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唯一無二のローカルキャリアは「媒介」で育まれる?「佐賀メディウムラボ」が切り拓く、新時代の協力隊像 #仲間募集

募集職種についてはこちらをご覧ください。

「地域おこし協力隊という職種は、ないのかもしれない」

ある地域おこし協力隊の募集について取材をしながら、僕はそんな言葉を思い浮かべていました。

募集するのは、佐賀県庁。以前「公務員という職種はない」とうたった斬新な職員採用ページが話題となった県です。

佐賀県庁の職員採用サイト。「公務員」という文字に線が引かれ、「経営企画」や「コミュニティデザイナー」など、その人の仕事をあらわす言葉があらわれます。greenz.jp読者に馴染みのある言葉をつかうなら、その人の「beの肩書き」といってもいいかも。

そんな佐賀県庁が募集する地域おこし協力隊も、ユニークなもの。その特徴を挙げてみると、

「県庁による協力隊募集」
「9企画12人を採用」
「企画は『くらしのモビリティサポーター』『低山トレッキングガイド見習い』『こどもの居場所立ち上げサポーター』など、ここならではのものばかり」
「協力隊は『佐賀メディウムラボ』のメンバーとして3年間学び合う」
「県の職員がメンターに」
「OBOGが立ち上げたサポート組織あり」

などなど、一般的な地域おこし協力隊のイメージを打ち破るようなものばかりです。

「地域おこし協力隊? あんまり興味ないなぁ」という方も、ちょっと記事にお付き合いを。なかなか見つからなかった「自分らしいキャリア」が、佐賀なら見つかるかも?

ゆたかな大地や海、なつかしい街並みがある地域

空港から佐賀市の中心市街地へむかうタクシーの車窓から見えるのは、スーッと水平に伸びる田園の風景。有明海の湾奥に横たわる筑紫平野は、九州最大の平野として知られ、温暖な気候と肥えた土壌をいかして稲作・麦作が盛んに行われています。

目の端から端までひろがる田んぼをぼーっと眺めがら、頭の中で佐賀について知っている情報をかき集めてみます。

すると脳内で再生されるのは、あの歌。そう、2003年にヒットしたはなわの『佐賀県』で歌われた、おそらくかなり誇張された情報が、僕が佐賀について知っている情報。あとは有田焼、有明海の海苔、嬉野温泉…。

恥ずかしながら、あまりにも佐賀について知らなすぎるのです。ただ、少し前に目にした佐賀県庁職員採用サイトのことは、記憶に鮮明に残っていました。

トップページをひらくと目に飛び込んでくる、「公務員という職種はない」という言葉。「採用コンセプト」のページには、次のようにあります。

佐賀県の採用職種一覧に
「公務員」という文字はひとつもない。

そこに並ぶのは、
より良い佐賀をそれぞれの方法で目指そうとする
プロフェッショナルたちの肩書きです。

あなたの知識や、経験、技術。
その武器が、佐賀の武器になります。

行政の職員採用のページにカタいイメージを持っていた僕は、その斬新さにちょっと驚いてしまったのでした。

どうやら僕の知らない佐賀県があるらしい…。そんなことを考えていると、「お客さん、つきましたよ」と運転手のおじさんの声。ドアを開けると、高いビルがないために空がひろく見晴らせる市街地の風景に、どこか開放感を感じました。

いざ、佐賀県の秘密を探りに県庁へ。このときはまだ、「どこかなつかしさを感じる地域だな」というイメージしかなかった僕は、佐賀の知られざる側面に触れることになるとは、知るよしもありませんでした。

すべての政策の根幹に「人を大切に」という想いがある

待ち合わせ場所として指定されていたのは、佐賀県庁新館地下にあるラウンジ「SAGA CHIKA」。県庁の地下にパブリックスペース&カフェがあるというだけで驚きですが、行ってみると、なんとまぁおしゃれなこと! 全国各地でリノベーションを手がけてきた株式会社オープン・エーが設計したこの空間は、都内のメガベンチャーにある食堂にいるかと錯覚してしまうような雰囲気です。

佐賀県庁新館地下にあるラウンジ「SAGA CHIKA」。(撮影: Kyohei Kadowaki)

そのテーブルにいるのは、エンジニアやデザイナー……ではなく、おそらく佐賀県に住んでいるおじいさんおばあさんと、県庁職員たち。どうやらここで打ち合わせをしているらしいのです。

あの…これが日常の風景なんですか?

出迎えてくれた県庁職員の平塚久紗子(ひらつか・ひさこ)さん亀﨑真人(かめざき・まさと)さんに聞くと、「ああ、いつもこんな感じですよ!」という答えが返ってきました。

亀﨑真人さんと平塚久紗子さん。(撮影:Kyohei Kadowaki)

平塚さん 県庁の職員はもちろん、一般の方もここで食事をしたり、くつろいだり。あとはああやって、打ち合わせをしたりしていますね。

聞くところによるとこの庁舎地下1階は、2016年に職員食堂がテナントの撤退により閉店して以降、活用されることなく、暗い雰囲気の空間になっていたとのこと。そんな場所を上手に活用できないかと検討が重ねられ、「職員だけでなく一般の来庁者も気軽に訪れるような場所に」という方向性のもと、「県庁を開かれた場所に」という合言葉でリノベーションがすすめられ、「SAGA CHIKA」が誕生したそうです。

さっそく、「どこかなつかしさを感じる地域」という佐賀のイメージが「けっこうクリエイティブな地域」というイメージで上書きされてきました。平塚さんと亀﨑さんも、なんだかとてもフレンドリー。県庁での取材ということでちょっと緊張していた僕も、気持ちがほぐれてきました。

県庁の移住支援室がつくった「konneTシャツ」を着た平塚さん。「来んね」とは「おいで」という意味で、県内の若手女性デザイナーがデザインを手掛けてつくられたそうです。

そういえば、事前に佐賀県について調べるなかで気になっていたのが、県政ガイド「佐賀さいこうビジョン2020」にあった「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」という基本理念。

「県政を進めていくためには、⼈に寄り添い、⼈と対話し、これまで受け継がれてきた⼈の『想い』を感じ取りながら、次の世代へ繋げていくことが大切です。」

そう書かれているように、佐賀県ではすべての政策の根幹には「人を大切に」という理念があるのだそうです。

亀﨑さん たとえば僕や平塚さんが所属しているさが創生推進課の取り組みのひとつとして、「自発の活動を応援する」っていうものがあります。県民の方が「こういうことをやってみたい!」と自発的に声を上げたときに、私たち県庁の職員が全力でサポートしていく、という活動なんです。

例として挙げてくれたのは、「ちゃわん最中」の復活プロジェクト。

かつて佐賀県有田町の銘菓だったものの、20数年前に製造と販売を行っていたお菓子屋が閉店となったことで姿を消した最中について、有田町に移住した地域おこし協力隊が立ち上げた「NPO法人灯す屋」のメンバーたちが「復活させたい!」と声を上げました。

その想いに触れた県庁の職員が、足しげく有田町に通い、金銭面のことはもちろん特許を取るための情報や、参考になる事例についての共有など、二人三脚でサポート。その甲斐もあって、「最中の中身やパッケージなどでさまざまな人たちコラボレーションをする」というアイデアで、現在では関係人口を増やす新たなツールとしてさかんに活用されているのだとか。

2020年には、菓子製造販売をおこなう「御菓子司 鶴屋」とコラボレーションして「ちゃわん最中スタンド」を開催。「さつまいも+バター」「くり+カカオ」など、さまざまな組み合わせのちゃわん最中が提供されました。(写真: NPO法人灯す屋提供)

面積が大きくない佐賀県とはいえ、職員が何度も現地に通ってサポートするのは並大抵のことではないはず。なぜそこまで「人を大切に」するのでしょう?

平塚さん とくにさが創生推進課の私たちが大事にしてるのは、移住者を何人増やすかとか、起業を何件増やすかといった数字で測れるゴールではなくて、「県民の方が自分の地域に愛着を持つこと」なんです。だから、「地域をもっと良くしたい!」っていうアイデアがあれば、全力でサポートする。そうやっておもしろい活動が増えていったら、地域のことが好きになるはずですからね。

亀﨑さん 僕たちは、地域のおじいちゃんもおばあちゃんも、地域おこし協力隊も、県庁職員も、みんなこの地域をもっとおもしろくしていくことを目指す「チームさが」のメンバーだと思ってます。そのチームでは、主役は県民のみなさん。私たち県庁の職員は、一人ひとりの「こういうことをやりたい」っていう想いを全力でサポートする、っていうスタンスでいます。

「チームさが」。この言葉を平塚さんや亀﨑さんは繰り返し強調します。その言葉からは、行政が地域づくりをし、人々はそれに従う…というようなあり方とは異なる、想いを持った人同士が支え合う「チーム」としてのあり方が垣間見えるような気がしました。

そう考えると、「SAGA CHIKA」で目にしたような、地域の方と県庁職員の方が打ち合わせをしている風景が日常にある、ということもうなずけます。なるほど、あれは「チームミーティング」だったんだな。

「人を大切に」は、協力隊へのサポート体制にもあらわれている

「地域をよくしたい」という想いを持った人が集まり、全力で支え合う–。そんな「チームさが」としてのスタンスは、佐賀県内で活動する地域おこし協力隊へのサポート体制にも現れています。

その象徴とも言えるのが、「佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク(以下、SCN)」の存在です。SCNは、佐賀県内で地域おこし協力隊として活動した門脇恵(かどわき・めぐみ)さん佐々木元康(ささき・もとやす)さん橋本高志(はしもと・たかし)さんの3人が中心となって設立した一般社団法人で、自治体に対する協力隊制度の導入支援や、協力隊への伴走支援、県内外への情報発信などをおこなっています。

その大きなミッションは、自治体と地域おこし協力隊のミスマッチをふせぐこと。

「地域おこし協力隊が孤立せず、制度をいかして活動できるようにサポートすること、その情報を県内外に伝えていくことで、佐賀県全体がより活性化すると信じているんです」

そう語るのは門脇さん。東京で大学を卒業し、会社員として就職したのち、2014年に地域おこし協力隊として佐賀市富士町へ移住。「林業女子会@さが」の立ち上げなどの活動に取り組んできました。

門脇さん 佐賀県内でいろいろな協力隊の方が活躍しているのをみて、「もっとこういう人たちが増えたら、佐賀はおもしろくなる!」と確信したんです。でも、実際には着任しても途中で辞めてしまったり、任期を終えたら地域を離れてしまう方もいて。佐賀でもっと協力隊の方が、心からやりたいと思える仕事と出会い、活躍し続けられるような取り組みをしたいと思うようになったんですよね。

有田町にUターンし、協力隊として空き家の活用推進、移住定住促進、まちの情報発信などに取り組み、任期後は「NPO法人灯す屋」を運営する佐々木元康さんも、同じような問題意識を持っていたそう。

佐々木さん 協力隊を採用するとき、自治体はどうしても多くの応募を集めたいから、「なんでもやっていいですよ」みたいな発信をしがち。でも、役割が曖昧なまま任期がスタートして、あとになって協力隊が「こういうことやりたいんです」って自治体の担当の方に伝えると、「そんなのできないよ」って言われてしまうことが少なくないんですよね。それは協力隊にとっても、地域にとってもかなしいこと。そういう状況をどうにか変えられないかな、と思っていたんです。

門脇さんや佐々木さんとときを同じくして、「協力隊のあり方を変えたい!」と熱い思いを持っていたのが、橋本高志さん。福岡県に隣接した基山町に赴任し、特産品のPRなど地域の魅力を発信する仕事に取り組み、任期後はゲストハウスの運営をしています。そんな橋本さんは、協力隊の置かれている現状を目の当たりにし、「悔しさを感じていた」と振り返ります。

橋本さん 多くの協力隊の方が、自分のやりたいこととミッションのミスマッチで苦しむのを目にしてきたんです。一人の人生を大きく変える制度なんだから、受け入れ側も覚悟がないといけない。自分が協力隊として経験してきたことをいかして、自治体と協力隊のミスマッチを解消していくような取り組みをやりたいと思っていたんです。そしたら、同じ思いを持った門脇さんと佐々木さんと出会って、SCNを立ち上げることになりました。

2019年11月に発足したSCN。まだ活動が始まって2年ほどですが、たしかな手応えを感じているのだとか。

佐々木さん なにより嬉しいのは、協力隊制度の導入支援を行った自治体の職員さんの態度が変わっていくこと。「うちの地域の協力隊って、こんなに素敵なんですよ!」って、自分の言葉で熱く語るようになった姿を見ると、手応えを感じますね。

門脇さん あとは、どの地域の協力隊募集も二次選考は現地で行っているんですけど、残念ながら採用にならなかった方が「佐賀に来たらこの土地が好きになったから、また来ます!」って言ってくれることも多くて。それも嬉しいですね。そう、沖縄だとか北海道と比べてあえて佐賀に来る人って少ないけど、一度来ると好きになってくれる人がすごく多いんですよ。

地域おこし協力隊に対するサポート体制は、SCNだけではありません。県庁には「地域おこし協力隊メンター制度」なるものがあるのだとか。これは一体?

このバッジが、協力隊自身から「メンター」に選ばれた職員のあかし。ちなみに「地域おこし協力隊メンター」の文字は、平塚さんのお子さんが書いたものなのだとか。

平塚さん 協力隊でよくあるのが、担当だった行政の職員が部署異動になってしまうこと。たとえば着任して一年で、頼っていた職員がいなくなってしまったら大変じゃないですか。

そうならないために、佐賀県庁では協力隊の方が自分で「メンター」を選ぶことができるようにしました。選ばれた職員は、部署が変わってもその協力隊の相談に乗ったり、必要だったら他の部署の担当をつないだりします。そうすることで、切れ目なくサポートしているんです。

協力隊のサポート体制にも浸透している「人を大切に」という理念。なかなかここまでのサポートをしている行政もなさそうですが、そのサポート体制のなかには知事も含まれているというから驚きです。

亀﨑さん じつは、知事が協力隊のことが好きなんですよね。なんでも知事が総務省の職員だった時代に、協力隊の制度づくりにも関わっていたみたいで。だから制度のことにすごく詳しいし、協力隊に対してもすごく親身なんです。「協力隊との懇親会、いつやるんだ?」って、よくいってますから(笑)

知事と協力隊との距離が近いというのは本当のようで、「協力隊の研修会のあとの懇親会には、いつも知事が参加されるんですよ(笑)」と門脇さん。

門脇さん 懇親会はもちろん、現場にも足を運んでくださることもあり、知事に会う頻度が高いんです。他県の協力隊の方にこの話をするとすごく驚かれます(笑) 私たちは恵まれてるんだなぁ、と思いますね。


地域おこし協力隊が集まる会には、知事の姿も。最前列右から2番目が山口祥義知事。(写真: SCN提供)

SMLのメンバーとなる、という選択の意義

そんな佐賀県で始まった、斬新な地域おこし協力隊の募集。そのユニークなポイントを、いくつか紹介してきましょう。

1.興味と地域課題をかけ合わせ、自分だけの仕事をつくることができる

まずは、それぞれの企画の独自性。全体としては9企画・12人採用予定で、そのうち今回募集開始となった6企画(7人採用予定)は、次のようなものです。

「登るを仕事に!『低山トレッキングガイド見習い』」
「山菜をおいしく学んで、おいしく伝える『料理人見習い』」
「地域と一緒に考える!地域にあった移動手段『くらしのモビリティサポーター』」
「移住者の声を佐賀県庁に届ける仕事『アフター移住サポーター』」
「こどもの居場所立ち上げサポーター」
「地域と外国人を結ぶ『多文化コミュニケーションプランナー』」

どれも、その方の興味やスキルと地域にある課題や資源をかけ合わせた、なかなか他にはないような仕事が並びます。着任した方は、自分だけの肩書きや仕事をつくっていくことができそうです。

今回募集となった6企画

2.「佐賀メディウムラボ(SML)」のメンバーに

さらに、今回着任する協力隊は「佐賀メディウムラボ(通称: SML)」のメンバーになることができます。「メディウム」とは、「媒介」を意味する言葉。でも、どうして「メディウム」なのでしょう?

門脇さん 今回の募集って、各企画それぞれ役割が違うんですけど、共通して“ なにかとなにかをつなぐ”ことがミッションなんです。

“なにかとなにか”っていうのは、いくつか意味があって。ひとつは、「山と人」「暮らしと交通」「子どもと居場所」みたいに、異なる要素をつないぐこと。もうひとつは、ある地域だけではなく地域を横断した活動ができることです。

こうした「メディウム」という役割は、全国に目を向けても多くの地域で求められていること。全国の地域づくりの事例に詳しく、SMLのメディアでも編集長を務める西塔大海さんは、次のように語ります。

西塔さん 全国どこでもそうですが、地域おこし協力隊はそれぞれ地域課題に取り組んでいます。でも、よく考えたら、課題の先にはいつも人がいるんです。困っている人と解決したい人がいて、暮らしと仕事があり、大切にしたい価値観もある。そういう人々と一緒に課題に取り組むために、私たちがやるべきことはまず「耳を傾けること」です。

自分の思い込みをわきにおいて、相手の視点から見える世界を眺め、時間をかけて相手の言葉をわかろうとします。地域住民には地域住民の言葉、行政には行政の言葉、企業には企業の、移住者には移住者の言葉があります。言い換えるなら、大切にしたいこと、またはその人が“当たり前だと思っていることがある”ということです。

そうしたことに耳を傾けるうちに、少しずついろんな立場の言葉がわかるようになっていきます。それが、「メディウム=媒介者」になることの一歩目であり、いわゆるコーディネーターやブリッジ人材という仕事につながっていくわけです。そんな「メディウム」としての力は、任期後に独立しなくとも、どんな組織でもますます重要になる力ではないでしょうか。  

SMLは、こうした「メディウム」としての仕事やキャリアを、協力隊の任期である3年間で実践を通して学ぶ場です。

西塔さん 地域の中では同じ課題を抱えていたり、同じ方向を目指そうとしているのに、うまく協力しあえないことがあります。「人手が足りない」「情報共有がない」など、理由はさまざまですが、根底にはコミュニケーションの溝があることが多いんです。その溝を丁寧に埋めることができれば、地域の可能性はまだまだ引き出せると思っています。

たとえば、地域に移住したい若者たちと、呼び込みたい行政職員。ふたりの思いは同じなのに、言葉が違うために噛み合わない会話が行われています。あるいは、地域で安心して暮らしたい外国人と地元住民。このふたりの愛だにも、小さな溝があるかもしれません。お互いの文化背景を知り、仲良くなれる場をつくれる「だれか」がいれば、病気や災害の時に支えあうことだってできます。そんな未来のために、ふたりの間にたつのが、今回佐賀で募集する「メディウム」という役割を担う人なんです。

3.同期とのコラボレーションや支え合いがある

また、全部で9企画12人の募集であるため、同期となるメンバーとのコラボレーションや支え合いが生まれることも期待できます。地域で孤立してしまうこともある協力隊にとって、同期の存在は心強いものとなりそうです。

4.県庁による地域おこし協力隊募集である

そして、全国でも珍しい、「県庁による地域おこし協力隊募集」であることも大きな特徴。市区町村の協力隊と比べ、より広域に関わることができます。

門脇さん 実は、SMLは「スモール・ミディアム・ラージ」っていう意味もこめています。市区町村という範囲、佐賀県という範囲、そして全国や世界という範囲まで視野に入れて活動ができるんです。

ちなみに各協力隊の取り組みは、SMLのメディアを通して発信される予定。それによって、全国でも先進的な事例として注目されることもありそうです。

「メディウム」になることで、自分のキャリアが見えてくる

話を聞きながら、思うことがありました。それは、個人のキャリアにとって、「メディウム」になることの意義です。

僕はキャリアコンサルタントとして、多くの方のキャリアの支援をしてきたのですが、そのなかで「キャリアは関係性でつくられる」ということを実感してきました。自分でかっちりとキャリアを計画し、それに沿って一直線に生きる人もいる。でもそれ以上に、人や地域、モノやコトと出会い、関係性をつくるなかで、キャリアはだんだんとかたちづくられていくという人もたくさんいるのではないか…と思うのです。

そう考えたとき、「メディウム」になるということのもうひとつの意義が見えてきます。それは、人や地域、モノやコトの媒介となることによって、だんだんと自分のキャリアの輪郭が見えてくる、ということです。

…という話をすると、門脇さんも「ほんとにそうで」と共感してくれました。

門脇さん ワンピースのルフィみたいに、「これをやる!」って明確な意思を持って生きてる人もいますよね。だけど、むしろ地域では、最初は明確にやりたいことがなくても、人と出会ったり、必要とされたことをやってみたりするなかで、段々とキャリアが積み上がっていく感じがするんです。

私も協力隊になって、いろんなことをやらせてもらうなかで、「あ、自分これが向いてるんだな」っていう適性がわかっていきました。今回採用になる方は、やりたいことが今は明確になくても、協力隊の3年間で目の前の課題に取り組むなかでだんだんと見えてくるんじゃないかな。もちろん、それぞれの企画に明確なテーマが設定されているので、「これをやりたい!」って気持ちで応募してもらうのも大歓迎です!

ローカルキャリアについての調査をまとめた「ローカルキャリア白書2020」では、ローカルキャリアの特徴のひとつとして「わたしという肩書きで生きていく」 という項目が挙げられています。

「暮らしと働くが重なるローカルでは、立場や肩書きによらない信頼関係が構築され、多様な共創が生まれやすい。マニュアルのない人生を歩む中で、わたしらしさというアイデンティティが育まれ、どこででも生きられる自信が持てる。」

これは、今回の協力隊にもいえそうです。つまり、人や地域やモノ、コトをつなぐ「メディウム」となるなかで、スキルや経験を獲得し、自分の適性への理解が深まり、自分らしいキャリアが見つかっていく…SMLでの3年間は、そんな時間になりそうです。

そして3年間の任期後には、県庁職員になるという選択肢や、SCNのメンバーのように協力隊のサポートをする立場になるという選択肢、あるいは地域で事業を立ち上げたり、ここで得た経験をいかして別の地域で働くという選択肢も広がってきそうです。

「なにかとなにかの媒介になる」ということは、脇役になるということではありません。媒介となるという機会が、その人の人生を新しい段階へと橋渡しする。その意味で、SMLや佐賀という地域自体が、活動するメンバーの人生を過去から未来へつなげる、媒介となる存在なのかもしれません。

「メディウム」な地域、佐賀の歴史の突端に立つ協力隊

あっという間の取材を終え、バスで佐賀空港に向かう帰り道。車窓から見える風景は、行きに見たそれとはすこし違って見えました。

「佐賀の人って、シャイなんですよ。だから最初はぎこちないんだけど、会って少ししたらすぐ打ち解けて、仲間になっちゃう。ほんと、いい人ばっかりなんですよね」

そう語った門脇さんの言葉が思い出されます。「いい人」とは、「媒介力が高い」とも言えるかもしれない。人やモノやコトのことのことを深く考え、つないでいく、人の力。それは、江戸時代や明治維新の時期にこの地がたくさんの偉人を輩出し、海外と日本とを媒介する役割を担ったころ、いやもしかしたらもっと以前から息づいていたもの…といったら考えすぎでしょうか。

佐賀市の中央大通りには、佐賀県出身の偉人たち25人の銅像が。これらは2018年3月17日から2019年1月14日まで開催された「肥前さが幕末維新博覧会」の際に建てたれたものなのだとか。

その歴史の突端に立つことになる、SMLのメンバーたち。一体どんな人たちが集まるんでしょうか。

ただひとつ言えるのは。
きっと、いい人ばかりなんだろうなぁ。

(トップ画像の撮影:Kyohei Kadowaki)

– INFORMATION –

7/27(火)に、オンラインイベントを開催します!※終了しました

7/27(火)に、オンラインイベント「媒介になると、自分だけの仕事が生まれる? 『ローカル・メディエーター』という生き方のススメ」を開催します。地域で媒介となる「ローカル・メディエーター」という生き方についてや、今回の募集についてもご紹介するので、興味がある方はぜひご参加ください!

イベントの詳細はこちら

[sponsored by 佐賀県庁]