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“コロナ禍の今、自分だからできること”従業員みんなで探り出す! 大阪ガス「SDフォーラム」で飛び交った支援の担い手によるリアルな声とは?

2020年、あなたは社会課題にどう関わりましたか?

コロナ禍の影響で辛い思いをした人は、自分や家族のことで精一杯だったかもしれません。また、コロナ禍を機にはじめて社会課題と向き合い、寄付活動などに参加した人もいるかもしれません。

状況はそれぞれですが、「社会の困りごとって意外と身近にあったんだ」と誰もが実感した年だったのではないでしょうか。

ウィズ・コロナの時代を迎え、Daigasグループは、会社全体で「今、自分に何ができるのか」を考えようとしています。

Daigasグループではこれまで年に一度、グループ従業員向けに「ソーシャルデザインフォーラム」を開催し、関西の団体の活動事例の紹介などを通じて、グループ社内に社会貢献マインドを浸透させてきました。

今年度は感染対策を徹底し、参加者のほとんどがオンラインによる聴講という形式で開催。例年とは異なる雰囲気でしたが、「コロナ禍の今だからこそ!」と、熱量は一層増しているように感じました。その様子をレポートします。

会場での聴講者はごくわずか。従業員の多くは、オンライン配信で聴講しました。

受付では検温やアルコール消毒も実施。登壇団体へ寄付するためのフードドライブも行われました。

コロナ禍だから考えたい、
一人ひとりにできること

はじめに、地域共創部門を担当する宮川正副社長より開会の挨拶。「コロナ禍の今、『自分は社会に何ができるか』を考え、今日を最初の一歩を踏み出すきっかけにしてほしい」と呼びかけました。

プログラムは全二部構成で、第一部はDaigas社員が取り組む社会貢献活動の紹介とゲストによる基調講演、第二部は関西で活躍するソーシャル団体3組のリーダーによる講演という内容でした。

まず一人目は、2019年度の地域社会貢献社長表彰を受賞した、大阪ガスビジネスクリエイト株式会社の平郡敬子さんが登壇しました。平郡さんは小学生の頃からガールスカウトに所属し、現在は地域の団で中高生部門のリーダーとして活動しています。

平郡敬子(へぐり・ひろこ)さん。

ガールスカウトは少女や若い女性のための世界最大の社会教育団体で、日本では約4万人が所属しています。現在のキャッチコピーは「わたしが変わる、未来が変わる」。平郡さんが中高生と一緒に取り組む、デコパージュ石鹸を販売し売上金をユニセフに寄付する企画は7年目を迎え、少女たちは「自分たちの行動が誰かの役に立っている」と実感しているといいます。

平郡さん ”Think globally, Act locally.”という言葉があります。普段から視野を広く持ち、まずは特技をいかして地域ボランティアを始めてはいかがでしょうか。ボランティアは継続することが大切です。仕事や家庭との両立は難しいこともありますが、新たな自分にも出会えます。先日、ある少女が「頑張りすぎず、自分のために行動を起こす。それが人のためになる」と話していました。自身が楽しむことを忘れずに、思い切って一歩踏み出してみてください。

次に登壇したのは、ソーシャルデザイン室の谷島雄一郎さんです。コロナ禍で活動が制限されたソーシャル団体が活動再開に向けてどう歩み出したかを共有するとともに、専門家から資金調達面をはじめボランティアなどの担い手をどう集めるかといったさまざまな知見やアドバイスを発信するオンラインセミナー「Reスタート!」を開催したこと、長年行ってきた福祉商品のバザーをカタログ販売に切り替えたことなど、2020年のDaigasグループのソーシャルデザイン活動を紹介しました。

谷島雄一郎(やじま・ゆういちろう)さん

印象的だったのは、谷島さん自身ががんサバイバーであることから2015年に立ち上げた、がん経験を新しい価値に変えて社会にいかすプロジェクト「ダカラコソクリエイト」のお話です。「コロナ禍による不安や不自由さは、がんの闘病と共通する部分が多い」という気付きから、がん経験者が闘病で培った、不安との向き合い方や外出できない生活の工夫やアイデアをイラストにし、緊急事態宣言下に30日間連続してSNSで発信しました。

「ニャ助とパ次郎」というキャラクターをつくり、がんサバイバーたちが経験した在宅生活を有意義に過ごすアイデアを発信(「ニャ助とパ次郎」HPより

谷島さん これらが実現したのは、コロナ禍という困難を「やらない理由」ではなく「やる理由」にしたからです。やめる選択をするのは簡単ですが、活動の先には必要としている人がいて、その人はきっと自分や自分の大切な人とどこかでつながっている。社会はそうやってできています。このフォーラムをきっかけに、みなさんが社会課題を自分ごとにし、自分だからこそ、今だからこそできることを考え、一歩を踏み出してもらえればと願っています。

関西の多くの団体が資金難に。
気持ちをお金で集めて応援

第一部の最後、基調講演のゲストは、社会福祉法人大阪ボランティア協会の事務局長、永井美佳さんです。

市民活動やボランティアをサポートする立場として、緊急事態宣言下に「大阪のまちで何かできないか」とNPO・NGOなどを対象に調査を実施。約半数の団体が事業収入や寄付金の減少により資金面で困難な状況にあると知り、新型コロナウイルス緊急支援基金「#みんなおんなじ空の下」(※)を立ち上げました。

永井美佳(ながい・みか)さん

応援する気持ちをお金で集めて助成金としてつなげるこの基金は、コロナ禍で運営に支障をきたしながらも、コロナ禍でより困難な状況に陥った人びとを地域や海外で支援するNPOやNGOが対象。SNSやブログで積極的に呼びかけを行った結果、個人や企業から約800万円もの寄付が集まり、8月には35団体への助成が実現しました。

永井さん 自分も大変だけど、地域にも大変な人がいる。ちょっと関心を向ければいろんな状況の人がいるんだということを一生懸命伝えました。関西だけではなく、お隣のアジアや中東など世界中の人が困っています。「空はつながっているんだ、みんなおんなじ空の下で共に乗り越えたい」という思いでした。みなさんも今日をきっかけに、ちょっとでもいいから、そういう状況の人たちのことを想像してほしいと思います。

「#みんなおんなじ空の下」寄付受付画面。寄付先を選択できるようにしました。

(※)私と地域と世界のファンド運営管理団体:社会福祉法人大阪ボランティア協会、特定非営利活動法人関西NGO協議会、一般財団法人泉北のまちと暮らしを考える財団、ウェブ制作・システム提供、リタワークス株式会社

急増する貧困や孤独
大切なのは見守り続けること

続いて第二部は、「今、この空の下で起きていること〜コロナ禍の支え合いの現場から〜」というテーマで、関西で活動する3団体のリーダーが講演を行いました。コロナ禍によって支援活動が制限される状況の中、それぞれどのように乗り越えようとしているのでしょうか。

モデレーターを務めたのは、NPO法人チュラキューブ/株式会社GIVE&GIFT代表の中川悠さんです。第二部では、オンライン参加者からZoomのQ&A機能を使って登壇者への質問を受け付けました。

中川悠(なかがわ・はるか)さん。オンライン聴講者が見やすいようパソコンの前で進行。

一人目は、認定NPO法人おてらおやつクラブの代表理事・松島靖朗さんです。お寺に昔からある習慣をいかし、全国のお寺に集まった“おそなえ”を、仏様の“おさがり”としていただき、地域の支援団体を通じて経済的に苦しむひとり親家庭に“おすそわけ”する活動をしています。全国で約280万人と言われる子どもの貧困問題の解決へ向け、現在は全国で1500以上のお寺と450以上の支援団体が連携し、毎月2万人以上の子どもたちに食料品や日用品を届けながら、生活を見守っています。

松島靖朗(せいろう)さん。おてらおやつクラブの活動については、以前のgreenz.jpの記事も参考にしてくださいね。

コロナ禍で自粛生活が始まってからというもの、事務局へは全国から「雇い止めに遭い辛い」「離婚調停が進まずどうにもできない」など、助けを求める母親の声がたくさん届いているそうです。そこで緊急支援として、問い合わせのあったひとり親に対して支援団体を介さず直接届ける取り組みを行ったところ、「生きる力をいただいた」「『一人じゃないんだ』と思えた」など、感謝のメッセージがたくさん届いたといいます。

家庭へ届けるおすそ分けの荷物には、メッセージを同梱しています。

松島さん 全てのお母さんが「見守ってくれる人がいることがありがたい」と仰います。孤立感の解消にお力添えできていると実感しますし、「助けて」と言える社会をつくっていくための足掛かりになればと思います。私たちは、“助け合い支え合うこと”を目指しています。先が見えないこの時代、いつ自分が助けられる存在になるかわかりません。できる人ができることをやっていく、それが大きな力になっていくのだと実感しています。

続いては、社会福祉法人豊中市社会福祉協議会コミュニティソーシャルワーカー統括の勝部麗子さんがリモートで登壇しました。

勝部麗子(かつべ・れいこ)さん。エネルギッシュな人柄が画面越しに伝わってきました。

勝部さんたちは現在、コロナ禍で収入が減り生活に困難を抱える市民の生活支援や貸付の対応に追われ、相談者は合計9千人を超えるほど。中にはこれまで貧困とは縁遠かった職業の人もいるそうです。食品やマスク、日用品を希望者に届ける常設型のフードバンクをつくり、手づくりマスクやメッセージを同梱することで、帰国できない外国人や一人暮らしの学生の孤独感の解消にもつなげました。

長年注力してきた住民同士の交流の場は“正しく恐れながら”活動を続けることを選びました。市民活動用のガイドライン作成や、往復はがきでの交流、電話やLINEを用いた遠隔サロンなどさまざまな取り組みにトライし、引きこもりがちの人や市民団体などが出演するYouTubeチャンネルまで開設したというから驚きです。


豊中社協YouTubeチャンネル。市民団体が介護予防のレクリエーションを行う番組など、プログラムは盛りだくさん。

また、定年後の男性が農業を通じて地域づくりを行う都市型共同農園「豊中あぐり」についても紹介。収穫したサツマイモで焼酎をつくるなどユニークかつアクティブな活動をしてきた男性たちは、緊急事態宣言下も野菜の栽培を続け、屋外での移動販売や子ども向けの収穫体験など、地域の担い手として大活躍しました。

勝部さん 自粛生活により、地域の中で高齢者が弱ったり孤独死や自殺が増えたりすることを危惧しています。“コロナ警察”のような人が現れ住民同士が分断されてしまうことも怖いです。しかしその一方で、今までグローバルに向けていた目を地域に向けてくれる人が増えてきました。みなさんもぜひ、自分のまちにある支援や活動場所を見つけてほしいです。

リモートでの講演でも違和感なく、みなさん熱心に聞き入っていました。「豊中あぐり」の芋焼酎に興味津々です。

オンラインで受講する人にはこのように映っていました。

マスクで口元が見えない!
聴覚障がい者の困りごと

3人目の登壇は、NPO法人SilentVoice尾中友哉さんです。耳が聞こえない・聞こえにくい人のための“教育”と“仕事”のサポートが主な活動で、聴覚障がいのある子どもが通う常設型の塾の運営や、聴覚障がいのある人が働く企業に対し、働きやすさを改善するためのコンサルティングなどを行っています。

尾中友哉(おなか・ともや)さん。Silent Voiceの活動は、以前のgreenz.jpの記事でもチェックしてみてくださいね。

聴覚障がいのある人たちは、学校や職場で相手の口の動きを読んで会話をすること(読唇)が多いため、マスク必須の新しい生活様式はコミュニケーションに大きな支障をきたしているそう。尾中さんたちが以前から取り組む、手話で対面学習ができるオンラインコミュニティの利用者は全国に広がり、講師にはコロナ禍でアルバイトを失った聴覚障がいのある大学生を雇用しているといいます。

手話によるオンライン学習サービスを開始し、言葉の学びを続けました。

尾中さん 「障がい者を見かけても、じっと見ちゃいけないよ」って、ありますよね。僕は逆に、見てほしいなと思っています。僕は聞こえない両親のもとに生まれて、知っているから接することに全く遠慮がないし、難なく交流ができる。これは、今まで見てきたから、触れてきたからこそだと思っています。

差別的な思いで見るのはダメだけど、思いやりを持って見ていれば、相手もわかります。見ることによって、例えば耳の聞こえない人がマスクのせいで会話に困っていたら「どうしたらいいんだろう」と、自然と思いを馳せていくと思います。その蓄積が優しさにつながっていく。まずは“見る”ことなのかなと、僕は思います。

社会課題への意識は変わった?
今、自分にできることを考えよう

最後は、第二部の登壇者全員が揃って質疑応答タイム。オンライン聴講者から「勝部さんのガイドラインについて詳しく知りたいです」「おてらおやつクラブに参加する大阪のお寺が少ないのでは?」など、オンラインならではの気軽なコメントが寄せられました。

また登壇者からは、Daigasグループへ向けネクストアクションのアイデアも。松島さんは「Daigasグループ従業員限定の発送会を開き、発送のお手伝いをしてもらえたら」と自団体への関わり方を提案。勝部さんは「地域にある大阪ガスのサービスチェーンでフードドライブの呼びかけをして、地域の支援団体につないでは?拠点を持っているのは強いと思う。」と、地域に根差した家庭用のお客さま窓口であるサービスチェーンを持つ会社だからこそできることを訴えました。

オンラインとリアルとの共演!

障がい者福祉の専門家であり大学で講師も務める中川さんは、最後にこう締めくくりました。

中川さん 僕は、コロナ禍を通じて学生や若者、市民のみなさんが「社会の困りごとに対し敏感になってくれたのでは」と期待したんです。でも実際は、自粛生活などで困っている人が社会ではなく自分にベクトルを向け、まずは自分や家族を守ろうとする動きになり、この数年間醸成してきた「社会課題に関わっていこう」という意識が少し落ちてしまったと感じているんです。

だけど今日、困っている人ばかりではなく支える人もいるんだ、支え方があるんだ、というお話を聞き、心に刺さりました。みなさんにも伝わっていてほしい。僕らは全員、まだまだ社会活動を続けていきます。みなさんも一緒に、このまちをよくしていきましょう。

コロナ禍は多くの人にとって、世界のどこかで起きていることが自分にも影響するということを痛感した出来事だったのではないでしょうか。

これからの時代、いつ自分が窮地に立たされるかわかりません。おんなじ空の下で、普段からお互いを見守っていくことが、相手の困りごとにすばやく気付き手を差しのべること、孤独や分断を防ぐことにつながっていくのではないかと感じました。

この日をきっかけに踏み出すDaigasグループ従業員一人ひとりの一歩が、未来をつくる大きな力になりますように。

(写真:永野純一郎 ※受付の写真は除く)