パスタにピザ、カレー、リゾット、煮物にスープ、と幅広く大活躍するトマト缶。忙しい時にキッチンの片隅に見つけて「助かった!」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。ジューシーなトマトが蓋を開けただけですぐに使えるなんて、便利ですよね。
食品流通がグローバル化した近年では、便利さや人気の陰に様々な社会問題が隠れていることがありますが、トマト缶も様々です。
誠実なメーカーもある一方で、過度な品種改良や原料の産地偽装、不当労働、児童労働、食品添加物など、本やドキュメンタリー番組などで見聞きした方もいるかもしれません。買う時は選択基準を決めて選んで買う、またそれと合わせて、トマト缶も自作してみるのはいかがでしょうか。
買うことに比べたら手間はかかりますが、慣れたら簡単だし、それに格別においしく感じるはずです。「家庭菜園でトマトがたくさん採れた」とか「農家さんがおすそ分けしてくれた」あるいは「お買い得トマトを見つけた」という時にぜひお試しください。
まずはホールトマト
1. トマトを湯むきする
ホールトマトは水分の中で保存するものなので皮をむいておく方がきれいに保存ができます。日本のトマトは大抵どの品種も皮が比較的薄いため、湯むきするかしないかはお好みですが、いずれの場合もヘタは事前に取っておきます。
2. 保存瓶に収める
煮沸消毒した保存瓶に湯むきしたトマトを詰めます。大きい場合は1/2にカットしたりミニトマトと混ぜるなどして程よく収めましょう。
3. 塩水を注ぐ
保存瓶の9割ほどを目安に塩水を注ぎ、蓋をします。2〜3日以内に食べる予定なら冷蔵保存で大丈夫ですが、長めに保存したい場合は後述する脱気処理をします。
もうひとつ
トマトピューレのつくりかた
トマトピューレは、潰したトマトを煮詰めて水気を飛ばした、濃縮トマトのこと。今回は特別に、以前ブラウンズフィールドの中島デコさんに教えていただいた、煮詰める時間を短縮して、味も色も生トマトに近いままにできる方法をご紹介しましょう。フードプロセッサーを使います。
1. トマトの下準備
2. トマトを鍋の中で潰す
ちょっと大胆ですが、手で潰します。火を入れた時に破裂しないよう、そして水分がよく出るように、鍋の中で軽く握りつぶします。土鍋を使うのがおすすめですが、ない場合は、アルミ以外の蓋ができる鍋を使ってください。
3. 火入れ
潰したトマトがすべて鍋に収まったら、浸透圧のために塩をひと振りして、蓋をして火にかけます。最初は中火、蒸気が出始めたら弱火にして15分加熱します。一般的な煮詰めてつくる方法だと、水分を飛ばすためにコトコト長時間かかるので、この15分は大変画期的です。
4. 濾す
この時のボウルに取れた水分は、ピューレにこそ不要ですが、でもとてもとてもおいしいトマトのエキスですので堪能しましょう。デコさんは寒天などでジュレにするとのことでしたが、カレーやスープの水分として使ったり、冷やしてそのまま飲むのもおいしいです。煮詰めてつくる方法だとこの水分のおいしさも手放していたことになるので、とってももったいない気持ちになります。
フードプロセッサーにかける
水分をきったトマトを10秒ほどフードプロセッサーに掛ければトマトピューレの完成です。
脱気の方法
数日以内に使う場合は冷蔵保存で大丈夫ですが、長期間、常温で保存したい場合は、瓶ごと加温して内圧を上げることで空気を抜く、「脱気」処理をしましょう。
買うよりは手間が掛かりますが、この時間をもつことでトマト缶の製造過程や、食の現状を考えるきっかけができ、家庭ゴミも減らせます。そして何よりも特筆すべきは、夏の完熟トマトのおいしさを閉じ込めておくことで、冬の楽しみがつくれること。これまで、トマト缶があってよかった、と思っていた気持ちから「夏につくっておいてよかった!」と自分を誇らしくも思えるはずです。