greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

断食とは、本当の自分に向き合うこと。山岡玲子さんがオーガニックファスティングを伝える理由とは?

みなさんは”ファスティング”という言葉を聞いたことがありますか?

ファスティングとは、数日間、水や酵素ジュースなどを摂取しながら行う断食のこと。
ダイエット方法として知る機会も多いかと思います。

現在、様々な団体がそれぞれのノウハウを生かしファスティングを提案、その指導者も全国に3000人以上にのぼると言います。健康や美容、体質改善など、指導者によって特化したファスティングを提案するなど多様性が広がっています。

これからご紹介する山岡玲子さんは、このファスティングの実践をサポートする一級断食指導者。自身のテーマであるオーガニックを名前に取り入れた”オーガニックファスティング”を伝えています。

山岡さんは言います。
「ファスティングは本来の自分に還るひとつの道具なんです」。
断食で”本来の自分に還る”とは、どういうことなのでしょうか。

忙しい毎日の中でつい後回しになってしまう自分のこと。そして本来の自分を大事にするということ。

様々な食を学んだ末にオーガニックファスティングにたどり着いたという山岡さんに、お話を伺ってきました。そのストーリーとともに、ゆっくり感じてみてください。

山岡玲子(やまおか・れいこ)
株式会社be Organic代表取締役・1級断食指導者
オーガニックコスメ店・店長を経験後、食の生産現場巡りをフィールドワークにし、食と健康をテーマに学ぶ。2013年ファスティングに出会い、一般社団法人分子整合医学美容食育協会認定の1級断食指導者に。be Organicを立ち上げる。

オーガニックファスティングってどんなもの?

まずは、そもそもオーガニックファスティングとは何なのか、詳しくお伝えしましょう。

ファスティングとは断食のことですが、全く何も食べないという訳ではありません。黒糖ベースに野菜が果物を発酵させた酵素ジュース、サプリメント、塩、梅干しを決められた量、毎日摂取し断食を進めていくというのが基本的な方法。(一般社団法人分子整合医学美容食育協会の場合)

期間は1日から1週間などさまざまですが、準備食2日間と中5日、そして徐々に食事を戻していく回復食2日間のおよそ10日間をかけることがポピュラーなのだそうです。

水やハーブティーも摂取可能です。

ファスティングの一番の目的、それは体の大掃除。

酵素ジュースを中心にデトックス効果の高いものを摂取することで、消化器官を休ませ、本来の機能を回復させていきます。細胞の中にまで溜まってしまった毒素がでていくことで自然治癒力が働き、体質改善の効果もあるのだとか。

期間中はお腹が空いてフラフラしたり、集中できないのではないかと心配される方が多いかもしれませんが、最低限の糖質、ミネラルが入っている酵素ドリンクを摂取するので、そのように感じることは少ないそう。普段の生活に支障のないよう配慮されています。

こちらは硫黄の香りのする塩。ミネラルを補います。

自分のライフスタイルに合わせて手軽に始められることも、オーガニックファスティングの魅力のひとつ。ここからは、実際に山岡さんがどのようにファスティングを指導しているのか、その様子をご紹介します。

まず、山岡さんが運営するウェブサイトにアクセス。コンタクトの部分には、LINE、Facebook、Email、などさまざまな入り口が用意されています。自身が一番気軽な方法でファスティングを申し込み。数日後には、手元に酵素ドリンクなどのセットが届き、自分の始めたいタイミングでファスティングをスタート。準備食期間から山岡さんの指導が始まります。

ユニークなのは、その指導方法。ファスティング終了まで細かい指示がLINEで届きます。

ファスティングの前日の食事例や、デトックスが進むにつれて起こっていく体の変化など細かい指導を受けることができるそう。

断食道場など何かに参加し実践するのは、仕事を休まなくてはいけないなど時間を束縛されるイメージがありますよね。それに対し、山岡さんの指導を受けながら実践するオーガニックファスティングは、仕事や子育てをしながらでもできるのが魅力です。

ファスティングというと”ダイエット方法”と捉えがちですが、山岡さんが伝えるオーガニックファスティングには単なるダイエットと大きく違う点があります。それは、「精神もリセットする」ということ。

ファスティングを実践すると、脳内にアルファ波が増えることで、通常では感じない恍惚感や集中力が研ぎ澄まされていくのを感じるようになるといいます。普段の生活では気づかない本来の自分の欲求や望み、内側の声に気づくことで、より本来の自分にリセットされていく。それがオーガニックファスティングです。

山岡さんが指導を始めておよそ3年間、これまでに600人以上の人がオーガニックファスティングを体験しているそう。体、精神のリセットとともに自然と断捨離をする人や転職のタイミングでファスティングを実践する人も多いといいます。

食べないは不健康ではない

2015年に1級断食指導者になり、自身の生業として「株式会社be Organic」を立ち上げ、オーガニックファスティングを伝えている山岡さん。もともとオーガニックコスメ店の店長をつとめていたころから、食への関心が高かったと言います。そんな山岡さんが、あえて食べないというファスティングへと惹かれた理由は何だったのでしょうか。

オーガニックコスメに携わっていくなかで違和感を感じたんです。それは、コスメの知識や成分や生産地といった知識はあるけど、生産の現場を知らないという違和感でした。このまま知識だけでお客様と向き合いたくない。自分の足で現場にいって生産者の声や土に触れないといけないと思ったんです。

退社することを決めた山岡さん。その後、半年でおよそ10箇所ほどの生産地を巡ったそう。そこで食と健康について深く学ぶようになったと言います。

もともと、たくさんの選択肢があるなら、できるだけ多く比較・検討したいタイプなんですけど(笑)

食と健康もたくさんの選択肢がありますよね。オーガニックもそうですが、食べ方もさまざま。アーユルヴェーダ、薬膳、ローフード、マクロビ…。出会えたものは講座など参加して全て学びました。

しかし、学べば学ぶほど感じるのは、矛盾。

どこか理念にずれがあって。こっちをたてるとこっちは合わないみたいな。いろんなところでなんか違うなって感じていたんです。結論、何が正しいとかではなく、ひとりひとりの体質や、その時々で自分に合うものを選ぶべきなんだなと。でも、私自身「私はこれです」っていうなにか食に関するものを持ちたかったですね。

そんな時、ある会食での衝撃的な出会いが山岡さんをファスティングへと導いていったと言います。

断食指導のほか、その豊富な知識を生かし食に関する講座もおこなっている山岡さん。

友だちに誘われ、食に関心のある人を集めたランチ会に参加しました。そこにボディービルダーみたいな男性がいたんです。田中裕規さんという方で、ファスティングマイスター学院の東京中央支部長でした。

ファスティングは知っていたものの、断食とは痩せ細るものだとイメージしていた山岡さんにとってこれはかなりの衝撃だったと笑います。

ファスティングって食べないから、どんどん痩せる。だからひょろひょろの中性的な男性が多いというイメージだったんです。それがすごい体格! こんなにムキムキの人から「ファスティングいいよ、指導する仕事してるよ」って言われ、「食べなくても健康的でいられるんだ」って教えてもらったので、もう衝撃ですよ。筋肉も保て、むしろ増やすこともできる。それで興味を持ったんです。

2013年の田中氏との出会いを経て、翌年の夏には断食指導者2級を取得するほどのスピードでファスティングの世界に引き込まれていった山岡さん。それには、もうひとつ理由があったと言います。

これまでなにかしらルールのある食べ方にモヤモヤしていたけど、ファスティングならば誰でもできる、おすすめできると確信したというか。自分自身、ルールのある食べ方をずっと続けることはできないし、自分のできないことを人に勧められませんよね。

それに日々暮らしていると、会食などもあり自分の都合だけではいかない食事もあります。そこで罪悪感を感じるのもなんだか違う。リセットするためのファスティングというのが、自分の中でストンと落ちたんです。

やがて2015年に1級断食指導者の資格を取得すると同時に独立。現在は明治神宮前支部長にも就任し、株式会社be Organic代表取締役として、多くの人にファスティングとその本質を伝えています。

自分を愛おしむきっかけに気づくこと

食と健康を人生のテーマとし、ファスティングという方法で多くの人の健康に寄り添う。
そんな山岡さんにとってファスティングとは何なのでしょう? 質問すると、意外な答えが返ってきました。

飛騨の個人宅で行った調味料の選び方講座の風景。自分に必要なものを自分自身で知るきっかけにもなるとか。

私の体にはこれが合いました、これで治りましたっていうことよりも、どんな人がやっても良い結果が出るもの、さらにその先に気づきがあるものを、オススメしたいと思ってたんです。それがファスティングでした。

持病がある方や妊婦さんにはできませんが、普通の生活を送っている人なら誰でもファスティングは実践できる。さらに、その先にある気づきが実は大切だと山岡さんは続けます。

5日間のファスティングを経験すると、自然と日本の豊かな食への対する幸福感や感謝を実感していく人が多いんです。また、自分の内側を見つめなおすことで自分が本当は何を欲し、望んでいるか感じるきっかけになる。結果、自分を大切にすることへつながっていくと思うんです。

なにより「食べなくても元気でいてくれるこの体すごいな、ありがとう」。そんな自分を愛おしむ気づきを一番大事にしてほしい。そう山岡さんは教えてくれました。

あなたはそのままでいい

山岡さんの指導するオーガニックファスティング。その本質は、ただ単に断食してダイエットに導きハッピーになる、という話ではありませんでした。

今は、セルフメディケーションの時代だと思うんですね。自分で自分の体を見る。気持ちを見る。自分をもっと大事にして、体や心が求めていることをやってあげる。暮らしの中でできて、結果として健康な日々につながっていく。そんな道具のひとつとして使いやすいと思って、ファスティングを提案しています。

日々、体に良い食事だけを摂り続けることは、特に都会で忙しく暮らしているとなかなか難しい。そんな人たちでも手軽にライフスタイルに取り入れることができる道具、それがファスティングだと言います。

最後に山岡さんがファスティングを通じてどんな未来をつくりたいのか伺いました。

単純にみんなにもっと幸せになってほしいだけなんです。幸せな人を増やしたい。健康だけが幸せでもないし、美しくなることが幸せだとは限らない。本当の自分は美しいし、そのまま愛おしんであげていいんだよってことです。

忙しくても自分をしっかり愛しんでほしいと山岡さん。

そのままの自分を愛おしむ。そんな人が増えるともっと自由でもっと暮らしやすいそれぞれの未来が動き出すのかもしれません。

オーガニックファスティングのこと、山岡さんのこと、気になった方はその世界に触れてみませんか? そして、もっと自分を愛しんでみませんか? あなたはそのままでいいんですから。