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3ヶ月で、想像を超えたローカルキャリアが動き出す。「if design project」は、なぜ参加者の生き方を変えるのか #仲間募集

この募集の応募期間は2021年9月20日までです。また、9/8(水)に今回の募集に関するオンラインイベントを開催します。興味がある方はこちらのページをご覧ください!

より自分らしい生き方や働き方を目指す人びとのあいだで、ローカルキャリアに注目が集まっています。ではその一歩を踏み出した先に、みなさんはどんな姿を思い描きますか?

二拠点居住や移住、副業、転職。地方と関わる選択肢は着実に広がりを見せる一方、仕事や暮らしを変える不安から、踏み出した先の姿が思い描けず、躊躇している人も多いはずです。

そんな人におすすめしたいのが”ローカルキャリアの実験場”として、2020年にも紹介した「if design project」。仕事や暮らしはそのままに、茨城と東京を行き来しながら、3ヶ月間ローカルキャリアを実践できる取り組みです。2018年に始まって以来、副業や地域づくり、移住といった多様なローカルキャリアの実践者を生みだしてきました。

その「if design project」が、この夏、4期生を募集します。

そこで今回は、「if design project」参加者の田中昭信(たなか・あきのぶ)さん飯塚菜月(いいつか・なつき)さん平間一輝(ひらま・かずき)さん、 そしてプロジェクトを企画・運営する株式会社リビタの増田亜斗夢(ますだ・あとむ)さんと株式会社カゼグミの鈴木高祥(すずき・たかあき)さんにインタビュー。「if design project」が、自らが想像していなかったようなキャリアにつながる理由、そしてこのプロジェクトを通じてどのようにローカルキャリアがひらけていくのか、お話を聞きました。

茨城をフィールドに、地方のリアルを知る

「if design project」でのフィールドワークの様子(写真: if design project提供) 

「if design project」とは、それぞれのテーマに対して、さまざまなバックグラウンドを持った想いのある人たちがチームを組み、フィールドワーク・講義・ワークショップに参加する実践型プロジェクト。

約3ヶ月間、茨城と東京を拠点に、茨城の魅力を引き出し、地元企業や自治体が抱えるリアルな地域課題に対する企画提案を行います。

期間中は、専門的な視点から企画をサポートするメンターや、地域のことをよく知る地域コーディネーター、企画についての密な相談にのるディレクターが各チームに伴走。アドバイスを受けながら、「自分たちなら何をやるか?何ができるか?」をベースに、実践を見据えた企画を考えます。

ワークショップの様子(提供: if design project)

「if design project」は、茨城県への移住者を増やすことを目的とすると同時に、茨城の地域や人と関わる関係人口づくりも目指しています。スタートした2018年以降、コロナ禍で試行錯誤しながら継続し、これまで約70人が参加。そのうち約1割が参加後に茨城県に移住したほか、学びや趣味、プロボノや副業など、県外から茨城とつながり続ける参加者も生み出しています。

実践型プロジェクトを行い、その後の継続的な関わり方も模索して活動し続けてきた成果が、少しずつ形になり始めているのです。

「if design project」から始まる、それぞれのローカルキャリアの形

「if design project」の参加者は、今、どのようなローカルキャリアを実践しているのでしょうか。

現在は東京でデザイナーとして働きながら、副業という形で地元・茨城と関わる田中昭信さんは、2018年に実施された第1期「if design project」で「山x地域」チームに参加しました。

田中さん 「山x地域」チームのパートナー企業だったCAFE日升庵のオーナー野堀さんから、筑波山の資源と魅力を生かして、新しい人の流れをつくりたいという話がありました。現地を見ると、昭和的な観光地の雰囲気がありながらも、その周りの麓から中腹のつくば道には酒蔵や古い街並みがあったりと、魅力が点在しているんです。プロジェクトでは、その情報を伝えるホームページやアプリなどのプラットフォームを企画し、提案しました。

田中さん プロジェクトが終わった後、「地元の人と交流できる場を持とう」ということになって、チームメンバーで筑波山麓で行われた地域のイベントに参加しました。野堀さんを通して使われていない石蔵をお借りし、春と秋の2回、カレーとコーヒーのお店をオープンしたのも印象深いですね。

お店にはたくさんの方に来ていただいて、逆に忙しすぎてなかなか交流ができなかったほど。また何かできれば良いなと思っています。

※「山x地域」チームの取り組みについては、以前の記事で詳しく紹介しています。

筑波山麓でのイベント時の様子(写真: if design project提供)

生まれ育った地元・茨城と関わりたいと思っていた田中さんは、2019年には、仕事でも関わるようになります。

田中さん 以前から実家で地元の冊子などを見ていて、「もう少しデザインに凝ったらどうかな」と思っていたんです。「if design project」に参加してつながりができたおかげで、地元の出版物のデザインに関わらせてもらうなど、少しずつですが想いが実現できています。

このプロジェクトに参加しなかったら、茨城の魅力をこんなに知ることもなかったですし、こういった地域の仕事をすることにもつながらなかったなと思っています。

東京で仕事をしながら、キャリアをいかして地方で副業をする。都心に近く、ローカルの要素をあわせ持つ茨城だからできる関わり方でもあります。

「if design project」での経験をスキルに、地方で働く

現在は茨城の旅行会社「アーストラベル水戸株式会社」に転職してUターンした飯塚菜月さんは、大学進学と同時に地元茨城を離れた過去を持ちます。しかし、いつかは茨城と関わりたいという思いをずっと抱いていました。

東京で社会人2年目を迎え、仕事にやりがいを感じる一方、このまま続けていくのかどうか疑問を持ちはじめたとき、タイミングよく目にしたのが「if design project」第2期の募集でした。

飯塚さん 東京での暮らしがあったので、すぐに東京を離れることはできないなと思っていて。「if design project」だと東京で生活をしながら、茨城で地域のプロジェクトに関われるところにとても魅力を感じました。

社会人経験が浅かったので、「これができます」というスキルはなかったのですが、「地域に関わりたいという気持ちは誰よりも一番あります!」と自分をPRして、参加したんです。

活動中の飯塚さんの様子(飯塚さんは中央)。取材にはオンラインで参加してくれました。(写真: if design project提供)

第2期の「農x地域」チームでは、結城市の食と畑を結び直すために、幅広い事業展開を企画提案したそう。さらにそれだけではなく、実際にイベントも実施。シェアスペースを借りて、地域の食材を使ったおにぎりや豚汁を提供し、結城市の魅力を伝える場づくりを精力的に行いました。

フィールドワークで、パートナー企業やプレーヤーの方々を訪ねたときの様子(写真: if design project提供)

飯塚さんは、チームでの継続した活動を思い描いていましたが、プロジェクトが終了した翌年の2020年初めから新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、活動ができなくなります。

飯塚さん 「if design project」に参加したことで、もっと茨城に関わりたいという思いが強くなって。「if design project」運営事務局の鈴木高祥さんが関わっている結城市のライター養成講座に参加したり、コロナ禍でも外出できる状況を見計らって、足しげく茨城に通っていました。ただ、外出自粛要請がしばらく続いて、このままだと本当に茨城に戻れないなと感じて、本腰を入れて茨城での転職活動を始めたんです。

「茨城で働きたい」という気持ちを諦めず模索する中で、連絡を取り続けていた「if design project」の事務局から、アーストラベル水戸株式会社が人材を募集していることを教えてもらいます。茨城県内の魅力を旅を通して伝えようとする会社の姿勢に共感した飯塚さんは、すぐに応募。2020年12月に茨城にUターンして、働き始めます。

飯塚さん コロナ禍で県外への移動が制限されている今だからこそ、茨城県内の魅力に目を向けてもらえるようなツアーの企画などを担当しています。「if design project」で実践したことと、今の職場での仕事がリンクしているなと感じます。

自分の気持ちを諦めなかった飯塚さん。「if design project」での実践がスキルになって、ローカルキャリアにいかされています。

「if design project」をきっかけに広がっていくローカルキャリア

最後に紹介する「if design project」の参加者は、平間一輝さん。第2期「海x地域」チームで企画提案した「大洗カオス」という集団を実際に立ち上げ、Uターンを果たします。

平間さん 東京での就職を機に、地元茨城のために貢献できることをしたいという思いが強くなったんです。特に、茨城で何かをするにしたら、人とのつながりづくりをしたくて。「if design project」ならそれができそうだと思いました。

それに、大洗が好きで、地域を盛り上げていきたいという熱量を持つチームメンバーと出会えたのは、自分にとって特に大きなことでした。

2019年、プロジェクトへの参加後、平間さんは熱い思いを持つメンバーと一緒に「大洗カオス」をスタート。地域の新しい魅力づくりを始めます。

平間さん 大洗カオスは、サンビーチや磯前(いそさき)神社といった観光地、アニメ『ガールズ&パンツァー』の舞台としてファンが集まる商店街など、大洗が持っているたくさんの魅力をつなぎ合わせて、交わる状態をつくっていき、常に新しい発見や新しい何かが生まれていくように仕掛けていくプロジェクトに取り組んでいます。

海の街で、海を撮らずに海が感じられる写真を撮るフォトフィールドワークの実施など、大洗に人を呼び寄せたいという思いで、少しずつ活動してきました。現在も引き続き、大洗カオスな状態にしようと企み中です(笑)

大洗カオスメンバーと「海を撮ってはいけない海の写真展」に参加された人達(写真: 大洗カオス提供)

東京で生活し、大洗カオスを通じて町の人たちと関わりを持ち続けていた平間さん。大洗に移住して転職をしようと決めたときには、「海x地域」チームのパートナー企業だった「一般社団法人大洗観光協会」会長の大里明さんも力になってくれました。

そして2020年に大洗に移住。大洗町観光情報交流センター「うみまちテラス」の観光コンシェルジュとして働くようになります。職場では、「頭で考えて手を動かす」実践型プロジェクトの経験がいかされていると話してくれました。

平間さん 「if design project」では、課題を解決するために企画し、デザインするということを実践できたので、その経験が今の職場でもいかされていると思います。また、ゼロからチームを立ち上げて組織をつくり上げた経験をいかして、大洗町内や茨城県内のさまざまなプロジェクトのリーダーも務めています。

平間さんのローカルキャリアは、「if design project」をきっかけに、地域の新たな魅力づくり、移住、転職、キャリアアップへと広がっています。

プレゼンの先にある見えないステージが、思いがけないローカルキャリアに

ここでの参加者のみなさんは、それぞれのあり方で、個性あるローカルキャリアを実践しているように感じられます。「if design project」をきっかけに、想像しなかったローカルキャリアにつながったのは、なぜでしょうか。

「if design project」を企画・運営する株式会社リビタの増田亜斗夢さん、株式会社カゼグミの鈴木高祥さんにお聞きしました。

鈴木さん こうしたローカルキャリアを実践する参加者は、最終のプレゼンをゴールとして見ていない人が圧倒的に多いと思います。「企画提案が終わったけど、まだ何かおもしろいことがあるかもしれない」という見えないステージを予測しているところが、この3人の共通点かもしれないですね。

参加者のみなさんも、「まだ何かしたい」という顔をしているんですよね。そこで終わるのがもったいないと思うから、事務局としても友人関係っぽくつながって、関係を続けていることが多いですね。

まだ何かやりたいという人は、稼ぐという気持ちがなくても、結果的には収入につながったり、地元の信頼を得たり、次のステージに突入している気がします。

オンラインで参加してくれた鈴木高祥さん

「if design project」では、企画・提案した内容が必ずしも受け入れられる訳ではありません。大切なのは、熱意ある仲間やメンターの方々とプロジェクトを実践する「過程」にあるようです。

増田さん 企画を考えるプロセスを通して、メンターやパートナー企業の方と関係性ができている参加者が多いです。企画が実現しなくても、何かしらの形で関わりを持ち続け、それが結果として、次のステップにつながっているのだと思います。

さらに、「if design project」ではプロジェクト終了後の「出口づくり」も見据えています。

鈴木さん 参加後のステージづくりは、事務局の課題としていつも考えています。「if design project」を始めた当初は、どう茨城と接点を持ってもらえるかという「入口」のデザインを意識してきました。これまで3期のプロジェクトを行なってきて、参加者の方も茨城のことを気にかけてくれて、関係性もできたけど、その先の「出口」をつくらないと、滞留してしまったり、先のキャリアにつながらないものになってしまうということも感じています。

つまり、「if design project」を一回限りのイベントで終わらせないためにも、仕事や地域のプロジェクトを通して参加者のなかでの継続性を担保しないといけないなと。4期はさらにプロジェクト終了後も取り組みが続くような成功事例をつくっていきたいですね。

東京に近いローカル・茨城で、自分らしく地域と関わる

さまざまなローカルキャリアの実践者を輩出する「if design project」。今年も8月から、第4期生の募集が始まります。

今回は、ひたちなか海浜鉄道沿線地域の再編集や、桜にフォーカスした桜川市の魅力づくり、鹿嶋市でのアウトドアをテーマにしたもう一つのコンテンツづくりといった、これまでプロジェクトで関わらなかった新たな地域を舞台にした企画が用意されています。

第4期のテーマのひとつが「桜」。日本有数の桜の名所である桜川市で、市内外の人々に愛される街となるためのコンテンツ開発や対外的な伝え方のデザインを考えていきます。(写真: if design project提供)

第4期のふたつめのテーマが「ローカル鉄道」。ひたちなか海浜鉄道湊線沿線の資源を活用した、地域と連携した体験のデザインに取り組みます。(写真: 湊鐵道応援団写真部提供)

第4期のみっつめのテーマが「アウトドア」。意外と知られていない茨城の自然やアウトドアのポテンシャルのいかし方を考えます。(写真: if design project提供)

メンターには、企画の創り方の視点から「株式会社スマイルズ」取締役の野崎瓦さん、地域の捉え方の視点から「合同会社千十一編集室」代表の影山裕樹さん、実践への動き方の視点から「一般社団法人Work Design Labo」代表理事の石川貴志さん、と多彩な方々を迎えます。

さらに、地域で一緒に伴走してくれる地域コーディネーターのほか、今年から新たにディレクターが加わり、より充実したサポート体制になるそうです。

第4期のチーム体制(写真: if design project提供)

昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を考慮してオンラインがほとんどでしたが、今年はできるだけリアルでの開催を目指していると、増田さんは言います。

増田さん コロナ禍になって移住が増えたというけど、まだまだハードルが高いものですよね。茨城は東京に近いローカルで、首都圏に住む方にとっては移住というよりは、引越しのような距離感だと思うんです。

在宅勤務が増え、出社する頻度が減ったことで、職場まで1時間圏内で住まいを探していた方の意識が「1時間半から2時間圏内で探してみよう」というものに変化したときに、茨城は注目される場所かなと。

「if design project」をきっかけにして、プライベートでプロジェクトをつくりながらローカルキャリアをつくるのに、茨城は最適な立地。地域のために何か貢献したいと考えている方にとって、取り組みやすい場所だと思います。

増田さん またこのプロジェクトは、さまざまな職種の方とチームを組んで企画を考えていくので、たくさんの意見が出てきます。それを集約して一つにまとめるのは、大変なこと。「自分がやりたい企画がこれで、絶対に譲れない!」という人には向いていないと思いますし、参加者はある程度、他の方の意見を受け入れることが求められます。

自分らしい働き方・生き方を探求しようとしたとき、人に会ったり、コミュニティやプロジェクトに参加したり、新しい世界と接点を持つと、自分が思い描くことのなかった、想像を超える未来が動き出すことがあります。「if design project」は、まさにそんな接点となる可能性を秘めていることが、取材を通して見えてきました。

ローカルキャリアのさまざまな可能性を示してくれる「if design project」は、4期生を募集中。みなさんも、茨城で新しい一歩を踏み出してみませんか?

「if design project」過去参加者の3人で。

(撮影: 山中康司)

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– INFORMATION –

9/8(水)開催
オンラインイベント「短期間で『自分×ローカル』の可能性を探るには? ローカルキャリアのためし方」

グリーンズと「if design project」は、9/8(水)にオンラインイベント「短期間で『自分×ローカル』の可能性を探るには? ローカルキャリアのためし方」を開催します。今回の募集についても紹介するので、ぜひご参加ください。

イベントの詳細・申し込みはこちら