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ポートランドに、ホームレスのためにつくられたタイニーハウスの村を発見! ”村人”としての暮らしで、自尊心とコミュニティ意識を育む「Dignity Village」

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©Yes! Magazine

身の丈にあった暮らしを実践する手段として注目されているタイニーハウス。アメリカでは2008年のリーマンショック以降、日本では2011年の震災以降、そのムーブメントが広がりつつあります。

タイニーハウスの利点は、なんといっても比較的安価に短期間で建てられること。家の広さに合った生活スタイルに切り替える必要があるため光熱費が下がったり、不要なものに囲まれた暮らしを見直す機会が生まれるなどのメリットもあります。

そんな生活をダウンサイズするライフスタイルを応用して、ホームレス問題の解決に役立てているのが、今回ご紹介する「Dignity Village」。

「Dignity Village」では、ホームレス状態に陥り、路上に寝床を構える人々が“普通”の暮らしを取り戻す場所として2004年に開設され、住人たちはお互いを親しみを込めて“村人”と呼び合っているといいます。

一体、どんな場所なのでしょうか?

“村人”が主体の、自治コミュニティ

全米で住みたい街の上位に選ばれたり、日本でも注目を集めているポートランド。しかし、CITY Journalの記事によると、ポートランド市を含むマルトノマ郡でホームレス状態にある人々は2015年1月時点で約3,800人いるとされ、うち約1,800人以上が橋の下や公園、歩道などで寝泊まりしているといいます。

そのポートランドの北東部、ポートランド国際空港から約9.6キロの場所に位置するのが、「Dignity Village」です。現在60名の男女が入居し、主に寄付やリサイクル素材で建てられたタイニーハウスで生活しています。壁のカラフルな色使いが印象的です。
 
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©Yes! Magazine

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©Tent City Urbanism

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©Tent City Urbanism

主な管理運営は、村人の中から民主的に選ばれた9人が担当します。村では暴力や窃盗、迷惑行為、アルコールやドラッグなどは禁止。また、週10時間以上の奉仕活動が義務付けられ、芝刈りや薪切り、パソコン修理など、それぞれが村の運営に貢献します。
 
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©Yes! Magazine

家賃は月35ドル(約3,900円)。住居と食事の提供に加えて、携帯電話やラップトップの充電ステーション、共同台所やシャワー、ポータブルトイレも完備。

規則を破ったり、3カ月連続で家賃を滞納すると、強制退去を余儀なくされます。村人は支援される存在ではなく、自立性と主体性が求められる「Dignity Village」メンバーの一員なのです。
 
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©Tent City Urbanism

ポートランド市からは、土地の助成の他、ソーシャルワーカーが週3回、村に派遣されています。村人の仕事探しや履歴書の書き方のアドバイス、医療機関への移動など、彼らの自立につなげるサポートをしているのです。

現在は、ポートランド市からの助成を得ることで維持している非営利の「Dignity Village」ですが、将来的には運営面でも資金面でも自立したコミュニティを目指しています。

実際、村人からの家賃収入に加え、市で伐採され不要になった木材による薪の販売収入で、寄付に頼ることなく村の保険料や光熱費などの運営費をカバーできているのだとか。

路上では見つけられない、本当の尊厳(Dignity)を育む場所

2008年の金融危機で職を失いホームレス状態になったRick Proudfootさん。同年から村に住み、村のCEOを2年間務めた後、現在では資金管理を担当しています。

いつかは村を出たいと思っています。でも、ここにいる間は、できる限りのことをして、村をできるだけ良い場所にしたいと思っているんです。

現在「Dignity Village」CEOのLisa Larsonさんは、6年前から村に住んでいます。暴力を振るう夫から逃れるためホームレス状態になり、人間が人間として扱われないような路上での暮らしも経験しました。

ここには、他の場所では見つけることのできなかった、本物の自尊心とコミュニティ意識があるんです。

村人同士がルールを守ることでお互いを尊重し、奉仕活動を通して連帯感が生まれる場所。「Dignity Village」は、ホームレス状態にある人たちに、“家”を持つことで失った自尊心を取り戻す機会を与えています。
 
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©Tent City Urbanism

ホームレス状態にある人々は、アルコールやドラッグ中毒、路上生活による精神的疾患など、様々な問題が絡みあっていることが少なくないため、タイニーハウスに住むことで即解決できるわけではありません。実際に村では、アルコールやドラッグ禁止令などが守れずに退去させられた人も少なくないのが現状です。

The Seattle Timesによると、村を出た7割以上の人が再び路上での生活に戻ってしまうというデータを報告していますが、その背景にはポートランドの深刻な住宅事情も絡んでいます。家賃が高騰を続けるポートランドでは、手の届く価格帯の住居が圧倒的に不足しており、その不足数は約42,000ユニットを超えるとしています(出典元)。

市側でも今のところ、そうした状況への解決案を見出せずにいるため、タイニーハウスの活用は現段階で最も安価で効率的にホームレス状態の人々をサポートできる方法のひとつといえるでしょう。
 
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©Tent City Urbanism

「Dignity Village」のモデルはホームレス問題に悩むアメリカの他都市にも影響を与えています。オレゴン州ユージーンの「Square One Villages」、ワシントン州オリンピアの「Quixote Village」、ウィスコンシン州マディソンの「OM Village」などで、村のアイデアが取り入れられたコミュニティづくりが進んでいます。

タイニーハウスも、家を持つことだけが目的ではなく、大事なのは、どう自分の生活を見直していくかということ。ホームレス問題に限らず、日本のワーキングプアや高齢者問題などにも対応できるヒントが、「Dignity Village」には隠れているかもしれません。

[via YES! Magazine, The Seattle Times, City Journal, Tent City Urbanism]