みなさんは、これらの製品のパッケージ、一体何に見えますか?
ここに写っているのは、アメリカで開発されたエナジースナック「Seek Cricket Snack Bites」(以下、Seek)。
とても洗練されたパッケージと、その前にはクランチチョコのようなお菓子。フレーバーもBanana PB+J, Coconut Cashew, Honey+Seeds, Pecan Peach, Almond Goji Berry, Chocolate Chill, Apricot+Nutsの計7種類が用意されていて、とても豊富です。
しかし、これ、ただのスナックじゃないんです。なんとこのお菓子には、コオロギ(Cricket)の粉末が使われているというのです!
見た目からは、「虫感」ゼロ!
でも、一体なぜ「コオロギ粉末」を使用しているのでしょうか? 秘密は、その高い栄養価と、持続性にありました。
まずは、栄養面。タンパク質は牛肉の2倍、カルシウム、鉄、オメガ3が豊富で、9種類のアミノ酸を含んでいます。そしてコオロギは、地球温暖化の一因ともされるメタンガスも排出しません。さらに、どんな気候でも育つことから、飼育に必要な土地・水・エサ・エネルギー、すべてにおいて従来のタンパク質源と比べ、持続性に優れているそう。
スプーンですくっているのが「コオロギ粉末」。コオロギの、影もカタチもありませんのでご安心を!
この「コオロギ粉末」を、気軽に口にできるようにと開発されたのが、記事冒頭に名前をあげた「Seek」。他の原材料も、デーツやアーモンドなどの自然素材、ヘンプシードやオメガ3などのスーパーフード、NY産のハチミツなど、ヘルシーなものばかり。また、グルテンフリー、砂糖不使用となっています。
お値段は1パッケージ120g、18gのタンパク質が含まれています。一日当たりの理想的なタンパク質摂取量は、成人男性は50g、成人女性は40gとされているので、エナジースナックとしての機能も十分!
WFP(世界食糧計画)によると、現在でも9人に1人が健康的な食生活を送ることが困難な飢餓状態にあり、しかも、世界の人口は2050年には90億人に達し、FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、2050年までに60%の食料生産を増やす必要があるという予想も。環境・食料問題が深刻化している時だからこそ、その解決策として「コオロギ粉末」に注目をする方もいるのだとか。
”Edible”最前線!?
みなさんは、”edible”という単語を聞いたことがありますか?
この単語の意味は、「食べられる」ということ。シェ・パニースのオーナーであるAlice Watersが提唱した”食べられる校庭”「Edible Schoolyard」や、インクまで食べられる「Edible Pen」、使い終えたら食べられる「Loliware」など、これまでにgreenz.jpでも、そんな”edible”がキーワードになる事例を紹介してきました。
これらの「食べられる」というデザインの背景には、私たちにとって身近な「食」を切り口に、世界の社会課題を自分ごとにしていこうという、チェンジリーダーたちの思いがある様子。「Seek」は、虫を食べるということで、そんな”edible”ムーブメントの最前線と言うことができるかもしれません。
しかし、「Seek」を開発したRobyn Shapiro(以下、ロビンさん)は、決して新しい文化ではないと話します。
「食虫」は、実は歴史のある文化なんです。アメリカでもネイティブアメリカンが良質なタンパク質の供給源として大事にしてきました。
「Seek」は、そんな古くからの知恵に、新しい技術やポップなデザインを組み合わせて、誰もが手に取りやすいカタチにしています。
あなたの小さな”Bite(ひとくち)”は、地球規模の問題とつながっています。一人でも多くの人に、この”古くて新しい”食べ物を通じてその感覚を体験してほしいんです。
開発者のロビンさん。ヨーロッパの各地を転々として、西洋の伝統的な食文化と食肉需要は、もう持続”不”可能だと痛感したのが原体験だそう
とてもおしゃれにデザインされた「Seek」ですが、さすがに自分が商品を手にとって食べるかというと、少しハードルの高さを感じるのも事実。でも、ロビンさんの「果たして私たちの食文化は持続可能なのか?」という問題提起は、私たちが「Seek」に抵抗感を抱いたとしても、大きな意味を持っていると思います。
みなさんは、「Seek」を食べてみたいですか?
[Via Seek, 国連WFP, 厚生労働省HP, Wedge Infinity, National Geographic]
(Text: 吉原海)