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「ほしい未来は、つくろう」を実現するために、「いかしあうつながり」について考え行動していく。greenz.jpは、合言葉をリニューアルします。

読者のみなさん、こんにちは。編集長の菜央です。

突然ですが、来る7月16日からgreenz.jpのタグラインは「ほしい未来は、つくろう」という言葉から「いかしあうつながり」に変わります

2006年にgreenz.jpを創刊してから、7月16日でちょうど12年。特に最近の約5年間で「ソーシャルデザイン」という言葉を耳にする機会が驚くほど増え、市民主導の社会づくりが広がりました。実際、僕の周りでもソーシャルデザインに取り組む人たちが増えてきたと実感しています。「ほしい未来は、つくろう」という言葉も、その概念とともに社会に浸透してきたと感じています。

実践者が増えてきたこと自体は大変喜ばしいことですし、僕は彼らの活動を心から応援しています。けれどそのなかで主に4つの点から、徐々に危機感をおぼえ始めているのです。

ソーシャルデザインにまつわる4つの危機感

ひとつめは、ソーシャルデザインの実践者たち自身の、心にまつわる話です。

ソーシャルデザイン領域で何かを成し遂げる人は、つい家族と自分をないがしろにして、社会課題の解決や目指す未来づくりへ邁進する人が多い印象です。僕はこれを「幸せのドーナツ化現象」と呼んでいます。僕がまさにそれでした。

ふたつ目は、ソーシャルデザインが、一部の人のものにとどまっている現状の限界です。

「ソーシャルデザインに取り組むのは、余裕がある人。僕にはできない」「ソーシャルデザインには、凄まじい努力が必要。ましてやそれで食べていこうなんて、恵まれた人か、超人じゃないと無理」などのコメントを年に数回以上はもらいます。いつのまにか、ソーシャルデザインは一部の人のものになってしまったのかもしれません。

3つ目は、「対症療法的ソーシャルデザインの限界」です。

多くのソーシャルデザインがとるアプローチは、社会構造の中に現れている「問題」を取り出し、その問題に対して最短距離で解決策を見出すというものです。それは確かに短期的には効果を出しやすいし、目の前で困っている人がいれば、なんとかすることは当然必要です。でも、ぐーっと引いて、社会全体をマクロの視点で見たときには、そのソーシャルデザインは、対症療法的対応に追われ、「本当の」問題解決につながっていないことも多いのではないでしょうか。

4つ目は、社会、環境問題の進化、深化、複雑化するスピードが、問題解決のスピードよりも大幅に早いという事実です。

greenz.jpでは毎日毎日さまざまな事例を取材し、記事にさせてもらっていますが、日本と世界の現状を見るにつけ、これだけ頑張っている人がいるのに、社会が一向にいい方向に向かない徒労感、絶望感に襲われることも多いです。そして残念ながら、これからはさらに課題が大きく、複雑になっていくでしょう。(これらのソーシャルデザインが直面している限界については、後日公開するコラムで深掘りしてみたいと思います)

取り組んでいる人が苦しんでいる「幸せのドーナツ化現象」。余裕がある人のものにとどまっているソーシャルデザイン。問題解決に対する対症療法的アプローチにエネルギーを使い果たしてしまうソーシャルデザインの現状。そして社会、環境問題悪化の速度を上回れないソーシャルデザイン……。

そこを突破していくには、どのようにソーシャルデザインが進化していくべきなのか? 僕はそのことを、ずっと考えていました。そして、そのような限界を超えていくのが、「いかしあうつながり」という考え方なのではないか? と思い至ったのです。

「いかしあうつながり」との出会い

そのきっかけになったのは、2013年ごろにソーヤー海くんを通じて改めて出会った、パーマカルチャーという考え方です。

パーマカルチャーとは、永続(パーマネント)する文化(カルチャー)をつくりだす考え方であり、デザインの方法論です。あらためてパーマカルチャーの考え方に触れ、僕はとても驚きました。今やパーマカルチャーが扱う領域は、僕が思い込んでいたような狭い範囲(農業、農的暮らし)のことに限定されず、都市での人間関係、社会運動、まちづくり、社会のシステムなどにまで広がっていたのです。(この話も後日公開するコラムで掘り下げる予定です)

永続する文化をつくるために、どのような人と人との関係性が必要なのか? 一人ひとりが大切にされ、お金よりも愛が優先される社会をつくるためには、僕らはどのように暮らすべきか? 社会課題が未然に防止されて、自然と解決に向かう社会の仕組みとはどのようなものか? そこまで考え、デザインしていくのがこれからのパーマカルチャーだ、と。そして、そんなパーマカルチャーを一言で表せば、「活かし合う関係性のデザイン」だと、ソーヤー海くんは言います。

ふむふむ、これはおもしろそうだぞ! もしかしたら、これは僕が感じていたソーシャルデザインの限界を越えていける考え方かもしれない。

「幸せのドーナツ化現象」の解消へ

そこでまずはじめに取り組んだのは、「幸せのドーナツ化現象」が現れていた僕の生き方の改革です。まずは自分の心に問いかけ、時間をかけて考えた結果帰ってきたのはーー

「自分も家族も社会活動も地球も、大切にできる生き方がしたい」

という答えでした。

そのような生き方を実現するには、すべてをつなげてデザインしていく必要がある、と考えました。家族と過ごす時間、体と心の健康、地域とのつながり、自分の趣味、家族が食べていくためのお金を稼ぐこと、グリーンズを通じて良い社会をつくっていくことを、重ね合わせて、ひとつの行動から多様な収穫が得られるようにしていこうと決めたのです。

それらの要素をつなげていけば、最も大切な資源である「時間」に余裕ができてくるのではないか? 時間ができれば、自分の健康や、子どもの成長など、長期的なことにエネルギーと時間を注げるようになるのではないか? と考えたのです。

自分の暮らしをよく観察し、少ない時間とエネルギーで、さまざまな収穫を得られるように、慎重に考えながら手を加えていきました。その結果がタイニーハウスでの小さな暮らしであり、みんなで小屋やデッキを建てることであり、エディブルガーデン(食べられる庭)づくり。過程の中に多様な収穫があることを増やしていき、同時に時間がかかるわりには一つのニーズしか満たせないことはどんどん減らしていったのです。

結果、幸せのドーナツ化現象は(だいたい)解消され、暮らしがとても楽しくなりました。生まれた余裕でさらに、仲間同士でありがとうを交換する地域通貨「いすみ発の地域通貨米(まい)」、永続する文化をつくれる人になるための学びの場「パーマカルチャーと平和道場」をはじめることにもつながっています。

「いかしあうつながり」は、
新しい社会をつくるためのソースコード

同じく2013年頃、僕は、ソーヤー海くんが主催するアメリカ西海岸をめぐるパーマカルチャーツアーに参加し、元ホームレスたちが尊厳を守るためにつくった村、「Dignity Village」を訪ねました。(近日、取材記事を公開予定)

名前が示すとおり、尊厳をもって生きていける村を目指して、元ホームレスたちが民主的な自治組織をつくり、さまざまなNGO、宗教団体、大学などと協力しながらタイニーハウスを建て、薪を割り、ソーラーパネルで電気をつくり、生ゴミをコンポストに入れて土をつくり、ガーデンで食べ物を一部自給しています。

メンバーはみな傷ついた過去があったり、経済的にも大変だとは言っていましたが、自然の恵みを最大限活かして仲間と助け合い、近隣のさまざまな人とも協力する暮らしは、正直羨ましくすらありました。

こんな、「関係性」を通じた課題解決方法は、日本では見たことがなかったので、本当にびっくりしました。もしかしたら、僕らが知らないソーシャルデザインがそこには広がっているのではないか? 僕らが知らない方法論がまだまだあるのではないか? そう思わされたのです。

この2つの経験から、僕は大きなインスピレーションを得ました。いかしあう関係性のつくりかたこそ、新しい社会をつくるためのソースコードであり、哲学なのではないか、と。今僕らが取り組んでいるソーシャルデザインの限界を超えていける可能性がありそうだと感じたのです。

「ほしい未来は、つくろう」を捨てるわけではありません

その後、greenz.jpをともにつくるライターさんやgreenz peopleのみなさんとも対話を重ねる中でこのテーマの輪郭がはっきりとしてきたこともあり、greenz.jpでは今後「いかしあうつながり」という言葉をタグライン、合言葉にしてやっていこうと考えた次第です。

ここで改めてお伝えしたいのは、「ほしい未来は、つくろう」を捨てるわけじゃないということ。「ほしい未来は、つくろう」を実現するために、次は「いかしあうつながり」について皆さんと一緒に考えて深めて行動していこうと思っています。

明日からの3本のコラムで「いかしあうつながり」について深掘りし、さらに7月16日からは特集記事をお届けしていきますが、まずは決意表明として、このコラムをお届けしました。

これからもgreenz.jpをよろしくお願いいたします!

(イラスト: 川村若菜)