ったりするつもりですし、移住のハードルは低いと思います。

香澄さん 五城目は、田舎ならではの魅力と利便性を両方兼ね備えている町です。空港まで車で40分なので東京などと行き来しながら仕事をしている方もいらっしゃいます。ただ、車の運転は必須ですね。あと、雪国や田舎での暮らしを楽しめる人が向いているかもしれません。

BABAME BASEの目の前に広がる田んぼ

生活面ではそれほど苦労はなさそうですが、地方の生活という部分ではどうなのでしょうか。
香澄さんは、東京から五城目町に来てむしろ刺激が増えたといいます。

香澄さん 移住にあたって、子育ての環境や自然の環境、新しいことへの挑戦を求めて秋田に来たけど、刺激は薄れるだろうと思っていました。だけど実は逆で、刺激は同じか増えたかくらい。それはなぜかと言うと、東京で刺激をくれた新しいことを面白がる人たちは、フットワーク軽く遊びに来てくれるから移住しても会えるし、むしろ来たらせっかくだからってがっつり話したりもできます。

ここに来なければ出会えなかった町の人たちが本当に魅力的だし、面白がって訪ねてくる旅人もユニークな人たちばかりだし、むしろ刺激的ですね。

移住先の土地が自分に合うかどうかは行ってみないとわからないものがありますが、条件としては五城目町は移住しやすい地域なのではないでしょうか。地域おこし協力隊への応募を考えていなくても、五城目町に興味を持った方はぜひ一度訪ねてみてください。

香澄さんも「アウトドアや日本酒が好きな人には天国」といっていましたが、五城目町には楽しい場所がたくさんあります。そして楽しい人がたくさんいます。そんな人たちとの交流を通して、新たなやりたいことが見えてくるかもしれません。

(撮影:高橋希
(編集:古瀬絵里)

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– INFORMATION –

8/2(火)に、オンライントークイベント兼説明会を開催!

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(イベント後には、任意参加の簡単な採用説明会も予定しています。)

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