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サステナビリティが、ビジネスパーソンの必修科目に? 私たちが今「Sustainability College」を始める理由

サステナブル
興味あれども
学べない

そんな川柳をよんだ人がいたかはわかりませんが、「サステナビリティについて興味はあるけど、どう学んでいいかわからない……」という方は僕以外にもいるはず。

そうしたなか、2020年10月から開校されるのが「Sustainability College(サステナビリティカレッジ、通称サスカレ)」。「サステナビリティ」を実践的・かつ継続的に学び、実践に活かす場です。

学級委員長を務めるのはグリーンズの植原正太郎と、社会課題解決に特化した企画とPRの会社「morning after cutting my hair,Inc」の田中美咲さん

ソーシャルデザインの領域の前線を走ってきた2人が、なぜ今「サスカレ」をつくることにしたのでしょうか。

それは、2人とも「あることに気づいちゃったから」だそう。いったい2人が「気づいちゃった」こととはなんなのか、聞いてみることにしました。

聞き手は2人の共通の友人、生き方編集者の山中康司です。

植原正太郎(うえはら・しょうたろう)
1988年4月仙台生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。新卒でSNSマーケティング会社に入社。2014年10月よりWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズにスタッフとして参画。2018年4月よりCOO/事業統括理事に就任し、健やかな事業と組織づくりに励む。本業の傍ら、都会のど真ん中に畑をつくる「URBAN FARMERS CLUB」も展開中。循環型社会やサステナビリティについて勉強中。一児の父。
田中美咲(たなか・みさき)
1988年生まれ、奈良県出身。2013年8月に「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立。2018年フランスSparknewsが選ぶ「世界の女性社会起業家22名」に日本人唯一選出、世界1位に。同年国際的PRアワードにて環境部門最優秀賞受賞。人間力大賞経済産業大臣奨励賞受賞。
2017年2月より様々な課題を感動や共感を通して伝える株式会社morning after cutting my hair創業、代表取締役兼任。現在大学院大学至善館にて学び直し中。

自分の行動ひとつが、環境に影響を与えている

 2人が「サスカレ」をはじめるのは、なにかに気づいちゃったからなんだって?

正太郎 うん。気づいちゃったんですよ、僕ら。

美咲 そうなの。気づいちゃった。

 正太郎はこれまで6年間グリーンズのメンバーとして、美咲さんは「一般社団法人防災ガール」や「morning after cutting my hair」の代表として活動してきたよね。

2人が多くのソーシャルデザインやソーシャルビジネスの活動に触れてきたなかで、気づいたことっていうのは?

美咲 それは、“今起こっている環境問題に対して、自分に責任がある”、ということなの。

 自分に責任が。

正太郎 そうだね。自分の行動一つひとつが、環境に影響を与えてるんだなってことに、ここ何年かで強く思い知らされたんだよね。

先日も台風10号が猛威をふるったように、ここ数年は大型の台風が増えてるよね。あれも実は、自分のひとつの行動が、巡りめぐって気候を変え、自分たちが災害に見舞われるリスクを高めてるな、っていう感覚が強くなったんだよね。

美咲 私、社会人になって何年かは、無邪気にやりたいことをやっていたの。でもだんだん権限をもらえるようになって、自分の一言でものごとが一気に動くようになってくるじゃない? 

そうすると、自分のちょっとした行動で悪い影響を及ぼすリスクが増すことの怖さも感じるようになってきて。

 たしかに、事業に取り組む上での判断ひとつが、他者や環境に大きな影響を及ぼすことはありそうだね。

正太郎 そうなんだよ。僕の場合は娘が生まれて、未来にいい環境を残したいという気持ちが芽生えてから、余計にその影響には敏感になってる。

問題についてシステムで考える必要性

 2人はマイボトルを持ち歩いたり、家にコンポストをつくったり、かなりサステナビリティを意識した行動をとってるように見えるけれど。

正太郎 個人としてはできる限りの行動は心がけてる。でもそれだけじゃ足りないんだよ。「合成の誤謬(ごびゅう)」って言葉知ってる?

 どういう意味?

正太郎 ミクロの視点では正しいけれど、それが合成されたマクロの世界では意図しない結果が生じる、という意味で。

例えば、僕たちって個人単位では頑張って仕事して、稼いだお金で暮らして、少しでも幸せになりたいなと思って生きてるじゃん。それ自体はなにも間違ったことではないんだけど、そんな一人ひとりの日常生活が少しずつ炭素排出に貢献していて、気候変動を及ぼしている。その結果、異常気象が日常茶飯事になって、僕たち全員の暮らしを土台から脅かすようになってる。

 うん。

正太郎 個人単位では「気候変動を起こしたい」って思ってる人なんていないんだけど、地球単位では誰の目にも見えるレベルで変化が進んでいる。

 まさに「意図しない結果」につながってしまっている訳だね。

正太郎 いわゆる「エコなアクション」と言われることもより大きなシステムの中で考えた時に、本当にそれって正しい行動なんだっけ?っていうことがたくさんある。エコバッグすら環境負荷は高いわけで。

美咲 だから「サステナビリティ」を考える時には、自分の行動を、社会や環境みたいな大きなシステムに紐付ける必要があるんだよね。

「ビジネス」と「サステナビリティ」、両方がわかる人がいない

美咲 でも、自分の行動がシステムに影響を与えるとしたら、希望もある。

 希望?

美咲 自らの行動が、未来を切り拓く鍵になる可能性もあるじゃない?

 ああ、なるほど!

正太郎 だから僕らは、「サステナビリティ」と「ビジネス」、どちらの立場もわかる人が増える必要があると思ってるんだよね。

 「サステナビリティ」はわかるけど、「ビジネス」も?

正太郎 気候変動の背景には、グローバル資本主義のひずみがある。いまもなお維持されてる、化石燃料に頼った大量生産大量消費の構造を変えられるのは、ビジネスセクター自身なんだよ。

美咲 なのに、今って「サステナビリティ」と「ビジネス」の間を取り持つ人があんまりいない印象があるの。

 企業でも、SDGs担当やCSR担当を置くようになっている気がするけど。

正太郎 確かに担当者は置いてる。だけど、「サステナビリティってよくわかんないけど、SDGs推進の担当になっちゃいました!」って人もたくさんいると思うんだよ。

美咲  そうそう。担当者もよくわかってないから、企業がサステナビリティに関わるプロジェクトをやろうと思ったら、外部のコンサルが入ったりね。

 企業に、「サステナビリティ」がわかる人があまりいないのか。

美咲 一方で、NPOとかでサステナビリティを推進する側も、「これが環境に良いのに、なんで導入しないんだ!」っていうふうに、正しさの押し売りをしてしまいがちだと思う。

例えば「とにかく紙のストローにしよう!」って提案するけど、その背景にどんな経済活動が行われているかわかってないと、ビジネス側と衝突が起きてしまうんだよね。

ビジネスパーソンにもサステナビリティのリテラシーが必須に?

正太郎 だからこそ、「サステナビリティ」と「ビジネス」、両方のことがわかって、その間を取り持つことができる人が、今まさに求められてる。

美咲 本当にそう思う。企業の担当者が、「私はサステナビリティはこうだと思っていて、こういう観点から、この取り組みをやります」って、自分の言葉で社内で語れるようになったら、すごくインパクトがあると思うの。

正太郎 それに、SDGsやサステナビリティの担当者じゃなくても、ビジネスパーソンにはサステナビリティのリテラシーが必須になってくるんじゃないかな。
2025年問題ってあるじゃない?

 団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という。

正太郎 そう。いま企業で権限がある団塊の世代の方々から代替わりがおきて、企業の文化もガラッと変わるはず。そしたらビジネスにも当然のように、サステナビリティへの配慮を求める機運が高まると思う。

 2025年だから、あと5年後か。もうすぐだね。

正太郎 実際は気候変動の状況を考えると、2025年と言わず、企業は待ったなしでサステナビリティに関わる取り組みをする必要があるんだけどね。

だから今、サステナビリティについて学ぶことは、英語やITを学ぶことと同じくらい、もしくはそれ以上にビジネスパーソンにとって大事なことなんじゃないかな。

サステナビリティ×ビジネスを実践で学ぶ場

 あらためて、「Sustainability College(サステナビリティカレッジ)」って、どんな場なの?

美咲 簡単にいうと、完全オンラインで、サステナビリティについて実践的に学び合うことができる場。内容としては、専門家や実践者を呼ぶ講師回と、受講生が学び合うゼミ回の2回の講座を毎月繰り返します。

あとはオンラインプラットフォーム「Slack」を使って参加者同士でコミュニケーションをとったり、授業はアーカイブ化するのであとで学び直したりしながら、参加者が自分なりの「サステナビリティ」を見つけ、実践する人が増えていくことを思い描いています。

 どんな人が対象になるの?

正太郎 サステナビリティについて実践をしている人だったり、これから実践をしていきたいと考えてる人だね。10月開校の時点で、まずは40人の受講生を集めようと思ってます。

大企業の方やベンチャーの方、自分で事業に取り組んでいる方も大歓迎だし、学生で環境ビジネスに興味がある方も参加してくれたら嬉しいな。

でも、「エコな暮らしがしたい」とか「とりあえず座学で学びたい」って人は、ちょっと違うかもしれない。今回はあくまでも「サステナビリティ×ビジネス」を実践で学ぶ場なので。

美咲 あと、参加者には「部活」もどんどんやってほしくて。

 部活?

美咲 たとえば飲食店で経営をやってる人が、何人かで「カフェ部」をつくって「カフェにおけるサステナビリティ」についてお互いの日々の実践や学びをシェアしあったり、先進的な取り組みをしている現場を見学に行ったり。そういう学び合いを生んでいけたらいいな、と思ってます。

「継続性」「実践性」「多様性」「コラボレーションの可能性」

 ちょっと意地悪な質問をしちゃうけど、今って、サステナビリティを学ぼうと思ったら講座もあるし、ドキュメンタリー映画とかもたくさんあるよね。それらとは違うの?

美咲 私たちがこれまでの学びの機会に足りなくて、「サスカレ」で大事にしたいと思ってるのが、「継続性」「実践性」「多様性」「コラボレーションの可能性」なの。

美咲 「継続性」でいうと、日本でのサステナビリティに関する学びの機会はどれも単発でなかなか継続的に学べないんだよね。ちゃんと学ぼうとすると大学院に入るみたいな選択肢しかなくて。

その点「サスカレ」は、月5000円のサブスクリプション型にしてるから、参加のハードルが低くて継続しやすい。

 うん。

正太郎 「実践性」も大事だよね。サステナビリティの領域は特に、実践しないと得られない知見がたくさんある。美咲さんも、コンポストつくったら想像以上にハエがわいたとかあるじゃない?

美咲 うん、びっくりするくらい(笑)

正太郎 いくら座学で学んでも、実際やってみてこそ見えてくることがあるんだよね。でも、一人でやると心が折れちゃう。だから、同じ失敗をした人やすでに成功体験のある人からアドバイスをもらえたらいいと思うんだよ。

例えば、生鮮食品を扱う企業の担当者同士が、毎日大量に出る廃棄物を軽減するための方法について知見を共有する、とかね。「有機的なラーニングコミュニティ」に育てていきたい。

 なるほど。「多様性」「コラボレーションの可能性」は?

美咲 「多様性」でいうと、同じ映像を一人で観るより、40人分の目で観て気づきを共有したら40倍の学びがある。しかも全然違うバックグラウンドの人たちの視点を学べのは、自分なりの考えを育む上ですごく重要だよね。

正太郎 あとは「コラボレーションの可能性」。多様な参加者が集まるはずだから、仲間同士でのコラボレーションが自然に生まれる場にしていきたいんだよね。参加者同士でプロジェクトや事業がどんどん立ち上がるといいなと思ってる。

「サスカレ」を通じたコラボが次々に生まれる?

 2人の話を聞いて、「サスカレ」がいわゆる「学校」みたいに知識を教えてもらう場じゃなくて、みんなで主体的に学び合い、実践していく場なんだということがわかってきたな。

最後に、未来に「サスカレ」はどうなっているのか、2人の妄想を聞かせてください。

美咲 えー! 妄想かぁ……。

私は2023年には、「サスカレ」の参加者が2000人ぐらいにはなってると思う。

 2000人!

正太郎 確かに人数は2000人ぐらいにはなってそうだね。人数が増えても、コミュニティや学びの密度は下げたくないけど。

美咲 しかも、「サスカレ」出身の方同士がコラボして、事業がいくつも生まれているっていう状態は想像できる。

正太郎 そうだね。「サスカレがあったから自分がある」って言ってくれる人が、全国でたくさんいるような状況を目指したいな。今活躍してるあの人もこの人も、実は「サスカレマフィア」なんです、みたいな(笑)

 今回40人も、数年後にはそうなっている可能性があるよね。

正太郎 そうだね。僕らも講師ではなくて「学級委員長」。答えなんて持ってなくて、参加者のみなさんと一緒に学んでいきたいと思ってる。みんなで学び合うの、楽しいと思うんだよね。

美咲 うん、今からワクワクしてる! だから「自分なんて……」と思わずに、「サステナビリティ」を継続的に学び、実践に活かしたいと思っている方は、ぜひエントリーしてほしいな。

– INFORMATION –

「Sustainability College」

サステナビリティを学ぶオンラインの学校「Sustainability College」は参加者を募集しています。記事を読んで興味を持った方は、ぜひ公式ページで詳細をチェックしてみてください。

※定員を大きく上回るエントリーがあった場合は、早めに締め切ることもございますのでご了承ください。

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