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地域のコミュニティマネージャーを採用する上で必要なことは? HITOTOWAの事例から考える、いかしあう社会のための採用術

HITOTOWA×グリーンズによるトークイベント『地域コミュニティを育てる仕事』を4/21(木)に開催します。
興味がある方はこちらからお申し込みください!

グリーンズジョブは、「いかしあう社会」をつくるための採用&キャリアチェンジの支援に取り組んでいます。

連載「いい採用ってなんだろう?」では、そんな取り組みを通して学んだ「いかしあう社会のための採用術」を、みなさんにおすそわけします。

今回のテーマは、「地域のコミュニティマネージャー」の採用。いま、各地でコミュニティマネージャーが求められています。では、地域で「コミュニティマネージャー」を採用する際、どのようなことを考えて取り組むことが必要なのでしょうか。

今回は、まちで助け合える関係性をつくる「ネイバーフッドデザイン」の事業に取り組む、HITOTOWAの事例から考えていきましょう。(ちなみに、グリーンズジョブでも、求人記事とイベントで採用にご一緒させていただきました。その際の記事はこちらをご覧ください。)

もちろん、「コミュニティ」も「マネジメント」も、とても多義的な言葉。だからこそコミュニティマネージャーの採用について、どんな事例にもあてはまるような正解はありません。それでも、HITOTOWAの事例から、なにかヒントは得られるはずです。

「コミュニティ」という言葉をあえて使わない

HITOTOWAが取り組む「ネイバーフッドデザイン」とは、どのようなものなのでしょうか?

ひとことで言えば、「近くに住む人々の信頼関係づくりを通して、防災減災、孤独な子育て、独居老人の増加、環境問題など都市におけるさまざまな課題を解決していくこと」。

「ネイバーフッド」は直訳すれば近隣ですが、まさに近隣の人々の関係づくりを通じて、防災・防犯や子育てなどの助け合い、そして趣味や学びを共有することでの生きがいづくりに取り組んでいるのです。

「ネイバーフッドデザイン」も、ひろい意味での「コミュニティデザイン」のひとつといえるでしょう。ただ、あえて「コミュニティ」という言葉を使わず、「ネイバーフッド」という言葉を使っているのは、代表の荒昌史(あら・まさふみ)さんによれば次のような意図があるのだそう。

(撮影:千葉愛子)

荒昌史(あら・まさふみ)
HITOTOWA INC.代表取締役。早稲田大学卒業後、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。CSR部署の設立や環境NPO活動などを経て、2010年にHITOTOWA INC.を創業。人々のつながりづくりを通して都市の社会環境問題を解決する「ネイバーフッドデザイン」を主軸に「ソーシャルフットボール」「HITOTOWAこども総研」の3事業を展開。2022年、初の単著となる『ネイバーフッドデザイン──まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』(英治出版)を上梓。

荒さん 僕らが「ネイバーフッドデザイン」という言葉を使うようにしているのは、あくまでも「地縁」を大事にしたいという思いがあったたからです。

「コミュニティデザイン」という言葉には、仕事のつながりやオンライン上でのつながりも含まれていますよね。そういったつながりも大事だと思いますが、僕たちは徒歩15分や自転車で10分くらいくらいの距離に仲の良い人がいることが、防災や防犯、子育てや生きがいの創出につながると考えているんです。

また、僕らは「コミュニティ」はあくまでも手段だと考えています。大事なのは一人ひとりが幸せであることで、そのためにコミュニティが何ができるかを考えているんです。

(撮影:千葉愛子)

例えば、HITOTOWAが「ネイバーフッドデザイン」に取り組む「まちにわ ひばりが丘」ではこんな出来事が。

90歳近いおばあさんと、近隣の方が雑談をする中で、どうやら訪問販売によって明らかに高額な金額のミシンを買わされてしまったということに周囲が気づいたそう。そこで、近隣に住む方がおばあさん本人が傷つかないようなかたちで業者と交渉し、お金を取り戻した…ということがあったのだとか。「ネイバーフッドデザイン」によってまちに助け合いが生まれる可能性を象徴するようなエピソードですね。

このように、地域のコミュニティマネージャーを募集する際、「コミュニティ」という言葉がひろい意味を持つからこそ、そこでいう「コミュニティ」とはどのようなものを指しているのか、何を目的とした活動なのかをしっかりと伝えることが、採用後のミスマッチをなくす上でも大切なのでしょう。

マニュアル化できない業務があることを伝える

さて、HITOTOWAでまちでのコミュニティデザイン(ネイバーフッドデザイン)に取り組む役割を担う人は、どのような業務を担うのでしょうか。

以前、グリーンズジョブの記事で紹介したように、一言で言えば「ある地域課題に対して仮説を立てた上で綿密なリサーチを重ね、解決のための仕組みを提案し、実行していく」ことが役割になります。

ただ、実はHITOTOWAでは、役職はあるけれど、あえてまちに関わる際の呼称や役割をきっちりとは決めていないのだそう。その背景には、「まちのコミュニティづくりは、マニュアル化できない」という意識があるようです。

荒さん 社内では、「都市の社会環境問題を解決するプロデューサー集団になろう」といっています。ただ、呼称や役割を明確に定義している訳ではありません。「コミュニティマネージャー」といったように呼称を決めてしまったり、マニュアルをつくってしまうと、その役割を規定してしまうことになりますから。

実際には、同じまちも、同じ人もいないわけですよね。ネイバーフッドデザインのセオリーはある程度はありますが、一般化してしまうと、それぞれのまちに柔軟に対応できなくなると思うんです。

ネイバーフッドデザインに取り組む方は、マニュアルに従うのではなく、現場を通して「ケーススタディをする」ことが重要だそう。つまり、まちのことを知り、まちの人と仲良くなる段階が最初にあって、イベントやプロジェクトといった「ことづくり」はそのあとなのだそうです。

例えば、2020年の2月から賃貸マンション「フロール元住吉」の管理・コミュニティサポート業務と、交流スペース「となりの.」の運営業務を担当している田中宏明さんも、マニュアル化できない活動に取り組んでいるそう。

その1日は、荒さんいわく「『用件がなくても雑談できる管理員さんっていいよね』ということで、雑談8割、要件2割」なのだそうですが、そんな雑談を通して、「管理人さん」ではなく「田中さん」と呼んでもらえる関係性に。昨年の夏には、敷地内で熱中症で倒れてしまったおじいさんを、たまたま熱中症対策の情報をSNSでみていた田中さん達が応急処置をする、という場面もあったといいます。

こうした助け合いは、決してマニュアルに書いてあるものではないはず。いや、むしろマニュアル通りの対応しかできないようであれば、まちの人々との信頼関係が生まれず、助け合いや生きがいづくりにつながる関係性を築くことは難しいのではないでしょうか。

ネイバーフッドデザインに取り組む方に限らず、地域でのコミュニティづくりに関わる方は、少なからずマニュアル通りではない対応を求められることがあるはず。そのことをきちんと募集の際に伝えるのは、地域のコミュニティマネージャーを採用する際に必要そうです。

ビジョンと、むずかしさを伝える

HITOTOWAの社員のみなさん(撮影:千葉愛子)

さて、HITOTOWAはネイバーフッドデザインに取り組む方を採用する際、どのようなことを工夫しているのでしょうか。

荒さんによれば、これまでの採用の半数ほどはすでにつながりがあった方に直接声をかけるかたちで採用してきたそう。残りの半数ほどは、グリーンズジョブでの記事をはじめ、求人媒体を通じての採用だったそうです。

荒さん 採用サイトに出すからには、なるべくこれまでに出会ってない人とのご縁の可能性を探りたいという思いがあります。

ですが、今のところは「知り合いの知り合い」くらいの距離感の方を採用させていただくことが多いですね。それはそれで運命を感じますし、これまでとてもいい仲間を採用させてもらっていますよ。

そうした採用の際、ネイバーフッドデザインはHITOTOWA独自の取り組みのため、これまでに同じような業務の経験をしている方はおらず、過去の経験をもとに判断をすることが困難なのだそう。そのため、採用の際は「経営理念に共感してもらう」ことを大事にしているのだと言います。

荒さん 採用の際は、経営理念をしっかりと伝えるようにした上で、「なにをするかは一緒に考えましょう」とお伝えしています。先ほども話したように、まちの現場では、どのような仕事が生まれるかはわからない。同じまちはひとつとしてないですから。

だからこそ経験より、ビジョンへの共感度が採用をする上での判断材料になっています。まちの人々と長く関係性を築いていくという事業の特性上、なるべく長期で働いてほしいという思いもありますしね。

一方で、「仕事のむずかしさをしっかり見せる」ことも意識しているのだとか。

荒さん ネイバーフッドデザインの仕事は、まちの人々とのコミュニケーションスキルはもちろん、企業や行政とやりとりをしながらプロジェクトを進めていくようなビジネススキルも求められます。そういった仕事を行う上でのむずかしさもしっかり伝えていますね。

ネットで地域のコミュニティマネージャーを募集する記事を探してみると、「その地域の魅力や人のあたたかさ、仕事のやりがい」など、魅力的な情報が盛り込まれているものに多く出会います。

そうした魅力を伝えることも重要ですが、起こりがちなのが、実際に着任してからの「こんなはずではなかった」というギャップ。そうしたミスマッチを起こさないために、採用の段階でしっかりと、仕事のむずかしさについても伝えていくことが必要そうです。

まとめ

冒頭に書いたように、「コミュニティ」も「マネジメント」も、とても多義的な言葉。なので、HITOTOWAの取り組みが唯一の正解というわけではありません。

しかし、「『コミュニティ』をどのように捉えているかをしっかり伝える」「マニュアル化できない業務もあると伝える」「ビジョンに共感してもらう」「仕事のむずかしさをしっかり伝える」といったことは、他の地域におけるコミュニティマネージャーの募集の際も参考になるのではないでしょうか。

グリーンズジョブはこれまでに、HITOTOWAをはじめとする多くの企業や自治体のコミュニティマネージャー的な役割を担う方の採用にご一緒してきました。もし、今回の記事を読んで地域のコミュニティマネージャーの採用支援に興味を持ったら、まずはお気軽にグリーンズジョブにお問い合わせください。

– INFORMATION –

『ネイバーフッドデザイン−まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』発売!
イベントも開催予定
2022年4月21日、荒さんの著書『ネイバーフッドデザイン−まちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』が発売されます! 今回の記事で興味を持った方は、ぜひチェックしてみてください。

近くに暮らす人たちの関係性を育むことでまちの課題を解決する「ネイバーフッドデザイン」。都市部におけるコミュニティ開発の注目の手法を、事例を交えて紹介。まちづくりや都市開発、エリアマネジメント、団地再生に携わる人はもちろん、自治会や商店会、マンション管理組合の関係者など、自分の関わるまちを良くするために行動したい人のための一冊。

著者:荒 昌史
編著:HITOTOWA INC.
編集協力:渡邊雅子
出版社:英治出版
発売予定日:2022年4月21日

書籍の詳細はこちら英治出版 / Amazon

4/27と5/12には、出版記念イベントも開催予定だそう。こちらもぜひチェックを!

『ネイバーフッドデザイン』 出版記念イベント
「エリアマネジメントとネイバーフッドデザイン」
4/27(水)16:00−18:00(アフタートーク18:00-19:00)
詳細・申し込みはこちら


「まちの共用部とネイバーフッドデザイン」
5/12(木)19:00−21:00(アフタートーク21:00-21:30)
詳細・申し込みはこちら

イベント:HITOTOWA×グリーンズジョブ|地域コミュニティを育てる仕事
書籍発売を記念してグリーンズジョブでもイベントを開催します!「地域コミュニティを育てる仕事」の意義についてHITOTOWAのお二人をお招きして伺います。ご興味あれば気軽にご参加ください!

詳細・申し込みはこちら