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ここは新しい文化をつくるための、ファンキーな癒しの場だ。ソーヤー海が仲間たちとつくった「パーマカルチャーと平和道場」のデザイン

ハロー、ソーヤー海だよ! 今日はこの連載で何度か登場している、「パーマカルチャーと平和道場」(以下、DOJO)のことを紹介するよ。

DOJOのプロジェクトが始まったのは2016年。僕とグリーンズの鈴木菜央(以下、菜央)さんの二人で多くの仲間たちを巻き込んで立ち上げたんだけど、いまはいろいろなワークショップをやったり、2018年からは長期間住み込みの研修生を迎えたりしながら、「消費者」から「文化の創造者」になるための学びの場をつくっているんだ。

DOJOを始めたきっかけはいくつかあるんだけど、ひとつは、僕が2年間研修した、アメリカのブロックス・パーマカルチャー・ホームステッド(Bullock’s Permaculture Homestead)の体験。

毎日、果物の森からフルーツ取り放題、金曜日はピザパーティを楽しみながら夜はサウナのあと池に飛び込む! みたいな、とにかく楽しくて、自由で、クリエイティブで、豊富すぎる食べ物や水に囲まれて、お金はほとんど必要なく安心感と余裕があって、生態系の一部として生かされていることを実感しながら、仲間と学び、遊ぶ……本当に暮らしているだけでいろいろな技術がどんどん身につく、最高の場所だった。

それから、世界中にあるマインドフルネスを日々実践するコミュニティ、プラムビレッジ(Plum Village)や、ガンディーが「非暴力」を広めるためにインド中につくったアシュラムもインスピレーションになっている。それぞれ、個人の意識からコミュニティや社会のあり方の平和を探求していて、命を大切にする共同体の実現のための深い実践を行っている。そこから生まれる集合的なエネルギーがすごくて、全然違うOSで動いているみたいな世界なんだ。

僕が2011年に日本へ帰国してからは、いつかこんな場所を日本につくることを目指して、活動し始めた。それで、2016年に菜央さんに誘われて僕も千葉県いすみ市に移住したんだけど、家からいつも眺めている田んぼの奥にある、素敵な敷地を紹介してもらったんだ。農家さんが使っていた茅葺の古民家付きで、なんと築150年以上、しかも2700坪!

パーマカルチャーの発祥地・オーストラリアや、僕がパーマカルチャーと出会ったアメリカ西海岸に比べて、日本にはより長い期間洗練された持続可能な暮らしの知識やデザインがあると思う。そんな「暮らしの工夫」は現代社会では失われつつあるけど、特にこういう古民家や何千年もの間整えられてきた田畑や里山は、まさに活かされていない格好の資源。

日本の風土や文化に根ざしながら、アメリカ西海岸の自由でファンキーなノリで、いまの若い世代や都会に住んでいる人たちに響く表現の仕方で、新しい文化をつくる、学びと実験、そして癒しの場(さらに、平和活動をしている人の駆け込み寺)――そんなビジョンを持っていた僕たち二人には、うってつけの場所だった。

ちなみに、「パーマカルチャーと平和道場」という名前の由来は、僕の弟が住んでいたガンディー系コミュニティ「Peace and Permaculture Center」から。「道場」を付け足したのは、「平和の道を歩む人たちが集まる場」という想いを込めたからなんだ。でも、関わる女子たちからは不評で、「道場」というネーミングが空気を重くしている説がある(笑)

僕がコンセプトとか人集めに専念している間に、菜央さんは契約や助成金の申請のためにいすみ市との手続きをいろいろやってくれた。過疎化しているいすみ市にとっても、移住者を増やしたり古民家を再生したりするプロジェクトは魅力的に映ったみたい。

だけどそれだけでは古民家を再生する資金が足りなかったし、もっといろいろな人にこのプロジェクトを知ってほしかったから、クラウドファンディングをやることにした。そうしたら658万円っていう、ものすごいお金が集まった! このおかげで、お金だけじゃなくて、数百人と一緒にプロジェクトを進めている実感を持てたよ。

翌年の2017年はずーっと母屋を再生してた。「お掃除パーティ」を開いて人をたくさん呼んで、ゴミをひたすら片づけて、床を外して、床張りして……。それから、もみ殻燻炭の断熱材を二重にした床板の間に挟んだり、壁をぶち抜いて玄関を駐車場から広場側に移して人の動きを変えたり。もとの古民家にあったデザインを大事にしながら、より快適でコミュニティ暮らしに合うようなデザインに変えるために、いろいろ工夫したんだ。

もちろん順調なことばかりじゃなくて、何か問題があった時にどう乗り越えられるかが、すごく大事で。例えば、 どんな哲学で運営していくか、という話で僕と菜央さんの意見が割れて、超険悪になったことがあるんだけど、二人の関係性という土壌をどう育てるかの、貴重な学びになった。

そして地元の人たちみたいに違う価値観を持つ多くの人たちとどうやっていい関係性をつくっていくかも、学んだポイント。いろいろな人とのつながりがあるなかだと、「~しなければならない」ではなく、本当に自分がやりたいことを軸にして生きるのは、難しいよね。

そういう人間関係って、社会の縮図だよね。平和な社会を望むなら、家族や身近な人たちと平和に暮らす実験が大事だと思うんだ。

お互いに思いやりを持ちながら理解し合うことに挑戦し続けて、自分の内側にすでにある思いやりと愛のタネに水やりをし続ける。

ただやさしく振る舞うのではなく、時には一時的な不和が起きたときにもそれを大切に受け止めつつ、自分の本音や小さな声を大切にして、その上で相手の本音や小さな声も拾い「自分たち(Me+we=Mwe)」という全体性を取り戻すプロセス。

自分も他人も批判したり責めたりする習慣を変容させて、それぞれの行為の奥にある意図の美しさを見ようとし続けることで敵のいない意識の状態(無敵の意識)をゆっくり育む。

途中でつらくなった人がいたらサポートする仕組みをつくる。

それによって抑圧のない、活かしあう関係や、みんなが豊かに生きる世界の実現につながると思うんだ。そして失敗を恐れない! 平和や非暴力を深く理解して、日々体現するのはものすごく難しいから。

で、DOJOでは、ただ農的な暮らしをしてるんじゃなくて、もっとホリスティックに、自然や生態系の一員として豊かに暮らすことを目指している。僕の師匠の一人サティシュ・クマールの言う「Soil, Soul, Society」だね。具体的には、このお花の絵に書かれている分野を実践しながら学んでいる。

お金中心の消費生活から自然の恵みや近所との関係に生活の軸を移すことを通して、自分や身近な人とつながり、同時に大きな社会とつながりながら、社会が抱える課題の解決策を、自分の生活で、小さく実践する。個々人の意識、身近なコミュニティ、そして大きな社会(政治や経済を含む)のレイヤー(ガンジーの氷山と呼んでいる)を同時に扱いながら、命が大切にされる社会を目指している。大きな話をいろいろしているけど、もしかしたらただ単に自分がありのままで心地良く過ごせる居場所をつくろうとしているのかもしれない(笑)

ワークショップとかでは都会から来た若者たちが田舎のボロボロな古民家で 江戸時代の暮らしみたいなことをやっているわけで、僕にとってはユーモアなんだけど(笑)、でもコンポストトイレを使ってうんちを土に返して、それがまた次の命につながってるって体感するみたいに、自然とのつながりを取り戻したり、自然と分離した現代社会とは全然違う現実を体験できたりして、いろいろな感覚が体によみがえるみたい。

都会でもできる臭くないバケツ型コンポストトイレ

それでこれまでに何百人という老若男女が都会から来てくれた。そのままいすみ市へ移住する人たちもどんどん増えている。

僕と一緒にDOJOを立ち上げた菜央さんの声を紹介するね。

僕にとってDOJOは、それ自体がひとつのデザイン。だけど同時に、街全体を、一人ひとりの命とすべての生き物、そして地球を大切にする、そんなすてきな場所にしていきたいと思っている。そのために、DOJO単体で考えるんじゃなくて、街レベルで、自然とのつながり、人同士のつながり、それぞれの人とのつながり、自分とのつながりを育んでいきたいと思っているんだ。

そのためにはDOJOと地域をつなげていくことが大事だと思ってる。地域とのつながりがないと、若者が次々と吸い込まれていく怪しい団体と思われちゃうしね(笑) その土台として議員や市役所の職員たち、そして地域住民にDOJOの存在意義をちゃんと理解してもらおうとしている。

DOJOがきっかけでいすみに移住した人を地域のさまざまな人たちとちゃんとつなげて、つながりのなかで暮らせて、やりたいことができるようにサポートしたり、最近では移住者も地元の人も、DOJOでともに学んで成長できる機会を増やしていったりしてるね(特にNVCの学びの場や、小屋づくりを地域に開いていってる)。

これはどこの地域でも似た状況だと思うけど、いすみ地域にはとてつもない量の資源があふれているんだよね。海、漁場、星空、祭り文化、伝統、建築技術、作物の栽培技術、共有地の手入れ、水路の共同管理、保存食文化、狩猟採集の知恵、そのほかさまざまな自然、社会、そして暮らしの知恵と技術などなど――。

いくつかの資源はすごい勢いで失われていってるし、活かされていないのがもったいない。そういう資源が、DOJOの存在を支えている。で、DOJOに集まった僕らは、それらの資源を活かして、新しい社会と文化をつくろうとしているんだよね。

仲間たちとともに、食べ物を育てたり、採ったり、保存したりして、何があっても生きている安心感。家を自分たちで建てて直せる安心感。僕はここにいていいんだ、生きていてハッピーだな、っていう感覚。

だから僕は、DOJO単体が素敵な学びの場になると同時に、地域と関わりながら地域の未来に貢献できると思っているし、そうありたいと思ってるよ。

ちなみに、これまで研修を終えた卒業生たちはいま何をしているかというと……引き続きDOJOの運営に携わってくれたり、いすみ市の古民家で若者のコミュニティを始めたり、何人かは音楽制作に専念したり、東京で環境活動をしたり、茨城の地域おこし協力隊になったり、和歌山で古民家を再生したり、沖縄でパーマカルチャーの実践をしたり、岐阜県立森林文化アカデミーで森の勉強をしたり、謎の「宇宙海賊団」に入団したり(笑)、もういろいろだね。

DOJOは2021年で6年目。まだまだ食料の生産も少ないし、整っている感じなんて全然しないけど、何かを完成させることがゴールじゃない。

常に未完成な状態のDOJOで、かかわる一人ひとりが成長し、学んで、子どもの頃から植え付けられてきた「お金」や「競争」、そして「○○じゃなければいけない」って不安や恐れを駆り立てられる構造から意識を変えることが、大きな変革を起こすことにつながると思うんだ。自然やコミュニティから切り離された個(エゴ)の世界観から、全てが繋がっている共生(エコ)の世界への旅。

そして僕のビジョンはまだまだ続いていて……

いずれは、DOJOよりも一般の人向けに、本質的に持続可能な社会のために必要な実践的な学びや、変革の可能性を研究する大学――日本版のシューマッハカレッジをいすみ市につくりたいんだ。そして、いすみ市には面白い人たちがどんどん増えているし、学校給食に有機無農薬の食材を導入する流れもあるから、いずれは市全体がエコビレッジのような文化になったら、希望の街になると思っている。

みんなができる方法で支援してくれたらうれしい。

最後まで読んでくれてありがとう!

最近のDOJOの課題の一つはお金が足りない問題。(最近じゃなくて最初からだけど)

なるべくお金をかけずに活動しているけど、まだどうしても最低限かかるお金があって(月々18万円くらい)、それをクリアするのに、特にコロナ以降は苦労している。

そこでみんなにお誘いなんだけど、もしこの記事を読んで、共感したり、DOJOの活動に自分も参加したいと思ってくれたら、お金の支援をしてくれたら、とてもうれしい。(もちろんお金じゃない参加方法も大歓迎)

DOJOの経済的な安定が、人生をかけて関わっているメンバーの安心を満たすのと、より多くの人を受け入れられる包容力にもつながる。いろんな形で多くの人が関わって(住み込み運営、ボランティア、リトリート参加、遠くから経済的な支援など)、支えあう豊かな生態系を育むことが僕らのビジョン。共に、より美しい世界を創造していこう!

寄付はこちらからできるよ。

https://syncable.biz/associate/dojo/

(編集: 岡澤浩太郎)
(編集協力: スズキコウタ)

– INFORMATION –

ソーヤー海さんと一緒に、いかしあうデザインカレッジに参加しませんか?

いかしあうデザインカレッジは、この連載でフィーチャーしているソーヤー海さんとgreenz.jp編集長鈴木菜央が2021年3月にはじめた「”関係性”を通じた地球一個分の暮らしと社会のつくりかた」を学ぶオンラインコミュニティ/学びの場です。不明確さと迷いに満ちた時代で、新しい時代の生き方を模索したい人、自分も家族も地域も地球も豊かになれる暮らし方、仕事の仕方、社会のつくり方を学びたい人はぜひご参加ください!!

詳細と申込みは、こちらへ!
https://school.greenz.jp/class/ikashiau-design-college/