みなさんは、最近いつ「贈り物」をしましたか?
あげる側も、もらう側も、なんとなく恥ずかしいけれど、受け取ったら心がふっと温かくなる。それが「贈り物」ではないでしょうか。
今回は、敬老の日ということで、あるおじいちゃんが主人公になった「贈り物」にまつわる温かいお話をお届けします。主人公は、ジョージア州の介護付き住宅に暮らす、Ed Moseley(以下、エドさん)。この物語が生まれた当時、エドさんは86歳でした。
彼は、ある日、地域の病院で、NICU(新生児集中治療室)に入院する未熟児の赤ちゃんたちが、体のサイズに合った小さなニット帽を必要としていることを知り、自ら手をあげて、編み物ボランティア活動を始めたのです。
身体の冷えが致命傷ともなりうる未熟児にとって、熱が逃げやすい頭部を柔らかいニット帽で覆ってあげることは、とても効果的。「自分は要介護の高齢者だけれど、社会に役立てることは必ずあるはず」と、かねてから考えていたエドさんは、「未熟児の赤ちゃんを冷えから守る!」というミッションに、心が動いたのだそう。
エドさん 私はもともとエンジニアで、編み物の経験はまったくありませんでした。でも、「地域の役に立ちたい」という思いが私をつき動かしたのです。
娘からも教えてもらい、最初は1つのニット帽を編むのに4日間かかったのが、今では数時間で完成させられるようになりました。 新しいことを始めるのに、遅すぎることなんて無いんです。
インタビューで想いを語るエドさん
彼のアクションは、またたく間に地域に広がりました。エドさんが編み物の講師となり、病院のおじいちゃんおばあちゃんだけでなく地域のコミュニティが一体となったことで、2016年11月12日の「世界未熟児デー」には、なんと300個以上のニット帽を、毎年約2,000人の未熟児が誕生するというアトランタのノースサイド病院に寄贈することができたのです!
ノースサイド病院で11月12日、未熟児の男児を出産したばかりのお母さんは、こう語ります。
お母さん この小さな贈り物には、本当に大きな意味があります。私たちには5歳になる男の子がいますが、彼もまた未熟児として生まれました。エドさんの活動は、孤独で不安を感じている未熟児の親たちを勇気づけてくれます。そして、私たちを地域とつなげてくれました。
病院のNICU部門責任者であるLinda Kelly(以下、リンダさん)も、エドさんの活動を絶賛します。
リンダさん 保育器の中でチューブにつながれた赤ちゃんが、カラフルなニット帽の贈り物を身につけたとたん、みんなが彼らを「患者」ではなく、「赤ちゃん」と見られるようになりました。エドさんの活動により、未熟児の親たちが勇気づけられたのはもちろん、病院の雰囲気も、ぐっと明るくなりました。
この活動の素晴らしい点は、ニット帽が赤ちゃんたちを救っただけではなく、介護付き住宅の高齢者たちが、編み物ボランティア活動を通じて、「生きがいと喜び」を再発見したこと。
集中力と創造性を引き出す「編み物」は、認知症やうつ病をかかえるひとたちの心に、とても良い影響をもたらすことが、心理学者の間でも実証されているそう。エドさんたちの笑顔が輝いて見えるのも、納得ですね。(出典元)
みなさんの周りにも、困っている人、勇気がほしい人たちはいるはず。「彼・彼女たちは何を望んでいるのだろう?」と思いを巡らせ、どんな「贈り物」ができるのか、考えてみてはいかがでしょう。
「新しいことを始めるのに、遅すぎることなんて無い」という言葉の通り、あなたの年齢は関係ありません。86歳、車いす利用者で編み物経験ゼロだったのエドさんでさえ、赤ちゃんからお年寄りまで、みんなを笑顔にすることができたのですから。
[via Upworthy, abc News, 認知症対策サイト]
(Text: 松尾茜)