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「脱プラスチック」をブームで終わらせないためには、どうしたらいいんだろう? プロダイバーから環境活動家、そして“生活者”へ。武本匡弘さんに学ぶ、社会を動かすコミュニケーションのあり方

ウィルスという目に見えないものとの闘いが続く毎日の中、私はふと、違和感を覚えることがあります。情報から距離を置き、自分の五感で半径1kmの世界を感じ取ってみると、何一つ、これまでとの違いは感じられません。初夏の陽射しも、鳥たちの鳴き声も、波の音も。子どもたちの笑顔もはしゃぎ声も、家族のあたたかさも。変わらず幸せで穏やかな日常が、確かにここに、ある。

でもスマホを手に取り、情報に触れると、目の前の光景とは打って変わって、目を覆いたくなるような世界の、地球の現実が見えてきます。膨大な情報に戸惑いながらも自分に有益なものを取捨選択し、考え、行動する。情報によって社会は違って見え、情報によって社会は動いていきます。

一方で、情報は流れていきます。たとえばインターネットで、地球の反対側で起こっている気候変動による被害のことを知り、「なんとかしなくちゃ」と気持ちが盛り上がりエコ生活を送るも、時間が経てばいつのまにか薄らいでしまう。情報の先にある遠く離れた現場への想像力は徐々に弱まり、日々の営みに追われていつの間にかもとの暮らしに。そんな経験、みなさんにもありませんか?

私はいちライターの立場から、そんな情報の一過性を危惧しています。たとえば環境問題。ロハス、クールビズ、マイカップ・マイ箸など、一時期は盛り上がってもブームのように過ぎ去ってしまう。ここ数年は、海洋プラスチックゴミ問題から、「脱プラスチック」への動きが急速に高まっています。でも社会がコロナ禍に飲み込まれていくと、衛生面の観点やテイクアウト需要からプラスチックのニーズが再燃していると伝えるニュースも。

もちろん、今は目の前のウィルスの蔓延を終息させることが最優先課題。でも私は、「脱プラスチックも、またブームで終わってしまうのでは? 」という危機感を抱いています。ブームに終わらせず、本当の意味で人々の意識と行動を変え、社会を動かすためには、どのような情報伝達、コミュニケーションが必要なのでしょうか?

この問いを追求すべく、私はひとりの環境活動家に会いに行きました。武本匡弘さん。40年のダイバー経験を活かし、近年は「環境活動家」として講演・啓蒙活動に奔走。年間70回以上の講演会やイベントを開催する傍ら、息子の晃彦さんとともに、プラスチックフリーやオーガニックの商品を扱う「エコストアパパラギ」を運営しています。

海という気候変動の現場を目撃し、情報を伝える側にまわった武本さんのお話から、社会を動かすコミュニケーションのあり方について考えてみたいと思います。

武本匡弘(たけもと・まさひろ)さん
環境活動家・プロダイバー。北海道小樽市出身。1979年スクーバダイビングを趣味として始め、1984年よりプロダイバーに。1985年、プロダイバーの集団・ダイビング会社 PAPALAGI を設立。1999年より、「パパラギ海と自然の教室」 「ジェーン グドール INSTITUTE JAPAN」他、数団体のNPO設立や支援に関わる。2014年、ダイビング会社(社員約60名)を後継者に引継ぎ、経営から引退。プロダイバー・環境活動家として、講演会・セミナー等に奔走。2015年より「太平洋航海プロジェクト」を開始。自ら操船するヨットでミクロネシア海域を航海する。2019年、神奈川県藤沢市に「エコストアパパラギ」を開店。著書に『海の中から地球が見える』(NPO自主出版)がある。

洗剤もナッツも、量り売りが楽しい。
プラスチックフリー&オーガニック「エコストアパパラギ」

3月末、緊急事態宣言が発令される直前のこの日、私は、JR藤沢駅近くにある「エコストアパパラギ」を訪れました。

路地裏に佇む小さなショップに足を踏み入れると、エコラップやバンブーファイバーのボトル、竹歯ブラシなどエコフレンドリーな商品が所狭しと並べられていました。どれも機能性・デザイン性ともに優れていて、思わず目移り。調味料類を中心に、オーガニック食材も豊富です。

レジ横に置かれていた「竹歯ブラシ」。柄の部分には、竹の繊維と生分解性樹脂、ブラシの部分には天然毛(豚毛)又は超極細毛を使用している。1年間に世界中で約36億本も廃棄されている歯ブラシのプラスチックフリー化を実現した、店長イチオシの商品。

調味料類を中心に、オーガニック食材も豊富。キャップの部分など、完全なるプラスチックフリーはまだ実現が難しいものの、メーカーとの対話を続けているのだとか。

奥の量り売りコーナーには、ナッツやドライフルーツに加え、洗剤も。プラスチック容器が定番の洗剤類、量り売りはなかなか見かけないですよね。

ドイツ・ソネット社との交渉により実現したオーガニック食器洗い洗剤の量り売り。ソネット社は、使用電力の半分を工場に隣接する水力発電所から、残りはグリーンピースから供給される自然エネルギーを使用するなど、その徹底した環境経営も注目されている。

量り売りの容器は有料で販売。ビン類もおしゃれで繰り返し使いたくなるものばかり。容器を使い捨てる罪悪感を取り除くとともに、買い物のワクワクを演出してくれる、オーナーの遊び心を感じるお店です。

オーガニックのナッツやドライフルーツがずらり。レバーを下げて必要な量を容器に移し、自分で計量してレジへ。好みのナッツを自由な比率で混ぜてオリジナルグラノーラづくりも楽しめそう。

自分が目撃したことだけを話す。
“目撃者”武本匡弘さんによる対話型セミナー

この日、お店の奥では小さなセミナーが開催されていました。テーマは「海から見る地球」、講師は武本匡弘さんです。インタビューの前に、まずは武本さんという方を深く知るためにも、40年に及ぶダイバー経験のなかで目撃した世界を、私も体感させていただくことにしました。

少人数、参加者同士の距離を取るかたちで行われたセミナー。この日は私たち取材メンバーのほか、大学でコミュニケーションを教えていらっしゃる方やヨットに乗った経験のある方など、環境への関心が高い方々が集いました。

セミナーの冒頭、武本さんは、この会は「セミナー」というよりも「講話会」であり、参加者ができるだけ発言する場づくりを心がけていること、さらには「科学者・研究者ではなく目撃者として、自分の目撃したことだけを話します」と、ご自身のスタンスを明確に共有。参加者の自己紹介タイムをたっぷりと取ったあと、いよいよ本編へと進みます。

「伝えなければ」
眠れないくらいの危機感が変えた生き方

まずは40年のダイバー経験の前半20年と後半20年、その海の違いが明確にわかる写真がビジョンに映し出されました。前半は珊瑚が美しく生物多様性に富んだ海。後半は珊瑚が白化し瓦礫化した海。違いは明白です。

武本さんが目撃した、グレートバリアリーフの珊瑚の変化。約20年前(上)と現在(下)では、全く違う光景だそう。

「原因は何か。人間の生活から来るものであることは間違いない」と前置きしたあと、「川や海を汚すということがパッと思いつくけれど、もっと大きなものが地球を覆ってきている」と、武本さん。そう、気候変動です。

グレートバリアリーフに代表されるオーストラリア北部の海には2000年以前の頃に比べて6割ほどの珊瑚がないこと。同じく沖縄本島の海は9割以上の珊瑚がなくなっていること。ダイバー・武本さんが目撃した、急速に進む気候変動の現場の話が続きます。一つひとつ、現場の話を聞き写真を目にするたびに、ズシリズシリと心に重くのしかかるものを感じずにはいられません。

写真ではなく現場を目の当たりにした武本さんにとってその体験は、「眠れないほどの危機感」につながったそう。「伝えなければ」という使命を感じた武本さんは、当時経営していた年商7億、正社員60人のダイビング会社を後輩に譲ることを決意。約6年前、「環境活動家」として生きる道を選びました。

当時の思いが蘇ったような真剣な眼差しと力のこもった言葉から、その決意へと導いた危機感が計り知れないほど大きなものであったことが伝わってきます。

「日本人は気候変動についてどう思っていますか? 」
太平洋に浮かぶ島々の人に思いを馳せるということ

続いて、武本さんが5年前から始めた、自作のヨットで70日間かけて太平洋のど真ん中まで行く「太平洋航海プロジェクト」の話へ。「海にいるから陸がわかる」と、武本さん。このときは海水温の上がった海上で竜巻が頻発、なんと7本の竜巻に囲まれて必死に逃げたのだとか。

洋上に発生する竜巻がはっきりと見て取れる。「こういう現象は見たことなかったし、長い海の生活でも始めてでした」と武本さん。

プロジェクトの中で目撃した太平洋の島々の様子も、まるで昨日のことのようにリアリティたっぷりの言葉で伝えてくださいました。マーシャル諸島では、風が強くなり、風向も変わり、椰子の実が採れず食糧問題になっていること。海面はどんどん上昇し、満潮のたびに国土がどんどん狭くなっていること。家がなくなった人に出会ったこと。

サンゴ礁でできたマーシャル諸島は、海抜が低く海面上昇の影響を受けやすい。

さらには気候変動の甚大な被害を受けているパラオ諸島でも前大統領や島の人々と対話をしたという武本さんのこのメッセージ、みなさんはどう受け取るでしょうか。

島の人々はみんな、「日本人は気候変動についてどう思っていますか? 」と聞いてくる。気候変動の話題ばかりです。二酸化炭素を排出していない彼らが、一番被害を負っている。

このことを「気候正義」とも言いますが、こういう国々の人たちのことに思いを馳せることもすごく大事じゃないかと思っているんです。

想像力を働かせて、太平洋の島々の人々に思いを馳せること。「気候正義」は、先進国に生きる私たちが気候変動の問題を自分ごとに引き寄せるために欠かせない視点です。武本さんの生き方から伝わる話はズシリと私の心に響きました。でも同時に、「その想像力を持続するためには、いったいどうしたら? 」という問いが浮かびました。

情報を受け取る自分のあり方を問いながら、続く武本さんのお話に耳を傾けます。次に私の目に飛び込んで来たのは、太平洋の真ん中のプラスチックだらけの海。海水の顕微鏡を通した写真からは、たくさんのプラスチックやカーボンごみを見て取ることができました。海洋プラスチック問題が、想像以上に鬼気迫るものであることを思い知らされます。

顕微鏡を通して海水を覗くと、たくさんのプラスチックやカーボンゴミが見える。右上のプランクトンの背中には、カーボンがくっついているのがわかる。

「プラスチックを捨てなければいい」という声も耳にしますが、つくる過程でもリサイクルの過程でも大量のCO2を排出するプラスチックは、言うまでもなく気候変動の原因のひとつ。最近では、劣化が進む過程で温室効果ガスの25倍ものガス(メタン、エチレンなど) を排出することも判明しました。プラスチック製品はつくってしまうと、将来世代のつけになるのです。

気候変動と海洋プラスチック問題を同じ問題として考えなければいけないんです。ブームで終わらせないためにも。このままでは2030年を待たずに地球は臨界期を迎えてしまうのではないでしょうか。

このままでは「臨界期」へ。
「どうしたら?」に答える目撃者からの行動提言

「臨界期」という強い言葉を、私は背筋が延びる思いで受け取りました。人間の手では取り返しがつかない環境崩壊の負のスパイラルへの入口に、私たちは立っているのかもしれません。

セミナー会場にピリリと緊張感が漂うなか、武本さんは日本の現状について語り始めました。最も多くのCO2を排出する石炭火力発電所を、日本では現在二十数機も建設中である上、アジア諸国に輸出しようとしているという、世界と逆行するあり方。そして身近な江ノ島や葉山の海でも、ワカメがなくなる“磯焼け”が起こり、海水温の上昇と海の酸性化で魚が穫れなくなり、年々強くなる波の力でテトラポットが打ち上げられているという事実。

太平洋の真ん中からすぐ身近なところまで、深まり続ける地球の痛み、自然界の悲鳴を目の前に突きつけられた私たちの論点は、ただひとつ。

「では、私たちはどうしたらいいの?」

この問いを皮切りに、参加者を交えた対話の時間へ。魚を食べるとプラスチックが体内に入るという恐怖、人間は大丈夫でも動植物が生き残れなくなるということ、様々な視点の意見が飛び交うなか、焦点となったのは、「気候変動を気候危機だと捉え、自分ごとに引き寄せる」ということについて。「武本さんはやはり経験で感じている?」という参加者の問いに、武本さんはこう答えました。

僕はやっぱり海が職場だったからね。水温の記録も付けていて、体感でもわかっていたし、生物が変わるのも見てきたし。衝撃的だったのは、珊瑚がある日突然真っ白に変わったこと。なんだこれ!? って。そういうこともあったから、危機感はずっと持っていたんです。

「気づきを与えていくのが目撃者としての僕の仕事だから」と続けた武本さんは、最後にまとめとして「行動」と見出しのついたスライドを示しました。セミナーを受講した私たちの「どうしたらいいの?」の答えともいえる内容はこちら。

・誰でも環境活動家になれる!
・科学者の言葉に耳をかたむける
・正確な情報の収集、無知からの脱却
・個人の努力(我慢は続かない)
・連帯する事(孤立は実を結ばない)
・組織やグループとしての行動をしよう
・国を動かす運動や活動に関心を持とう

どうでしょう。どれも、少し肩の力が抜けた提案だと思いませんか? 「ちっぽけな私に何ができるのだろう?」なんて悶々と考えていた私も、「大丈夫だよ」と、そっと背中を押していただいた気分。

たとえば1番目の「誰でも環境活動家になれる!」について、武本さんは、「僕みたいに海を見に行ったりする活動は、みんな引いちゃうから(笑)」と前置きしたあと、「年に一度でもビーチクリーンをやったらそれでいい。『環境活動家』って名乗って、名刺にも書いて、みんなで使おう」と、ハードルを下げてくださいました。名刺に「環境活動家」って書くのは気が引ける気もしますが、「活動家」に定義なんてないですし、書くことで相手と環境のことについて話すきっかけにもなりますよね。

さらに、「個人の努力」については、我慢をしないことがポイントだそう。「せめてレジ袋をもらわない、ペットボトルを買わないだけでもすごい効果があるから、まずはそこから。そうすると、『こんなものなくたって大丈夫だ』って思うから」と軽快に語ってくださいました。小さな行動を「小さなことだから意味がない」と思わず、「小さなことでもやってみる」ことで世界が開けていくのでしょう。

エコバッグを持って買い物をする。これだけで、あなたも「環境活動家」に。

個人的に、このスライドで一番大きな気づきをいただいたのは、「連帯すること」に関する武本さんの言葉。

集まることって本当に大事なんです。変なことを言ったりする人がいるのも大事。みんな同じ意見の人々の集まりは、内輪で盛り上がっているだけだから。違いを受け入れる、コミュニケーションの基本ですよね。

そしてエコ的な生活は、強要しないほうがいい。ただ自分がやっていればいい。見ている友達が「なんでやってるの?」って言うのを待てばいい。聞かれたら、「こういうことを知ったよ」って話をすればいい。

「環境の話をするとまわりにドン引きされる…」というのは、環境問題に関心のある方の共通の悩みではないでしょうか。私も、ペットボトル飲料を飲む友人に環境のことを伝えたい気持ちはあるけれど、こちらから話を持ちかけるのは気が引けるな、というのが正直なところ。

人には強要せず、気づいてもらうのをそっと待ち、それとともに、活動を持続可能なものにするためには「組織やグループとしての行動をしよう」にもある通り、共通の意識で対話できる仲間を持つことも大事なのだろうな、と感じました。

下手にまとめずに自分で色々と考えてほしいので、今日はここで終わろうと思います。そしてまた来てください。この集まりは来る人によって全然違うものになるので、何度でも来てほしいんです。

と、武本さん。対話を続けること、様々な人の意見を聞き、違いを受け入れること。「どうしたらいいのだろう?」と、考えることをやめないこと。自分の意志を持ち、自分で選び取り、自分を信じて行動すること。武本さんの生き方から受け取ったメッセージは、そのまま、人のあり方の話として、私の中にじわりと沁み入っていきました。

パパラギでは、地域密着の不動産業も展開。武本さんの長男・康平さんが代表を務め、化学物質を使わないリフォームなど、環境に配慮した住環境を提案している。

生活者が社会を変える。
ブームで終わらせないためのコミュニケーションとは?

セミナーでたっぷりとお話を聞いた後、武本さんと個人的に対話をさせていただきました。

私が少し気になっていたのは、武本さんが環境活動家という生き方に突き動かされた動機について。海の変化を全身で感じるダイバーとしての経験はもちろんだと思いますが、人間・武本匡弘さんが大きく心動かされたタイミングがあったのでは? と。そう問うと、少しはにかみながら、こんなエピソードを話してくださいました。

太平洋の航海をしたときに海外のエコストアを見て、「こういう商品があったよ」って妻に話したんです。そうしたら、「前から使ってるよ」って。言われて冷蔵庫を開けたらエコストアに並ぶような食材ばかりだったし、変なプラスチックだな、と思って使ってたコップもバンブーファイバーだったし、エコラップも持っていた。

それが僕としては相当ショックで。あ、僕は生活者じゃなかったんだな、ってことに気づいたんです。そこからパーっと視界が開けて見回してみたら、「あ、もしかしたら生活者が社会を変えるかもしれない」という気持ちになってきたわけです。

生活者が世界を変える。世界を見渡せば、それが事実であることがわかります。公民権運動のきっかけをつくったのもひとりの主婦でした。グレタ・トゥーンベリは高校生で気候変動を訴え、それが政治を動かす力に変わっていきました。

それでは、社会の当たり前を変える、たとえば「プラスチックは買わない、使わない」というムーブメントを社会の当たり前にするために、私たち生活者は何から始めたらいいのでしょう? そう問うと、「企業と一緒になってやることですね。生活者にウケるという視点で企業は動いているので」と、武本さん。その顕著な例として、嫌煙ブームの定着について語ってくださいました。

10年前は会社でもこういうセミナーの場でも、普通にタバコを吸っていましたよね。どうやってブームじゃなくなったのか、ひとつは経済面です。禁煙席を設けたレストランが流行りだした。経営面でこっちがいいってわかったんです。2つ目は、倫理面。受動喫煙で人が迷惑を被る。3つ目は制度面、制度化されたこと。

この3つは強固ですよ。そうなったら、タバコ臭い人は嫌だし、電車でも匂いが鼻につくようになっちゃって、みんなの感覚が変わってきた。つまり常識が変わった。「それをやっていることが恥ずかしい」ってなればいいんです。ペットボトルを飲んでいる姿が恥ずかしいから夜中にこっそり買おう、みたいなね。

でももちろん、法則としてはあるんだけど、僕らがやらないと無理です。公民権運動も、下地があったから実現した。でもその気にさせるのは、私たちだってことだよね。「買わない」とか、逆に「買う」とか、消費行動を変えていく。そして声を上げること。これは環境NGOなどの組織に入って一緒にやるといいよね、それが力になって政治とか経済にプレッシャーをかけることにもなるから。

お店を立ち上げて間もなく1年。これまでに50回を超えるセミナーを繰り返し、生活者のみなさんに向けて必死に語りかけてきた武本さんは、コミュニケーションの成果を感じているようです。

とにかくこのセミナーに来る人が大きな力になっていますね、こんなに真面目に考えているんだなーって。それぞれの興味で来てくれるから、それぞれの行動パターンに僕はアプローチしてる。できるだけ多くやろう、と。自分の話ばかりじゃなくて、意見交換しよう、と。

それともうひとつは、取引先です。たとえば地元のコーヒー屋さんに話を持っていって、プラスチックフリーとかオーガニックといった条件を話すと、「私たちも問題意識を持っていたので袋つくります」って、紙の袋をつくってくれたんですよ。

そうやって、「プラスチック置きませんからゴメンナサイ」じゃなくて、「なんとかなりませんかね?」ってコミュニケーションしています。セミナーでも同じで、今日もみんないっぱいヒントくれたよね。みなさんの声が僕の商売ネタなんです(笑) そうやって、これからも続けていきます。

店内には、同じ藤沢市内の「7325COFFEE(ナミニココーヒー) 」さんとのコラボ商品も。先方との対話により、紙のパッケージが誕生しました。顔の見える取引ができる上、運送でCO2を排出しないため、武本さんは地元での取引を大切にしています。

「武本さん、今は生活者ですか?」という私の不躾な問いに、「はい、マイバッグも持っています」と笑顔で答えてくださった武本さん。目撃者でありながら、一生活者として足元の暮らしも見つめて、市民目線で社会へ語りかけていく。草の根的で、どこまでも地道な武本さんのコミュニケーションは、流れ過ぎていく情報をあたたかくホールドし、周りの人々とそっと分かち合うような、包容力に満ちたものでした。

さて、ライターの私が「ブームで終わらせない」ためにできることは?

伝え続けること、違う意見の読者をも受け入れる包容力を持つこと。様々なヒントをいただきましたが、やはり私自身が等身大の生活者であること、それに尽きるのだろうな、というのが現段階の私の結論。自分の足元の暮らしで小さなエコ行動を続け、家族や地域の人々とのコミュニケーションを地道に続けていこう。そんな決意とともに、この記事を終えたいと思います。

でもその考えも、出会った人々とのコミュニケーションの中で、これから変わっていくのかも。この記事を読んで何かを感じたみなさん、ぜひ私にご連絡ください。そうじゃないんじゃないか、という意見も大歓迎。武本さんのようにはいきませんが、みなさんとの対話の中で、ともに未来への道筋を描いていきたいと思っています。

私はまず、プラスチック製ラップからの完全卒業から。(エコラップ&シリコンラップに移行中!) そして文章を通してメッセージを伝え続けることを、諦めません。

みなさんは何から、はじめてみますか?

(撮影: 大塚光紀 https://www.facebook.com/photo.office.wacca/

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こちらの記事は「greenz people(グリーンズ会員)」のみなさんからいただいた寄付をもとに制作しています。2013年に始まった「greenz people」という仕組み。現在では全国の「ほしい未来のつくり手」が集まるコミュニティに育っています!グリーンズもみなさんの活動をサポートしますよ。気になる方はこちらをご覧ください > https://people.greenz.jp/