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サニーサイド、地域住民、スタッフ。一人ひとりの思いが結集する「SUNNYSIDE FIELDS」が香川県まんのう町で生み出す可能性とは?

経営理念に掲げる「個性が共生し調和が発展を生む」を体現する場所をつくりたいーー。

そんな思いから、株式会社サニーサイドのみなさんは、グリーンズと共に連載「共生と調和を巡る旅」を立ち上げ、自分たちがつくりたい場所や大切にしたいものは何かを考えながら、全国各地を訪れ、学びを深めてきました。

そしてついに、旅の学びを具現化した「SUNNYSIDE FIELDS(以下、FIELDS)」が、2022年3月26日、香川県まんのう町にオープン。

グリーンズの取材班はオープンに先駆けてプレオープン中の現地を訪れ「FIELDS」の今とこれからについてお伺いしてきました。

大切にしたい3つのことが詰まった場所「FIELDS」

香川県まんのう町は、「こんぴらさん」の愛称で親しまれている「金刀比羅宮」から車で15分ほどにある人口1.8万人のまち。 日本最大級の灌漑用ため池である満濃池を中心に、三方を山々に囲まれた町に降り立つと、どこからともなく森の空気と水のせせらぎを感じられます。

そんな自然豊かなまちの一角に、サニーサイドがひらいたのが「FIELDS」です。

オープン前のインタビューで、代表の多田周平さんは「『誰かを思いやること』『好きなものを好きでいること』『自然に感謝すること』、この3つを大切にした場所をつくりたい」と語ってくれていました。

そうした思いから生まれた「FIELDS」を、早速探検してみましょう!

コロナ禍のため、この日は10組ずつのご案内とのこと。時間帯によっては入店待ちの列ができるほどの盛況ぶりです(photo / takafumi yanagisawa(D.N.A))

扉を開けるとまず目に飛び込んでくるのが、キッチン&マーケット。入口すぐにあるマーケットには、自社農園と車で30分圏内の生産者さんの手でつくられた新鮮野菜や卵が、ずらりと並んでいます。

土地との一体感を感じられる空間。床は土のまま。ところどころに草も生えていて、中と外の境界線をあえて曖昧にしています

窓際のカラフルなコンテナに飾られているのは、「FIELDS」で使われている調味料や食器。照明に被せてあるカゴや野菜を陳列する桶などは、ご近所さんの倉庫に眠っていたものを再利用しており、まんのう町由来のものを取り入れた空間になっています。

野菜や卵には一つひとつ商品紹介と生産者さんの案内を表示。どこで誰がどんな思いでつくったものなのかを知った上で、購入することができるよう、工夫がなされています。

野菜一つ販売するにも、お客さんとのコミュニケーションを大切にしたいと考えている姿勢が伝わってきますね

マーケットの奥には、キッチンがあります。ここでは地元の食材を使って手づくりする野菜スープやお弁当を販売。オープンキッチンなので、料理人さんが調理するところを間近で見られるのも嬉しいポイントです。

取り扱う野菜は、基本的に農薬や化学肥料を使わずに栽培されたもの

野菜たっぷりのお弁当。グリーンズの取材班も、美味しくいただきました!(撮影:秋吉直樹)

キッチン&マーケットの向かいは、チョコレート&コーヒーファクトリー。カウンターには、ショコラティエがつくったチョコレート商品や自家焙煎したコーヒー豆が並んでいます。「FIELDS」で取り扱うのは、インドネシアで豆がなる木のことまで知ったうえで直接輸入した、カカオ豆6種類、コーヒー豆10種類。それらを自社で焙煎から加工まで行い、「Bean to Bar」を超えた「Tree to Bar」を実現しています。

カウンター奥にあるコーヒー豆の焙煎所やチョコレート製造のキッチンはガラス張りになっているため、作業風景も見られます

可愛いイラストやまんのう町の風景を印刷したコーヒーのパッケージ

カウンターにはカフェもあり、コーヒーやホットチョコレート、スイーツの購入も可能。テイクアウトして、まんのう町の風景を眺めながらほっと一息ついている方も大勢いらっしゃいました。

(撮影:秋吉直樹)

お店の一番奥には、お土産売り場が。「FIELDS」でつくられたチョコレート商品やコーヒー豆、ギフト商品などを手に取りながら選ぶことができます。

自家焙煎したコーヒー豆は、豆でも粉でも購入可能。気軽に楽しみたい人やギフトにピッタリのドリップバッグもあります。(撮影:秋吉直樹)

フェアトレードで自社輸入したカカオ豆を、焙煎から磨砕、成形してチョコレートに仕上げた「ボンボンショコラ」。キラキラと輝く艶が美しいです

外に出てみると、テイクアウトしたお弁当を食べる親子。走り回る子どもたち。風景を眺めながらのんびり過ごす大人。思い思いに過ごす姿がありました。

(撮影:秋吉直樹)

(撮影:秋吉直樹)

(撮影:秋吉直樹)

また、お店の外には、連載「共生と調和を巡る旅」を続ける中でその存在と出会い、「FIELDS」への導入をを決めた「バイオジオフィルター」も。取材に訪れた日は、ちょうどパーマカルチャーデザイナーの四井真治(よつい・しんじ)さんを講師に招いた、バイオジオフィルターのワークショップを実施中。町内や県外から訪れた10数名の参加者と共に作業が行われ、夕方には見事完成しました。

2日間共に過ごしたワークショップの参加者たち。みなさんいい表情ですね!(撮影:秋吉直樹)

サニーサイドのみなさんの思いがたっぷり詰まった「FIELDS」。売り場や食事、お土産、一つひとつから、多田さんが話されていた「誰かを思いやること」「好きなものを好きでいること」「自然に感謝すること」の3つのメッセージが伝わってきます。

さて、そんな場所は、多田さんだけの思いで具現化できたわけではありません。そこには大勢の仲間や、応援してくれるまんのう町の方々などの姿があります。ここからは「FIELDS」に関わる方に、お話を聞いていきましょう!

元看板工場を、大地とつながる建物に

まずは「FIELDS」を設計した建築家の長田慶太(ながた・けいた)さん。斬新なデザインながらどこか懐かしさや自然とのつながりを感じられる建物の設計を手がけました。

(撮影:秋吉直樹)

長田さん 「内と外の境界をあいまいにした建物にしたい」と多田さんからテーマをいただき、設計したのが「FIELDS」です。里山のエリアに馴染む大きさ、形を意識しました。この辺りには、あちこちに小さな祠があり、守りの茂みとして町民から大切にされてきました。その祠をモチーフにしたのが、木材で彩った円柱の建物です。

また、遠くから建物を見た時に、山々と重なり合うように、この辺りの独特の地形を参考にスロープもつくりました。

境界線のあいまいさを意識して、外壁はガラス張りに。夜になって電気をつけると、灯籠やビニールハウスのようにぼーっと明かりが漏れます。夜間はこの建物が目印になるようなイメージです。

左手の長方形の建物と右側の建物の間にあるのが、地形をモチーフにしたスロープ

長田さん 建物の中には、近隣の民家で古くから使われていた建具や桶、もともと看板工場だった時に使われていた什器やトタン板を照明や飾りにしています。地域にもとからあるものを取り入れることで、新しものと古いもの、「FIELDS」とこの土地、どちらが先にあったかわからないような曖昧さを生みたいと考えました。

これからの暮らしを体現する場所に一緒に育てていきたい

地元の方にもお話をお伺いします。ご登場いただいたのは、「FIELDS」に野菜を提供している農家の石崎まさと(いしざき・まさと)さん。すぐご近所にお住まいだそうで、この日開催されていた「バイオジオフィルター」のワークショップにも参加されていました。

(撮影:秋吉直樹)

石崎さん 町民からしたら、新しい時代にふさわしい場所が地元にできた気がしています。これからは、現代のテクノロジーなどの便利さを享受しながらも、昔の知恵も取り入れて、持続可能な生活をしていくことが求められるでしょう。まさに「FIELDS」はそのような場所になっていきそうですね。ここを通して、若い方がより豊かな暮らしをつくっていけたらすごく素敵なことだと思います。

マーケットで販売される野菜と一緒に飾られている、石崎さんの似顔絵

また、生産者としても、「FIELDS」の存在は喜ばしいことだそう。

石崎さん マーケットで野菜を売る際に、似顔絵までつくってくれるのは嬉しいですね。市場だとお客さんの反応がわからないけれど、ここはお店に来たら、反応がダイレクトに伝わってきます。「おいしい」と言ってもらえるような野菜をつくりたいですし、これからも頻繁に通って、一緒に「FIELDS」を育てていきたいです。

たとえメニューになくても、目の前の人を思いやって動く

続いてお話を聞いたのは、キッチンで働く古河晴輝(ふるかわ・はるき)さん。まんのう町出身で、たまたま勤め先の東京から地元に帰ってきていたタイミングで「FIELDS」に出会い、働くことになったそう。

東京オリンピックの選手村で、調理を担当していたこともあるほどの腕前の持ち主。(撮影:秋吉直樹)

古河さん 東京に戻ろうかと思っていたんですけど、「FIELDS」に出会って地元に残ることを決めました。「こんな場所があったらいいな」と思っていたところができたから、すごく嬉しいです。

「FIELDS」での働きがいを聞いてみると、こんな答えが。

古河さん 今までずっと料理人としてアンカー、つまり料理を完成させる役割を担ってきました。でも「FIELDS」では、生産者とつながれるからスタート時点から関わることができます。それがすごく面白いんです。それにある程度、仕事を任せてもらえる環境も気に入っています。

キッチンのスタッフはみんな基本頼まれたら断らない姿勢を持っています。「ジュースはありますか?」とお客さんに聞かれたら、メニューになくてもフルーツを絞って提供する。そうやってマニュアルにないことをやっていくことも「いいね」と言ってもらえるので、ありがたいです。

マニュアルになくても、お客さんの希望に応えていく姿勢は、まさに「誰かを思いやること」に当てはまります。

古河さん ゆくゆく学生の職場体験を受け入れたいですね。お店の人とお客さんの壁をなくして、友達みたいに関わりたいなって。「あのお兄さんに言ったらなんとかなる」って思ってもらえるような、境界線のない関係を築きたいです。

生産者さん一件一件を回って、野菜についての理解を深める古河さん(撮影:秋吉直樹)

思いやりの表現にも、個性が溢れる

最後にお話をお伺いしたのは、チョコレート&コーヒーファクトリーで働く、寶智雅美(ほうち・まさみ)さん。まんのう町出身の寶智さんは、地元で面白い場所を探していたところ、知り合いの紹介で「FIELDS」を知りました。

寶智さん コロナを機に、住まいも仕事も買い物も、全て自転車で行ける距離が理想だと考えが変わりました。それまで「何にもない」と思っていたまんのう町に目を向けると、面白い人がたくさんいたんです。「FIELDS」は、多田さんが掲げる3つのことに共感して、働くことに決めました。スタッフはみんな理念に共感している人ばかりで、楽しく働いています。

「FIELDS」が大切にしたいことに共感して、入社を決めた寶智さん。働き始めてから気づいたことがあるそう。

寶智さん 「FIELDS」で働いて、思いやりの形は、人それぞれだということに気づきました。「ありがとう」と声をかけるとか困った時に手を差し伸べるとか、それだけじゃなくって。誰かを思って季節の野菜を料理に使うこと。添加物を使わないこと。私がイメージしていた以外にも、たくさん思いやりを表現する方法はあるんですよね。

じんわりと、たしかに広がるサニーサイドの輪

「FIELDS」では週に数回、イベントを開催しています。草木染ワークショップ、コーヒーの焙煎の仕方、ガトーショコラのつくり方など気になるものがあれば、参加してみるのも関わりの一つ。(撮影:秋吉直樹)

お話を聞かせていただいたスタッフやまんのう町のみなさん一人ひとりが、「FIELDS」を語る言葉を持ち、主体的に関わっていることに驚かされました。また、『誰かを思いやること』『好きなものを好きでいること』『自然に感謝すること』、この3つを大切にした場所をつくりたい」と語った多田さんの思いが、芽を出し、育ち始めていることもあちこちで実感する時間となりました。

まだオープンしたばかりのため、観光客が増えたとか、移住者が増えたとか、わかりやすい変化はありません。しかし、関わる人の内面が変わり、町自体も変わっていく可能性がある、そんな大きな期待を抱いてしまうほどの光が「FIELDS」にはたしかにありました。

この連載を読んでくださったみなさんにも、ぜひ「FIELDS」へ足を運んでいただき、サニーサイドが体現したかったものを五感で味わってもらえたら嬉しいです。きっとあなたにとっても、好きなことや大切にしたいこと、そして新しい発見があるはずですよ。

パーマカルチャーデザイナーの四井真治さん(左)と「FIELDS」プロデューサーの秋吉直樹さん(右から2番目)、そしてグリーンズの取材班で記念撮影。次に訪れる時には、どんな場所に育っているのか楽しみです

– INFORMATION –

SUNNYSIDE FIELDSについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。


https://sunnysidefields.com/

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