突然ですが、この記事を読んでいるみなさんはタバコを吸いますか?
中には、いつか禁煙したいけれど、なかなか辞められなくて・・・という方もいらっしゃるかもしれません。
一方、タバコを吸う人びとのマナーが求められている昨今、都市部では分煙が進み、歩きタバコや吸い殻のポイ捨てを禁止する条例を制定している自治体も増えています。
タバコを吸う人びとのマナーを向上したい。
そして禁煙を目指す人びとに、きっかけを与えたい。
そんな思いでスウェーデンのドラッグストア「Apotek Hjärtat」が仕掛けたキャンペーンが話題になっています。
ある日、バス停に仕掛けられた、ビルボード広告。周りから見ると男性が写っている普通の看板にしか見えませんよね。
でも、歩きタバコをする人が通ると・・・
急に、広告の中の男性が咳き込みだしました!
広告が自分の行動に反応して動くなんて、ハリー・ポッターの世界のようで驚いてしまいますよね。
なぜ、こんなことが実現できるかというと、実は電子看板の中にタバコの煙を検知するセンサーが入っていて、タバコの煙に反応して広告の中の男性が咳き込む仕掛けになっているんです。
モデルの男性が咳き込んだ後には、店舗で取り扱っている禁煙グッズを紹介。その画像の上には、「新年に、新しい抱負を」というメッセージが表示されます。この広告を出したのはちょうど年末。多くの人びとが新たな抱負を考え始めるこの時期に、「来年からは禁煙しようかな」と思わせてくれます。
スモーカーが多い通りに広告を設置することで、禁煙の啓発だけでなく、潜在顧客であるスモーカーにターゲットを絞った効果的な宣伝を実現しているわけです。
驚いて広告を凝視したり、口に近づけていたタバコを吸うのを止めたりと、街の人びとの反応はさまざま。そんな通りすがりの人たちの反応が見れる動画は世界中と話題となり、すでに約43万回も再生されました!
このプロジェクトの舞台となったスウェーデンでは、16歳以上の喫煙者が全人口の20%以上。そして日本でも、受動喫煙が原因で年間1.5万人が死亡しているといわれており、タバコを吸う人は自身の健康だけでなく、家族など身近にいる人への影響も考える必要があります。このキャンペーンは、タバコの煙は嫌だけど本人には直接言えない、という受動喫煙者の声も代弁したものだったと言えるのです。
キャンペーンを実施したドラッグストア「Apotek Hjärtat」のマーケティングディレクター、Fredrik Kullberg(以下、フレドリックさん)はこう話します。
私たちのミッションは、人びとがより長生きで健康的な生活を送るのを支えることです。
このキャンペーンの目的は、「禁煙」というテーマについての会話を生みだし、広告への反応を記録し、人びとに健康的なライフスタイルを提案すること。反響はポジティブな意見が多かったです。
現代に住む私たちは、1日に平均3000もの広告を目にしているとも言われています。そんななか、「Apotek Hjärtat」の仕掛けた広告は、“タバコの煙だけに反応する”という技術を使い、多くの人びとに禁煙を呼びかけました。
私たちは広告を使ってどんな社会課題を解決できるのか、クリエイティブな発想で一度考えてみませんか? このページ末の「感想/お便りを送る」から、みなさんのご意見を教えてください!
[via Apotek Hjärtat, fastcoexist, YouTube, CNN, WHO, 厚生労働省, 洲本市禁煙支援センター, つながる科学研究所]
(Text: 菅磨里奈)