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ソーシャルって何なのか、グリーンズの小野さんに聞いてみよう。green drinks Okayamaをレポート!

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この記事はgreen drinks Japan オーガナイザーの方よりいただいた原稿を、そのままの内容で掲載しています。green drinks オーガナイザーについての詳細は、こちらをご覧ください。

green drinksは、地域のまちづくりや子育てなどをテーマに話し合うオープンな飲み会です。日本各地で開催されているgreen drinksが岡山にも上陸! 

「ソーシャル」ということばを耳にする機会は増えたけれど、一体なんだろう? そう思っている人も多いのではないでしょうか。

そこで、ソーシャルにまつわる様々な活動を紹介するgreenz.jpプロデューサー小野裕之さんをゲストにお招きし、グリーンズでの経験やソーシャルについての思いを語っていただきました。司会は、コミュニティスペース芝の家、グリーンズでコミュニティづくりにかかわり、現在岡山で働く渡邊めぐみがつとめます。
 

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小野裕之(Hiroyuki ONO)・greenz.jpプロデューサー/NPOグリーンズ事業統括理事

ソーシャル入門!ソーシャルデザインってなんですか?

渡辺 ソーシャルデザインってなんだろう?ということを聞いてみたいと思います。岡山に勤務してもなかなか友だちができず、地域の人とゆるやかにつながれる場がほしくてgreen drinksを開いたのですけれども、人に説明するのが難しくて。

小野 言葉自体は、2011年にグリーンズとして『ソーシャルデザイン』という本を出したときに使ったキーワードで、「社会的課題を、色んな人を巻き込んで解決していけるようにデザインすること」を指します。5年程前までは海外のソーシャルデザインの紹介が9割でしたが、現在は半分ほどが日本の記事ですね。

渡辺 国内の事例が増えてきているんですね。

小野 震災を機に、社会貢献活動は爆発的に増えました。一市民としてなにかやろう、ということが受け入れやすくなったし、不況という背景もあります。

「莫大な富を築かなくても、かなり幸せに暮らせるのではないか」という考えに、注目が集まった。一人で部屋にとじこもって「幸せだ」というのは、与えられた幸せでしかなくて。自分の足で立って幸せになろうとしたら、社会性が見過ごせなくなってくるんですよね。

渡辺 幸せは社会とのつながりのなかでしか生まれないし、それを考えるきっかけが、震災だったということですね。
 
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ソーシャルデザインで大事なことって?

渡辺 greenz.jpで紹介しているソーシャルデザインにはどんな例がありますか。

障がいのある一流ショコラティエが、百貨店バイヤーをうならせた! 京都の古い商業団地をリノベしたお店「ニュースタンダードチョコレートキョウトby久遠」

小野 チョコレートの作り手のほぼ全員が障害をもっているけれど、そうは見せていないところがうまくデザインされている。当事者だけではなく色んな人を巻き込みながら課題解決している例ですよね。巻き込むというと限界があるけれど、「役割を与える」、つまり「その人がいる必然性をつくる」ということがうまく設計できれば、お涙頂戴ストーリー無しにビジネスが成り立ちます。

渡辺 LGBTや高齢者、障がい者などをカテゴライズしてしまうと、特別視して追いやってしまっている気がするのですが、「その人がいる必然性をつくる」というと自然にできそうです。

小野 はい。「障がい者の雇用」に対して施策はありつつも、すべての人は救えないのが現状なので、「公共性の高いことを民間でやることは可能だ」という意識の転換って大事だと思うんです。

渡辺 疑問に思っていることをやっちゃおう、ということですか。

小野 そうですね。それと、「活かされていない才能はどこにあるのだろう?」と探す視点が大事なんじゃないかな。新卒採用なんかもそうだと思うんだけど、行き場のある才能を奪い合わなくてもいい。「行き場のない才能がニーズにどのようにかみ合うか」を考えれば、まだまだ活かされていないものが多くある。

渡辺 少ないパイを奪い合う時代ではなく、役割を創っていく時代がはじまっている。そこにビジネスの芽もあるわけですね。

小野 ビジネスとして成立しているものもあれば、「東京シャボン玉倶楽部」のように、がんばらないから続いている例もあります。

これからの“一服”は、吸わずに「吹いて」みませんか? 丸の内朝大学発マイプロジェクト「東京シャボン玉倶楽部」

渡辺 この事例、わたしが思うソーシャルデザインに近いかも。わたしは会社員ですが、喫煙所のコミュニティに入りたい。でも、だからといってタバコは吸いたくない。じゃあ、どうするか。あきらめますよね、普通。

そこを、「シャボン玉でやっちゃおうよ」で飛び越えちゃう。社会課題というと、遠い気がするけど、主語を「自分」にしてみれば「自分があきらめていたことを、アイディアで解決する」ことですよね。自分たちでやるボトムアップ型でもいいし、行政や企業からのトップダウン型でもいいのかもしれません。シャボン玉倶楽部、岡山でもぜひやりましょう。仲間募集します!(笑)

その違和感は常に正しい

渡辺 社会的課題という大きなテーマですが、こうして事例をひろっていくと身近に思えてきますね。

小野 社会的課題を小さく切り分けていくと「違和感」でしかないんですよ。たとえば、greenz.jpではタイニーハウスなど住まいを小さくするアイディアを紹介していますが、「返せるかわからない借金までして、家を買う必要あったんだっけ?」という違和感ですよね、結局。

ローンなし、煩わしいことなし。住まいを小さくして自由に生きよう!「未来住まい方会議」YADOKARI×鈴木菜央による、場所・時間・お金に縛られない暮らしかた

渡辺 「賃貸暮らしを続ける」か、「高いローンを組んで家を買う」かの二択しかないように見えるけれど、つきつめると違和感ありますよね。

小野 じゃあ、どうすれば等身大で自由に生きていけるか。萎縮して不自由に生きたい人はいないはずなんです。そこには「住まいを小さくする」という選択肢があった。違和感は、暮らしの中で解決できることもたくさんあります。記事で紹介すると実践する人も増えていきます。

渡辺 なるほど。震災をきっかけに、ソーシャルデザインが一気に増えたという話も納得です。エネルギーや暮らしについて、なかったことにしていた違和感が、にわかに「これでよかったんだっけ?」という疑問形で個人個人にはねかえってきた。移住など実際に行動した人は多かったですね。

小野 自分の違和感がまちがっているって、ほぼないと思うんですね。そして、「私だけ」ということもほぼない。それなりに賛同してくれる人がいるはずで、つまり、個人の違和感は社会のニーズにつながっていると思います。

自分のためにやっていれば、他者評価は気にならない。

渡辺 違和感を具体的な解決につなげていくには、どんなことが大事ですか。

小野 自分のために、を追求することです。greenz.jpで紹介する人たちは、はじめから起業しようと思っていたというより「楽しかったから続けていたらなんとなく」という人が多い。そうあるべきだと思うんです。

渡辺 自分の幸せのために、がエゴととらえられがちな日本社会では、新しい思想ですね。

小野 「みんなでやろう」とか「社会のために」みたいな「いいこと風」なフェーズは早くこえて、とことん自分のためだけに、を追求しまくると、ふしぎに人のためになっていくんですねぇ。

渡辺 たしかに「自分のために」という気もちがないと、意識高い系と揶揄されたり「何のためにやってるの?」と追及されたりしただけで揺れてしまう。「いや、自分が楽しいからやっているんです!」と堂々といえると、芯になっていく。green drinksも、つまるところ、自分のためにあるんです。

自分の意志ではなく岡山に来て鬱屈した気もちで過ごすより、「こんな面白い人がいるんだ!岡山おもしろいやん!」と思いながら暮らしたいし。ここには「自分も転勤してきました!」という人たちが来てくれていますけど、結果的に役に立てれば、それはもう最高にうれしいです。

小野 自分のためにやっていくと、他者評価は気にならない。その点でも大事です。「なんのためにやっているかわからない」ってね、ぼくたちもさんざん言われてきましたけど(笑)。わかりやすく説明しようとすると、グリーンズは他者評価をドライブにするチームになってしまって、続かなかったと思う。

グリーンズも自分たちのためにやっているから、「やめる」と決めない限りは続いていくと思っています。10年続けるとその領域に立つプレイヤーはたくさんいる。だから、他人から「なんのためにやっているのかわからない」と言われたら、「わかんないですよねぇ」でいい。

渡辺 ソーシャルデザインって、「社会のために」かと思いきや、個人が自分の幸せを追求した先にありそうですね。ありがとうございました!
 
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(トークここまで)

 

-人、場所、食べ物すべてがその場の空気を生み出す

今回の開催地は、オフグリッド電力に取り組む蔭凉寺さん。イベントなどの電力は太陽光発電でまかなうと篠原住職はいいます。greenz.jpの初期スローガンは「エコスゴイ未来がやってくる!」ということで、まさにエコスゴイお寺といえるでしょう。
 
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住職の篠原さん。オフグリッドの説明に、みなさん聞き入っています。

ケータリングフードは〝いち〟さん。「森の恵みを頂く・Forest to Table」をテーマに岡山県美作地域のみまさかジビエを使った料理を提供してくれました。

鹿による農作物被害が深刻化し、捕獲数を増やしているものの、食肉にならずに処分されているのが現状だといいます。この鹿を地域の資源として見直し、食肉として活用しようという動きが始まっています。適切に処理をされた鹿肉はくさみもなく、赤身独特のさっぱりとした味わい。
 
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音楽も「いち」の高橋さんがトータルでお届け。

参加者として来てくださった〝スローコーヒー〟の田中さん。「フェアトレード」「オーガニック」のコーヒー豆のみを、太陽光発電の電気で動かす焙煎機で「自社で焙煎」しているコーヒー会社です。震災後、「原発ぬきの電気でコーヒーを作りたい」という願いをクラウドファンディングで叶え、おいしいコーヒーの差し入れをしてくれました。
 
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そして、その場にいるすべての人によって心地よい空間になっていました。マイプロジェクト紹介では、5名が自分の取り組みを紹介。棚田が広がる上山地区で、高齢者の農作業を若者が引き受け、新しい里山モデルを生み出す「みんなの孫プロジェクト」水柿大地さん。

生産者と消費者をつなぐ「おかやま備中食べる通信」えびすあきこさん。ジビエで飲みニケーションしよう!岩本将弘さんなど、熱いプレゼンが繰り広げられました。
 
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 備中食べる通信のえびすあきこさん。ご自身の子育て経験から、食べものがどこから来たのかをもっと知りたいと思ったとのこと。

なお、今回の開催は、岡山在住のgreenz people(寄付会員)のオフ会から生まれました。こんなことを一緒にしてみたい!というみなさん、ぜひ仲間に加わってください。
 

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はじめてのgreen drinksでしたが、参加者同士が盛り上がって、いつまでも話をしている風景が見られました。人が出会うことで生まれるアイディア、まだ解決できていない課題も、この岡山から見つかるかもしれません。これから何か新しいことが始まる予感がします。次回もお楽しみに!

[PHOTO BY 奥田修平、TEXT BY えびすあきこ、EDITED BY 渡邊めぐみ]