2018年のMeTooムーブメントや2020年のBLM(ブラックライブズマター)があれほど大きく注目されたものの、いまだに続くハラスメントや人種差別。現在アメリカではアジア系に向けられた人種差別とヘイトクライムが激増し、一方アジアでも、ミャンマーではクーデターを起こした国軍が国民を弾圧。いずれも罪のない命が奪われて、多くの人を恐怖に陥れています。
不正や差別を目の当たりにした時、わたしたちはいつも、自分ひとりの力の小ささと問題の大きさを痛感し、何ができるだろうかと苦悩します。日本でも、立場のある年配男性が堂々と差別発言を繰り返し、きっと、ニュースやSNSに触れるたびに憤りを感じた人も少なくないでしょう。
そして、誰かが何かをはじめないと、何も起きないことも事実です。この春、ひとりの少女がはじめたムーブメントを描いた映画が話題になっていることをご存知でしょうか。Netflixオリジナル映画『モキシー ~私たちのムーブメント~』です。
ストーリーについては予告動画の紹介にとどめておきたいと思いますが、同名小説が原作となったこの映画は、過去から続く固定観念に立ち向かい、失っていた自分の声を取り戻そうとする高校生たちのドラマです。最初にこの映画のことを聞いた時は、「若者の苦悩と社会問題をからめたティーン映画かな」と後回しにしたものの、実際は、複雑化する問題をうまくまとめて社会の縮図を描き出した、とても大事なメッセージを内包する作品でした。
今を生きる高校生の主人公ヴィヴィアンは、1990年代にフェミニズムをサブカルチャーとミックスさせた先輩女性たちからパワーをもらい、自らを奮い立たせます。SNSもスマホもなかった90年代に、ZINEを手づくりしてフェミニズムと政治をパンクロックにして叫んだライオット・ガール(riot grrrl)に刺激を受ける様子は、誰かの中でくすぶっていた小さな火が革命の炎に変わることを示唆するかのようです。
社会課題への向き合い方は決して一つだけの正解に縛られるものではない。この映画から受けるメッセージを、あなたは誰に伝えたくなるでしょうか?