12/21(木) green drinks Shibuya「ご近所づきあい2.0」を考える

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自分らしく社会と関わる人を増やす 「サービスグラント」関西事務局・岡本祥公子さんに聞いた「関西プロボノ事情」の今。

働き方改革、ワークシフト、複業、越境学習、二枚目の名刺…これらのキーワードと共に、近年さまざまなメディアで「働き方を変えていこう」という声を聞くようになりました。greenz.jp読者のみなさんの中にも、自分の働き方を見直し、新しいライフスタイルにチャレンジしようと考えている方がいるかもしれませんね。

そんな中、新たな働き方として東京を中心に広がりをみせているのが、職業上のスキルや知識をいかして行なうボランティア活動「プロボノ」です。greenz.jpでも、プロボノに取り組みたい人とNPOや地域団体とのマッチングを行っている「認定NPO法人サービスグラント(以下、サービスグラント)」とパートナーを組み、『プロボノのはじめ方』という連載を始めています。

今回は「サービスグラント」の関西事務局を訪れ、関西のプロボノを取り巻く状況や展望などについて、岡本祥公子さんにお話をお伺いしました。

岡本祥公子(おかもと・さよこ)
兵庫県宝塚市出身。慶應義塾大学卒業後、人材系企業の営業職を経て、2009年にサービスグラントへ入社。2011年より関西事務局長。結婚・出産を機に、現在は東京に住みながら、子連れで大阪⇔東京を行き来している。

ビジネスパーソンだけじゃない!
ママもシニアも活躍するプロボノへ

greenz.jpでは、2013年にも「サービスグラント」関西事務局の活動をご紹介しました。

当時は、プロボノワーカーの登録者数が全体で1,600名。そのうち関西は230名、実働しているのが130名で、サービスの支援対象をNPO、地域団体以外の病院、学校、公共セクターなどに広げることも検討していきたいという状態でした。

それから4年。この間、「サービスグラント」は関西でどのような活動をしてきたのでしょうか。まずは2013年から2017年までの変化についてお伺いしました。

以前greenz.jpに取材していただいた頃は、年3回プログラムの応募受付をして、6ヶ月のプロジェクト実施が基本でした。

でも今は、仕事の経験やスキルを活かして短期間でプロボノを体験できる「プロボノ1DAYチャレンジ」、地元のコミュニティづくりを応援する「ホームタウンプロボノ」、育休中や離職中のママたちが仕事復帰に向けたウォーミングアップと社会貢献を同時にできる「ママボノ」など、複数のプログラムが生まれ、期間も関わり方もプロボノワーカーの興味関心に合わせて選べるようになりました。

それに伴いプロボノワーカーも、30~40代のビジネスパーソン中心だったところから、産休・育休中のママや20代前後の若者、退職前後のシニア層と、活動する年齢層が広がりましたね。

プロボノは、多様な職業、年代の人と関わる出会いの場にもなっている

2017年10月末現在、関西のプロボノワーカー登録者は696名に。そのうち133名がプロジェクトチームに参加中だといいます。

かつては全てのプロジェクトを、事務局が最初から最後まで伴走する体制でした。

しかし今は1つのプロジェクトが終わってもその後も継続的に、「プロジェクトマネージャー(進行管理)」や「アカウントディレクター(全体統括)」へと関わりの範囲を広げて参画いただく方が増えてきたので、プロボノ経験者が次のプロジェクトをリードし見守る体制になってきています。

また今年からプロジェクト立ち上げにイチから関わる「パートナー」という制度がスタートし、支援先のNPOの審査やチーム編成など、プロジェクト全般のプロデュースを担っていただいています。

今春から2名を新規採用した関西事務局は非常勤スタッフとあわせて5名体制となり、運営体制も整ってきました。

今春からサービスグラント関西事務局で勤務をはじめた、槇野さん(左)と武富さん(中央)

企業、自治体、町内会…
広がるプロボノワーカーの活躍

では、各プロジェクトでどんな取り組みが行なわれているのか、具体的に見ていきましょう。まずは、「プロボノ1DAYチャレンジ」です。

「プロボノ1DAYチャレンジ」から一歩を踏み出し、活動を広げている人もいる

「プロボノ1DAYチャレンジ」は、SNS活用や団体の課題整理をするワークショップなど、短期間で実現可能な成果物を提供する、短期集中型のプロボノ体験プログラムです。

1つのチームには、3~6名のプロボノワーカーが参加し、オリエンテーション~準備~本番当日の中で成果物を仕上げて、プロジェクトを完了します。

「プロボノ1DAYチャレンジ」は、2014年に大阪で生まれました。当時大阪ではプロボノの認知が東京ほど広まっていなかったため、安心して始めの一歩を踏み出せるようにと考えられたんです。

期間が短いことが初めは不安でしたが、実際にやってみたら「想像以上に役に立てることがあって、楽しい!」と、プロボノワーカーも、支援を受ける側も満足度が高く、今では大阪、そして東京でも定期的に開催するようになりました。

2017年の「プロボノ1DAYチャレンジ」では、25名のプロボノワーカーがチームに分かれ、関西の6つの団体を応援。プロボノワーカーとしての第一歩を踏み出しました。

また2013年からは、自治会や町内会、法人格のない地域団体などをプロボノで応援する「ホームタウンプロボノ」もスタートしました。

「ホームタウンプロボノ」も大阪発のプログラムです。プロボノによって、NPO法人だけでなく、自治会、町会などの地域団体の応援もしていけないかと考えたんです。

「自治会のSNS立ち上げ」や「盆踊りの活性化」「会館の利活用」といったことをテーマに、ビジネスパーソンが仕事で培ったスキルを活かし、地元大阪のコミュニティづくりに関わっています。

プロボノワーカーが制作した団体パンフレット

さらに2017年より、大阪府と恊働で「大阪ええまちプロジェクト」も始動。若者もシニアもママも巻き込む”オール大阪”で、高齢者の積極的な社会参加を促し、高齢者の生きがいづくりと介護予防につなげようとしています。

「大阪ええまちプロジェクト」にプロボノワーカーとして関わるメンバー

「大阪ええまちプロジェクト」では、高齢者の移動支援サービスのマニュアル作成や、タブレットを用いた認知症予防活動を進める団体の営業資料作成などのプロジェクトが立ち上がり、地域に関心をもつ20代からシニア層まで幅広いプロボノワーカーが地域団体と関わっています。

プロボノワーカーが地域に関わることで、シニア層の介護予防にもなる。今までとは違ったプロボノの可能性を開拓できました。

プロボノの活動を通して、自分たちの地域を”ええまち”にする団体のことを知り、その人たちと一緒に”ええまち”にするために活動を行なう。「大阪ええまちプロジェクト」は、自分の地域を好きになるきっかけ、地域活動に関わり始める入口として機能しています。

ほかにもサービスグラントでは、産休・育休中のママや復職を希望するママたちを応援する「ママボノ」というプロジェクトにも取り組んでいます。

「ママボノ」には、育休中も子育て中も社会との関わりを持ちたいと考えるママたちが多く集まる

「ママボノ」の支援先は大きく2つに分かれています。

1つは、女性視点が生きる支援先。関西では、キャリアアップをめざす育休中のママたちにつながりと学びの機会を提供する団体の利用者・卒業生に向けてニーズ調査を実施したり、子育て世代から高齢者まで暮らしに必要な支援を届ける団体のパンフレット作成などのプロジェクトがあります。

もう1つは、平日昼間に支援を受けたい支援先。障がい者が運営するコミュニティレストランのスペース活用を考えるほか、介護予防や生活支援に携わるプロジェクトを、ママボノワーカーたちが平日の昼間を活用してサポートするなどしています。

”楽しい”から続く。
プロボノでつながるコミュニティの多様性

ここまでご紹介してきたように、プロボノワーカーとして活動する間口は2013年の頃より随分と広がりました。プロボノワーカーとして活動する人が増えるなか、関西事務局が特に力を入れているのがコミュニティづくりです。

関西事務局ではプロボノワーカーとして活動を始めた人たちが、プロジェクト終了後もつながり自立的に活動できるよう、定期的にイベントを開催したり、SNSのコミュニティで交流を促しています。

経験を得たいという人はもちろんですが、「プロボノを通じた出会いが楽しいから関わり続けている」という動機の人も多いです。だから、プロジェクトの枠を超えた横のつながりを大切にしています。

具体的には、プロボノに関心のある人たちやプロジェクト経験者が月1回集まり、毎月異なるテーマで、プロジェクトの振り返りや役立つツール、フレームワークの情報交換などを行なう「プロボノWednesday」や、社会問題の最前線で活躍するゲストを招いた「大人の社会科見学」を不定期で開催するなど、「社会活動をしたい」という意思のある人が、気軽に楽しみ、学び合い、考えられる場を設けることで、次の一歩を踏み出しやすい環境をつくっています。

関西のプロボノワーカーが集まるSNSコミュニティがあるのですが、その中で「チャリ部」「甘いもん部」「神社部」などの部活動も生まれています。

プロボノはあくまできっかけです。その後もゆるやかにつながれる場。企業人も、公務員も、フリーランスも、ママも、良い意味で色んな人が混ざり合いながら一緒になって課題解決に成果をもたらせる、ソーシャルなサードプレイスをつくっていきたいと思っています。

派生的に生まれた関西プロボノワーカーの部活動。みんな、とても楽しそう!

社会や誰かのためじゃない。
「自分が安心・安全に暮らすため」に活動する。

友人とは「今どのNPOを応援しているの?どこの地域に関わっているの?」という会話で盛り上がりるのも楽しいですよね、と岡本さん

2009年に「サービスグラント」へ入社して以来、岡本さんは関西のプロボノ文化の浸透、そしてプロボノワーカーのコミュニティづくりに奔走してきました。スタッフ数も増え、NPO支援にとどまらない新たなプロボノの可能性が見えてきた今、改めてどんな未来を描いているのでしょうか。

私が「サービスグラント」で働いている理由は、突き詰めれば「自分が安心・安全に暮らせる社会」をつくるためです。どう転んでも、助け合える場所があれば、安心して笑って暮らしていけるでしょう。

社会の課題に向き合っている支援先を見ていると、明日、自分がその課題の当事者にならないなんて保証はどこにもありません。子どもに障がいが出るかもしれないし、中途失聴になるかもしれない。自分自身もしかりです。

今、社会に起こっている課題は、普通に生きていたら知らないままのことがたくさんあります。タッチポイントのない課題や団体を世間に知らせていくことが、私たちのような中間支援組織の存在意義だと思います。社会の課題を正しく、多くの人に知らせる。その役目をきちんと担っていきたいです。

そして課題の認知に加え、アクションを促す仕組みを持っているサービスグラントに、岡本さん自身が大きな可能性を感じています。

知らせることはとても重要です。でも、聞いただけでは、当事者意識は持ちにくいもの。だけど”○○団体の○○さん”という顔の見える関係になれば、みんなの意識が変わるということを、今まで何度も経験してきました。

プロボノの可能性を目の前で感じているので、まずは課題を知ってもらい、その先の関わり方の一つとしてプロボノという手段があると伝え続けていきたいです。

継続的にプロボノワーカーとして活動する人も増えてきている

以前プロボノワーカーとしてプロジェクトに参加した方の中には、大きな変化を遂げた方も少なくないといいます。

本業を継続しながらプロボノで関わった団体の理事や監事を担うようになった方や、一般企業から支援先の事務局スタッフへキャリアチェンジされた方もいらっしゃいます。

知らないことを知れば、社会の見方が変わり、関わり方も変わる。プロボノはもちろん社会貢献になるけれど、それ以上に自分自身の人生をより良い方向に進めるターニングポイントになっているようです。

みんな仕事や子育てなど、それぞれの役割を通じて、十分に社会貢献をしています。ですが、これからを生きる子どもたちに健全な社会を渡していこうとすると、一人でも多くの人が本業に加えて、地域のことや社会課題などを意識した取り組みをやらないと追いつかないと思うんです。

「私のソーシャルな課題」を持っていて、何かしら行動している。そんな人と私は友だちになりたいですし、そんな気持ちの良い人たちが関西に増えるように、サービスグラントとしての活動を続けていきたいです。

今あなたが課題に感じていることはなんですか?「行政がやってくれない」「会社がもっとこうだったらいいのに」と、自分自身にストップをかけている人もいるのではないでしょうか。でも、誰かのせいにするのではなく、私たち一人ひとりにできることがあるはず。そして、一人ではどうしていいかわからないことも、みんなで取り組めば解決の糸口が見つかるかもしれません。

「サービスグラント」は、あなたの「なんとかしたい!」という気持ちを応援してくれます。「私のソーシャルな課題」をすでに持っている人も、これから見つけていきたいという人も、その応援を背に受けて、まず一歩を踏み出してみませんか。

– INFORMATION –

マイ大阪ガス Social Design+に挑戦中!

サービスグラントの活動を、マイ大阪ガスのSocial Design+から応援することができます!
プロボノワーカーの多くは東京を拠点にしており、関西での認知はまだまだ東京に及ばないのが実情です。そこでSocial Design+で集まったポイントで、どこかの誰かの社会課題が自分ごとになるきっかけづくりとして「大人の社会科見学」を実施予定。社会問題の最前線で活動にあたるNPOのスペシャリストをゲストに招き、社会課題解決の現場を見て、話して、体感する機会を継続的につくっていきたいと考えています。関西にプロボノワーカーを増やし、安心・安全に暮らせる社会をつくるために、大阪ガスユーザーの方はぜひ応援してくださいね。
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