みなさんは、”LGBTプライド”という言葉を聞いたことがありますか?
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといったセクシャルマイノリティの人たちが自分に誇りをもつことを象徴する言葉です。
そんななか、アメリカ合衆国のアトランタでは、プライドスクールとよばれる、LGBTの生徒のための学校が9月に開校されることになり話題になっています。
2015年より全州で同性婚が認められ、同性愛にオープンだと思われがちなアメリカですが、LGBTの生徒にとって、まだまだ学校でのいじめは深刻な問題です。
アメリカの教育機関のアンケートによると、なんと85%ものLGBTの生徒が学校で嫌がらせにあった経験があり、そのうち30%の生徒は肉体的いやがらせにあうことを恐れて、月に一度ほど学校を休んだ経験があるのだそう。(出典)
そんなLGBTの生徒が安全な環境で学べるようにと、アメリカ南部では初めて生まれることになったのが「Pride School in Atlanta」です。私立の学校なので、年間に学費が13,000ドル(約140万円)ほどかかりますが、生徒はこの学校で幼稚園から高校まで学ぶことができます。
「Pride School in Atlanta」のキャンペーン
「Pride School in Atlanta」創立者のChristian Zsilavetz(以下、クリスチャンさん)は自らもトランスジェンダーで、長年にわたって公立の学校で教えてきたといいます。
しかし、そんなベテラン教師のクリスチャンさんでさえも LGBTであることを学校でオープンにする機会はなく、学校側からもサポートしてもらった経験はなかったのだそう。
LGBTの生徒や先生が学校でまわりを気にすることなく、オープンに話し合える環境をつくりたい。そんなクリスチャンさんの願いが、「Pride School in Atlanta」の開校につながったのです。
教鞭をとるクリスチャンさん
クリスチャンさんは現在LGBTの生徒がおかれている立場を、こう話します。
公立の学校でLGBTの生徒は平等な教育を受けることができますが、彼らはあらゆる機会で差別されていると感じています。
一日中トイレに行けない、ロッカールームを使うこともできない。クラスでいじめられているのに、先生もろくに助けてくれない。みんなと同じテーブルにいるのに、自分のために用意された席はどこにもない。
ミシシッピ、アラバマ、ルイジアナ、テキサスといったアメリカ南部や中西部の州はLGBTコミュニティに反感を持っている人が多く、LGBTの生徒は、なかなか地元の人たちからサポート受けることができません。
学校でのいじめ問題を解決するには、そのようなLGBTの人たちに対するみんなの意識を改善することがたいせつですが、それにはまだまだ時間がかかりそう。だからこそ今回オープンするアトランタのようなLGBTスクールが必要なのです。
現在16歳のEmma Grace(以下、エマさん)は友達から「Pride School in Atlanta」の話を聞いて、自らクリスチャンさんに連絡をしました。レズビアンのエマさんは、高校でいじめられても先生から十分なサポートを得ることができず、中退してしまったのだそう。
エマさんは、こう言います。
自分たちがLGBTだと胸を張っていえる環境が必要だと思っているけど、みんな、まわりからいじめられることを恐れて、隠していなきゃいけないの。
そんなエマさんは、この秋から「Pride School in Atlanta」に行くことによって、やっと自分のアイデンティティをオープンにできると期待しています。その他にも、クリスチャンさんのもとには、LGBTの子どもをもつ両親から、プライドスクールを心待ちにしているというメッセージが届いているといいます。
「ここではLGBTとして自由でいられる」と書いたプラカードをもったクリスチャンさん
LGBTの生徒にとって、プライドスクールはいじめがなく安全な場所というだけではありません。ありのままの自分でいながら、自分のやりたいことを発揮することができる。そんな自由の場所なのです。
LGBTコミュニティにサポートが少ない地域ほど、必要とされるプライドスクール。アトランタに生まれる小さなプライドスクールの今後の活動が、人々のLGBTコミュニティに対する理解を深めるきっかけになるといいですね。
[via hellogigiles,huffingtonpost,yahooparenting]
(Text: 松下史佳)