人と組織が持つ価値を引き出すことに、30年間挑み続ける会社があります。
それが、「株式会社ヒューマンバリュー」。人・組織・社会の「学習の質」の向上に貢献するために、人材開発・組織変革に関する実践と研究開発を行う会社です。1985年に設立以来、「学習する組織」「ポジティブ・アプローチ」「ホールシステム・アプローチ」など、最新の研究に基づく実践を重ね、日本の組織開発の領域をリードしてきました。
グリーンズ的に言うならば、「人と組織がいかしあうつながり」をつくる、日本のパイオニア的存在です。
驚くべきは、10年、20年と付き合いを続けているクライアントもいるということ。多くの会社が人材開発・組織変革の支援に取り組む中で、なぜそれほどの信頼を得ることができているのでしょう。
今回、グリーンズ求人の取材を通して見えてきたのは、人と組織が持つ価値を引き出すことに対する、ストイックなまでの誠実さと、その背景にある哲学でした。
課題を解決するのではなく、未来をともにひらくアプローチ
オフィスビルが並ぶ、東京都千代田区。半蔵門駅にほど近いビルのワンフロアに、ヒューマンバリューはあります。
エレベーターの扉が開くと目に飛び込んでくるのは、木目を基調にした開放的な空間。右手には人材開発や組織変革に関する本や、最新のビジネス書がずらりと並べられた本棚、左手にはガラス張りのワークショップスペースがあります。中央には、コーヒーメーカーやソフトドリンク、お菓子が用意されたスペースも。コーヒーを片手に談笑している方たちの姿も見られました。
兼清さん いい空間でしょ。ヒューマンバリューのメンバーだけじゃなく、打ち合わせに来たお客様やワークショップに来た参加者の方が偶然出会って、立場を超えて話せるような場に設計したんです。ヒューマンバリューのメンバーみんなで、「こんなオフィスだったらいいよね」と対話を重ねてね。
屈託のない笑顔で教えてくれたのは、ヒューマンバリューの代表取締役社長、兼清俊光(かねきよ・としみつ)さんです。
ヒューマンバリューは1985年の設立以来、人材開発・組織変革に関する実践と研究開発を行ってきました。MIT(マサチューセッツ工科大学)のピーター・センゲが、著書『The Fifth Discipline』で「学習する組織」のコンセプトを提唱したのが1990年。それよりも前から、学びを通した組織開発に取り組んでいるのです。
取り組みの事例としては、たとえば外資系企業のサプライチェーンを対象にした、個人と組織のマインドセットを獲得する「みらい共創」のプロジェクトや、神奈川県小田原市の市民・職員参加による新総合計画策定の取り組みの伴走。そして、NPO法人シブヤ大学が開催したワールド・カフェ「原宿表参道で働く人、100人集まれ!」のサポートなど、企業や行政、NPOなど幅広いクライアントとともに、価値を生み出し続けています。(事例の詳細はヒューマンバリューのページをご覧ください)
組織開発や人材開発に取り組む会社はたくさんありますが、そのなかでもヒューマンバリューの大きな特徴があります。それは、“課題をいかに改善していくか”という、いわゆる「ギャップ・アプローチ」ではなく、“未来をいかにともにつくっていくか”という「ポジティブ・アプローチ」をとるということ。
兼清さん 組織開発の領域では、課題に対してコンサルティング会社が解決策を提示するギャップ・アプローチをとることもあります。しかしその方法だと、現場のみなさんはやらされ感を持ってしまうんですよね。
特に、現在のような不確実性が高まっている時代では、ギャップ・アプローチではなく、メンバー自らが強みや価値に気づき、未来の可能性を描き、行動するというポジティブ・アプローチが効果的だということが、アメリカの研究でも分かってきています。
兼清さん そのためヒューマンバリューでは、正解を提示したり、あらかじめ用意したパッケージを提供するのではなく、クライアント企業のみなさんが対話を通じて「実現したい未来」を明らかにし、その未来に近づくプロセスにともに寄り添うことを大切にしているんです。
ヒューマンバリューがポジティブ・アプローチを大切にしていることが表れているのが、自社のミッション・バリューをつくったプロセス。2015年に会社の体制が大きく変わったことをきっかけに、約1年をかけて会社のミッションやバリューを改めて見直したそうです。
その結果、次のようなミッションが形になりました。
「人、組織、社会によりそい、学びを通して、未来につながる今を共にひらきます」
しかし重要なのは、できあがったミッションよりもそれをつくるプロセスだったと、兼清さんは振り返ります。
兼清さん 経営層がミッションやバリューをつくって、トップダウンで現場に落とす、という方法はとりません。それだと、メンバーの多くがやらされ感を持ってしまうでしょう。
そもそもヒューマンバリューのミッションやバリューは、組織が個人に与えるものじゃない。メンバー一人ひとりが、ヒューマンバリューで大切にしたいことや実現したいことの総和なんです。だから、みんなが何を大切にしたいか、何に貢献したいかについての対話を、1年ほど繰り返しました。
兼清さん 面白いことに、そうしたプロセスを重ねたことで、最終的には言葉にこだわらなくなるんですね。ミッション・バリューづくりの終盤では、「ここまでみんなで深く話し合ってきたので、最終的には誰が言語化してもいいよね」という意見がまとまりました。
このように、メンバーのありたい姿が内側から出てくるプロセスを重ねることで、個人の主体性や創造性、組織としての一体感が生まれるのが、わたしたちが大切にしているポジティブ・アプローチなんです。
人が持つ価値を解放することが、よりよい組織や社会につながっていく
しかし、ギャップ・アプローチに比べてポジティブ・アプローチは、時間も手間もかかるのではないか、という疑問も浮かびます。現に、経営層がミッションを決めれば、1ヵ月、いや極端な話、何日かで会社のミッションが決まっても不思議ではありません。
それでも、ヒューマンバリューがポジティブ・アプローチを大切にする理由は、兼清さんをはじめ、ヒューマンバリューのメンバーの誰もが信じている、ある哲学にあるようです。
兼清さん 僕らは、すべての人が主体性・創造性を持っていると信じているんですよ。
会社名「ヒューマンバリュー(人としての価値)」にも示されている、人の主体性や創造性への信頼。一方で、それらを損なう環境への懸念もあるそう。
兼清さん 我々人間は主体的で、創造的な存在なんだけど、経験を積んでいくうちに社会的な呪縛や、組織の呪縛にとらわれたりしてしまうんです。
たとえば、新入社員の時はすごく希望を持って、キラキラ目を輝かせていたのに、上司に『これはしちゃいけない』『これは言っちゃいけない』と怒られるような経験が重なると、だんだん目の輝きがなくなっていっちゃう人、いますよね? それって、本来持っているその人の素晴らしい価値が発揮されていない状態だと思うんです。
でも、先ほども言ったように、不確実性が増している現代こそ、一人ひとりの主体性・創造性の重要性が高まっているんですよ。自らの価値を発揮する多様な人が集まる組織であれば、予期せぬ出来事があっても、個人では実現できない価値を発揮して乗り越えていけるし、そうした組織が増えれば、社会もよりよくなっていく。
そう信じているからこそ、僕らは人の価値が解放される機会を創出する仕事に取り組んでいるんです。
兼清さんが一人ひとりの主体性・創造性が重要だと考えるようになった原体験は、子どもの頃に遡ります。
兼清さん 僕は小さい頃、わりと自由気ままでね。学校も面白くない授業だったら、教室を出て外に遊びに行ったりして。そうすると、当然学校で「問題だ!」となって、親が先生に職員室へ呼び出されるわけです。
でも母親は僕を怒らず、こう言うんです。「あなたは大人になったら、世の中のためになることをできる人なのに、先生たちは分からないのよね。あなたは自分が好きなことをすればいいのよ」と言ってくれた。人の価値を信じることが大切だと考えているのは、そんな母親の存在が大きいかもしれないですね。
3つの要素に関わり、組織の土壌をつくる
では、ヒューマンバリューでは具体的にどうやって、人の主体性や創造性を解放し、組織や社会をよりよくしていくことに取り組んでいるのでしょう。
内山さん 私たちは組織づくりを植物にたとえ、学習や変化、成長という芽を育むための土壌づくりに寄り添う取り組みをしています。
そう語るのは、ヒューマンバリューのメンバーである内山裕介(うちやま・ゆうすけ)さんです。
内山さん 組織の学習や変化、成長という芽を育むための土壌は、「コンテンツ」「場」「プロセス」の3要素に分けられます。
内山さん たとえば「コンテンツ」は、ワークショップのテーマ設定、スライド類、話す内容などで、「場」はワークショップ会場の雰囲気や参加者のコミュニケーションのあり方など、「プロセス」はミーティング前後のコミュニケーションのデザインやミーティングの進め方などです。この3要素に関わることで、組織に変化をもたらすことができると、私たちは考えています。
ヒューマンバリューでは通常、案件が始まるとメンバー2,3人でプロジェクトチームをつくり、クライアントと協働していくそう。そのチームの中で、プロセスや場のデザインとコンテンツづくりを役割分担しながら、クライアント企業のみなさんとともに、取り組みを進めていきます。
メンバー同士の役割は流動的で、あるプロジェクトでは内山さんがプロジェクトマネジメントやファシリテーターを担い、別のプロジェクトではサポートにまわることもあるそう。また、クライアントと“ともに”、ということも重要だと言います。
内山さん 組織の外側に立って正解を示すのではなく、クライアント企業のみなさんと一緒に、学習・成長・変化が生まれるような可能性を育んでいく。そんなスタンスを、ヒューマンバリューのメンバーはみんな大事にしているんです。
理論を知るだけで、人や組織の価値が開けるわけではない
現在は、「キャリア開発」や「組織開発の自律的アプローチ」を探求しながら、人や組織の変革をサポートしている内山さん。
内山さん 私が関わっているのは、たとえば会社で未来の経営人材を育成するための選抜型研修のプロジェクトもあるし、エンゲージメント調査を実施して会社の現状を見るプロジェクトもあります。
そうしたプロジェクトのなかで、私は主に「場」と「プロセス」のデザインを担うことが多いです。どういう想いで仕事をしていて、どういう未来を生み出したいと思っていて、何がボトルネックになっているのか。それらをクライアント企業のみなさんが対話によって言語化する取り組みを、ミーティングの設計など(場)やその前後のコミュニケーションなど(プロセス)に寄り添うことでサポートしています。
そんな内山さんは、大学生のときから、教育関係のNPOで授業づくりをしていたそう。そのときに出合ったのが、ピーター・センゲの『学習する組織』という考え方でした。
内山さん 「この考え方を応用すれば、教育のシステムを変えることができるかもしれない」と衝撃を受け、組織開発に興味を持つようになったんです。
1冊の本との出会いから、組織開発の分野に興味を持った内山さんは、新卒で組織開発の会社に入社…とはなりませんでした。
内山さん 当時からヒューマンバリューのことは気になっていたのですが、新卒の採用はしていなくて。他の組織開発の会社にも残念ながらご縁がなかったので、人材広告会社に入社しました。
そこで企業の新卒採用の支援に約2年半取り組むなかで、あらためて強く思うようになったのは、優秀な人材を集めること以上に、社員一人ひとりがそれぞれの主体性や創造性を生かせることが重要だということ。そのタイミングで転機も重なり、まさにそこに取り組んでいるヒューマンバリューで働きたいと思い、転職しました。
内山さんはヒューマンバリューで『学習する組織』で書かれたことを実践する仕事に取り組み始めた一方で、葛藤もあるのだとか。
内山さん 私は『学習する組織』みたいな、理論を知ることが好きなんですよね。でも、実際に組織で悩んでいる人に「この理論を知れば、いい組織ができるからね」って伝えても、残念ながらうまくいかない。理論を知るだけでは人や組織の価値が開けるわけじゃないところに、葛藤もあります。
だからこそ、実際に人や組織の価値が開けていると実感することができる瞬間は、大きな喜びを感じると言います。
内山さん クライアント企業のみなさんとのワークショップでのダイアログで話された内容や、後日参加者に記入いただく振り返りのシートには、参加者の言霊(ことだま)が乗っていて、「この仲間たちで未来を切り開いていけるぞ!」っていうエネルギーがにじみ出ていることがあるんですよね。そういうときに、「今まさに、未来が拓かれているなぁ」って、しみじみと喜びを感じるんです。
お客様が喜び合う瞬間に、私たちはいない方がいい。
もうひとりご紹介するのが、保坂光子(ほさか・みつこ)さん。大手企業やNPOなどの組織変革、エンゲージメント・サーベイや組織変革プロセス指標(Ocapi)を活用した人材開発などに取り組んでいます。
保坂さん もともと生まれも育ちも東京なのですが、中学生の頃に北海道・知床の自然公園でのキャンプに参加して、自然の虜になっていったんです。その後、絶滅危惧種のシマフクロウを調査している人に出会い、種の残し方や自然の復元の仕方を調査するなどしてきました。
人と自然がどう共生するかという考え方って、今の取り組んでいるヒューマンバリューでの仕事にも近いところがあるんですよね。
そう語る保坂さんですが、実はヒューマンバリューで働くまでは「組織開発や人材開発という分野があることも知らなかった」のだそう。
保坂さん 前職は人材派遣会社で働いていたのですが、ある知り合いに「ヒューマンバリューという会社がやっていることと、保坂さんの関心が合うと思うから、話を聞くといいよ」と言われて、何の気なしに話を聞きに行ったんです。
そしたら、その当時出会ったヒューマンバリューのメンバーの生きる姿勢にとても共感して、そのまま入っちゃった。入ってから、組織開発の仕事をしているんだと知ったんですよ(笑)
そんな保坂さんですが、今では組織開発について講演までこなすなど、幅広い業務に取り組んでいます。そうした日々の中で、どんな瞬間にやりがいを感じるのでしょう。
保坂さん ワークショップをしたときに、帰り道でメンバーと『よかったねぇ』と喜び合っている瞬間が幸せですね。もしかしたら、その瞬間のために仕事をしているのかもしれない。
たしかに、「ヒューマンバリューさん、素晴らしい仕事をしてくれてありがとうございました!」って言ってくださる会社もありますが、ゴールはそこではないんです。お客様が実現したい未来に近づいて、喜び合う瞬間に、私たちはいない方がいいんですよ。
保坂さん あくまでも私たちはシャドウ(影)なんですね。言い換えると、お客様のなかに「ヒューマンバリューの取り組みによって、自分や組織が変わった」という認知を生み出してしまっては、結局誰かがやってくれたことになってしまう。そうではなくて、お客様自身が「自分たちでやった」という認知を残すのを大事にしているんです。
だから、お客様が「頑張ったよね」「自分たちって素晴らしいよね」と話している、熱気ある場の中から、私たちはそっと消えていく。その帰り道に、「あぁ、よかったね」って、ヒューマンバリューのメンバー同士で自分たちがした仕事を確かめ合える。その瞬間が、私にとっての喜びですね。
クライアントへの価値提供に、徹底的に誠実でありたい
兼清さん、内山さん、保坂さんの話を聞いていると、ヒューマンバリューのメンバー自身が、自分の主体性や創造性を発揮しているのだということが伝わってきます。
最後に、ヒューマンバリューの文化や、それぞれの関係性を知るために、3名に座談会形式でお話を聞きました。
まず聞きたいのは、ヒューマンバリューの文化。
内山さん 私がヒューマンバリューの一番の文化だと思っているのが、「クライアントフォーカス」です。つまり、クライアントにいかに価値を提供するか、というところに徹底的に誠実である、ということ。みんな、人や組織の価値を開くということに、手を抜かず、全力を振り絞って取り組むんです。
兼清さん うん。お客様への誠実さはすごく大事にしています。お客様に対して自分がやれることがあるのに、適当にやっているのが見えると、他のメンバーから「ちょっとそれは違うと思うよ」ってフィードバックがあったりするよね。
保坂さん ありますね。神は細部に宿る、じゃないですけど、メールの言い回しひとつでもすごくこだわる。多くの方が入社してから驚くことかもしれません。
兼清さん たとえばメールに「いつもお世話になっています」みたいな文章を書くと、他のメンバーから「それは違うよ」ってフィードバックを受けることもある。この文章は紋切り調で、相手をその人個人としてみていない印象があるから、自分の言葉で書こうよ、と。
保坂さん 私も入社した当初は、「なんでここまでするんだろう」と思って、泣きながらメールを打っていました(笑)
でも、様々なプロジェクトに関わる中で、こうした小さなプロセスを丁寧に育てていくことが、未来の可能性を拓いていくのだと実感するようになったんです。小さいことかもしれないけど、クライアントに価値提供できることを一生懸命やる。これはヒューマンバリューの文化ですね。
では、ヒューマンバリューのメンバー同士の関係性はどうでしょう。
兼清さん とてもフラットですね。ヒューマンバリューは組織に上司部下という関係性がないんです。だから、「今のコミュニケーションのあり方はどうかと思います」みたいなフィードバックが、若手から投げかけられて、僕みたいなシニア層が「すみません…」となることもよくある(笑)
保坂さん フィードバックの前提に、やっぱり「ヒューマンバリュー」、つまり、みんな人としての価値を持っているということがあります。人として尊重しているので、人間性を傷つけたり、その人自身を否定することは絶対にしない。そのうえで、お客様に価値を出すという意味においては、肩書きは関係なくフィードバックし合おうと。
内山さん 誤解があるとよくないので付け加えると、あるプロジェクトにおいてメンバー同士がフラットな関係性で取り組むのかっていうと、そこは少し違うと思っています。率直に意見を共有するときもあれば、「ここは兼清さんの意思決定に委ねよう」というときもあるし、逆に「ここは私がイニシアチブをとってすすめていこう」というときもある。
要は、どちらの方がお客様に価値を提供できるかが重要で、そのために経験が多いメンバーが意思決定をしたほうがいい場合もありますよね。
兼清さん そうだね。メンバー同士でも経験と知識は違うから、やれることも人によって違うので。つまり、自分ができることの中で主体的に取り組むことが大事で、」経験が少ないメンバーは上司の手足になって動けばいいんだ!」みたいな文化は存在しません。
保坂さん たとえば他の会社なら、新しいメンバーが「こうしたいんですよねっ」て言ったら、「結果を出してから言え」と頭ごなしに言われることもあると思うけど、ヒューマンバリューではそれはない。クライアントへの価値貢献のためであれば、社長の意見だろうと新入社員の意見だろうと尊重するし、逆に価値貢献につながらないのであれば、「ちょっと違うんじゃない?」とフィードバックし合います。
内山さん でも正直なところ、クライアントに価値を提供するということと、自分らしさとの葛藤を感じることもあります。
つまり、ヒューマンバリューは人の主体性や創造性といった価値を信じているので、私たちメンバーの自分らしさもなるべく尊重してくれる。でも一方で、クライアントへの提供価値を無視して自分らしさを発揮することはできないんです。ヒューマンバリューも常に変化している組織なので、みんなそうした葛藤を抱えながらも、前に進んでいるのだと思います。
兼清さん 葛藤という点で言えば、さっきのメールの話にしても、「この通りにやればいい」っていう正解がないから、自分で考えなきゃいけない。正解がないことで悩むことはあるかもしれませんね。
あと、経営的な面でも葛藤はあります。ありがたいことに社会からのヒューマンバリューへの期待値が高くて、仕事がたくさん来ているからこそ、みんな忙しくなることもあって。社内には子育て中のメンバーもたくさんいるので、もっと負担のない状態にできたらいいなとは思っていて、オフィスをリニューアルしたり、業務改善ツールを導入したりと、試行錯誤しているところです。
最後に、どんな方に仲間になってほしいですか?
兼清さん ヒューマンバリューのミッション「人、組織、社会によりそい、学びを通して、未来につながる今を共にひらきます」に共感していただいていることはとても大事です。僕らが存在する意味っていうのは、この言葉に込められているので。
内山さん あとは、自分なりのリサーチテーマを持っている方と一緒に働けたら嬉しいです。
ヒューマンバリューにもいろんなリサーチテーマを持っている人がいます。私の場合、キャリア開発です。そうしたリサーチテーマを持ったメンバー同士がコラボレーションできると、新しい学びやプロジェクトが生まれるはず。その意味では、これまでヒューマンバリューになかったようなリサーチテーマを持つ方が入っていただけたらと思うと、ワクワクしますね。
保坂さん コラボレーションできるのは大事ですね。一人で圧倒的なパフォーマンスを発揮したいという方は合わないのかも。そうではなくて、誰かとともに取り組まなければ出せない価値を、ヒューマンバリューのメンバーやクライアント企業のみなさんと一緒につくっていくことにチャレンジしたい人と一緒に働けたら嬉しいです。
「人の価値を信じる」と、言葉にするのは簡単なことかもしれません。しかし私は今回の取材を通して、ヒューマンバリューのみなさんの一つひとつの行動…つまり打ち合わせの際に交わした雑談や、一つひとつのメールに添えられた思いのこもった言葉、取材の際に他のメンバーを見るまなざしなどに、「本気で、人の価値を信じている」という哲学を、しっかりと感じとることができました。
もしヒューマンバリューの哲学や取り組みに共感したなら、まずは一度、ヒューマンバリューのオフィスを訪れてみてはいかがでしょうか。みなさんも私が感じたように、ヒューマンバリュー のメンバーが持つ哲学を感じることができるはずです。そしてその出会いが、組織変革のプロセスに寄り添う仕事に取り組むことを通じて、みなさん自身の主体性や創造性が花開くきっかけになることを願っています。
(写真: 秋山まどか)