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サステナブルな社会のために「ラーニングコミュニティ」はなぜ必要?「サスカレ」と「ごみの学校」で考える、つながることの重要性

NPOグリーンズとmorning after cutting my hair,Inc.が共同運営するラーニングコミュニティ「Sustainability College」、通称「サスカレ」。2020年10月に始まり、現在の受講生は約70名、そして今進行中の5期生募集を経て、100人を超えるコミュニティになるかもしれないとのこと。

今回は、そんな「サスカレ」の学級委員長である植原正太郎さんと、田中美咲さん、サスカレ受講生かつFacebookコミュニティ「ごみの学校」を運営する寺井正幸さんをお招きし、サステナブルな社会をつくるための「ラーニングコミュニティ」の重要性をテーマにアレコレお話しした様子をお届けします。

ちなみに、書き手の私、佐藤伶も「サスカレ」受講生です!

植原正太郎(うえはら・しょうたろう)(写真左)
NPO法人グリーンズ 共同代表。1988年4月仙台生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。新卒でSNSマーケティング会社に入社。2014年10月よりWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズにスタッフとして参画。2021年4月より共同代表に就任し、「いかしあう」社会を目指して健やかな事業と組織づくりに励む。同年5月に熊本県南阿蘇村に移住。暇さえあれば釣りがしたい二児の父。 @little_shotaro
田中美咲(たなか・みさき)(写真中央)
1988年生まれ、奈良県出身。2013年8月に「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立。2018年フランスSparknewsが選ぶ「世界の女性社会起業家22名」に日本人唯一選出、世界1位に。同年国際的PRアワードにて環境部門最優秀賞受賞。人間力大賞経済産業大臣奨励賞受賞。2017年2月より社会課題解決に特化したPR会社morning after cutting my hair,Inc.創業、代表取締役。 @misakitanaka
寺井正幸(てらい・まさゆき)(写真右)
株式会社浜田 経営企画室 課長。一般社団法人環境アライアンス2F4K 代表理事。
兵庫県立大学環境人間学部後、株式会社浜田に入社し、産業廃棄物処理を中心とした営業を行う。株式会社浜田と特定非営利活動法人「ザ・ピープル」との協業で「いわきリサイクルコットンプロジェクト」を開始。他、Facebookでコミュニティ「ごみの学校」を運営中。 @teraisdgs

1000人を越えた「ごみの学校」

ーーー 「サスカレ」は過去にもgreenz.jp記事で紹介しているので、まずは寺井さん率いる「ごみの学校」について聞きたいです! いつの間にか1000人超えるコミュニティになったという噂を聞きましたよ…

寺井 ちょうど1年前くらいに始めて、Facebookコミュニティはいま1100人くらいが参加してくれています。セミナー形式で話してきた参加者数はオープン、クローズド合わせて1600人ぐらい。

正太郎 すげー。いつの間に(笑)

寺井 僕も正直びっくりです。もともと周りにごみのことを教えてほしいっていう人がいたので、せっかくならみんなが集まれる場をつくろうかなってくらいのテンションで始めたんですよ。「ごみを通じてワクワクする社会をつくる」をテーマにしていて、技術的なことや法律的なことなど、ごみに関して幅広く正しい知識が学べる場所になっています。

1100名を超える人が参加する「ごみの学校」Facebookグループ。誰でも参加できます

美咲 横のつながり、生徒同士のつながりってどんな感じなんですか?

寺井 「サスカレ」ほど対話する場をこちらから仕掛けられているわけじゃないんですよね。トークイベントの時にグループワークをたまにやるくらい。仕掛けてはないんだけど、いわば「ごみのファンコミュニティ」みたいなもんで(笑) ごみっていう、めちゃくちゃニッチなテーマを真剣に話したい人にそう悪い人はいないから、自然と仲良くなってくれている感じです。

ーーー 「ごみのファンコミュニティ」ってすごい(笑) サステナビリティの中でも相当ピンポイントだなあって感じてるんですけど、どんな人が集まってるんですか?

寺井 それがすごい幅広くて、このあいだ開催した「プラスチック」を学ぶ回では、下は小学生、上は70歳っていう。僕のように廃棄物処理会社の人もいれば、自治体職員もいるし、主婦もいるし、知識も年齢もバラバラですね。ターゲットを絞ることもしてなくて、ただごみに対して関心がある人が集まっています。

正太郎 まあ、ごみ出さずに生活してる人間っていないもんなぁ。

寺井 そうそう。この間、ごみ清掃員もされている芸人であるマシンガンズの滝沢秀一さんが出演してくださったんですけど、それ経由でお笑い芸人さんも何人か入ってくれていて。年齢や職業問わず、ごみって身近な存在だし、ごみに関する悩みって小学生だろうがおじいさんだろうがあんまり変わらないんですよね。

それぞれの「心理的安全性」

ーーー それでいくと、「サスカレ」は実践者限定っていう、ある意味ストイックな場ですよね。

正太郎 そうだね。何かしらアウトプットできる場を持っている方だけのコミュニティとして運営しています。サステナブルな社会をつくろうって思ったときに、やっぱり机で学んでいるだけでは実現しないから、地域だったり会社だったりプロジェクトだったり、何かしら実践の場を持っている人限定にしています。

寺井 そこの差は面白いなー。「ごみの学校」はガバガバですからね(笑)

美咲 ふたつの違いは「心理的安全性」の捉え方にあるような気がしていて。「ごみの学校」はハードルが低いからこそ「自分も質問してもいいんだな。自分もここに居ていいんだな」という安心感。一方「サスカレ」はかなりニッチで複雑な悩みを吐露しても、みんな似たような課題を抱えてるから、共感してもらえるという安心感。その違いはある気がしました。

寺井 それが「サスカレ」のいいところですよね〜。僕も場所によっては最初からフルアクセルでいくと、「なんだあいつは」と浮いてしまうんですよ(笑)

ーーー 私も他の場で、いわゆる「意識高い」みたいに言われて、悔しい思いをしたことあります(笑)

美咲 そうそう。だから、最初からフルアクセルでいっても受け止めてくれる、打ち返してくれる人たちがいるっていうのは、本当に安心につながるんだよね。

「Sustainability College」では第2水曜日に講義回、第4水曜日にゼミ回を実施中。1月講師はユーグレナCEO永田さんをお招きしました。

自分以上に真剣に悩んでくれる仲間たち

ーーー 「サステナビリティがビジネスパーソンの必修科目に?」そう掲げてスタートした「サスカレ」ですが、今の手応えはどんな感じですか?

正太郎 かなり面白くなってきてると思う。「サスカレキャリア形成」って勝手に呼んでるけど、サスカレ内のつながりで転職する人が出てきたり、受講生や講師の話を聞いて、「今の仕事じゃないな」って退職を決意する人がいたり。共に学ぶことが、働き方とか人生に影響を及ぼしはじめている。

美咲 あと、「サスカレのアベンジャーズ化」も起きてるよね。「Rethink Fashion Program」っていう、大阪文化服装学院と連携した講座・コンテスト型のプログラムがあったんだけど、そこに講師としてサスカレメンバーが何名も呼ばれて。ファッションの環境課題って本当にいろんなフェーズがあるから、一人のプレイヤーでは網羅しきれない。さまざまなフィールドで活躍する受講生が「アベンジャーズ化」することによって、点ではなく面で学びを提供できました。

寺井 「アベンジャーズ化」は本当にピッタリな表現だと思います。みんなそれぞれで力があるし、得意分野もあるんだけど、一人だけではニッチすぎて光らない(笑) 団結することによって強い敵に立ち向かえるんですよね。

株式会社shoichiと大阪文化服装学院が協働したプログラムにはサスカレ受講生3名が講師として参加(井上さん、中川さん、寺井さん)

ーーー 「サスカレ」が盛り上がってきたな〜という手応えはいつ頃からですか?

正太郎 盛り上がりの転機になったのは「サスカレぺちゃくちゃ」っていうコーナーを始めたことだな。月1回のゼミ回で毎月3名の受講生が悩みをぶつける場なんだよね。実践の場でみんな行き詰まっている悩みを多様な仲間たちにぶつける。何かすぐに答えが見つかるわけじゃないんだけど、新しい視座が得られたり、必ずヒントを持ち帰れるんだよね。これを始めてから「サスカレ」がドライブしてきた気がしてる。

寺井 僕も「ごみの学校」ができる前に壁打ち会をやらせてもらったんですよ。「ごみについて発信していきたいけどどうしたらいいかわからない」ってざっくりした質問に、みんなが僕以上に真剣に打ち返してくれたんです。「ごみ業界のさかなクンになればいい」とか「ごみのかぶりもの被ったらいい」とか(笑)

美咲 言った覚えがある(笑)

寺井 いや、ふざけんなよ! と思いながら(笑) そのアドバイスを7〜8割実践したからこそ、今の「ごみの学校」があるんですよ。最初はビジネスマンに訴求したいと思ってたんですけど、「いや、もっと身近な主婦にしたほうがいいんじゃないか」というアドバイスを実践したら、めちゃくちゃ反応が良くて。ママコミュニティで連続講座をやらせてもらったり。

正太郎 すごいな(笑) そこにも寺井さんのファンがいるのか。

寺井 僕のキャラクターも踏まえた上で、すごく精度の高いアドバイスだったんだなって、今になって痛感しますよ。めっちゃ悩んでた時だったんで。正太郎さんに「ごみ業界の池上彰になれ」って言われて、最初は「なんだよそれ」って思ってたけど、今ではラジオに呼ばれたり、本当に「ごみ業界の池上彰」に少しずつなり始めてるなって思ってます(笑)

寺井正幸さん

肩書きを脇に置いて話せるのがいい

ーーー 「ごみの学校」って寺井さんのお仕事ではないじゃないですか。趣味の範囲が広がってここまで辿り着いているわけで。このコミュニティが寺井さん自身のキャリアにどんなふうに影響を与えていますか?

寺井 この1年、会社の外でいろいろやってきた結果、社内の人ともいろんなコラボやネットワークが増えてきているんですよ。新たな資源循環モデルを実験としてつくろうという動きが社内で出てきているんですが「サスカレにこういう人がいますよ」「ごみの学校でこんな人がいるので、これはすぐ実現できそうですよ」って話を持ち出すと、アイデアが通りやすいです。

美咲 すごいですよね。自分が運営している社外コミュニティとつなげることで、本業の事業を生みだしていくって。

寺井 やっぱり社外の人と名刺交換して、「我が社はこんなことやっておりまして」と堅いビジネスの場ではそういうコラボは生まれないですよ。一旦社名とか役職とかを脇に置いて、一個人として出会っているコミュニティだからこそ生まれるんだと思います。

正太郎 たしかに。ビジネスの場で出会うとどうしてもすぐ儲かるかどうかという話になるけど、いい未来を望んでいる個人同士で話すからこそ、短期的な売上だけではないプロジェクトをつくれるのかもしれない。

植原正太郎さん

コミュニティ運営で大切にしていること

ーーー それぞれキャラクターが違う「サスカレ」と「ごみの学校」ですが、運営していくにあたって意識していることは?

寺井 「ごみの学校」の場合は、本当にいろんな世代がいるので、誰も取りこぼさないことを大切にしてますね。「サステナビリティ」とか「エシカル」とか、そういうあいまいな用語を使わないようにしているんです。

そういう言葉を使うことで、説明することから逃げちゃってる気がするんですよ。「サステナビリティ」「エシカル」って要は何をすることなの? って。多分みんなが知りたいのはそこだと思うから、「リサイクル」という言葉も「ラベルを外して中身を洗って、分別することだよ」って、なるべく噛み砕くようにしてますね。

ーーー 一方、そんな言葉が当たり前に飛び交う「サスカレ」ですが…(笑) 「サスカレ」も講義の合間に提出する「宿題」が最近は結構、哲学っぽいというか、「あなたはどう生きたいですか?」って問うものが増えている気がする…。

美咲 初めの頃は、ビジネスモデルやプランニングを立てることが宿題の中心だったんだよね。でも、講師の方と宿題を練るなかで、やっぱりその人のアウトプットの根源になっている部分が「自分はどうしたいのか」という生き方に必ず紐づくことを運営側も痛感して。

正太郎 環境破壊や経済格差を生み出しているのって社会システムだと思うんだけど、そのシステムを構成している中心に自分自身が存在しているんだよね。元をたどっていくと、自分自身の内面や資本主義の中で染み付いた価値観がいまの現実を生み出していて。結局自分たち自身をアップデートしないと、一生解決し得ないんじゃないかって。サステナビリティをまじめに考えてきた結果、そこに辿り着きつつあるのかもね。

寺井 いやあ、本当にそうだなって思います。究極的には「どう生きたいのか」って話になるんですよ。環境分野で働きたい若手も増えてきていると思うんですが、その内なる火を燃やし続けるには、自分はどうしたいのか問い続ける必要がある。社会に出ると、あまり内省する時間って取れないじゃないですか。だから、「サスカレ」はただ学ぶだけじゃなくて、自分と向き合う時間としても大切だと思う。

田中美咲さん

「サスカレ」は社会で羽ばたくための“発射台”

ーーー 「サスカレ」って今後どんなふうになっていくんですかね?

正太郎 これは始めた時から美咲ちゃんと話してることなんだけど、「サスカレ」の中で学んだ人がどんどん世の中に出て活躍していってほしい。何か新しい事業をつくるとか、それぞれが実践者としてパワーアップして外に出ていくことを応援する。“発射台”みたいな感じ。「ペイパルマフィア」ならぬ「サスカレマフィア」を世に増やしたい(笑)

美咲 これからどんどん講師と受講生がグラデーションのある関係になるんだろうなって。いまもみんなが実践者だから大きな差はないんだけど。いつか寺井さんが講師側に回ることもあるだろうし、講師も受講生も循環しながら教え合うみたいな未来がいいのかなって思ってる。

ーーー コネクション目的ではなくて、「サステナビリティをビジネスの場で実践する」ための集まりだから、「サスカレ」を卒業する選択肢もありそうですよね。

寺井 僕もいつかはOBになりたいなってちょっと思ってたんですよ。だんだんベテランになっていくことを考えると、若い子に手渡していくというか、新陳代謝みたいなものは大事なのかなって。みんな悲しむかなと思って言わなかったけど(笑)

正太郎 まあ悲しいは悲しいね(笑) でも、卒業しても仲間だよねっていうのは当たり前に思うし、OBOGになってもずっとつながれる仕組みをつくれたら良さそうだよね。

撮影&収録は下北沢・BONUS TRACKで行いました。

「ラーニングコミュニティ」の価値とは何か

ーーー サステナビリティを実践していくなかで、なぜ「ラーニングコミュニティ」が大切なのか、最後に一人ずつ聞かせてください。

美咲 私にとって「ラーニングコミュニティ」は挑戦のペースメーカーのような存在かな。

一生懸命前を向いて走り続けている人って、やっぱりどこか一人ぼっちだと思うんです。これだけSDGsやサステナビリティと謳われる世の中になっても、本気でビジネスで挑戦できている人ってまだマイノリティな存在だと思っていて。だから、心が折れたり失敗したりするんだけど、そんな時に「あなたは間違ってないよ」って言ってくれる存在がいるのはすごいありがたい。「大丈夫、このままこっちに走っていいんだな」って背中を押してくれるから、私にとってすごく重要な存在かな。

寺井 「ラーニングコミュニティ」に参加していることで、僕が何かを考えるときに、脳みその中に小さい受講生たちが集まって会議してくれる感覚があるんです。伝わるかな?(笑)

僕と同じ熱量で話せて、でも全然違う知識を持っている人たちが僕の頭の中で脳内会議している感じ。事業の中で何か悩んだときに「あの人だったらなんてアドバイスしてくれるかな?」ってコミュニティのメンバーたちを想像するんですよ。

だから、僕のアウトプットって僕ひとりの力で出たものじゃない。みんなのつながりの中で出てきたものなんです。だから、今後メンバーが増えたら、僕の脳内会議の小さい人たちも増えて、勝手にアップデートされるという。

正太郎 僕は、一人で勉強するのは続かないタイプなので「ラーニングコミュニティ」があるから学び続けられてる感覚があります。

一人でサステナビリティに関する本を読み続けても飽きちゃうけど、「私とあなた」という関係性の中で学ぶから面白いんだろうなって。多様な人がいればいるほど、その面白さは増していくし、実践者も育っていくんだと思います。

(対談ここまで)

収録当日は下北沢・BONUS TRACKに受講生が集まってPOP UPショップやトークイベントを行う「サスカレ文化祭」を開催していました。実践者が集まるラーニングコミュニティだからこそできる企画でした。

「ごみの学校」と「サスカレ」それぞれがつくる、ちょっと違った“心理的安全性”。どちらにおいても、私とあなたの間にある関係によって、自分自身をアップデートし学び続けることができる。それが実践しながら学び続けるという「ラーニングコミュニティ」の強みなのかもしれません。

そして、「サスカレ」は現在5期生メンバーを募集しています! 社会に羽ばたくための武器や仲間を手に入れたい方は、ぜひエントリーください。

(撮影:山中康司)

– INFORMATION –

「Sustainability College」は5期生募集中! 〆切は3/21

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