ひまわりの活けられたコーンが置かれ、快適に走れるようになった自転車レーン。
私たちにとって非常に身近な交通手段のひとつである自転車。通勤通学に使う人も増える一方、歩行者や交通量の多い場所で危険な思いをしたことがある方も多いのではないでしょうか?
これまでにもgreenz.jpでは、ロンドンで試験中の最新型自転車用信号や、コペンハーゲンの自転車専用道路など、世界各地で展開されている自転車ユーザーの安全を守る取り組みを紹介してきました。
今回は、ニューヨークで時間もお金もかけずに安全を実現し大きな支持を集めている、素敵な“ゲリラ活動”をご紹介します。
ブルックリンやマンハッタンなどにつながるクリスティ通りは、毎日数千人もの人が行き交う通勤ルート。しかし道路の両側には違法駐車の列が時には二重に並び、せっかくの自転車専用レーンはいつも車によってふさがれています。
ある朝、その自転車レーンに突然あるものが並べられました。それは、ひまわりが活けられた25個のコーン。そしてたったそれだけのことで、その日はレーン内への駐車はなくなり、自転車が快適に走行できたのです!
いつもは、車をよけなければ進めない道が…
快適にす~いすい! みんな、うれしそうないい笑顔!!
このコーンを設置したのは、「Transformation Department」とだけ名乗る正体不明の団体。
私たちの使命は“道路を安全で快適に整備するのはとてもカンタン!”と証明すること。たった30分たらずの時間と500ドル以下のコストでコーンを用意し、役所仕事ではできなかったことを実現しました。
そう話す彼らが設けた寄付ページには、たった1日で1000ドルの寄付があつまり、ニューヨーカーからのアツく、強い支持の声も届いているのだとか。
2007年から2011年で、自転車利用人口が倍増したニューヨーク。ブルームバーグ市長時代に市内の専用レーンの整備が始まり、自転車ユーザーに優しい街づくりが進められた結果、2014年には アメリカの専門誌から「Top 50 Bike-Friendly Cities」の1位に選ばれました。
そして、2016年現在のビル・デ・ブラジオ市長も、”Vision Zero”政策という大々的な交通事故撲滅運動を推し進めている真っ最中です。
しかし一方、市民団体から新しい自転車レーン整備が提案され、議会で全会一致の承認を得ているにも関わらず、1年近くも計画が進んでいない現実もあるのだそう。そんな状況への不満の声の中で生まれたのが、このコーンだったのです。
自転車で安全に走りたい、そして派手な政策や実現しない計画ではなく、今ある問題を1日も早く具体的にどうにかしてほしいという市民の思いのあらわれが、今回の出来事なのではないでしょうか。このアイデアは、道路の再設計や工事をせずにすぐ実践できる素晴らしいものだと思います。
と高く評価するのは、新しい自転車レーン設置を提案し続けているDavid Paco Abrahamさん。彼も、「Transformation Department」の活動に強く共感するひとりです。
その後も、ニューヨークのさまざまな場所で展開されているこの活動、日々、自転車ユーザーの安全に貢献しています。
子どもが安全に走れるのもうれしいですね!
市民のアイデアと行動力だけで街の安全をつくりだしたこの活動、同じように自転車ユーザーが増えている日本でも参考になりそうですよね。
東京では、2020年のオリンピックに向け「自転車推奨ルート」が設定され、各自治体も専用レーン設置などを進めていますが、なかなか整備が追い付いていない状態と言わざるを得ません。
今回のニューヨークのように、実際に日々自転車に乗るユーザーの思いやそこから生まれる行動が、今ある問題を解決し未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。日本の自転車事情をより快適にしていくために、自転車を楽しむ私たちひとりひとりが何をできるか考えてみませんか?
[via: Transformation Department, CityLab,STREETSBLOG NYC,東京都HP]
(Text: 佐々木はる菜)