藤本遼さんによる書籍「場づくりという冒険」好評販売中!

greenz people ロゴ

世界はこんなにも美しい。映画『ビッグ・リトル・ファーム』から学ぶ、信じる強さと謙虚でいること

2020年3月、映画『ビッグ・リトル・ファーム』が日本で公開になりました。

2018年のトロント国際映画祭で『グリーンブック』に押されながらもかなり話題になっていた本作、公開を待ち望んでいたのは私だけではないはずです。

しかし、コロナ禍と重なったことで公開直後から全国の映画館の営業時間は縮小。それでもこの素晴らしい作品を届けるべく、制作会社がクラウドファンディングを行ったり、企業や団体からのオンライン上映会を受け付けるなどの工夫を重ね、劇場公開と自主上映が並行して公開中です。

グリーンズが7月に主催したオンライン上映会に参加したのはなんと、423名! 想像を超える人数で、終了後には2回目の開催を求める声が聞こえるほどの反響の良さ。それほどまでに多くの人が惹かれるこの映画の魅力とは、どんなところにあるのでしょうか。

大まかな雰囲気はこちらの予告動画に譲りつつ、本作の見どころをご紹介しましょう。

映画は、夢をもって農家となり、理想的な生態系をゼロからつくることにチャレンジした、ある夫婦の8年間がまとめられています。

そう聞くと、おそらく多くの方が「大変そう…」と感じるかもしれません。きっと、農家として生計を立たせることが簡単ではない現実や、自然界の素晴らしさの一方で人知が及ばない脅威についても、私たちはすでに何らかの形で見聞きした経験があるからでしょう。

本作の主人公で監督でもあるジョン・チェスター(John Chester)さんあるインタビューの中で、「何度も諦めたくなった」と話していました。

特に初めの1〜2年は、半年後のこともわからず、数年先に希望も見えない、それでも共に夢を追う妻のモリーさんの言葉に励まされながら進んできたそうです。にこやかに話してはいるものの、約90分の映画でも収めきれない苦悩があったことが想像できます。

アプリコット・レーン・ファームのモリー・チェスターさん(左)とジョン・チェスターさん。© 2018 FarmLore Films, LLC

農家になる前は自然動物を撮影するプロのカメラマンだったジョンさん。ファームをつくり始めてから記録していた映像と新たな撮影を行うことで、自分たちのドキュメンタリー映画をつくる決意をしたのは立ち上げから5年、やっとファームの生態系の変化を実感した時だったそうです。

ジョンさんのキャリアを存分に感じる映像の美しさは、この映画の大きな魅力のひとつです。良いときも悪いときも彼らのチャレンジを際立たせるような、瞬きも惜しむほどの映像美。肥沃な土地に戻るようつくられた畝(うね)は見惚れるほどにきれいな曲線を描き、また、広大な砂地が緑化する様はまるで魔法のようです。

ファームの敷地は200エーカー(東京ドーム約17個!)という広大さ。

カメラは動物の表情も見逃しません。心の内が読めるように表情豊かな動物たちもファームの大きな魅力です。まさか鶏や豚や羊があれほどまでに目や口で語るとは初めて知りました。一方で、厳しい動植物や自然界の脅威もリアルに映し出しており、映像を眺めながら、自然環境、気候変動、また、それらの要因に加担しているであろう現代のライフスタイルについてなど、様々な感情が重なっていきます。

ジョンさんはいろいろなインタビューの中で度々、「ファームを始めたら自分のエゴに気がついた」という話をしています。あるポッドキャストで「本作の軸となるもの」を問われたときは、「自分たちの脆弱性や、いかに自然を必要としているかという謙虚さ」と答えていました。

このときの主語「自分たち(our)」 はおそらく、一緒にインタビューを受けていたモリーさんとのことを意味していると思うのですが、 生態系の成り立ちや自然界の奥深さに対して敬意や畏怖をもつべきなのは、地球に暮らす私たち誰もにとって同じことではないでしょうか。

愛すべきブタのエマ。同ファームを訪れる人にはエマ目的のファンもいるそうです。© 2018 FarmLore Films, LLC

個人的に本作を観ながら思ったのは、「奇跡のリンゴ」で知られる自然栽培農家・木村秋則さんや、伝説的な自然農の提唱者、福岡正信さんというレジェンドたちのことでした。

木村さんは無肥料・無農薬に切り替えてリンゴが実るまで苦節約10年、それまで収入がとても少なく苦しい時期を過ごされたことが数々の書籍などでも紹介されていますし、書籍『わら一本の革命』がたくさんの言語に翻訳されている福岡さんも、「自然と放任は違う」ということを説いていました。「一度人間の手の入ってしまったものは、放っておいても元には戻らないので、自然の形に戻るよう手を貸さなければならない」と語り、試行錯誤を繰り返されていたそうです。

ジョンさんたちのファームと重ねてみても、国や環境条件の違いこそあれど、自然界は共通のルールで成り立ち、私たちの感覚ではとても長く感じるような、5年、10年という時間を掛けて本来の姿に戻るのですね。

けっして簡単なことではないことにチャレンジし、その過程をこうして記録してくれた、ジョンさんとモリーさんに感謝しながら映画を観終えました。

近年、各地に被害をもたらす自然災害のたびに、今こそ本気で、私たち一人ひとりが自然に対して謙虚であり、共生できるよう考えた選択と行動をするときだと思うのです。
ぜひ皆さんも、映画『ビッグ・リトル・ファーム』を観て、自然との距離について考えてみるのはいかがでしょうか。

– INFORMATION –

映画『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

出演:ジョン・チェスター、モリー・チェスター、愛犬トッド、動物たち
監督:ジョン・チェスター
2018/アメリカ/英語/91分/シネスコ/原題:The Biggest Little Farm/日本語字幕:安本熙生
サウンドトラック:ランブリング・レコーズ
(c) 2018 FarmLore Films,LLC

8月29日(土)にオンライン鑑賞イベント開催します!

配給会社のシンカさんにご協力いただきまして『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』のオンライン鑑賞イベントを開催いたします!8月29日(土)12:00から24:00までの12時間限定で「Vimeo」にて鑑賞可能です。配信期間内ならお好きな時間にスマホやパソコンで鑑賞いただけます!

先月も開催し、400名以上の方にご覧いただきました。ご好評にお応えして、今回が2回目の開催です!

映画を待ち望んでいた方、これを期に映画に興味を持った方、よかったら一緒に鑑賞しませんか?

イベント詳細はこちら