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映画『パレードへようこそ』が伝える「連携」することの価値。偏見を乗り越え、次世代につなぐもの

全体の中で少数であることを示す「マイノリティ」という言葉は、時に「弱者」の代名詞のように使われることがあります。しかしマイノリティとされるグループ同士が手を取り合うことで、「大多数」になり得る可能性は大きいはず。

それぞれの信条があり、衝突もあるかもしれませんが、それを乗り越えるのは相互理解と、信頼、話し合いであり、たとえ簡単でなくとも大きな意味をもっています。

2014年に公開された映画『パレードへようこそ』を観ると、実際に社会を変えた「連携」を追体験することができます。しかもこれは1980年代、ほんの30数年前に起きた実話です。

背景に少しだけ触れると、映画は1984年、イギリスにおける炭鉱夫たちのストライキを報じるところから始まります。強い労働組合を潰そうとする当時の首相”鉄の女”サッチャー政権下において、労働者たちは文字通り警察とぶつかり合う日々。不当逮捕や貧困など、社会不安で満ちていました。

一方で、同性愛者に対する差別もひどい時代でした。キリスト教圏の多くでは16世紀から続く法律によって同性愛、特に男性に対しては禁固刑となるほどの犯罪だった歴史があり、信じられないことに非犯罪化したのは1967年、わずか54年前のことです。

また今でこそいくつもの治療薬があるHIV感染症・エイズもまだ不治の病とされ、見知らぬ感染症に対して社会はあまりにも無知だった時代です。こうした背景から、特に炭鉱がある地方では尚のこと同性愛への偏見が強かった事がうかがえます。

しかし「自分たちと同じように迫害されている炭鉱夫たちの力になりたい、だって炭鉱夫たちのおかげで電気が使えるんだから」、と結成された「LGSM(Lesbians and Gays Support the Miners/ 炭鉱夫を支援する同性愛者の会)」の活動は、見知らぬ相手への偏見を乗り越えて、”同じ敵”に立ち向かおうと努力したのです。

よく知らない、または自分の身近にいない(と思っているだけかもしれない)相手を理解すること、共感し合うこと、同じグループ間においても反対意見を克服することなど、つながりを恐れない個人の信念がいかに大きなインパクトに変わるのか。

社会の変革がどのように始まり、どれほど現在にも影響を与えているかを実感できる本作は、「自分だったらどうするか」と常に考えさせる説得力がありました。

映画の原題でもあり、劇中の転機の場面で飛び出るセリフ “Have some pride, life is short(誇りをもとう、人生は短いのだから)”という言葉を巡らせながら、偏見を捨てる努力は怠らないでいたいと思います。

パレードへようこそ
2014年製作/121分/イギリス
原題:Pride
配給:セテラ・インターナショナル
(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.


(2012年につくられた、LGSMの活動に関するドキュメンタリー番組。映画の後に観るととてもリアルに、実在の人物たちの息遣いまでもが感じられます)