\11/12オンライン開催/ネイバーフッドデザインを仕事にする 〜まちを楽しみ、助け合う、「暮らしのコミュニティ」をつくる〜

greenz people ロゴ

ホームレスの自立をアーティストが支援する。南カリフォルニアで日々、ホームレスの絵を描き続けるプロジェクト「Face of Santa Ana」

Brian0

みなさんは「アート」という言葉にどんなイメージがありますか?

「アート」=「美術・芸術」というと、どこか高尚な感じがして、何か専門的な知識がないと理解できないもの、私たちの日頃の生活にはあまり関係がないものと考えてしまいがちです。

しかし、「アート」=「表現」というと、どうでしょうか?

私たちが毎日目や耳にしている音楽、絵、写真、その他の表現活動をアートと捉えると、頭で考えるよりも直感的に私たちの心に響く身近なものに感じてきませんか?

アートは特定のひとりの手でつくられているのではなく、コミュニティの中から生まれてくる。そんなアイデアのもと、アーティストたちが、自身のコミュニティを表現することで地域社会に貢献しようとするプロジェクトが生まれ、今注目されています。

その一つが、今回ご紹介するプロジェクト「Face of Santa Ana」です。

「Face of Santa Ana」は、Brian Peterson(以下、ブライアンさん)が立ち上げた、ホームレスの人たちのそれぞれの人生のストーリーを絵で表現し、彼らを貧困から救い出すことを目標にしたプロジェクト。

描いたホームレスの絵をInstagramなどのSNSを使って紹介し、その絵が売れると、1000ドル(約11万円)が「LOVE アカウント」とよばれる口座に入り、そのお金が地元のホームレスのために使われるという仕組みです。

さらにブライアンさんは、それぞれの絵の小さな複製をつくってモデルになってくれたホームレスの人たちに渡し、彼らが街でそれを売って自分たちで収入を得るという活動も行っています。
 
Family!!

sign
でき上がった作品を彼らに見せる時がこのプロジェクトの好きな瞬間だと話すブライアンさん。その瞬間ホームレスの人たちは、アートによって愛と希望、そしてブライアンさんとの友情を受け取ったことで、ポジティブなエネルギーがみなぎっているそうです。

ブライアンさんが「Face of Santa Ana」を始めた背景には、自身の街での出会いがありました。貧困層が多く暮らすと言われる、南カリフォルニアのサンタ・アナという地域に引っ越してきてすぐに、マットさんという一人のホームレスの男性に出会ったブライアンさん。

マットさんは、元々ミュージシャンを目指してケンタッキーから移住してきましたが、その夢はかなわず、やがてホームレスに。ブライアンさんはマットさんの話をきいているうちに、すぐさま彼の人生をキャンバスに描きたいと決意。この出会いがきっかけで生まれたのが 「Face of Santa Ana」だったのです。
 
matt
ブライアンさんが「Face of Santa Ana」を始めるきっかけになった、マットさん

daryl
街で人気者のダイルさん。トレードマークは、いつもかぶっているヘルメットだそう。

ブライアンさんのプロジェクトは、ホームレスの生活を支えるお金だけでなく、自身との友情を生み出し、それがやがてホームレスをコミュニティの一員として迎え入れることまで実現しました。

(最初は)絵を売って、お金を集め、ホームレスの人たちを助けることが目標でした。まさか自分がみんなを励ましているなんて、思ってもみなかったんです。

彼らがコミュニティの一員として迎え入れられることは、道ばたで会話もせずにただ1ドル札をあげることよりも、もっとホームレスの人たちにとって価値あるのではないでしょうか。

と、ブライアンさんは話します。
 
Brian2_jpg
ブライアンさん

これからもホームレスの人たちの絵を描き続けると決意新たなブライアンさんの今後の願いは、ただ絵が売れるということだけではないといいます。ソーシャルメディアによって彼の絵を見た人々が、サンタ・アナという街の現状を理解し、ホームレス問題を解決するために協力してくれるようになること。それがブライアンさんの今後の目標なのだとか。

みなさんも、コミュニティの中から生まれたアートを参考に、何か地域社会に貢献できるアイデア考えてみませんか?

[via GOOD,dtsa.,OCWEEKLY,OCREGISTER]

(Text: 松下史佳)